Summer Vacation! 1
夏休み編でございます。
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7月もそろそろ終わる頃。
アテネと真理は海に来ていた。
からりと晴れ渡り瑞々しいほどの青色に輝く空。。一つの染みさえない純白の砂浜。生命の根源でありその全てを包み込むようなやわらかさを持った、マリンブルーに染まる海。
・・・というわけではないが、至って普通の海水浴場に来ていた。
「なんで俺まで海なんかに行かなければいけなかったんだ!どうせなら家で積みゲーを粛々とこなしていたかった!」
大輔は怨嗟の声を上げた。
「まぁ・・・諦めてこの海水浴場に来ている大輔好みの幼女でも探したらどうだ」
真理は頭を抱えたままの大輔にそう言った。
「それだ、その手があったか・・・ここは海だから俺を待ち構えている幼女達は十中八九水着姿・・・!キタ━(゜∀゜)━!」
大輔はハイテンションになり諸手を上げて踊りだした。
ずべしっ!
到底人間からは出ないような音を立てて大輔は倒れた。
原因は、早苗の手刀だった。
「はぁ、なに海に来てまで変なこと言ってるのよ、さすがに引くわ」
「まぁまぁ、安倍くんなんだから仕方ないよ。あきらめな、さっちゃん」
「これはたぶん死んでも治らなそうね」
早苗はため息をついた。幼馴染として、協力者として大輔と関わっている早苗の苦労は絶えない。
「暑いわねー」
三条詩織は手を仰いでいた。
「夏だからなー」
小林レオがそれに追従して言った。
アテネ・真理・早苗・大輔・詩織・レオの6人は一緒にこの海水浴場に来ていた。
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誰が言い始めたのかはわからないが、いつの間にか海に行く話が出ていた。
場所は神川市の南西の方にあるそれなりに有名な海岸になった。ここならばそこまで遠くなかったからだ。
初めはアテネと真理と早苗だけだった(大輔は早苗に無理やり連れてこられた)のだが、いつの間にか詩織とレオが追加されていた。
そんなわけで、6人で海に来たわけだった。
「さて、海に来たからには泳ぐぞ!」
そう言うなり、レオはTシャツを脱ぎ、海パン一丁になった。
「元気だな・・・」
「そうね・・・さすがにあんなテンションにはついていけないわ」
真理とアテネはレオの様子を呆れてながら見ていた。
「さて、俺は最高の美術品達を探しに行くぞおおお!」
大輔もすでにテンションは最高潮だった。
「ちょっと、待って大輔。いきなり海に行くのは危険だよ」
「ちょっ、やめい。俺のことを掴むな。あそこには俺が求めるブツがあるんだあああ!」
「いいかげんにしなさい!」
飛び出していこうとする大輔を必死に体全体を使って押しと留める早苗。
真理はさすがに見ているだけじゃ悪い気がして大輔を止めに入った。
「まぁ待て。別に逃げるもんじゃないだろ?だから、先に水着に着替えろ」
「えぇー。・・・仕方ないな」
着ていたTシャツを脱ぎ海パン一丁になる大輔に早苗はパーカーを手渡した。
「ほら、これでも着てなさい。どうせ、海の中までは入んないでしょ?」
「おお、気が利くな。ありがとよ」
「どーも。ほら、気が済むまで好きにしてなさい」
「よっしゃ!さすが早苗だ。よくわかってる」
大輔は意気揚々とお宝を目指して砂浜を走っていった。
「おつかれー」
「はぁ、大輔もアレが無ければいいんだけどね」
疲れた顔の早苗が答えた。
早苗と真理が大輔の相手をしている間に、アテネと詩織はすでに水着に着替えていた。
アテネはけして慎ましくはない胸をレースの付いた紫のビキニタイプの水着で覆っていた。それから真っ白いパーカーを羽織っていた。一方、詩織はというと真っ白い肌を日光から守るように黄色とオレンジ色の水玉にあしらわれた丈の長いワンピースに身を包んでいた。
そんな二人を見て早苗は着ていた服を脱ぎ、下に着ていた水着を露わにした。
早苗の水着は黄色のフリルリボンタイプのビキニだった。
「でも、行かせてよかったの?」
「さすがにここで行かせてあげないと可哀想なことになるし・・・」
「さすが幼馴染ね」
「嫌でも分かってしまうよ・・・」
詩織はふと疑問に思った。
「安倍君っていつからあーいう風になったの?」
「あー、あのロリコン癖ね。いつの頃からかわかんないけどいつの間にかなってたわ。小学生の頃はそんなことなかったけど」
「たしかにいつの間にかなっていたよな・・・」
真理は心の置ける友人の困った癖に記憶を巡らせた。
「あぁ、思い出した。たしか早苗の胸が膨らみ始めた時だったかにぶべらっ!」
「何言い始めてんのよ、バカ」
真理の顎にアテネのキレのいいアッパーが炸裂したのだった。
「いや、だからな。たしかそんな時に大輔が『俺、やっぱり胸は小さいか無い方が好きなんだ』って言ってた。その時から大輔の部屋にそういった本が増えた」
「「「えぇっ!そうなの!」」」
思わぬ事実に女3人は驚きの声を上げた。
「それは・・・私のせい?」
「・・・どうだろうな」
早苗は一層落ち込んだ。
「まぁまぁ気にすることないよ」
アテネは座り込んで砂をいじり出した早苗を慰めた。
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そして、しばらくして。
一旦泳ぎ終わったレオと、真理が探し出して引っ張ってきた大輔を含めて、6人でビーチバレーをすることになった。
大輔を除く5人は賛成だったが、大輔がごねていたので真理が一つ提案した。
「勝った方のチームが何か賞品を手に入れるっていうのはどうだ?賞品はそうだな、欲しいものを紙に書いてそれを負けた方のチームが買ってくるっていうのはどうだ?」
「おお、いいじゃないか。よし、これで欲しい物がタダで手に入る・・・!」
と、大輔はやる気になった。その様子を見て、早苗はほっと息をついた。
「まぁ、大輔がやる気になったからいいんじゃない?」
アテネが気になったことを尋ねる。
「それで、賞品はいくらまでとかあるの?」
「1000円くらいでいいんじゃないか?それなら敗けてもなんとか払えるし、買ったときはうれしいし」
レオはボールを指先でくるくる回しながら言った。
「そうだな、一人1000円以内で、3人で3000円以内。買ったものはそのチームで割り勘でってことで」
「チームはどうするの?神内君」
「それは男VS女でいいんじゃないか?」
「OK、それでいこうね」
そして、双方負けられない戦いが始まった。
*女性陣の水着描写がなかったので追加しました。