3話 呪いの結果
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「まじか・・・」
真理は家で机に突っ伏していた。
その姿はまるで恋の悩みを抱えた少女が机に突っ伏しているかのようだった、その実態はまるで違うのだが。
「真理、お茶よ」
「あぁ、ありがと」
真理はアテネが煎れてくれた緑茶を啜った。
「はぁぁぁ・・・」
「真理・・・」
「わかってる。ここでうだうだしていたって何も起こんないのは知ってるさ。だけど・・・」
真理は叫んだ。
「よりによって俺は女の子の姿になってしまったんだよ!」
アテネは真理の向かい側に座った。そして口を開いた。
「あれからいろいろ調べてみたり考えてみたんだけど、そこから一つ仮説立ててみたの」
「どんなの?」
「錦城麗奈、彼女が使った魔法は『呪い』。それは対象に遅延性のある強力な効果をもたらすもの。例えば今の真理にかかっている『性質変化』ね。これは普通は破壊することもできなければ解除も容易ではない。術者がどうにかしなければほぼ永久的に効果を発揮し続ける。ここまでいいよね?」
「あぁ・・・厄介なのは破壊できないっていうところだよな。そうだ、俺の『シールド』が効かなかったのはどういうことだ?」
「『呪い』は対象にかけるもの。家に居ながらにして外を出歩く人にかけたという話があったのだから、たぶん障害物程度では防げない。そう思うわ」
「なるほどな・・・」
「私が思うには・・・。一つ確認するけど、真理はあの時『呪い』の術式を“引き裂いた”でしょ?」
「あぁ、たぶんな。無意識にそんなことした気がする」
「その行為によってあの『呪い』は“部分的に”壊れた。それによって本来の『呪い』の結果ではなくて、こうなってしまった」
「本来の結果って?」
「彼女が言うには、カエルに変える『呪い』だったって。それよりはマシじゃない」
「・・・・・・そうかな。まだ人間でいられるだけでマシだよね」
「うん」
しばらく二人を静寂が包みこんだ。その間二人は見つめ合っていた。一見すると、憂いを顔に浮かべる少女と同じように複雑そうな表情をした少女が互いを見つめ合っている画だった。
重い空気の中、アテネが口火を切った。
「じゃあ・・・・・・真理には女の子として生活するためにいろいろと教えてあげないとね」
「シリアスな空気返せっ!」
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「いい?今日からあなたは『真理』ではなくて『真理』よ。女の子なのよ」
「えっー」
「ほらっ、口調も女の子らしくしなさい!」
「いや、だって・・・」
「何?文句ある?」
「グリフィンちらつかせながら言うのやめてください」
真理はブルブルと体を震わせながら言った。まるで小動物のようだった。
「で?」
「わかりました、お姉さま。私にもう少し優し目にしてください」
「それじゃ、このセリフ読んでみて」
「えっと、『お姉さま、実は私のものが疼いてしまって・・・お姉さまの手で慰めてくれませんか』って。何言わせてんのー!」
「ごめん、間違えた(∀`*ゞ)テヘッ」
「・・・・・・」
「ちょっと、ごめんってば。悪かったって、だから外に出ようとしないでっ」
「ムスッ」
真理は頬を膨らませムスッとした表所のまま椅子に座り直した。
「次はちゃんとするから、ね?」
それから2時間後。
「・・・・・・」
机にべたーっとうつ伏している真理がいた。
「大丈夫?」
そんな状況を作り出した張本人であるアテネが労いの言葉をかける。
「ちょっと・・・無理」
頭からぷすぷすと煙でも出しているかのような真理は手を上げようとして、力尽きた。
「・・・ごめんね」
アテネは毛布を真理にかぶせた。そしてしばらく真理の寝顔を眺めていた。
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翌日。なんとか目を覚ました真理を尻目にアテネは学校へ行く準備をしていた。
女性化した真理の服は一緒に変化した制服を除いて依然として元のままだった。当然、真理は女性ものの下着も持っているはずもなかったため、アテネのものを借りることにした。
「なんで制服だけは都合良く変化したんだろう・・・」
「私にもよくわからないけど、『呪い』の中に適した服装に帰るっていうのがあったんじゃない?」
「アバウトなかんじだ・・・ね」
「真理は『神内真理』ではなくその双子の妹の『神内真理』として過ごすことになるの。学園長には連絡しておいたからいろいろとサポートしてくれるけど、真理は美少女転校生ということになっているから。そこのところはわかっているね?」
「あぁ、『突如転校することになってしまった『神内真理』と入れ替わるようにしてやってきた双子の妹『神内真理』』っていうのが私の“設定”でしょ?」
「そう、違和感を感じさせないようにしなければいけないの。今日一日はとりあえず準備に真理は休んでいてもらうけど、明日からは忙しいわよ」
「はぁ・・・それで今日は?」
「学園長と詳しい打ち合わせと、一応さっちゃんと安倍君には伝えとこうと思って」
「頼みます」
「そこは『頼むわ』とか『頼んでいい?』とかよ」
「頼んで・・・いい?」
「そういい感じ」
アテネは靴を履き、玄関のドアノブに手をかけた。
「それじゃ、ついでに真理の下着とか服とか買ってくるから少し帰りが遅くなるかも」
「気にしなくていいよ、私も今晩の買い物くらいは出かけるから」
「くれぐれも、気を付けてね」
「わかってる、いってらっしゃい」
「いってきます」
アテネは学校へ向かっていった。真理はその後ろ姿が見えなくなるまでずっと見ていた。
一人になった真理は家の中に入って一息ついた。
「さて、なんとかこの後を頑張らなきゃ」
真理はぐっと自分を元気づけると、鏡の前でひたすらに“女の子らしい”仕草・話し方を練習するのだった。
神内真理の容姿についてちょっと補足しておきます。
・身長はアテネよりちょっと小さい
・胸はアテネのそれよりも大きい
・顔はちょっとロリ顔
・髪は肩に軽くかかるくらいで少し茶色がかっている黒色
・目はクリクリっとしている
・声はソプラノでかわいらしい
・そもそも元が男だったとは思えないくらいの可愛さ
こんな感じです。願望120%です・・・
何か感想・批評等々ありましたらぜひぜひください。待ってます。