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鬼狩りの魔法少女  作者: ひかるこうら
第1章 『水蛇の女王』
22/123

17話 喫茶店で一息

 ■■■


 「さて」


 ここは校舎の裏側に位置する、通称“憩いの空き地”。上山・フラジール・ユーコとの戦いの後。空は夕陽で橙色に染まっていた。




 「とりあえず『アゲトビレッジ』に行こうか?」

とアテネが言った。


 「そうね、行きましょ」

と早苗が言った。



 「いや、先にスーパーに行かないと特売が・・・」

 と真理が言うものの

 「「いいから着いて来る!」」


二人の一喝に真理の意見は封殺されたのだった。






 ■■■


 「そういえば大輔はどこにいるんだ?」

 「まだあそこにいるんじゃないかしら。さっちゃんが行った後、『俺がここにいるから早苗と真理のこと見てこい。厄介事に巻き込まれるから。』って言っていたし」

 「大輔らしいセリフよね」

 「あぁ確かに・・・ん?」



 真理は何かに気がつき目の前を凝視した。

 「どうしたの?真理。」

 「あぁ、いやあそこに俺の母親がいるように見えて、な。

 あれ、見えなくなった」


 「真理のお母さん、結構忙しい人だよね。」

 「忙しいっていうか、なんだろうな。よくわかんない人だ」

 真理はそう答えた。


 あと少しで『アゲトビレッジ』に着く。





 ■■■


 喫茶店『アゲトビレッジ』は、商店街の場末の、住宅地と接した位置にある。

 その上、店は普通の2階建ての木造家屋で、さりげなく上に看板をぶら下げているだけで、知っていなければそこが喫茶店だとはわからない。

 そのためこの店には常連客しか来ない。たまに雑誌を片手に来る観光客もいるが。


 この店の看板メニューはチーズケーキだ。チーズの香りがあまり強くなく全体的にすっきりとした味わいになっている。

 重くなく、値段がお手頃なため、来る客のほとんどが来る度に頼んでくるほどだ。

 たまに雑誌にも取り上げられる。





 「おっ!来たか」

 店の奥に大輔が座っていて、声をかけてきた。

 ちょうどこの夕方の時間は客が少なく、大輔の他誰もいなかった。


 「待たせたな、大輔」

 「おう、無事だったか?災難だったな、まさか上山(かみやま)が鬼だとは思わなかったな」

 「あぁ、早苗と竜崎のおかげでなんとか無事だ・・・ ちょっ待て。なんで俺が危ない目にあったのか知っているんだ、大輔?見てたのか?」


 大輔はにやにやしながら首を振った。

 「だって俺はずっとここにいたんだぞ」

 「じゃあどうやって・・・」

 「私も気になるわ。教えてくれる?」


 大輔は間を取り、そして話し始めた。


 「そう、前に俺は協力者(サポーター)だって言ったよな。竜崎さんは知っていると思うが、一人の少女が魔法少女になる時に、その少女は誰でも一人だけ自分を支援してくれる人を選ぶことができる。その人は魔法少女には到底敵わないが力を手に入れることができる。これが協力者(サポーター)だ」


 「確かにそんなことも言ってたね・・・まぁ、私はその時独りだったからね」


 「そうだったんだ、竜崎さん。で、俺は早苗の協力者(サポーター)となった訳だ」


 「つまり協力者(サポーター)能力(ちから)かな?」

 「さすがは竜崎さん。真理、着いて来れているか?」


 真理はやや疲れたように言った。

 「なんとかな・・・」



 「で、俺の手に入れた能力(ちから)は式神を行使すること、これだ」


 「「いや、そんなドヤ顔されても・・・」」


 「・・・」

 大輔は悲しい目をしていた。


 「で、その式神で私達の様子を見ていたという訳ね?」

 「そうだ。俺は目を閉じることで、式神の目とリンクすることができる。

 だから式神を飛ばしさえすれば様々な景色を見ることができる、そういう訳だ」


 「大輔・・・変なことには使ってないだろうな?」

 真理が尋ねた。




 「・・・そんなことしてニャイ」

 「「あっ噛んだ」」

 「・・・」


 「大輔のことだから覗きとかしてるんでしょ?」

 「もういいだろぉ早苗ぇ~勘弁してくれ。はい、違う話」


 大輔の下手な話の切替に3人は苦笑しながら許した。




 「今回の鬼なんだが、なんか様子が違うように思えてな。実際戦った感想はどうだ?」


 「そうね、私から見たらかなり強く感じたね。あれだけの力は久しぶりに見たね。あーちゃんは?」

 「・・・・・・」


 アテネは何か考え込んでいるようだった。

 「どうしたの?あーちゃん?」

 早苗が尋ねるとアテネはやっと顔を上げ答えた。

 「上山はただの鬼なんかではなかった。あれは魔女だった」

 「「「!?」」」

 3人は思わず息を呑んだ。


 「魔女って竜崎が追っている奴だろ。」

 「やっぱりこの地域にも魔女がいたのね・・・」

 「だが、今回倒したんだから・・・」

 3人はそれぞれの反応を示した。

 アテネは言葉を続けた。

 「だけどあれは私が追っている魔女じゃない。上山はまだ成り立てだった。

 これからが問題よ。魔女(ほんめい)があの桐陵高校を襲ってくる」


 「「「・・・・・・」」」


 「私は隠された秘宝を奪われる訳にはいかない。そのためにここに来たのだから。奪われないためにどんな犠牲を払ったとしてもいいって思っていた。例え学校の生徒が殺されたとしても。

 そうだったんだけど、あなたたちに会って目的が少し変わったわ。魔女(ほんめい)は秘宝を手に入れるためなら学校を本気で潰しに来る。だけど私はこの場所を荒らされることを防ぎたい。

 そのために手伝ってくれる?」

 アテネは3人に聞いた。


 「もちろんだぜ、何を言っているんだ竜崎さん。手伝うのは当たり前じゃないか」

 「そうだよ、あーちゃん。この地域を荒らす魔女なんて見逃す訳ないじゃない」


 大輔と早苗の二人はそう答えた。



「・・・力になれるかわからないが俺のできる限り手伝ってやる。心配するな、竜崎」

 真理はそう答えた。



 「ありがと、みんな」





*2012.2.3に修正しました。

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