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鬼狩りの魔法少女  作者: ひかるこうら
第3章 『破壊を呼ぶ魔法少女』
118/123

19話 切り裂く刃

 ■■■


 神影を前にして、アテネはきつく睨み付ける。明らかに神影の態度に敵意が込められていたからだ。


「あぁ、殺したりはしないからさァ。そこは安心して」

「……」

「何の用があるんだ」


 口をつぐんだままのアテネの代わりに真理が尋ねる。


「んーなんて言えばいいのかなァ、殴り愛?」

「おい」

「まぁ返事はどちらにしたって一緒だし、ね!」


 神影はいきなりしゃがみ込み地面を打擲する。魔力を込められた打擲は地面を揺らし、的確にアテネと真理の下を爆発させ、近くの公園の方まで吹き飛ばした。


「ははァ! これぐらいで死にはしないよねェ」







 足元からの爆発。

 アテネは爆発の勢いを風魔法で殺し、真理の体を抱きかかえたまま公園の砂場へ着地する。いきなりの攻撃で驚きはしたものの瞬時に判断し魔法を使うことができた。アテネは自分の体が十分に動くを確認し、真理の体を地面に降ろす。真理はアテネに支えられながら自分の足で立ち、アテネの前に体を盾にする用に構える。真理の体の魔力は真理の意志を受けて滑らかに循環し、隣のアテネの魔力を活性化させる。


 アテネは今は無きグリフィンの代わりに手刀を前に構え、魔力を体中にかき集め魔法の展開を行う。姿は魔法少女のコスチュームに切り替わり、速く動けるように自己加速魔法『龍脈の羽衣』を、最初から全力の力を叩き出すため禁術『竜の力(ドラゴンソウル)』を展開させる。アテネの瞳は金色の染まり、体には風を纏う。



 アテネと真理の前に、魔法少女のコスチュームを纏う神影が飛び降りてくる。両手には何も持っていないが、神影の頭上には周りの風景を歪ませる無色透明の球体が5つ浮いていた。消滅の力が込められた魔法が神影の意志に従ってすぐさま発射できるような砲台がそこにあった。


「さて、とりあえず殺し合い、しよっか」

「っ!」


 神影は頭上の球体から消滅の魔法を撃ち出す。弾丸のように消滅の魔法が撃ち出され、アテネ達に殺到する。その弾丸の数、20。それ自体には色がなく、周りの空気を歪ませることでかすかに輪郭が透けて見える程度で、高速で動くそれを見切るのは難しい。しかし、それを真理は芽婀の夢の中で使えるようになった、魔法の表面を凍結させることのできる力『デモンマクスウェル』で対抗する。真理が腕を突き出した先の魔法弾がびしりと固まり、中の魔力と外圧に耐え切れず砕け散り魔力の爆発を起こす。それがいくつも連鎖的に起こり、無理矢理消滅の魔法を無効化する。そうやってできた隙を、アテネは飛び回り神影へ急接近する。神影まで手が伸びる距離まで近づいたアテネは神影の首元を狙って魔力強化された手刀を振り下ろす。

 神影はそれを体を沈み込ませて狙いを逸らし、近づいたアテネの胴元に肘を叩き付ける。


「ぅぐぁああ!」

「きひィ、まだまだまだ甘い甘い甘いねェ!」


 神影は片手を掲げる。魔力が集まり、そこに白く光る斧が現れる。


「我、手にする刃にて結果を早急に導かん! 『滅斧(めっふ)』! ほら、そっちも武器を出しなよ」

「武器は、この手だけだ!」

「へぇ? この前の時使ってた鎌はどうしたのォ? なくしちゃったのォ?」


 アテネの手刀と神影の『滅斧(めっふ)』がぶつかり、魔力の小爆発が起こる。神影の『滅斧(めっふ)』の勢いが優り、アテネが押され後退する。追撃を加えようとする神影に真理が拳を振り上げ突進してきた。


「甘いよ。ちょっと力を手にした“一般人”が戦上に現れちゃ」


 神影は狙いをアテネから真理に移し、ためらいなく『滅斧(めっふ)』を横薙ぎに振るう。消滅の力を凝縮して作り出された斧は触れたものを消滅させる。そんな斧に向かって真理は拳を突き出した。

 真理の拳と神影の『滅斧(めっふ)』はがきんと鈍い音を立ててぶつかり合い、『滅斧(めっふ)』をまるで紙を引き裂く様に真理の拳が突き出された。神影は真理の攻撃に目を見張り、すぐさま『滅斧(めっふ)』を手放し後退する。神影の手から離れた『滅斧(めっふ)』は真理の拳に引き裂かれ、その形を歪ませ消滅した。神影はその光景が滑稽に映ったようでからからと笑い声を上げる。


「“一般人”じゃなかったか。これはこれは珍しいね、男なのにまるで魔法少女みたいな魔力パターンか。キミはいったい何者なんだい?」

「竜崎アテネの協力者(パートナー)だ、俺は」

「いやはや、イレギュラーが多すぎて話にならんね」

「俺もお前がなんで襲ってくるかわからない。アテネ!」

「いくよ」


 真理の後方でアテネは魔法を構築していた。通常の詠唱では時間がかかりすぎるものだが、真理が前に出て時間を稼いでくれる今なら十分使える代物を、今構築し終えた。


「唸れ、我が血肉。敵を喰らい尽くせ! 『竜魔砲(ドラゴマキナカノン)』!!」


 アテネの足元には真っ赤に染まる魔法陣が描かれ、アテネの伸ばす両手の先に魔法陣に描かれた線と同じ色の光が集まりちかちかと明滅していた。照準を合わせ、アテネの言葉で右に避けた真理の姿を確認したアテネは魔法を解き放つ。鮮血のような光がまっすぐ、射線にはいる者を全て喰らい尽しながら神影へ飛んでいく。瞬く間に神影へたどり着いた『竜魔砲(ドラゴマキナカノン)』は防御する神影をごりごりと削る。神影の消滅の力を込めた魔力結界と拮抗し、少しずつ削り取っていく。圧倒的に神影が不利な状況だが、それでも神影は涼しげな表情で受け止めていた。


「やれやれ、竜崎アテネ、キミのことも少し見誤っていたようだ。君は期待外れだ」


 がちりと神影の手元から音が鳴り、『竜魔砲(ドラゴマキナカノン)』が掻き消される。


「あっ!」

「なっ!」

「やれやれ、私が君たちを過大評価し過ぎたのかな。これじゃあ大した障害にもならない」


 神影はやれやれと首を振る。


「君たちはこの世界で何が起きているかさえ知らないんだろう?」

「……鬼の暴動」

「いいや、違う。そうじゃない。だから君たちは間違っているんだよ。そもそもなんのために戦っているんだい? 高尚な目的でもあるのかい?」

「鬼を倒す、それが魔法少女の使命じゃないのかしら?」

「ふはははァ、そういえばそんなお題目もあったねェ。そうじゃないよ、わたしが言いたいのは」


 神影はそう言葉を区切り、アテネと真理にこう告げた。


「天使と鬼が戦争を起こそうとしているんだ。まさしくこの世界が滅びようとしているってね」



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