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鬼狩りの魔法少女  作者: ひかるこうら
第1章 『水蛇の女王』
42/123

35話 魔法少女に御咎めはない

 ■■■


 その後、アテネはぜえぜえと息をつく真理のもとへ駆け寄った。


 「真理、大丈夫!?」

 「あぁ、俺なら大丈夫だ。アテネこそ大丈夫か?」


 真理がそう言うと、アテネはたまらず真理に抱きついた。

 

 「アンタが・・・無事で良かった・・・・・・」


 真理は照れたように頭をかいた。

 「わかったから、ちょっとぉおおお!」

 真理はアテネのことを支えきれずに後ろに倒れた。


 倒れた真理の上にアテネが覆いかぶさっている構図になった。

 二人は互いに見つめ合ったまま、そのまま押し黙っていた。


 「「・・・・・・」」


 




 「おおっと、もう戦いは終わっていたか」

 「そうみたいだねー・・・ってあれってあーちゃんだよね」

 「そうだな」


 そう会話しながらやってきたのは早苗と大輔だった。



 「・・・・・・!」

 アテネは後ろに飛び跳ねた。顔は真っ赤のままだった。

 そんなアテネに早苗は問いかける。

 「あーちゃん、ナニしてたの?」

 「あぅ・・・べっべつに何もしてないわよ!」


 一方大輔は口をわなわなさせながら真理に

 「真理・・・見損なったぜ。お前だけは俺の味方だと思っていたんだ」

 「おい、いきなり何言い始めた」



 すると、屋上へほむらとあかりも上がってきた。

 「全てが終わったのね」

 「みたいだね」


 ほむらはアテネを見つけるなりアテネの方へ足を向けた。そして目の前に立った。


 「貴方が竜崎アテネね、また会ったね」

 「奇遇です、後藤ほむら先輩」


 二人はしばし睨み合ったままだった。

 先に視線を外したのはほむらだった。

 「貴方とはまたいつか会いそうね」

 「同じ学校だからそれはありそうですね」

 「そうじゃないわ。このような事件(・・)にまた遭遇する。その時は敵か味方かどういう風にして会うかはわからないけれども」

 「そうですか、それはあなたの直感ですか?」

 「似たようなものね。とりあえず礼は言っておくわ。この学園を守ってくれて、私の守りたいものを守る手助けをしてくれて」

 「特に私は先輩にしたことはないですけども、礼は受け取っておきます」


 ほむらは真理を一瞥して後ろを向いた。

 「あかり、帰るよ」


 あかりは慌てたようにしてアテネに話しかけた。

 「あっ、ほむらちゃんはべつに悪気があって言ったんじゃないからね」

 

 アテネは小さく首を振った。

 「大丈夫です。以前会ったときにいざこざがあっただけで今は関係ないですから。九条先輩は気にしなくていいですよ」

 「それなら、良かった!」

 「あかり」

 「あっ、ほむらちゃん拗ねてる」

 「そんなことは・・・」

 「ふふっ」


 あかりは先に屋上から階下へ降りようとしていたほむらの後を追いかけた。





 「ふぅ」

 アテネは立ち去っていくほむらを見ながら溜め息をついた。


 「ねぇ、あーちゃんは後藤先輩のこと知っていたの?」

 「昔ね、共闘したことがあったんだよ。それで知っている」

 「そう」


 「まぁ、一件落着ってところか」

 真理が呟いた。









 ■■■

 

 その後。『水蛇(すいだ)の女王』と『常夜の姫君』が暴れた結果、ボロボロになった校舎をバックに、学園長は生徒たちに簡単な話をした。


 確認できた死者は、全部で20数人。


 怪我した人の数はほぼ全生徒の半分ほどで、その全てが軽傷だったため簡単な手当で済んだ。


 この事件は学園に入り込んだテロリスト集団によるもので、犯人は教師陣の手によって始末されたことになった。そのためもう心配は要らないというとのこと。

 後に警察が学園中を調べることになるのだが、監視カメラの映像にそれらしき人は写っているが、肝心の犯人の遺体は見つかることはなかった。


 

 こんな事件があったため、生徒たちは早めの夏休みに入ることになった。






 「さすが桐陵学園の教師ってところかしら」

 アテネはカフェオレを片手に言った。

 

 ここは喫茶店『アゲトビレッジ』。アテネ達4人はここで駄べっていた。


 「えっ、何が?」

 早苗が聞き返した。

 「普通だったらあんな事件があってこんな簡単な処置で終わらせられるわけないでしょ。だから情報操作したんだと思うわ。特にあの学園長がね」

 「あぁ・・・」

 真理はアテネの言い草に思わず同意してしまった。

 あの『七つの大罪』だった学園長ならば、いかなる手段でも使っているに違いないと。


 「まぁ夏休みが早くなったんだしいいじゃないか。無事に秘宝は守れたんだろ?」

 「そうだね」

 大輔のセリフに3人は頷く。



 「よーし、夏休みだしやりたいことやりまくるぞ」

 「大輔は何か予定でもある?」

 「一杯ある、休む暇なんてないくらいだ」

 「・・・なんか大したことないとは思うけど一応聞いておくわ。何をするつもり?」

 「プール行って」

 「うん」

 「幼女を愛でる」

 「死になさい」

 

 バコッ


 小気味いい炸裂音を響かせて早苗の平手は大輔の頭を叩いた。


 「うごおおお」

 「そんな馬鹿なことなんかに時間を使わないで!まったくもう・・・」

 「じゃあ何にならいいんだ?」

 「えっ?」

 「だから、夏休みの『正しい』過ごし方っていうのは何だ?」

 「えっ、えーっと・・・私と海に行ったり?私と買い物に行ったり?」

 「・・・え”っ」

 「何よ!」

 「なんでお前と一緒にいかなきゃならんのだ!いつまでも俺と一緒にいる必要ないだろ、別に魔法少女と協力者(サポーター)の関係だからといって。俺ら恋人なんかじゃないしな、そーいうのはこれはと思う人とにしろ」

 「・・・・・・っぐすっ」

 「!おいおい、こんなところでいきなり泣き出すなよ。なんか知らんが悪かったって、な?」

 大輔はおろおろしながら涙を浮かべた早苗を宥めた。




 「あー、鈍感って怖いねー」

 「・・・確かにな」

 アテネと真理はその様子を見ながら言った。


 「真理は夏休みどうする?」

 「あー俺は特にないからな・・・そういうアテネはどうするんだ?またどこかに行ってしまうのか?」

 「うん?私はずっと真理の家に居候させてもらうわ」

 「はぁ?」

 「いやー別にこれからのことは当てがないし、真理のそばにいたいし」

 「・・・っ!?」

 「かっこよかったよ、あの時」 

 「あの時は必死だったからな・・・」

 「ふふっ」

 「そうだ、いくつか聞きたいことがあるんだが」

 「なに?」

 「あの時俺に対して『契約』って言うのしたような気がしたんだけど・・・」

 「あぁ・・・あれね。あれは魔法少女と協力者(サポーター)の関係を構築する魔法よ。つまり真理は私の協力者(サポーター)になったってわけ」

 「そうなのか・・・全然実感ないな・・・」

 「魔法少女と協力者(サポーター)の関係ができると、まず互いの魔力が共有されて擬似的に増えたことになるわ。普通は協力者(サポーター)の魔力は無いに等しいからあまり意味ないことだけど、私と真理の場合は違うわ。真理が持っている魔力は実は魔法少女の私に匹敵するほどなの。だからそれだけ私の魔力が強化されてるの」

 「そうだったのか・・・っていうことは俺もなんか魔法使えるのか?」

 「現に使っていたじゃない。何よ、あの『無辺世界』って。あんな馬鹿げた魔法見たことはもちろん聞いたことないわよ。あんな無理やり魔力を吹き飛ばす魔法なんて」

 「あれって魔法なのか・・・」

 「膨大な魔力が見えたからそうよ」

 「まじか・・・俺も魔法使えたんだ。うわーなんか嬉しいぜ」

 「それはよかったね・・・」




 それから4人は何だかんだ駄べっていた。そして6時になり、空が暗くなる頃、帰途に着いた。







 ■■■


 「今日は何食べるか?」

 「うーん、なんか餃子食べたい」

 「OK、冷蔵庫に残っていたような気がするからそれを焼こう」

 アテネと真理は家に帰る道すがら、夕食の話をしていた。


 「うーん、今日はいろいろあったね」

 「そうだな、ほんと疲れた」

 「ね」

 アテネは隣を歩く真理の肩に頭を添わせた。


 「早く夕食食べてゆっくりしたいわ」

 「だな」


 真理は少しゆっくりと歩くアテネの歩調に合わせて歩く。







 そして二人は家に着いた。

 しかし、二人は家に入らなかった。

 それは・・・


 「ねぇ、こんなことってあるの?」

 「いや、ないな」

 「私たちの他に誰かいたっけ?」

 「・・・・・・いた。一人だけ」

 「誰?」

 「たぶん・・・」


 真理は言葉を続けた。

 「俺の母さんだ」


 なぜ、二人は家の前で立ち尽くしていたのか。

 それは、普段は二人が帰るまで明かりが付かないはずの家が煌々と明かりを灯しているからだ。



 「じゃあ、入るぞ」

 「うん」


 真理は鍵を入れて回した。


 「ただいま・・・」




 そして、


 「おかえりいいいいいいいいいいいいいいいい!」

 

 そこには、まだ十代といっても差し支えのないぐらいの若さを持つ、背丈の小さな真理の母親が立っていた。





 









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