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鬼狩りの魔法少女  作者: ひかるこうら
第2章 『餓鬼』の騒乱
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8話 地下の襲来

 「真理、行くよ!」

 「わかった」

 アテネはグリフィンを地面に突き刺して魔法を詠唱する。その間に襲い掛かってくる“鬼”を真理が『アイギス』を使っていなしていく。“鬼”は真理の拳を受け、受け止めることができずに仰け反っていく。


 「内に秘めたる力を解放する。翠鰭竜(グリフィン)!私に力を貸して!」

 アテネのその詠唱と呼応するようにグリフィンは鮮やかな翠色に輝く。


 「いくら攻撃力を増そうが当たらなければ意味がないのだよ。私にはまだたくさん肉壁はあるんだよ」

 地下(じげ)は微笑を浮かべながら仕掛けを作動させる。

 「『肉壁狂乱(ざこがいっぱい)』」


 その声に反応して地面から何十体もの黒い塊がぽこぽこと湧き出てきた。それらはすべて“鬼”だった。

 「さぁ君たちは、私のこの肉壁を突破することはできるかな!?」


 高らかに声を上げる地下(じげ)をわき目に、真理はアテネに問いかける。

 「いける?」

 「・・・OK。いくわよ!」

 アテネはグリフィンを担ぎ大ぶりに振りかぶる。

 「いっけええ!!!」

 グリフィンが翠に輝きながらその中にため込んだ力を解放する。


 グリフィンが振りかぶられた後から翠に輝く斬撃が放たれる。その斬撃は“鬼”をバターのように容易く切り裂き次々に塵へと変えていく。その斬撃は生まれてくる“鬼”でさえも切り裂き消し飛ばす。そしてそこら一帯にいた“鬼”を一掃し、奥で待機していた地下(じげ)にもその斬撃は殺到する。


 「おおっと、『暗黒の牢獄(ソレハツミノアラワレ)』」

 地下(じげ)は少し慌てたようにして手から黒い物体を生成し斬撃にぶつける。斬撃はしばらく黒い物体と拮抗したものの勢いを失い消えた。

 「ふぅ、まさかここまでの攻撃とは思ってもいませんでしたよ」

 「まだ私の攻撃は終わっていないわ!」

 アテネは自らに加速魔法をかけて、地下(じげ)に突進する。手にはいまだに翠に輝くグリフィンがあった。

 「喰らえ、『竜閃』!」

 アテネはグリフィンで切りかかる。その刃は赤色に輝いていた。空気を切り裂きながら殺到する刃はただ地下(じげ)の首へ吸い込まれていった。


 「がはっ・・・!」

 アテネは地下(じげ)を通り過ぎて地面に降り立ち、後ろを見た。

 ごとり、と音を立てて地下(じげ)の首は落ちた。そして首からは黒い液体が吹き出した。


 「・・・」

 アテネはきっと口を結んだ。例えどれだけ多くの鬼を買ってきたとしても殺す時は慣れない。一撃で消し去ってしまう時は楽なのだが、今のように自らの手で殺したという感触を得るときは多少の嫌悪感を覚える。それでも攻撃がぶれるといったことはなかった。



 「つまらないものね」

 アテネは地下(じげ)の体の動きが止まったのを見ながら言った。

 「木っ端微塵にしてあげようかしら」

 その言葉に地下(じげ)の胴体はぴくりと跳ねる。

 「もうわかっているから、さっさと起きなさい」

 アテネのその言葉に地下(じげ)の胴体はよっこらしょとでも言うかのように立ち上がり、近くに落ちていた頭を取り上げた。そして、頭を元々あった位置に置き、えいっと押し付けた。頭と胴体はそれぞれが粘土であるかのようにべちゃりとくっつき合い切れ目は見当たらなくなった。


 「やれやれ、やっぱりバレていましたか」

 地下(じげ)はやれやれとした表情で首を振る。

 「私には君の攻撃を防ぐ手段はあるものの、君たちに攻撃する手段がない。これがどういうことかわかるかね?

 ・・・何もったいつけてんだって表情だね。わかったよ、なら私の攻撃手段をお見せしよう。

 来れ、代償を哀悼を告げて『監獄の報い(ワタシハソレヲオボエテイナイ)』」


 地下(じげ)の手にどこからか現れたたくさんの黒い粒子が集まっていく。その黒い粒子はひとつの形を作り上げていく。それは禍々しく黒光りする短槍だった。

 地下(じげ)はそれを至って軽く振り回した。空気を切り裂く甲高い音が鳴り響き、槍からは衝撃波がほとばしり辺りの岩場を切り裂いていった。


 「さて、第2戦目とでもしゃれこもうじゃないか」

 「さっさと貴方をぶっ倒して家に帰りたいのだけれど?」


 一息に互いに距離を縮めたアテネと地下(じげ)は互いの獲物を交差させるようにして打ち合う。


 キンッ、と音を立ててグリフィンと黒い槍は互いにぶつかり合い火花を散らす。

 「あなたに私が殺せるというのですか?」

 「当り前じゃない、私達にちょっかいを出してくる奴らにはそれ相応の報いを与えてあげるわ」


 アテネと地下(じげ)は一旦距離をとり再びぶつかり合う。互いの得物を意思の表れとして。


 切り結ぶたびにその衝撃が辺りに撒き散らされ、何の武器も持たぬ真理にとって容易に近づけるものではなかった。

 「くっ」

 真理は直接戦いに関与できないことに悔しさを感じながら、今自らができることを模索した。

 そして、真理は決断した。


 「アテネ!大きく下がって!」

 真理の声に反応してアテネは大きくグリフィンを叩き付け、その反動で後ろへ大きく飛んだ。


 「今ならできる・・・!『無辺世界・改』」

 真理の突き出した右手を起点として、延長線上に魔力の爆発が起きる。それは白い光が幾重にも並んで光を撒き散らしているように見えた。魔力が破裂し、吹き飛んでいく。その影響でそれまで砂地だった地形がごっそり削れグレーの床が露出した。


 「なにっ・・・私の“谷”を破っただと」

 「いい加減に消えろ!」

 真理が叫ぶと同時にアテネと真理の視界は白い光に覆われた。




 

ほんとは地下(じげ)にこんなに頑張ってもらうつもりはなかったのですが・・・張り切りすぎですね。

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