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鬼狩りの魔法少女  作者: ひかるこうら
第1章 『水蛇の女王』
25/123

19話 覆われる闇(2)

 ■■■


 爆発音が鳴り響くその少し前のこと。

 河野香は職員室にいた。その日の四時間目の授業は無く、暇そうに緑茶を啜っていた。授業が無く、特にすることがなかった。いや、何もしなくて済むように朝の内に仕事は片付けていた。全ては後のために。



 時間は12時25分を過ぎた時。河野はおもむろに立ち上がり、白鳥教頭を呼び出した。



 「あら、あなたからお昼のお誘いとは珍しいわね」

 「まだ一度もお昼をいっしょに食べたことなかったのでどうかと思ったのですが、悪かったですか?」

 「そんなことないわ。仕事が一区切りついたからいいわ。どこで食べます?」

 「オススメの場所とかありますか?」


 白鳥はそう聞かれ少しの間、頭の中で勧めたい場所をピックアップした。

 「なら、あそこがいいわね。カフェ『Schwan』なら今の時間から開いているし、ドイツ系のパンがおいしいし、何と言っても校舎内にあるからね」

 「そうなんですか。まだ行ったことないので楽しみです」

 「それじゃ行きましょ」


 この桐陵高校は学食が充実しているだけでなく、いろいろな店が学校内に看板を下げている。そのため学校の敷地から出ることなしにその店の商品が買える。

 中にはこの桐陵高校限定の商品を出している店もあり、関係者しか入れない桐陵高校に入らないと買えないという状況が発生する。そのため丘の上に立っているのに毎年受験者が増えているのだ。

 それはさておき。



 白鳥と河野はカフェ『Schwan』に向かった。

 その途中のあまり人気(ひとけ)の階段のところで。

 「あっ」

 「どうしたの?河野先生」

 「ちょっと忘れ物したので、少し待っててください」

 そう言うなり、河野は階段を上って行った。



 「ふぅ」

 白鳥は階段の外から見える景色を漫然と見た。ここのところ忙しかったのだ。桐陵高校の教頭としての仕事や、元魔法少女としての仕事で。

 竜崎が転校してくる理由の一つに、この桐陵高校に隠された法具を求める鬼の上位個体である魔女を退ける目的がある。

 どういった魔女なのか、どのようにやって来るか、そういった情報を集め分析するのが白鳥の仕事だ。また、法具を隠す結界を貼ったのも白鳥の功績だ。

 そのため白鳥はほとんど休むことさえ出来ていなかった。いくらすでに人でない存在なのだが、かなり疲れていた。


 (この件が終わったら2、3日休ませてもらおうかしら)

 そんな風に白鳥は考えていた。




 次の瞬間、白鳥は猛烈な痛みを覚え、下を見ると、自分の腹から刃物が突き出ているのが見えた。


 「あぁっ、がはっ」

 空気を吸おうとすると激痛が白鳥を襲った。腹から力が洩れでていくのがわかった。本来なら抜かない方が良いのはわかっているが、あまりの激痛に、腹に埋まっている刃物を抜こうとした。

 しかし、その刃物は生物であるかのごとく腹に生えていて抜けなかった。



 「無駄ですよ。それは私の魔力で造られたものなのですから。あなたの魔力使用を封じているのだから」

 白鳥が声のした方を見た。そこには河野が立っていた。



 「何を・・・・・・」

 「もうわかるでしょ。私がこの学校に眠る法具を頂きに来ました、『水蛇(すいだ)の魔女』です。かねがね貴女様の伝説は伺っておりますよ、『胡桃割り』さん」

 「くっ・・・」


 白鳥は痛みと状況の劣悪さに顔を歪めた。まさか魔女が学校内に潜り込んで教師をやっているなんて想定がつかなかった。


 「もう少しで始まりますよ、ショータイムが。楽しみにしててくださいよ。もっとも貴女は見ることは出来ないのですがね」

 河野は地べたに這いつくばる白鳥をピンヒールの踵で踏んだ。白鳥から血が流れ出て水溜まりを作った。


 「がぁぁっ!」

 「ははっ、見る影もないですねぇ。

 もう終わりですよ。さようなら」

 「あぁぁぁぁぁ!」



 白鳥は最後の力を振り絞って魔法を起動させた。

 その瞬間。


 辺りが真っ白に染め上がり、轟かす爆発音が鳴り響いた。


*2012.2.4に修正しました。

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