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鬼狩りの魔法少女  作者: ひかるこうら
第1章 『水蛇の女王』
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9話 アテネと真理

 真理とアテネは帰る道すがら、近くのスーパーに晩御飯の材料を買いに寄った。

 そのスーパーには、けして多いとは言えないほどの客がいた。客のほとんどがおばさん達である。

 そんな中二人で食材を選んで歩いている姿は、まるでカップルのように見えた。


 そんな二人は店内で、

 「なんでウインナーとか入れてるの!?まだ家にあるじゃない!」

 「だって今日だと、三割引きなんだぞ!買うしかないじゃないか!」

 「だからって一気に10袋も買う人いる!?」

 「いや、いくつあっても足りないだろ」


 わいわいがやがや


 そんな二人は周りの視線に気付くことなく買い物をした。





 ■■■


 そして、夕食を食べ終え、真理はアテネとテレビを見ながら今日の話をした。

 「どうやって短時間の間に学校に転入できたんだ?」

 「答は簡単よ、先生の中に私の知り合いがいたの」

 「えっ?」

 「たぶん早く用意できたのは、教頭の白鳥さんよ。

 あの人、元魔法少女で私にいろいろなことを教えてくれたのよ。

 最近会ってなかったけど、昨日頼みに行ったら、すぐに用意してくれて」

 「早過ぎだよ、それ!なんで手続きを一日かからずにやれてしまうんだよ。

 つーかあの人までも魔法少女だったんだ・・・」

 「正確には、“元”よ」

 「魔法少女に“元”もあるのか?」

 「体力などの理由で、直接は戦闘はしないけど現役の支援をしてくれるのよ。

 何度手伝ってもらったかな」

 「へぇー」


 真理の一つの疑問が解けた。

 なぜ、白鳥先生がいきなり自分を見に来たのか。

 竜崎が自分の名前でも出したのだろう。


 「あの学校に魔法少女がいるなんて今でも信じらんないぜ、なんていったって今の今までそういうのと無縁だったからな」

 「そうね」


 「そうだ、コーヒーでも飲むか?インスタントしかないんだけど」

 「ありがたく頂くわ」

 そして夜は更けていく。



 「そういやさ」

 「何?」

 「戦う時に竜崎ってあの大振りの鎌を出すじゃないか」

 「うん」

 「他の魔法少女もなんらかしらの武器を持っているのか?」

 「そうね、中には武器を使わない人もいたね。そもそも、魔法少女の武器には2種類あってね。

 一つは魔力を使って武器を一から構成するやり方。これは成り立ての人とかがよくやるわ」

 「あぁ、なんか魔法少女らしいっていうか」

 「ふふ。で、もう一つは、法具っていう物ね」


 真理は夕方の大輔が言っていた話を思い出した。

 「魔力を注ぐと特定の効果を発揮するものだっけか?」

 「良い説明ね、誰が言っていたの?」

 「あぁ、大輔が教えてくれた」


 「安部くんもなかなかね。

 そう、法具を武器として使う利点は、一から構成するよりも必要な魔力が少なく済むし、強度も火力も上なのよ。ただ入手するにはある程度強くないと手に入れられないから。持っているということはある種ステータスなのよ」


 「そうだったのか、魔法少女が皆が皆持っているのかと思ったよ」

 真理は話しながらあることに気付いた。


 「竜崎、その鎌の名前、グリフォンじゃなくて、“グリフィン”なのか?」

 「グリフォンはフランス語、グリフィンは英語読みよ。だから使っている言語による違いだけで大差はないんだけど、たぶん真理が考えているのとは違うわ」

 「じゃあどう違うんだ?てっきり鷲獅子グリフォンの呼び間違えかと思っていたんだけど・・・ってフランス語と英語の違いだけだったのか」


 するとアテネは手に持っていたマグカップをテーブルに置き、座り直した。

 「グリフィンっていうドラゴンがいて、その力を中に持っているのが“グリフィン”よ。

 正しくはそのドラゴンの名前は、碧鰭竜グリーン・フィン・ドラゴンよ。かなりの強さを誇るわ」

 「そんなのがいるのか・・・?」

 「さすがに街とかには滅多に出て来ないけど辺境とかにはいるわ。

 一般人からは視認が難しいから、竜巻とか雪崩とか災害と考えられているね。本当はそういった奴らのせいなのに。一般人には公開してはならないことになってるけど」

 アテネの言葉の最後は愚痴になっていた。過去に何かあるようだった。

 

 「そういったのは知らぬが仏なんじゃないのか?そういった災害の正体がドラゴンでしたっていわれても困るだけだし。自然現象によって被害に遭うのなら諦めがついても、ドラゴンとかの化け物が暴れたせいですっていわれたら“なんで私達が”ってなるだろ。

 だから一般人は知らなくていいんじゃないか?そういうのを知っていて退治するのは専門家でいいんだよ」

 「そうなのかな」

 「そうなんだよ」

 「ふふっ、真理っておもしろいね」

 「いきなりなんだよ。そーいやさ、昼の話の続きだけど、学校に魔女がいるって本当か?かなり恐いんだけど」


 「もちろん、いるわ。だけど、私が消し去る」

 「頼もしいな、さすが竜崎だ。で、俺は一応何に気をつければ?」

 「そうね、あまり一人にならなければ大丈夫だと思う。

 とりあえず奴らが気付いているかはわからないけど、真理は一応普通の生徒とは持っているモノが違うから気をつけてね」

 「なんかそう言われると照れるな」

 「人がせっかく心配しているのに。ふん」

 「すまん、すまん。悪かったって」

 「もう許さないんだから。もう、寝るわ」

 「へいへい、おやすみ」

 「おやすみ」


 パタパタとスリッパを鳴らして2階の寝室に行くアテネ。

 そんな姿を見ながら真理は誰かに聞かせるわけではなく呟いた。

 「竜崎が俺のことを“真理”って呼んだのか。なんか良いな。

 このまま済めば良いんだがな。

 何か失いそうな気がする。嫌な感じだな」

 真理は心のどこかで悪い予感を感じとっていた。



 果たして未来がどうなるかなぞ、誰にもわかる訳がない。

 わかるのは神だけである。







 ■■■


 そこは夜の森。生きとし生けるものが眠る丑三つ時。森自体が眠っていた。静寂の世界が広がっているのだった。

 その静寂の中、一人の少女が歩いていた。白いブラウスに裸足で歩いていた。ブラウスの裾からは何本ものチューブが垂れ下がっていた。

 彼女が歩いて来た方には大きな病院がある。どうやらそこから歩いてこの森まで歩いて来たようだ。


 彼女の周りには蝶が舞っていた。彼女はそれでいて異様な雰囲気を漂わせていた。人が見たら身がすくむような。


 彼女は森の中心にある大きな木の根本の前で立ち止まった。どうやらここが目的地のようだ。

 その大樹は太古の昔からそこに在りこの森を支えてきた。それでいて精気を蓄えていた。


 「では少し戴くとしよう」

 少女はか細い声で、それでいと妖艶な声色で言った。

 そのまま少女は大樹の中に消えていった。



 ここは人の喧騒から少し離れ人から忘れられた場所、『常盤ときわの森』。


 その夜に近くにある病院で首筋に傷痕がある死体が何体も見つかり、患者が一人消えた事件が起きた。

 それでもこの森は静かであるのだった。


*2012.2.3に修正しました。

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