小話 同族殺しの神影
水深無限風呂さんより頂いた小話です。これを読むと新キャラ神崎神影がよくわかります。文体が違うのは仕様です。
それではどうぞ。
《同族殺しの神影》
人は学ぶ生き物だ。
だけど、痛い目を見なくちゃ学ばない。
人は変われる生き物だ。
だけど、絶望しなくちゃ変われない。
人は恋する生き物だ。
だけど、憎しみと愛は同義だ。
人は考える生き物だ。
だけど、考えるのは不幸に陥った時だけだ。
なんて。
歪みに歪みきった考えは、わたしの中での正論。だけど、わたしに近しい人間は心の一部が何処か壊れているんだ。……故に仕方がない。多くの者は、その壊れた心の一部を他人で覆ったり、意識を変えることで紛らわしたり、そもそも認めなかったりと、様々な方法で隠し通そうとする。……だけれど、わたしから言わせれば、ただの徒労なんだ。
だって、世界には正義と悪しかなくて。
だって、正義は傲慢で推し付けがましくて。
だって、悪は夢想に囚われて、幼稚で愚かしくて。
……どこにだって、見栄を張る必要はない。素直でいい。
誰がわたしを否定する? 全世界の全人類か?
誰がわたしを肯定する? 全世界の全人類か?
なぜ、そんなことを考えなくてはいけない? 人類に認められて、何がある?
勘違いしていないか、人の命が高尚なものだと。人の存在は重いものだと。
所詮、野生生物の一端が何をほざく。
お前らなんて、ただの雑草と同じだ。
勘違いしていないか、自分が世界の中心だと。自分は誰かに愛され、興味を持たれてると。
所詮、本能に縛られた下劣な存在が何をほざく。
お前らなんて、傷を舐めあう犬畜生だ。
なんて。
自分で思い直してみて、大分歪んでいるとは思うし、歪だとも思う。
そもそも、わたしがこうなった要因は中学一年の春にある。今更思い返してみれば、何ともないことだし、よくあることだし。特にわたしに近しい人間には同じ体験をした奴も多いらしい。
だけど、わたしの場合、残念ながらわたしの心は弱かった。弱く弱く、簡単に押しつぶされて―――だけど、ゴムのように壊れずに。
ぐだぐだと、生き続けた結果がこれだ。
だけど、まあ、うん。
結局はあの日の出来事が全ての発端なんだろうな―――。
◆
「ただいまー!」
今思えば、自分で言うのもなんだが、わたしは超スペック少女だった。運動神経は抜群、頭のキレも早い、物覚えは一瞬、芸術方面はあんまりだったけど、料理や整理整頓なら大得意。……自惚れに聞こえるかもしれないけど、顔立ちもスタイルもいい。他者が認めたんだ。間違いない。アイドル勧誘なんて受けたりもした。……本物かどうかは知らないけど。
兎にも角にも、全方面で完璧な少女だった。部活やら委員会やらには所属してなかったけど、めんどうだから。
「……あれ?」
その日、わたしはちょっと帰りが遅かった。密かに貯めてた小遣いで両親の婚約記念日のプレゼントを買っていたからだ。……一般的な家庭であるわたしの家の小遣いなど、知れたものだったし、それをいくら貯めたどころで結局大したものは買えなかったし、……そもそも、こんな使い方したら何だかんだ言って、笑いながらの説教は若干受けそうだったし。
だけども、普段からの感謝の気持ちを示すには物質的なものしか思い浮かばなかった、わたしは子供だったから。
「……ママー? パパー?」
だけど、母と父はどちらも返事をしなかった。今の世代にしては珍しく土曜が休日ではない進学校に通っていたわたしと違って、両親は共に同じ仕事場で働いているために、土曜は必ず家に居るはずなのに。
出かけている、ということも考えたけど、それならメールの一通でも寄こすはずだが、一通も無かった。
「…………ねえ、ママ? パパ? 寝てるのー? もう昼だよー?」
唐突に思い出したのは、わたしが「今年の誕生日プレゼントは何がいい?」と聞かれた際に冗談で言った「妹」という答えを真剣に受け取ったという可能性。……ならば、情事に至っていて、久しぶりだからーなんて言ってずっとイチャイチャしててもおかしくはない。今思えばわたしの両親は既に結婚から十三年経っても新婚のような仲の良さだった。
だから、気まずいことになるかもしれない、なんて考えながら二階の寝室に入ってみても―――誰も居ない。
「……あ、わかったー! わたしが秘密でプレゼント用意してるのが分かって、逆ドッキリってこと? あはは、もう負けたよ! 出てきて!」
喉が渇いた覚えがある。胸元と眼の奥が焼け、耳鳴りは止まらず、喉から呻き声が漏れる。
奥歯はカタカタとなり、言い様のない恐怖に襲われた覚えもある。
「……ねえ、出てきてよ。ちょっとやり過ぎだって……!」
分からない、この状況が何なのか。
分からないことは、怖い。分かることより怖い、いくら頭がキレようとも、いくら答えを導き出せようとも、何を考えればいいのか分からなければ、混乱するだけだから。
「…………やだよ……、やり過ぎだって…………酷いよ……わたしが何したの…………?」
いい加減、泣き出しそうになってしまったその時―――一階から、物音がした。ガタリ、という何かが動く物音。
そこでわたしは気付いたのだ―――なんだ、リビングで情事に至ったのか―――いや、それはどうなんだろう。噂の裸エプロンだろうか、なんて不安を紛らわそうとして馬鹿馬鹿しいことを考えつつ一階に下りる。
「入るよー? もう、怖がらせてくれちゃって。どんなにお願いされても待ってあげないんだから! 恥を晒せ!」
必死に顔に笑みを顔に張り付けて、ドアノブに手を置き―――置くだけ。
捻れない。怖かった。
何が、とは言わない。
ひたすらに、怖い。
まるで、水責めのような恐怖の押し寄せ。
「…………っ……!!」
聞こえたのだ。
ドアの向こうから。
荒い息遣いが。
臭ったのだ。
ドアの向こうから。
鉄臭い悪臭が。
感じたのだ。
ドアの向こうから。
マトモではないソレの感触を。
「…………ッ!!」
開けなくては何も分からない。分からないことは怖い。分かれば分からないよりは怖くない。
だけど。
そんなの。
「―――――――――――――――!!!!」
子供の夢想だった。
「……ハッ……ハッハッ……ハッ…………」
ぐじゅ、ぐじゃ、じゅぐ、じゅる、ぴちゃ。思い浮かべられる水音のオノマトペ、どれを用いても表現できないような、気色の悪い、気味の悪い、鼓膜に張り付くような音。
思わず口で手を抑えた。そうでもしないと、込み上げるモノを吐き出してしまいそうで。
音が原因なんじゃない。
音だけで嘔吐なんてしそうにならない。
原因は。
「ママ……? パパ…………?」
目の前に広がる―――日常に、トッピングにされる赤。
いつものエプロン姿の母、リラックスした姿の父。
両者の所々に赤い欠損が見え、白さもチラチラと姿を現し、腹部からは赤だか紫だか分からない柔らかそうなソレがちろちろと可愛らしく顔を見せている。
「…………? ……! グルルルルルルッッッッ……」
そして、その両者を貪る犬のような―――首から上が全て口になっている歪な生き物が、わたしを見て唸る。
数は―――四匹。その全てが両者を口からだらりと伸びる―――舌とも触手とも呼べる奇妙な器官で撫でるようにして食していた。
……あんなもので、生きたまま食された両親の気分たるや、どんなものだったのだろうか。
―――そんなこと、考えてる暇はない。
「ボゥッ! バァウァッ!!」
現れた新しい肉を見て、一匹のバケモノが咆え、それと同時に飛び掛かってきた。
「い、いやあっ!」
逃げ出しはしない―――わたしには、生まれつきの“秘密”があった。……飛び掛かってきたバケモノに対し、両手を突き出す。
その瞬間―――私の手より青白い雷光が放たれ、バケモノの身体を覆い、焼き払う。
「……!? ……!? …………バウバウッ!!」
そんな様子を見たせいか―――バケモノ共はわたしへの突撃をやめ、威嚇を始める。
ちなみに余談だが、わたしの生まれつきの秘密、それは―――“電気”の超精密制御が可能だということ。……高出力の電流から人間の電気信号程度の微弱な電流の操作、電磁操作による磁力操作、相手の電気信号を読み取ることによる駆動系の監視、逆に相手の電気信号に指令を与えることによる駆動系の制御など幅広い用途を持つわたしの能力を、超能力者協会(Supernatural Ability Society)―――通称SASは『麗白の雷電』と名付けていた―――なんてことを知ったのはつい最近だ。
「あらぁ? 能力者? これは気付かなかったわ……随分と隠れるのがお上手なようねぇ」
威嚇を続けるバケモノと、私以外存在しないはずのその空間に、わたしを嘲り笑うような女の声が響いた。―――あの時のわたしは周囲の電気信号の動きを監視したが―――目の前の犬のようなバケモノ以外の信号は受け取れなく、最初から薄々は分かってはいたことなんだろうが―――わたしは、ここで初めて自分が異常な事態に巻き込まれていると気付いたのだ。
「……それに、結構な威力の電撃……。……そうね、あなた。私の手駒にならない? 歓迎するわよ、親だって代わりの親を用意してあげる」
―――本当に、今更思えば。あの時、あの鬼の話に乗っていれば―――わたしは変わっていたのかもしれない。
まあ、少なくとも。
今よりはマトモになっていただろう。
枷の無い狂犬と、枷のある狂犬、どちらが恐ろしいか。簡単だ、前者。そしてそれは、きっとわたし。
だけど、わたしは後悔はしていない。むしろ、希望に満ち溢れている。―――だって、それがわたしの願いだったから。
「い、イヤ……です……。わ、わたしは……わたしは! ママとパパを殺したあなたを絶対に許さない! でっ……出て来なさい! 卑怯者!!」
直感的にその未来を予知でもしていたんだろうか、なんて。馬鹿らしいことを考えてしまう程にわたしはすんなりと鬼の存在を―――愚かしい夢見がちな悪を拒絶したのだ。
「へぇ、一匹殺したから、勝てるって? ふぅん……。……私は卑怯な手が嫌いです。真正面から殺してあげなさい、ささっとね」
確かに、一匹殺せれば―――あと三匹など余裕だと考えていた。
だけど、鬼というものは、そういう希望を必ず潰しに来る―――その証拠とは言わないが、あの時、わたしの家の窓ガラスを突き破って現れた犬のようなバケモノの数は数えきれていない。二桁じゃ済まない。確実に三桁以上は居た。
「…………!!」
「バゥ! バゥッバゥッ!!」
そして、それが一斉にわたしへと襲い掛かって来て―――今度は逃げた。目の前の壁を能力で壊しつつ、背後から追ってくるバケモノも焼き払って。
本来ならば、電気信号の伝達に異常を起こして殺すことも出来たが―――逃げながら、かつ目の前の壁を壊しながら、そんな精密な作業は出来なかった。
「なんなの……なんなのよ……! もう……やだよ……!!」
涙が流れることも、息が苦しくなるのも、嗚咽が漏れるのも――――――通行人が食い殺されるのも――――――一切構わずに逃げ続けた。
本能が身体を休めろと言うが、能力でそれを無理やりに動かす。いくら疲れても動きを止めない身体―――死ぬほどに苦しかったが、止まったら死ぬのだ。苦しい方がまだいい。
死んでいた方がよかったのかもしれないが。世間一般的には。
もがきにもがき続けて―――わたしが辿り着いたのは、わたしの人生の、世界の総人口の何分の一かの人生の、全ての分岐点。
どこにでもあるような普通の公園。
そこでわたしは―――彼に出会った。
そう、彼。
わたしを歪ませた本人であり。
わたしが最も感謝する本人であり。
わたしに力を与えた本人である。
彼。
「―――やぁ。予想より遅かったね」
「―――ッ!?」
わたしは彼を目の前にして反射的に臨戦態勢を取った。犬のバケモノの次はキツネのバケモノか、と。
「ハハハ、そう身構えないでくれ。……私は味方だよ、君のね」
「……信じられるかよ、信じられるかよ! この状況で! 味方って何よ!? わけわかんないよ…………!!」
目の前のキツネのような黒い生物は―――何処か、落ち着いた雰囲気のある中性的な声で呟いた。ツンと立った耳や、フサフサとした尻尾、所々に入る金色の模様。―――そして、簡素な計六つの瞳。全体的に言えば可愛い類に入るかもしれないが、生物学的に見れば―――とても気色の悪い生命体。
だが、その瞳は先ほどの犬のバケモノとは違って、理知的で、慈愛に溢れていた。
「だいぶ混乱しているようだな。大丈夫だ。私が君に力を与えよう。―――いや、望みを叶えてあげる、と言ったほうが適切かな?」
「望み……?」
「私の名前はリリウム。生ける少女を、死せる戦乙女へと変える魔法獣だ」
リリウム―――彼は、そう名乗った。愛くるしいその獣の姿で―――基本一般的に、獣にとっては害毒にしかならないその名前を。
「ちょっと、なに言ってるの……? ほんと、わけがわかんない……」
「魔法少女だ。―――奴らは鬼、人を喰らい尽くす、消すべき悪だ」
奴ら―――と言われて、真っ先に思い浮かんだのは両親を食い殺したバケモノと、姿の見えない女。
「私は君の願いを一つ叶えよう。幸いなことに、君は素質がある。両親を生き返らせることだって可能だ。―――ただ、代償として君は生ける者ではなくなる、その力の強大さなら、確実に。君は―――死せる者と化す」
優しくて、綺麗なはずなのに、嫌なほどに冷徹で、心を抉る声。
そんな声だった記憶がある。
「……アハハッ……何が死せる者よ。笑わせないで……、こんなの、もう、死んでるようなものじゃない……」
「否定はしない」
「…………もしかして、この状況に追い込んだの、あなた?」
「否定はしない」
「………………何よそれ、……アハッ……馬鹿馬鹿しいわ……」
「来たぞ」
知っていた。わたしの監視の瞳は既に奴らの信号を読み取っていた。
それに。
覚悟も決めていた。
「いいわ、あなたの策略に嵌ってあげる。……だけど、思惑の通りにはならないわよ、わたしってほら、優秀だから」
「……面白いな。では、君の想いを解き放て。―――親の蘇生か? それとも日常か?」
……今思えば、ここで愚直な願いを叶えていれば―――もうちょっと、何か違ったのかもしれない。
だけど、そんなIFの話は馬鹿馬鹿しいし。
「どうせ、また壊れるであろうモノをねだるなんて、幼稚よ。だから、わたしは不変のモノを願うことにする。誰にも変えられず、誰にも止められない願い」
それに、なんといっても。
「―――ほう?」
緩やかな平和なんて、どんな悪夢より辛いぜ。『もし』を仮定する世界を夢見る必要なんてない。
だって。
わたしは現状に満足しているから。
なにせ。
「わたしは“破滅を喜び、破壊を楽しむ”! これから先、何があろうと絶対に! それがわたしの願い!!」
この時のわたしの願いは、最高に素晴らしいものだったから。
「……ッ!? 正気か、正気なのか!? そんなもの―――自ら絶望に向かうような願いではないか!!」
あの時の彼の顔は傑作だった。未だにあれほどに驚愕する顔を見たことがない。
今思えば不思議なものだ。破壊と破滅を望むのは、行き過ぎた人類にとってはごく普通のことなのに。
「アハハッ! 絶望なんてしないわ! だってもう、希望なんて抱えてないからね! 無いものは絶てないもの! ―――だから、わたしは希望を求めてあがき続ける、邪魔なモノ全部ぶち壊して―――最後に残った希望を手に入れて見せる!」
思い返して、再度納得した。
そうだった、歪んでても、歪でも。なんだっていい。そんなのわたしには関係ない。
わたしは、自分の希望を探し続けるのみ。この、いとも容易く壊れる脆弱な世界で。
「……私の考えが甘かったのか……? こんなもの―――リスクが大きすぎる……!」
悲痛に歪む彼の顔とは別に、わたしの身体は明るい光に包まれ―――身に染みて分かる、自分に新しい力が注がれているのが。
「……なんて、悍ましい姿だ。……まるで、死神――――――」
そういえば、一番最初に殺した生命体は彼だった。ちょっと煩わしかったから、顔を掴み、高出力の雷撃で消し去ったのだった。
「死神ぃ? どこからどう見たって、可愛い可愛い魔法少女じゃないのさ。きみの瞳は濁っているようだね? ……いや、もう瞳も何も無いか」
首から上を炭へと変えた目の前の生物はぐたりと倒れ、動かない。……身体はぴくぴくと痙攣していたが。
その様子を見て、一応生物だったんだ、などという簡素な感想を抱いている間にも、犬のバケモノの信号は付近まで迫ってきて――――――一斉に途切れた。
いや、わたしが切ったんだった。
全ての電気信号の伝達をシャットアウト、まあ、死んだと考えて間違いではない。
「……なに? ……なんなの……? いきなり子供たちの動きが途絶えたと思ったら…………あなた、何をしたの? それに、あなたは誰? 何者なの?」
生き残りが居ないか監視の眼を光らせていたわたしに声が掛かる―――姿の見えない女の声だ。
信じられないのも仕方がない、もとの人間のままのわたしではこんな芸当できなかったし。
「ひっどいなー、自分が殺した男と女の子供の顔を忘れるなんて」
だけど、今は出来るんだ、やって何が悪い。
「……!? あなた、あの人間……? ウソよ、そんなの」
「まあ、自分でもウソだと思うかもね」
それもそうだ、何の理由があるかは知らないが―――わたしは、魔法少女になると、髪や瞳から色が抜け落ちるのだ。難儀な身体である。
故に、普段のわたしと魔法少女姿のわたしはまるで似ていない、顔付きは流石に同じだが―――イメージが違い過ぎる。らしい。……ちなみに蛇足だけど、魔法少女としてのユニフォームは服と言えるか怪しい。一言で言うならばフルアーマーボロ衣。黄色い衣を寄せ集めた妙な服装。
「……いいわ。今度会ったとき、バラバラにしてあげる、約束よ」
「やだよ、覚えてるのが面倒くさいもん」
「…………なんですって?」
「え? なに怒ってるの? ……あ、もしかして勘違いしてる? 自分が興味を持たれてるって、恐れられてるって! アハッ! 馬ッ鹿じゃないの? あなたみたいな、卑小で、矮小で、何時でも消せるような存在、誰も気にしてないし、見てもいないっての」
「……貴様……!」
直後に、首元に鋭い痛み―――刃物で肉と神経を抉られる、何かがその両方を押し退けて体に入り込んでくる痛み。
「誰が消せる存在よ。私を甘く見ないで。人間如きに私は倒せないわ。だから私は―――この私、アルギロスは軍隊の魔女を名乗っているのよ!」
ちょうど首と肩の間に突き刺さっていたのは、言うならば軍用のマチェット。それを持った黒い軍服を身にした女のようなものが―――見えぬ女―――軍隊の魔女アルギロスの正体だった。
「フフフッ、殺しちゃったわ。かわいそう……でもね、それが現実よ。弱い奴は強い奴に喰われるしか生きる道がないの」
「そうだね」
「――――――!?」
勝利者故の微笑を上げるアルギロス、だけど、わたしは死んではいなかった。痛みも―――消した。
「う、動けるはずがないわ。人間がそんな痛みに耐えられるはずないもの!」
骨と神経を傷付けながら振り向く。
無論、普通ならば尋常ではない痛みに襲われ、最悪ショック死にでも至るかもしれないが―――わたしは、その痛みの信号を打ち消すことが出来る。
そこに加えて、魔法少女の頑丈さ。いくら出血しても倒れる気がしない。まさに死せる者だ。
震えるアルギロスの首に、手を置く。電気信号の動きを監視―――今思えば、鬼だって生き物だったんだ。
「だけどね」
「いぎッ―――!?」
わたしの感じる痛みを、代わりにアルギロスへと送り込む。
突端、首元を抑えて後ずさるアルギロス、―――今思い返すと、もしかしたら鬼というのは人間より痛みに鈍感な生き物だったのかもしれない。
「人間って愚かだから」
「なに……? なんなの……!?」
首に刺さる山刀型法具、ディザスターを引き抜く。
今思ってみれば、あの鬼は法具を持っていた辺り、それなりに強力な鬼だったのかもしれない。
「喰える弱者を喰わずにさ」
「ヒッ―――!? 来るな、来るな来るな来るなァ!!」
鬼が光弾を連射する。それがわたしに当たるたび、わたしの体は弾け飛ぶが―――すぐに再生するし、何より痛みを感じない。
「散々甚振って殺すこともあるんだぜ?」
「ギャアッ――――――!!」
右手に持つディザスターでアルギロスの胸を引き裂く。ずぶり、と肉に刃が食い込む感触。ごり、と骨に当たる感触。
心地よくて仕方がなかった。
「……ころ、殺し、殺して、殺してやる……!! 絶対に、殺してやる……!!」
アルギロスがその腕をわたしへと伸ばす―――だが、わたしは既にそこにはいない。
「―――!? ッ……しまった、ディザスターか!」
山刀型法具。一見してその名前は災厄を意味する英単語に思えるかもしれないが、違う。
ディザスターという名の知れた正体不明の鬼が存在し、その鬼の体内に埋まっていた代物だから“ディザスター”らしい。ちなみに、その正体不明の鬼の正式名称は瞬く星らしい、一日に三時間しか姿を現さないんだとか。……知ったのは最近だ。
兎にも角にも、わたしがアルギロスから奪い取ったディザスターには空間転移能力と隠密能力が備わっていた。それを用いて、わたしはアルギロスの背後へと移動した上でステルスを掛けて―――。
「ッグ……ゥ……!!」
背後から腹部に一刺し。
「ギアッ……ガァ……!!」
上空に飛び、肩に一刺し。
「……がふっ……」
前方に飛び、腹部、胸、足に一刺しずつ。
「…………っ……」
倒れ込んだアルギロスの心臓を、背中から一刺し。
「ね?」
既に死にかけであろうアルギロスに同意を求める。
何の同意かは今ではもう分からないが。
そして、特に理由は無いけども―――アルギロスの言っていたことが気になって、彼女の身体から溢れ出す血をすくって、舐めてみた。
「うわ、まっず」
……とても食える味ではなかった記憶がある。
それこそ、人間が最も行う傲慢であり、罪だ。
だからこそ、人間は傲慢で、推し付けがましい正義なんだ。
「あれ、消えちゃった」
完全に死んだアルギロスの身体は光の粒子となって消え去った。
それはそれで中々メルヘンチックな光景だったと覚えている。
「ま、いいか」
人間は正義と悪という便利なシステムを作り上げた。自己が特別な存在であると、命が重いのだと、野生動物ではないのだと信じて。
正義は大衆を縛り上げ、搾取し、苦しめつづけ、だけど人間は麻痺しているからそれに気付かず。
悪は自己を主張し、夢を見て、あがき続ける、だけど人間は麻痺しているからそれを拒絶し。
人間にとって都合のいいコトは正義になり、都合の悪いコトは悪となる。
幼稚で、愚かな分別。
所詮は街という巨大な巣を作り上げる野生動物だというのに、何故そこまでして世界を牛耳りたがるのか。
―――それこそ、夢見がちで愚かな悪、じゃないか。……そう、今の世界に存在する傲慢で推し付けがましい正義は悪と同義なんだ。
だから、わたしは―――。
「それじゃあ、始めようか。わたしという魔法少女の―――神崎神影の戦いを」
戦い続けている。
世界も生物も、全てを破壊して。
その破滅の様子を悲しまずに喜び。
―――最後に残った希望を手に入れる為に!
…………。
………………おや、人が三人ほど轢かれそうになっている、助けに行こうか。
◆
トラックは眼前に迫っていた。
強烈なライト。
耳をつんざく雑音。
全てが私達の死を物語っていた。
だけど、その全てが一斉に止まる。
恐る恐る目を開ければ―――白い少女が、トラックを止めていた。
その細腕一本で。
やがて、その少女はトラックを軽々と持ち上げ―――放り投げる。トラックに続いて走ってくる―――いや、少女に引き寄せられている車も全て投げ捨てる。
「アハハッ―――」
時間にして、およそ十秒にも満たないだろう。その間に―――私達の周囲の光景は正に地獄絵図と化していた。
人は血を流して倒れ、車が炎上し。次々と炎は広がり―――。
まるで、災害のようだ。
その中で―――少女は笑っている。
私達が。
この世の地獄を知った瞬間である。
◆
「~♪ 今日のー♪ 一時間目はー♪ 芸術~♪」
彼女は既に高校生となるべき歳ではある。が、学校には所属していない。勉強などネットですればいいし、友人関係など築く必要性がない。就職だってしなくてもいい。結局は全てを壊すことになるのだから。……故に、学校には所属していない。
「こっちはモダンで、こっちは印象派、こっちは……なんだろこれ。此処が欠けてた方がいいかな」
その言葉と同時に彼女の目の前にある肉塊のような何かの一部が光に押しつぶされ、消える。
「ありゃ、余計にわかんなくなっちゃった。これ失敗作ー」
暗い橋の下で―――彼女、神崎神影はそこらで捕まえてきた人間の身体で彫刻を楽しんでいた。
無論、死んではいない。首から下を麻痺させて動けないようにしているだけだ。―――痛みは感じる。
全ての彫像が瞳から涙を流してはいるが、声は出せない。―――まさに地獄。
そんな地獄から―――たとえ、自己の消滅という形であっても抜け出せたことが嬉しいのか、失敗作と呼ばれた男は口元に僅かな笑みを浮かべてどす黒く光る粒子に包まれ―――消えさる。彼女の得意とする魔法の扱い方の一つ―――“破壊”だった。
それは、高出力の魔力を対象を中心にして圧縮するように収束させ、押し潰す、というもので、威力と制御は申し分ないが、威力の加減と範囲の狭さは絶望的で、使いづらい。
「アハハ、心配しなくたって大丈夫。あなた達二人は上手に完成させてあげるからさー」
人懐っこい、可愛げのある笑みを浮かべながら、神影はそんなことを彫像へと話しかけつつ、その人差し指からどす黒く光る刃を作り出す。彼女の得意とする魔法の扱い方の一つ―――“消滅”。
それは、高出力の魔力を炎や風などに変換せず、そのままの“エネルギー”として垂れ流しにするというもので、使いやすいは使いやすいが、威力は“破滅”や“爆発”などに比べれば絶対的に落ちている。……といっても、十分強力なことには違いないが。
「~♪」
鼻歌交じりに、消滅の力で組み上げたメスで彫刻を削っていく。そのたびに血が飛び散り、神影の衣装を赤く染めるが―――それすらもまったく気にせずに。
……彫刻―――つまり、削られ続ける少女二人にとっては堪ったものではないということは、言うまでもない。
「あ、そーだ。どう? わたしの歌声、一生懸命練習したから上手だと思うんだけどなー」
少女二人は素直に上手い、と言えただろう。こんな状況でなかったのなら。
「~♪ ~♪ …………ん?」
血で手や衣装、顔までもを汚しながらも満面の笑みで人体を彫刻する彼女へと―――巨大な鉄球が激突した。
「ったく、悪趣味なことをやるヤツだぜ。……主人公として、これは許せなかった、悪いな」
その鉄球の持ち主は―――何処か男勝りな雰囲気を持つ少女、その服装は何処からどう見ても白と黒のメイド服で―――酷く似合わない。
「……道程。ゴメンな、助けられなくて……。だけど、二人は助けたからな! 暁子! 二人を頼む!」
「あいさー♪」
軽い掛け声と共に男勝りな少女の背後から全身を包むフリューテッドメイルを身にした可愛らしい声の少女が彫刻となっていた二人に駆け寄る。―――これまた酷く似合わない。
「……惨い。でも、大丈夫! 絶対に助けてあげるからね!」
そして、彫刻となっていた二人に手を置くと―――じわりじわりと欠けていた部位が回復していく。
「……しっかし、なんだったんだアイツ……鬼とは違う……けど、あんなのが……信じたくないぜ」
鉄球の下敷きになっているであろう神影に視線を向け、男勝りな少女が呟く。
「……殺戮の少女って知ってる?」
「…………魔法少女が魔女になったとかいう馬鹿馬鹿しい話か? 信じるなよ、そんな話。バッドエンドがあるのはフィクションだけだぜ。……それに、あるとしても知性がほぼ無いって話だったろ、たしか。……作品を作るのは知性ある生物だけだぜ」
「……それじゃあ……」
「そう、その通り。わたしは至って知的な生命体よ」
「―――!? がっ……ぐっ……!?」
「しーちゃん!?」
短い声、しーちゃんと呼ばれた少女が何かを言おうとしたその瞬間―――彼女の胸元をマチェット―――山刀型法具が背後から貫く。
「ハイ、これで不意打ちはおあいこさま。正々堂々勝負しよう!」
嬉々とした様子で神影はディザスターを引き抜き、しーちゃんと呼ばれる少女を蹴り飛ばす。
「怖いかもしれないね、どこから飛び出るのか分からないってのは! アハハッ!! 潜みし光、悪を暴き出せ!! 『消滅砲-潜影式-』!! ヴィッス、パターン変更! エイミング!」
その直後、神影は素早く言葉を繋ぎ、一歩後ろに下がる。
「―――!! 暁子! 二人を背負って私の後ろに隠れろ!! はやく! 足元のヤツは踏むな!」
「……うんっ!」
しーちゃんと呼ばれた少女の怒号と共に、神影の足元から数多の幾何学的な魔方陣が現れ、地面を這う。
まるで生きているかのように這うその魔方陣を、暁子と呼ばれた少女は器用によけながら、自分と同じか大きいほどの身長がある少女二人を担いでしーちゃんと呼ばれた少女の後ろ側へと移動する。
「へえ、察しが良いね!」
そう褒める神影、先程彼女が放った魔方陣は上を通過した対象に対し攻撃を自動的に行う―――そういう魔法だったのだが、しーちゃんと呼ばれた少女は見事にそれを見抜いて見せた。
「…………んー、他のとまとめて消し飛ばしちゃおうかあ!! 広き光、闇を燻り焼けェ!! 『|消滅砲-広域式-《フェアニッヒトゥング・カノーネ・ヴァローナ》』!! アンド、ヴィッス、パターン変更! アサルト!!」
そんな彼女たちを追い打ちするかのように神影は次の魔法を詠唱する。
「……冗談だろ、オイ……」
詠唱され、呼び出されたどす黒く光る壁は―――地面を抉り上げながら前進していく。つまり、それはその壁に攻撃性があることを示しており―――そして何より。
抉られた地面には幾何学的な紋章が浮かんでおり―――それは、全て彼女たちを捉えていた。
「くっ……! 括目せよ、我が栄光! 『魅力的な英雄』!!」
(……ゴメンな、みんな。私は此処までみたいだ。……だけど、まあ。仲間を庇って死ねるってのはいいかもな、主人公的に)
「アハハハッ! 見えるわけないじゃん! 砂埃的な意味で!」
直後、数多の幾何学的な魔方陣はどす黒く光る光線を撃ち出し、辺り一帯を破壊する―――はずだった。
「……アレ?」
だが、何も壊れた音はしない。
「うーん?」
疑問に思った神影が右手を軽く振えば―――砂埃は消し飛ぶ。
そこに、彼女―――しーちゃんと呼ばれた少女の姿は無かった。……代わりにあるのは臨戦態勢を取る鎧の少女達―――暁美と、回復しきった様子の少女二人。
「あら、消え去っちゃったの? なんと、呆気もない……」
一人だけ逃げた、ということも考えられない―――つまり、彼女、しーちゃんと呼ばれる少女は死んだのだ。……魔法少女は、死ぬときに身体を残さない。光となって消え去るのだ。
そこから考えられることは、彼女が最後に使用した魔法は全ての攻撃を自分に集中させるようなものだということ。
「呆気なくない! しーちゃんは……私達の中でまだ生きてる!」
「そうだね、そんなに急に君達が回復するとは思えないもんね。……ガブリエルでも宿してるなら別だけど、そういうワケじゃなさそうだし―――」
「喋っている余裕があるのか?」
「仕返しだ、受け取ってもらうぞ!」
「!」
左肩に、蒼い衣装の少女が。右肩に、紅い衣装の少女が、それぞれ強力な踵落しを決める。
ごりっ、というイヤな音―――確実に関節がズレた音だった。
「あちゃ、肩がずれちゃったよ」
「……痛みを感じないのか?」
「……バケモノめ、人の成せることではないぞ!」
「なんとでもどーぞ、喋ってる余裕があるならね! 仕返しの、返しだよ!」
神影の声に反応してか、トンネルの両脇に取り付けられていた二枚の鉄製のドアが彼女の能力によって操作された磁力で引き千切られ―――二人を壁へと拘束する。
「まさか、法具だけじゃなくて能力まで使うことになるなんて。強いねぇ、きみ達。評定あげるよ、5段階中3だけど」
「能力者でありながら魔法少女であるとでも言いたいのか?」
「有り得ない、そんな話……聞いたことないぞ!」
「よかったじゃん、聞けて」
軽口を叩く神影の両腕はじわりじわりと元の位置に戻って行き―――くっ付く。
「……ふー、自己再生能力があるとはいえ……遅いなあ、治り。……ガブリエルでも取り込めばもっと早く治るかな?」
「暁子、今すぐに逃げろ! 逃げて―――魔法少女の知り合いに声を掛けられるだけ掛けろ! こいつは―――こいつは危険だ!」
「……うんっ! ごめんね―――戦えなくて!」
「……気にすることか? さっさと逃げろ」
「ありゃ、逃がしちゃった。―――まあいいや。回復し終わったし、勝負再開と行こうか!」
磁力を用いて拘束していたドアを引き抜き、道端に神影は放り捨てる。
「……二人で勝てると思うのか?」
「勝たなきゃ死ぬだけだ!」
「そうだね、負けは死を意味するよ。全力で掛かってくるといい!」
攻撃してください、と言わんばかりに両手を広げる神影へと紅の少女と蒼の少女は鋭い蹴りを打ち込む。
「『放射』」
「「―――!!」」
蹴りを打ち込まれるとほぼ同時、神影が短くそう告げると―――攻撃を行うために動きが止まっていた二人へと消滅の力が降りかかる。
攻撃を手短に済ませ、攻撃範囲から離脱しようとするも―――ギリギリ間に合わず、噴き出したどす黒く光るその力は、彼女らの足を無情に消し飛ばす。
「バ……カな……一撃だと……?」
「……馬鹿げてるな……この威力は……!」
「評定は5段階中5をくれるかな? わたしの攻撃。心配なんだ、ほら。わたしって中学で5以外貰ったことないから」
一歩一歩、神影は倒れ込む二人へと近寄る。
「さて、二限目は国語の授業だよ。―――きみたちは死ぬまであと三十秒。心情を三百文字以内二百六十文字以上で表せ」
「……答えられると思うか?」
「……文章問題は……苦手だな……!」
「あら、残念。じゃあ、さようなら。『滅斧』」
直後―――空中に現れたどす黒い光を放つ斧は二人の心臓へと突き刺さり―――。
◆
《~♪》
「!! れーちゃん! 無事だったの!?」
『突然ですが、お知らせがあります!』
「……っ……あなた……!!」
『今日から改めまして、わたし、神崎神影が主人公です! なんか異論ある?』
「あるに決まってるじゃん……!」
『ヘェ、格好いいね。愛しちゃうよ?』
「そうやって見下してろよ!! 私は絶対にお前を許さない!」
『アハハハッ! 許すも許さないも、何もないよ。だってきみは―――そこで死ぬから』
「なっ―――!?」
『でも、ちょっとぐらいならお喋りしてあげる。あんかいうことある?』
「……あなたは、主人公になんか絶対なれないよ」
『なんで? わたし優秀だし、強いし、信念を貫き通してるよ?』
「私は知ってる。鬼狩りの異名を持つスペードのエース、“竜崎アテネ”と、彼女を支えるジョーカー、“神内真理”の存在を! あの人たちこそ、この世界の主人公だ! ……あなたなんかに、その座は奪えない!」
『りゅうさきあてね? じんないしんり? 面白いね、覚えちゃった。……その人たちが死んだら、あなたのせいってことで』
「あの人たちは絶対に死なないし、負けない!」
『アハハハハハッ! 必死になっちゃって! 可愛いなあ、もう! おーい! 見えてるかーい!? こっちだぁ!! 救済の光、安寧へと導けェ!! 『|消滅砲-圧縮式-《フェアニッヒトゥング・カノーネ・ヴィファル》』!!!』
「……ゴメン、しーちゃん、逃げ切れなかっ――――――――――――――――――」
『ハハハッ! アハハハハハハハハハッ!! アハハハハハハハハハハハハハハハハ――――――――――――――――――』
◆
希望だけが人の望みではない。
絶望だって、ある種、人の望みなのだ。
絶望は、心が折れることと同義ではない。
稀に、絶望に陥った為に、希望への飢えが生じ、希望を見つけることを希望として絶望に生きる存在が現れる。
生ける者が全てを前へ前へと進めるのに対し、死せる者は全てを無へ無へと退廃させていく。
それも、一種の生き方であり、大概、その生き方をする存在は強力である。
当たり前だ。
壊れる物にすがる存在より、無を抱いているが故に失うものを持たない存在のが弱い道理が無いのだから。
《同族殺しの神影》 -完-
次は2話です。