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鬼狩りの魔法少女  作者: ひかるこうら
第1章 『水蛇の女王』
26/123

20話 覆われる闇(3)

 ■■■


 アテネは爆発音を聞くやいなや、立ち上がった。


 「真理!行くよ!」

 アテネは真理の席まで走ってきた。そして真理の腕を掴み教室の外へ飛び出そうとした。


 「ちょっと待て!どこに行くつもりなのか!?」

 真理は堪らずに声をあげた。

 「決まってるじゃない。爆発の起きた現場よ」

 「場所はわかるのか?」

 「・・・行けばわかるんじゃないかしら。あれだけ大きな爆発よ」

 「適当だな」


 近くにいた大輔はアテネに言った。

 「場所がわかった。北校舎の外階段だ!気をつけろよ!」

 「ありがと、安部くん。恩に着るわ」


 アテネと真理の二人は教室の外へ飛び出していった。

 そんな二人を見ていた早苗が一言「大丈夫かな、あの二人」と言った。






 ■■■


 北校舎の外階段。

 それまで人気(ひとけ)のないだけのコンクリート剥き出しの階段だったのだが、すでにそれはひしゃげ、2・3階部分が無くなっていた。なんとか崩壊を免れた校舎にもけして少なくない亀裂が入っていた。ここでかなり大きな爆発が起きたようだった。


 「何が起きたのよ・・・・・・」

 「わかるか?」

 「いや、まだわからない」


 アテネと真理は元:外階段の真下で呆然としていた。これほどまでの惨状になっているとは思わなかったからだ。


 アテネが近付いて調べ始めた。残った魔力を探した。その残り香から何を起きたのかを調べていた。

 真理も何かを見つけようと近付いた時、何か殺気を感じた。

 それが単なる嫌な予感でしかなかったのか、確固たる殺気として感じたのか真理自身わからなかったのだが、本能の赴くままに上体を屈ませると、ちょうど心臓のあった位置をナイフが飛んできた。


 「竜崎気をつけろ!何かがいる!」

 「OK!」


 アテネはすでに魔法少女のコスチュームになっていた。右手には大鎌:グリフィンが握られていた。そのグリフィンはすでに薄ら緑色の光を纏いいつでも攻撃を繰り出せる状態だった。


 「姿を現しなさい!」

 アテネは力を込めて言葉を放った。特に魔力が込められている訳でもないはずなのだが、従わないといけないような力がその言葉にはあった。




 その言葉に答えるかのように階段の上に一人の女性が姿を現した。

 「あら、竜崎さんじゃないの」



 アテネと真理はその現れた人を見て唖然とした。

 「なっ、なぜ河野先生がここにいるの!?」


 アテネの呟きに河野は答えた。

 「決まっているじゃない。貴方達もわかっていて来たんじゃないの?

 法具を狙いに来た魔女が爆発を起こしたって。」

 「くっ・・・河野先生貴方が魔女なのですね。混乱に陥らせるために爆発を起こしたんですね」


 「たしかに私は魔女ですけど、爆発は私じゃないのよ」

 「「えっ?!」」



 「爆発は白鳥さん。知っているでしょ」

 「何があったんですか?」

 「そんな恐い顔しないでよ。せっかくの顔が台なしよ」

 「茶化さないでください」

 「はいはい、簡単よ。自爆したの」


 「はぁ?」

 「まさか」

 「全く焦ったわ。いきなり自爆魔法でしょ。自分の身を守るので精一杯だったわ」

 「白鳥先生・・・」


 「全くショータイムはこれからなのにねぇ」

 「何をするつもりなんだ、河野」

 「君もなのかい、神内君。だいたい君は魔法少女ではないでしょ。特に関係ないんじゃないの。

 今なら見逃してあげてもいいけど。これ以上何もしないっていうならね。だけど、私に歯向かうのなら容赦はしないわ。

 どうする?」


 河野は真理に話を持ち掛けた。竜崎は真理を見ていた。




 「断る」

 「ふーん、理由を聞いてもいいかしら?」

 「理由なんてない。今まで俺らを騙してきた貴様が許せないだけだ」

 「ふふふ。もう覚悟は出来ているということでいいのね」


 河野は手を前に突き出した。

 「『鉄砲水』」


 「真理ぃっ!」

 アテネは思わず叫んでいた。

 河野が正面に立つ真理に向かって攻撃をした。

 河野の手の先から放たれた水の塊は寸分違わず真理の身体に吸い込まれていった。


 普通の人ならば少し触れただけで吹き飛ぶ攻撃。それを真っ正面から受けた真理。


 「はっ!」

 真理は気合いを入れた。その直後、水の塊が手を伸ばす真理を押し潰さんばかりにぶち当たった。

 結果は明白だった。

 真理にぶち当たった水の塊は、真理に触れた瞬間に霧となって消えた(・・・)


 「よしっ」

 「真理!」

 「俺は大丈夫だから奴を叩け!」

 「わかった!」


 今の光景を見ていた河野は呟いた。

 「目の前で見せられると驚くわねぇ」




 アテネはグリフィンを構え河野の向かって飛び掛かった。

 「『二重加速(ダブルアクセル)!』」


 河野の目の前に飛び掛かったアテネは河野の身体をグリフィンで切りつけた。

 しかし、その斬撃は河野の身体に傷をつけることはできなかった。


 「自己加速魔法かしら。なかなかの腕前ね」

 「ちぃっ、『風槍(ふうそう)』展開!」

 アテネは左手に吹き荒れる風を纏う槍を作り出した。


 「これでも喰らいな!」

 「甘いわよ、アテネちゃん」

 河野が指を鳴らすと、アテネの身体は水飴のような糸で縛りつけられた。


 「くっ!」

 「だから言ったでしょ。ショータイムはこれからだって。

 さぁ始まるわ。来るわ…

 It's showtime!」




 河野の声がアテネや真理の耳に届いた瞬間。

 空が闇へと塗り替えられた。

 それまで青く澄み切っていた空が、一瞬にしてその有様を変えた。まるで水が水溜まりに落ちてその波紋が広がるように。

 闇が覆い尽くした。




 「なっ何が起きてるの・・・」

 「ふふふっ。私は今とっても気分がいいから教えてあげるわ。

 あれはこの桐陵高校を覆い尽くす結界、またの名を“谷”。外の世界とは行き来ができないわ。機能を防御にだけ集中させているから誰にでも壊せない」

 「・・・・・・」


 「私はこれから秘宝を取りにいくわ。黙ってる分には手は出さないから。じゃぁね」


 河野はそれだけ言うとどこかへ消えた。






 「竜崎」

 真理はアテネを縛る糸を掴んだ。力を入れるとその戒めは何の造作なくちぎれた。


 「真理・・・」

 「なんだ?」

 「真理はどうする?」

 「決まってる。あいつをぶっ潰すだけだろ」

 「ふふっ」

 「なんだよ、いきなり笑い出して」

 「そうよね、私はあの鬼を倒すためにここに来たんだよね。いかなる手を使ってでも倒す他ないよね」

 「そうだ」

 「一つだけ聞いていい?」


 アテネは真理の目を見た。


 「いくつでもいいぞ」

 「・・・もし私が、私でなくなっても今まで通り接してくれる?」

 「当たり前だろ。竜崎は竜崎のままだ。それ以外の何物でもないだろ。それだけは変わらないだろ?」

 「ありがとね、私の質問に答えてくれて」

 「別にこのくらい。もっとあるのかって思ってたよ」


 「じゃあ、もう一つ」

 「おう」

 「私のこと、どう思う?」

 「へっ?」

 「・・・・・・」

 「・・・・・・」

 「返事は、これが終わってからでいいわ。行きましょ」

 「おい、引っ張るなよ。なんで顔背けたままなんだよ。おい、竜崎!」



 顔を赤くした少女と惚けた顔をしたままの少年は、秘宝を狙う敵へと足を向けることになったのだった。


*2012.2.4に修正しました。

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