7話 桐陵高校のアテネ(2)
アテネと大輔と早苗は互いに簡単な自己紹介して一行は学食へと向かった。
学食には食事を求めている生徒で溢れていたため、学食でパンを買い中庭で食べることになった。
さすがに中庭は空いていて心地好い空間だった。
パンを食べながらまず先に口を開いたのは早苗だった。
「竜崎さん、さっきまで大変そうだったから聞かなかったけどいくつか質問しても良いかしら?」
「はい、どうぞ」
早苗は少し考えて言った。
「正確に、いつこっちに来たの?」
アテネはクラスメイトの前には一週間前と妥当な日にちを言っていた。
「正確には二日前です。何か問題でも?」
すると早苗はじっと見つめながら言った。
「別にどうってことじゃないけど。竜崎さん、本来通りの話し方で話していいですよ。隠し事は詮索しませんから」
すると、それまでお嬢様キャラだったアテネの雰囲気がいつもの通りになった。
「いやぁ参ったわね。そんなに変だったかしら」
「他の人からしたら何ともないと思いますよ、竜崎さん」
「別に『竜崎さん』って畏まった言い方しなくていいよ。私のことはアテネで。あなたのことはなんて言えばいい?」
「私は早苗でいいよ、アテネちゃん」
「やめてよ、ちゃん付けはなんかくすぐったいんだけど、早苗ちゃん」
・・・いつの間にかアテネと早苗は打ち解け合っていた。
真理と大輔は仲間外れにされているようだった。
「あのーなんかキャラが変わってしまった竜崎さん・・・どういうことなんだ、真理?」
「俺だってあんまり竜崎のこと知らないぜ。
いきなりこの学校に入ってきて・・・どういうつもりだ、竜崎。
自己紹介の時、いろいろと嘘八百言っていたが。だいたい好きなものケーキじゃなくて煎餅だろ」
「いきなりで悪かったわね、こっちだっていろいろあるんだから仕方ないでしょ。
あの自己紹介だってまるっきり嘘だって訳じゃないわ。
あれも、この学校での最適なキャラ作りの一貫だし」
「・・・?どういうなの、あーちゃん?」
と早苗。
「別にあーちゃんでもいいけど。
どういうキャラかっていうと、他のクラスメイトからはなかなか干渉されずに必要なときに動きやすいキャラのこと。
一見派手な感じだけど没個性的」
「・・・なんか凄いこと言っているようだが、竜崎さん」
と大輔。
「真理、一つ聞いていい?」
「あぁ、なんだ?」
「早苗ちゃんと安部くんって信頼置ける?秘密事を隠してくれると思う?」
「当たり前じゃないか。二人とも幼なじみだし、早苗はしっかりしているし、大輔はこう見えて口固いからな」
すると、アテネは3人を見渡しながら言った。
「なら、ここだけの秘密にして置いて欲しいんだけど。
・・・私はある目的があってこの学校に入って来たの、あるモノを追って」
「っ・・・!」
真理はそのモノに心当たりがあった。アテネの本業は魔法少女だ。つまり・・・
「そうか、あーちゃんも私と同じなのか。それなら納得がいくわ」
「「えっ!?」」
アテネと真理の声がハモった。早苗が何を言っているのかがわからなかった。
「ちょっと俺のことを置いていかないで欲しいんだがな。えっと竜崎さんが早苗と同じ魔法少女って訳か?」
「「はぁっ!?」」
なぜ二人してアテネが魔法少女ということを理解したのか、真理とアテネにはわからなかった。
二人とも魔法少女を知っているということだ。
「あれ?真理知らなかったの?私は魔法少女だよ(キラッ」
「おいおい気付いているかと思ったよ、真理」
「いつからだよ、早苗。」
「中学2年の初め頃かな、確か。」
「正確には、2年前の7月だぞ」
「で、大輔はなんなんだよ!?」
「で、安部くんはなんなのよ!?」
また、真理とアテネの声がハモった。
なんなんだ、この展開。
「あぁ、俺は早苗の協力者だ(キリッ」
「まったく何なのよ、真理。
魔法少女関係ですでに二人の知り合いがいるなんて。目的の一部が終わったけど。」
「知らなかったんだって。
つーか魔法少女の協力者ってなんだ?」
「よくぞ聞いてくれたな、真理。
協力者っていうのは、簡単に言うと魔法少女の仕事を助けるってことだ。
例えば谷の位置の確認とか鬼の接近とかの察知、後は戦いの支援だ」
「へー」
真理はいきなりの話についていけなかった。
「で、肝心の魔女に関しての情報は?何かわかってる?」
「いや、まだほとんどわかっていないわ。この学校にいて、まだ活性化していないってことしか。」
「うーん、やっぱり調査が必要ね」
「そうだね」
「ちょっと竜崎。魔女ってなんだ?鬼の一種か?」
「魔女っていうのは、女の人の形をしている強大な力を持った人鬼よ」
「そうなのか」
「あぁ、もう少しで昼休みも終わりね。この話はまた放課後にね、あーちゃん。
クラスのみんなには内緒だよ(キラッ」
「もちろんよ」
そして真理達4人は教室に戻った。
*2012.2.3に修正しました。