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鬼狩りの魔法少女  作者: ひかるこうら
第1章 『水蛇の女王』
29/123

23話 闇を照らす明かり(1)

 あかりはこう言った。


 「私も魔法少女なの」






 ほむらは呆然とした。


 「なっなんで・・・」

 「ほむらちゃんの言いたいことわかるよ。なんで今まで魔法少女であることを隠していて、今打ち明けたか。そうでしょ?」

 「うっ、うん」


 「それはね、今まではほむらちゃんも魔法少女かわからなかったから。それで今言ったのは、今打ち明けなきゃいけないって思ったの。」


 「今だから・・・・・・?」

 「ほむらちゃんはわかる?この学校に降りた災厄を」

 「!」


 ほむらはあかりの言いたいことが頭に浮かんだ。この学校に大きな力を持つ存在があることを。そして最近、ある少女に憑依して病院を半壊させた魔女の話を。


 「魔女『常夜の姫君』。今まで何度かこの世界に来ては被害をもたらした災厄。私にはわかるの。ただの魔法少女では歯が立たない」


 「なんでそこまでわかるの?」


 あかりは顔を伏せた。

 「ちょっと恥ずかしいんだけどね。私ね、元々たまにふっ、て未来が()えるの」


 「それは・・・・・・」

 「あっ、そんなすごいのじゃなくてね、これから起きることが断片的に()えるだけなの。自分の意思ではできないの」

 「それだけでも凄いじゃない」

 「ありがと、ほむらちゃん」

 あかりは照れ臭そうに頭をかいた。



 「さて、改めて自己紹介するわ。私は後藤ほむら。使う魔法は炎系全般よ。戦うスタイルは基本的に近接戦に持ち込むタイプよ」

 「一ついい?」

 「いいよ。なに?」

 「ほむらちゃんはどのくらい鬼を倒したことあるの?」

 「うーん、あまり数えたことないからわからないけど、100は超えていると思う」

 「すごーい。私なんて両手で数えるくらい」

 「まぁ、私にはいろいろあったから」


 「うん、じゃ私ね」

 あかりはそう言うと右手を胸に合わせた。するとあかりは光り輝き魔法少女のコスチュームに変身した。

 あかりの姿は白いドレスだった。端々にレースがあしらってあり、どこかの舞踏会から抜け出てきたかのようだった。


 「えぇっと、私の名前は九条あかり、ね。使う魔法は光系で、回復魔法が得意なの。だから、あまり近接戦は得意じゃないの。あまり鬼を倒したことないからたまに気絶しちゃうんだけどね」

 「なるほど回復役(ヒーラー)ね。珍しいじゃない」

 「えへへ。もしほむらちゃんが怪我しても治してあげるよ」

 「ありがと」


 「私からも一ついい?」

 「いいよ!なーに?」

 「あかりはいつも誰かと一緒に戦ってきたの?どうやら一人では戦ったことないみたいだから」

 「うん、ほら私って回復役(ヒーラー)じゃない?だから吉野ちゃんと一緒にいたんだ。」

 「吉野ちゃん?名字なのそれ?」

 「ううん。名前だよ、染井吉野ちゃん。もう大学生で忙しいみたいなんだけど、一緒に付き合ってくれるんだよ。でも、ほむらちゃんと一緒に組めるからうれしいな。今度吉野ちゃんを紹介してあげるよ」

 「ちょっと待って。染井吉野って人を知ってるというか、そもそも私の命の恩人なんだけど。」

 「ふぇぇっ!そうなの!そんな偶然もあるんだね」

 「そうね」



 廊下をどこからか入ってきた風が吹いた。二人は互いの姿を見つめあった。

 「あかり。いろいろ積もる話は後でにしましょ。今はコレをなんとかしないと」

 「そうだね。魔女を倒さないとね」

 「気絶なんてしないでね」

 「ほむらちゃんがいるから大丈夫だよ」

 「ふふっ。じゃあ、行きましょ」

 二人は魔女のいる場所を求めて校舎の中を歩いていった。







 ■■■


 それから少しして。

 二人は誰もいない廊下を歩きながら、襲い掛かってくる鬼と呼べるか呼べないか微妙な魔物(ざこ)を倒していた。


 「ふぅ、ほむらちゃん強いね」

 あかりは手に先端に宝石のような玉をつけた(ロッド)の法具を持ちながら言った。


 「あかりも中々戦えるじゃない」

 あかりの右隣りには、ほむらが浴衣から伸びるみずみずしい脚を惜しげもなく剥き出しにし、手には何も持たずにいた。何も持たない手は赤い光を帯びていた。


 「どこにいるんだろう・・・・・・」

 「もっと先にいるんじゃないかしら。

 それにしても他の魔法少女らが見当たらないわね」

 「なんか私達だけな感じがするね」

 「まったくどうなっているn」

 ほむらは不意に声を途切れさせた。何かが近付いている音が聞こえたからだ。


 「どうしたの、ほむらちゃん」

 「何かが来るわ!気をつけて!」

 ほむらは身体全体から力を抜き、攻撃に対抗できるように身構えた。

 あかりは(ロッド)を前にかざし、いつでも回復(ヒール)ができるように準備した。




 カツーンと音を鳴らしながら二人の前に姿を現わしたのは、一人の男だった。

 その男は大きさが180cmくらいで黒いスーツを着こなし、手には白い手袋をはめ、慇懃な態度を取っていた。


 「何者だ、貴様は!」


 しかし、その男はほむらの問いに答えることはなく口を開いた。


 「どうもお久しぶりです、『ガブリエル』を宿す少女さん。名前はたしか九条あかりだったでしょうか?」



 「・・・っ!」

 あかりはその男を睨みつけた。しかし、その男はまったく動じることはなかった。

 「あかり?」

 「ほむらちゃん、これは敵なの。倒して!」

 「わかった。」

 ほむらは深い事情を聞くことなしに右手に炎の剣を呼び出した。


 「おやおや、そんな風に拒絶するのですか。主は悲しんでいますよ。貴女が何の抵抗もなしに着いてきてくれれば危害を加えることはしないとおっしゃっておられます。着いてきていただけませんか?」


 この男は『常夜の姫君』の部下で『オウル』という名を名乗る鬼であった。



 あかりはそれを拒絶した。

 「私はついていくなんてことしない!帰って!」


 そんなあかりの様子を見ながらオウルは笑みを顔に張り付けた。


 「残念ですね。主には死んでいても構わないと言われているので。遠慮なしでいきますよ」

 「いい加減にしてくれないかしら」

 オウルの台詞に被せるようにしてほむらは言葉を吐いた。

 「さっさとくたばってくれない?『業火の嵐』!」


 ほむらはそれまで溜めた魔力を解き放った。その魔力は炎へと形を変え、ほむらの伸ばした右手から吹き出ていった。

 その炎は直線上にいるオウルを焼き尽くしたかのように見えた。


 「『疾』」

 オウルは微かに呟いた。



 そして。

 『業火の嵐』を打ち続けているほむらがいきなり右側にある壁に向かって吹き飛ばされた。そのまま壁は瓦礫の山となった。



 「ほむらちゃん!!」

 あかりは叫んだ。

 しかし、ほむらが埋まる瓦礫はその声に反応することなく沈黙したままだった。


 「無駄ですよ」


 あかりの前には無傷のままのオウルが立っていた。


 「邪魔がなくなって清々しています。さぁ行きましょうか。何も憂いはないでしょう?」



 オウルは微笑を浮かべていた。


 「もうあなたには抵抗するすべがない。ただ在るがままの運命を受け入れるだけです。『ガブリエル』」





*2012.2.4に修正しました。

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