28話 『光の奇跡(ライトマジック)』
■■■
一方、早苗達はというと・・・
「うりゃぁぁ!」
早苗が好戦的な魔物や鬼らを次々と切っていた。
その後ろを大輔とレオが歩いていた。
「それにしても多いね」
と早苗が呟く。
その呟きに大輔が答える。
「まぁそれだけ本命に近づいているってことなんだろ」
「そうねっ、はぁこれで何匹斬ったかしら」
レオはレオでアムール虎のトラ(レオ命名)に指示を出してうまく立ち回らせていた。
そんな中、ふと早苗達がいる廊下の先にある教室のドアが開いた。
「誰だっ!」
教室から出てきたのは一人の男子生徒だった。茶髪に学ランを着ていて、その男は早苗達を見ると鷹揚に手を振った。
その背後からタイミングが悪いことに熊の姿をした鬼がいた。
その熊は右手を振り下ろした、その男を狙って。
「危ないっ!」
早苗は思わず飛び出した。
しかし、その距離50メートル。
いくら魔法少女の姿である早苗でもその一撃を受け止めるには遠すぎた。
手を振るその男は後ろを見ていなかった。
そして腕は振り下ろされた。その男を真っ二つにするように。
「大丈夫だ、安心しろ」
その男は言った。
熊の一撃で真っ二つにされているはずの男が一瞬ぶれた。そして気が付けば横に1メートルずれて立っていた。
「とりあえずお帰り願いたいね、熊くん」
その男は指をパチンと鳴らした。
するといきなり熊は目を押さえだした。
「後は任せたぞ、刀を持った1年生」
「あっ、はい」
自分が呼ばれたとわかった早苗は鞘を走らせる。
「『雷鳴剣』」
■■■
「で、あなたが生徒会長でしたか」
「そうさ、3年で生徒会長である五光光一さ、またの名を桐陵学園の平和を守る正義の部隊『TEATRO』のリーダーだ」
早苗の質問に光一はおちゃらけを隠すことなく陽気に答えた。
「まぁ、『TEATRO』っていうのは俺達のような能力者の集まりなんだよ、ね?先輩」
「いや、『TEATRO』はこういった事態に億することなく立ち向かう、正義の部隊だ!」
「はいはいわかりましたから。で、なんでいきなり教室から出てきたんですか?」
レオが話を進める。
「いや、君達の声が聞こえたからな、出てきたんだよ」
「そうですか、先輩はこの後どうするんですか?」
「あぁ、そこら辺を闊歩する魔物でも倒そうかと」
「でもそれにしてはなかなか長く教室にいたんですね、こういう状況になってからだいぶ時間経ちましたけど」
「えっ、いや心の準備が必要でな・・・」
レオと光一との掛け合いに水を差すように大輔が質問した。
「生徒会長、先程はなんだったんですか?あの熊の一撃を避けるなんて、どんな能力なんですか?」
「あぁ、そのことか。あまり広言はしないでくれよ、一応俺は普通の生徒会長なんだからな。
俺の能力は、『光の奇跡』といって主に光を操る能力だ。
だから、幻影を作るのはたやすいし、光を集中させて目潰しもできる」
「なるほど」
「そうだったの」
大輔と早苗は納得した、なぜあんな余裕な態度だったのかを。
「生徒会長である俺からも一ついいかな?」
「はい、どうぞ」
「君達は、その、魔法少女っていうやつかい?」
光一の質問に早苗が答える。
「私はそうです。魔法少女です。安部君は私の手助けをしてくれる仲間です」
「へぇ、初めて見たよ」
「五光さん、後ろ・・・」
レオは思わず声を上げた。それもそのはず。光一の後ろへ蝙蝠の姿をした魔物が飛来してきたのだった。
「はいはい、蝙蝠だね。そんな慌てなくてもなんとかなる」
光一は指を鳴らす。
次の瞬間、光一に襲い掛かろうとしていた蝙蝠は燃えた。そして跡形もなく燃え尽きた。
「そうそう、俺の能力の特性の一つに周りの情景を頭で捉えることができるというのがあるんだ」
「凄いな」
大輔は思わず呟いていた。
並の魔法少女でさえ、こんな芸当ができるのは多くない。
大輔はさすがリーダーたる人なんだと思った。
おちゃらけた態度はその能力ゆえの自信の表れだと感じた。
「そうだ、小林。他のメンバーはどうなっている?電波が繋がんないから連絡ができないんだが。
『獣王の資格』のお前ならネズミとか使って連絡取れているだろ」
「俺以外各自教室で待機中です。先輩が何もしないから、まだ何もしていないです」
「なら、全員にこう伝えてくれ。周りに気をつけて、生徒会室に集合してくれ、ただし無理なら近くのメンバーと組んでこの魔物を抑えろ、とな」
「はい、その通り伝えておきます。で、俺はどうしたらいいですか?」
「俺についてこい」
「はぁ、わかりました。
ということだから柴さんと安部。俺は先輩といるから」
「わかったわ。後は任せて」
「そっちも頑張れよ」
「あぁ、頑張るよ」
早苗と大輔はレオと別れて先へ進む。
この先に待ち構える『常夜の姫君』を倒すため。