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鬼狩りの魔法少女  作者: ひかるこうら
第2章 『餓鬼』の騒乱
54/123

1話 始業式に現れた少女

 ■■■


 春。それはハジマリの季節。生命が育まれ芽生える季節。

 様々なものの生活が始まる季節。それは学生にとっても重要な時期だ。


 そして。

 桐陵学園の始業式が始まっていた。



「……ですから、皆さんも新たな気持ちを持って新学年に望んで欲しいと思います」

 学園長のありがたいお話が終わった。


「これで、始業式を終わります。各自新しい教室に戻ってください」

 と、舞島(まいしま)(りん)は大声を張り上げて言った。

 



「はぁ、やっぱりいくら新学年になってとはいえ実感がないね」

 アテネが言った。

「それは仕方ないだろ。まぁ後輩ができれば実感が湧くだろうけどな」

 真理がそれに応えた。



 新しい教室で。

 アテネと真理は、早苗達と固まって教室の端のほうで話していた。

 この桐陵学園はクラス替えは行わない。そのため3年間同じクラスの人と過ごすことになる。


「ねぇねぇ」

 アテネ達に声をかけてくる少女が一人。名前は新庄(しんじょう)真由美(まゆみ)。このクラスの中で一番ゴシップを追いかけている少女だ。

「君たちは知ってるかな、このクラスに転校生がやってくることを」


「えっ、そうなの」

「まじか」

「そうそう、まじまじ」

 真由美は嬉しいそうにうなずいて続けた。

「しかも美少女という噂がっ!」

「「「へー」」」

 真理・大輔・レオは気の抜けたような返事を返した。


「あれれっ、なんでそんなテンション低い返ししかしてくれないの」

「だって、転校生とか興味ないし」

 と真理が言い、

「3次元には興味ない」

 と大輔が言い、

「この現状に満足しているからあまり気にならない」

 とレオが言った。


「えっー枯れてるぅ!」

「「「んな訳あるか!」」」

 真理と大輔とレオは叫んだ。


 早苗はアテネに囁いた。

「たしか小林君ってこの前3年の先輩に告白してOKもらったんだったけ」

「何それ、初耳」

「私も昨日聞いたばっかなんだけどね……」

「それで?」

 早苗とアテネはレオの話で盛り上がった。



 至って普段の光景だった。

 

 

 そんな中チャイムが鳴る。

「HRか……」

 生徒たちは皆席に座る。

 そして担任がこのクラスの教室に入ってきた。福井先生だった。

 去年このクラスの担任だった河野香が“失踪”して以来それまで生徒指導だった福井先生がこのクラスの担任となった。

 

「座っているか、まぁ一年の始まりだし当たり前だよな。よーし、HRを始めるぞお」

 そう言いながらドンっと足を踏み下ろし音を立てる。


「えっと、連絡事項は……」

 福井先生はつらつらと連絡事項を伝えていく。

 

「これで以上だ。それじゃ号令」

 連絡事項を全て伝え終わり号令をかけさせようとした。


「先生、質問があります」

 そう言って挙手をしたのはゴシップ大好き少女の新庄真由美だった。

「なんだ?」

「転校生はどうしたんですか?確かこのクラスだったと聞いていますが」

「おいおい、どこからそんな情報を聞いてきたんだ。まだ教員室の域を超えていないはずなんだがな。転校生は明日からだ。準備があるからだそうだ」

「そうですか、ありがとうございます」

「やれやれ、それじゃ気を取り直して号令」

「きりーつ。礼」

 がたっと音を立て生徒たちは立ち上がり礼をする。




 ■■■


「あぁっと学校が始まったんだよな。なんかだるいな」

「そういうのはまだ早いわよ。ほらほら頑張りなって」

「はいはい」

 真理とアテネは桐陵学園の敷地を出て家路に着こうとしたそのとき。

 目の前にピカピカの制服を着た少女が現れた。


「お久しぶりです。おねぇさま!」

 そう言ってその少女はアテネに抱きついた。

「なによ、いきなり」

「あれ……私を忘れてしまったのですか?私ですよ、錦城(きんじょう)麗奈(れいな)ですよ!」

「えっ……誰?」

「忘れてしまったのですか!?2年前に鬼に襲われているところを助けてもらいました。覚えていませんか?」

「たしか……そんなこともあったわね」

「そうです、その後私は竜崎先輩に憧れて魔法少女になりました!」

「そう、魔法少女は大変難しい存在だから頑張りなさいよ」

「……それだけですか?」

「えっ?」

「私について何も一言もないのですか!?」

「だって、私はあなたに言われてやっと思い出したようなものだし、何か?」

「私は……私は、ずっーーーーーと竜崎先輩のことばかり考えていたというのに何なんですか。ここ一ヶ月そこの男とイチャついてばかりで」

 真理は確信した。コイツはアテネのストーカーでめんどくさい女だと。

「なっ、なんなのよあなたは!」

「私は竜崎先輩が好きなんです。この気持ち分かってくれませんか?」

「分かるわけないわ。第一あなたは女。私は同性愛者ではないわ。同性愛を否定するつもりはないけど、私はあなたがどんなに頑張っても愛することはできない。わかる?

 あなたのような整った顔立ちならば彼氏の一人や二人できるんじゃないかしら。そもそも私には彼がいるし」

 アテネは真理の腕を引く。


 その様子を見て麗奈は傷ついたような表情を見せる。

「そうですか、そうですか。先輩の気持ちはよーくわかりました。

 本当ならば先輩の苦しむ姿を見たくはありませんが、仕方ありません」


 麗奈はぼそぼそと言葉を吐き出し、そしてぱちりと指を鳴らした。

「なっ」

「まさか……」

 アテネと真理は声を上げた。

 

「あなたには消えてもらいます。神内(じんない)真理(しんり)

 そこには紫のメイド服を着て、片手に無骨な形の銃を持つ麗奈が立っていた。

 魔法少女のコスチュームに身を包んだ麗奈は銃を真理へ向けた。


「私の想いを形にし、花を咲かせろ『呪いの銃弾(カースド・バレット)性質変化(トランスフォーム)』!」


 麗奈の放った銃弾は直線軌道を描いて狙いを違えることなくまっすぐ真理の胸に着弾した。

「『アイギス』!」

 着弾すると同時に真理は己が持つ魔法を発動することに成功する。

 不可視の壁が布一枚ほど隔てて銃弾を押しとどめる。


 だがしかし

「なっ、なんだコレは」

 麗奈の放った銃弾は真理の『アイギス』に阻まれても、黒い影を滲ませて真理に取り付こうとする。


「真理!」

 すでに魔法少女のコスチュームに身を包んだアテネが叫ぶ。

 そして銃弾から出てきた黒い影が真理の体に入り込んだ。

 その瞬間。

 

「あっ、あああああああああああああああああああああ!」

 真理は胸を抑えてうずくまる。


「もう終わりだよ、神内真理。あなたはこれからもう人間ではなくゲコゲコとなく惨めなカエルとして生活するんだ。それは全て竜崎先輩にまとわりついた罪だ。後悔しろ、泣き叫べ」

「あぁぁがあああああああああああああああああああああ」

「真理! 真理ってば!」


 真理の体の黒い影が包んでいく。

 アテネはきっ、と麗奈を睨む。

「真理に何をしたの!」

「ふふふ、それは私の魔法『呪い(カース)』。対象を任意の効果を起こさせる魔法。その銃弾を作るのに一ヶ月もかかったんですから。その銃弾は対象をカエルに変化させるわ」

「魔法ね、あなたのことは絶対に許さない」


 アテネは真理に声をかけた。

「これが魔法なら、真理の『シールド』で防げるはずでしょ!」

「あああああ……くそっ、ダメだ、全然防げ……ああああああああああああああ」

「真理!」

 

「ははは、無様なものね神内真理。さっさと人間辞めてしまいなさい!」

 

 そして真理を包む黒い影が真理の姿を覆い尽くし、真理の体を変化させた。


「あ……真理いいい!」

「ふっ、これでおねぇさまは自由になった」


 そして変化した真理を見てアテネと麗奈はそれぞれ驚きの声を上げることになった。


「真理……?」

「なんでカエルにならないの……? まさか、私の『呪い(カース)』を抵抗(レジスト)したの……?」


 真理がいた位置にいたのは、桐陵高校の女子制服を着たま一人の少女だった。


「はぁはぁ、死ぬかと思った。どうだアテネ……ってどうしたんだ?」

「し・・・真理」

「えっ、何が起きた……ん? あれ、あれっ?あれえええ!? なんか変だ。なんかスースーするし、あるはずのものがないし。……って!?」

 真理は思わず叫んだ。

 

「俺、女になったの!?」



 

新キャラ登場!錦城麗奈ちゃん!このキャラには頑張ってもらうつもりです。さて、いろいろとまだまだわからない箇所が出てきたと思うんですが、次でちゃんと説明するつもりです。なぜ真理は女になったのか、女子制服を着ていたのか。次話でそのあたりを説明します。

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