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鬼狩りの魔法少女  作者: ひかるこうら
第1章 『水蛇の女王』
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13話 事件の収束

 その後、生徒の誰かが呼んだらしい先生達がやって来て事態の収拾にあたった。怪我している生徒を保健室や病院に運び、倒れ壊れた物を片付けた。事件の当事者である塩田は気絶しているため様子を見るという目的で保健室に送られた。


 事件を目の当たりにしていた真理達はさっさと引き上げた。事情を話しても面倒なことになるからだ。

 そして、始業のチャイムが鳴ったが真理達は自分達の教室に戻らなかった。その日の授業は全部自習になっていた。




 アテネと真理、それにレオを加えた三人は屋上にある大きなテラスまで来た。

 アテネはガラガラに空いたテーブルの中から一つ選び、4つある椅子の内1番下から上がってくる階段に近い方に座った。脚を組んで。

 「真理、小林くん座って」

 アテネの話し方は他のクラスメートに対してのそれではなく、真理に話し掛けるくだけた話し方だった。

 真理はアテネの言動に何かを感じすんなりと、レオは断る理由がないためしぶしぶと座った。


 「小林くん、取引しない?」

 アテネはいきなり持ち掛けた。

 「・・・・・・」

 レオは押し黙ったままだ。

 「君が能力者だというのはもうわかっている。その能力(ちから)について話してくれれば、皆には黙っていてあげるわ。どう?」


 レオはしばらく黙り、おもむろに口を開いた。

 「まさか竜崎さんにこんなこと言われるとは思わなかったけどねぇ。何が目的なんだい?」


 アテネは口元を緩ませ言った。

 「目的ね。そんなの簡単よ。貴方を仲間に引き入れたいのよ」

 真理はアテネがこんなところに来た意味を知った。このテラスは昼時には人が集まるが、今この時間は人一人来ない。つまり他人に聞かれてはマズイことを話すにはもってこいだ。そしてこのテラスの出口は一カ所しかなく、それは階段だ。階段に近い席にアテネが座ることで逃亡を阻止することができる。

 そして何よりテラス故の開放感だ。普段話せないこともこの雰囲気のために口が緩むだろう。

 アテネはそれらを計算してこの場所を密談の場所に選んだのではないか。


 「あまり時間がない。いつどこでこの学校が敵に襲われるかわからない。そのためにも仲間が必要なの」


 レオはニヤリと笑った。

 「なんだ面白そうじゃないか。いいぜ、力になれるならやってやろうじゃないか」

 「交渉成立ね」


 アテネは脚を組み直した。隣に座る真理にはその様子がよく見えた。スカートからのびる綺麗な脚がするりと動く様子を。

 ・・・真理は鼻から何かが出そうになるのを押さえた。



 「で、小林くんの能力(ちから)は?」

 「レオでいいぜ。

 で、話してもいいんだが、先に竜崎さんは何者が教えてくれないか?」

 「いいわよ、レオくんも聞いたことはあるかも知れないけど魔法少女って知ってる?」

 「やっぱりか、その話か。道理でなるほどな。

 ・・・さっきの質問に答えるならYESだ。よく知ってる。」

 「後は言わなくてもわかるね」

 「そうか、わかった。で、真理は?」


 レオは真理を見た。

 「俺には魔法やそんなものをまとめて弾く力を持ってる。だけど、」

 「真理は能力者ではない。SAS(サス)(→超能力者協会のこと)に問い合わせたけど、どうやら違うみたい」

 真理の言葉を引き継ぐ形でアテネは言った。


 「へぇ、凄いじゃないか。さて、俺の能力(ちから)について話しますかな。

 俺の能力(ちから)は、分類では愛獣飼育(アニマルテイミング)なんだが、俺のは中でも特筆していて獣王の資格(アニマルミッショナリー)なんだ」

 「さっきのはその能力(ちから)ね」

 「そうだ、これは一度触れたことのある動物に効果がないが、動物と会話ができたり呼び付けたりできる」

 「なるほど・・・」

 「あまり戦闘とかには向かないけどな」

 「だけど情報収集に向いている。違うかしら」


 テラスに6月にしては珍しいからりとした風が吹く。


 「そこまでわかるのか」

 「話と様子で大体わかるよ。たぶんうまく使えば試験も良い点数を取れるんじゃない?」

 「たしかにそうだよな、ネズミとかに他の人の解答用紙を見させてとかか。でもネズミとかが解答用紙の中身を理解できるのか?」

 真理もそれに自分の意見を乗せる。


 「そうかその手が合ったか!いやーその発想はなかった」

 レオがその話に心底驚いたかのようにした。

 「いろいろと応用の余地がありそうね」




 ■■■


 塩田は目を覚ますなり、自分がカーテンで区切られたベッドに横たわっていることに気付いた。そう、塩田がいる部屋は学校の保健室である。

 (そうか、僕は人前でチカラを解放しちゃたんだな。はぁ・・・)


 するといきなりドアが開き、一人の生徒が入って来た。

 「やーやー、気が付いたかい?塩田君」

 入って来た人物は塩田が知っている人ではなかった。ただどこかで見たことはある気がしていた。その人物が誰なのかはわからなかった。

 「あぁ、俺様かい?俺様の名前は、五光光一(ごこうこういち)、この学校の生徒会長なんだ。さぁ敬うんだ。ハハハッ」


 そう、このおちゃらけた彼がこの桐陵高校の生徒会長である。塩田にとって先程感じた感覚は、相手が生徒会長だからであった。


 「一ついいですか?」

 「なんだい、迷える塩田君よ?」

 「なぜ生徒会長が直々に来られたのですか?」


 すると五光は鼻で笑いながら言った。

 「なんだそんなことかい。君に用があるからだよ。そのサイコキネシスのね。もったいないじゃないか。せっかくの能力(ちから)をね、こんな風にするんじゃなくてさ、発揮できるところに身を置かないと」

 「ど、どういうことですか!?」

 「君さぁ、まだどこにも所属してないでしょ」

 「はぁ?所属って何のことですか?」

 「青いね~、別にいいよそういう反応。言い方を変えよう。

 君のその能力(ちから)を活かしたくないか?」

 「・・・たしかに活かせれば活かしたいですけど」

 「とりあえず詳しい話でも聞いてそれから考えてくれればいいからさ。それでどうだい?」

 「わかりました。話聞きます。それからその・・・」

 「そうそう俺らの組織の名前を言っていなかったね。

 ようこそ、TEATRO(テアートゥロ)へ」





 「・・・そうだ、大事なこと忘れてたな。先程君が起こした事件は揉み消しておいたから大丈夫だ。」

 「なんで先に言わないんですか!」

 塩田は思わず五光に突っ込んだ。

 「キレがいいねぇ~期待しているよ」




*2012.2.3に修正しました。

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