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第0話 中編 激しい世界

手に取っていただき誠にありがとうございます。

この作品は中編です。

内容の都合により少し長くなってしまいますが、どうか暖かい目で読んでいただけると幸いです。

今作は、病に多く触れることになります。しかし、その病を馬鹿にしたり、蔑むといった気持ちは一切ございません。不快に思われる方もいるかもしれません。しかしどうか楽しんでいいてください。


娘と別れた後すぐに遠くの方で爆発音が轟いた。

娘…春は無事に逃げられるだろうか…


【雪子様、春様はきっと無事に逃げることが出来ますよ。ですので今は目の前に立ちふさがる壁…

¨ゴッドフェスティバル¨で勝つことに意識を向けましょう。】


「わかってる。」


【雪子様。記憶をご覧になられましたでしょう?使い方はもうお分かりのはずです。あとは実践あるのみでございます。】


「あぁ…わかってる。」


私の隣にいるこいつは、¨病の神¨。名をシックシック・シックランというらしい。

私にあらゆる病を生物に感染させ、あらゆる病を癒す力を与えた神。


【では雪子様、私は失礼します。】


「は?」


【雪子様の雄姿は必ず見届けますが、私はこのゲームに参加できないのです。お許しを。】


「まぁわかった。見てろよ必ず勝って、くそったれの神をぶっ殺してやる。」


【楽しみにしております。では御健闘をお祈ります。】


そう言うと、シックランは姿を消した。

とりあえず私の目的は化け物の位置の特定が最優先だ。

春の…娘の近くに化け物がいないといいが…

私が契約して、もらった力は主に二つ。

一つ目は、病を操る力。

二つ目は、神の力に耐えるための肉体強化。

肉体強化は、わかりやすい。もともと喧嘩をよくしていた不良だったものの一般人よりほんの少し筋力があったが、別物級に上昇している。そのおかげで…。


「よっ。」


軽くジャンプしてみたが、一軒家の屋根に軽く飛び乗ることが出来た。

年齢が40歳になろうという年でこのようなパフォーマンスを発揮出来るというのは少し変な感じだ。

それに、少しだが目がよくなったおかげで遠くを見る事が出来る。

見たところ、煙が上がって戦闘の痕跡があるところは四つ。

それに、さっきの演説が正しければ、敵は四体。

幸い娘が逃げた方向に戦闘の痕跡がない。きっと娘は無事に逃げ切ることが出来るだろう。

ならば次に確認すべきは、同じく神と契約している仲間の存在を確認したい所。

さすがに契約者が私一人とは考えにくい。合流が先か…。

そう考えていると、一つの爆発が、娘の逃げた方向へ向かっていくのが見えた。


「春…!」


合流よりも先に足止めが先決であると判断して娘のいる方向に全速力で向かった。

家の屋根や、ビルの屋上などを足場にしてジャンプで移動する。

爆発によって上がる煙に近づいてきた。少し高くジャンプして空から周辺を確認する。

ようやく化け物の姿を確認できた。

頭部が小さい車ほどに肥大化した赤子のような姿をして、宙に浮いている。

上から少し見ていたが、化け物に近づいた人間が体中にいぼのようなものが発生し体中から血を流し死んでいく。


(むご)いな…。それに、見境なしか…。」


だが、目の前で死んでいく人々を見てわかったことがある。

それはおそらく病による死であると思った。

先ほどの演説で上がった名前の中に病を扱いそうなものは…。


「¨癌¨か…。なら大丈夫かもしれない。」


そう考察をして勢いよく化け物に向かってゆく。

ズダンッ!!

勢いよく化け物に拳を振り下ろす。


「かった…い!」


【ああああああああイタタイイタイタタタイタイ!!】


化け物が悲鳴を上げる。

耳が張り裂けそうだった。


【シシシシシネ!シネ!シンデシマエ!】


そう叫ぶとこちらに視線を向ける。

視線といっても、人間らしいパーツは見当たらない。

声でさえ、口がないのに。一体どこから発声しているのかさえ分からない。


「馬鹿そうだが、しゃべれるんだな。」


【ウルサイ!ウルサイ!シネシネ!】


ボコボコ!

すさまじい勢いで腕の先から(いぼ)が生えてくる。


【ガンガンガンガン癌!】


私の力は病を治す力。どう癒すのか、神の記憶を通して見た。

だからなんとなく治せる。

だけど、同時に嫌なものを見た。

あらゆる病の惨状を見た。

ペスト、コレラ、梅毒、スペイン風邪、そして癌。

あらゆる病を見た、そしてそれらにあらがう人間を見た。

私はすべての病を治せる。すべての病に感染させることが出来る。

つまり、相性がいい。


【シナナイ!?ナゼ?犯サレタ端カラ治ッテイク?】


「始まる前に情報が開示されんのはいいな。相性がわかる。」


【ギギギギギ!嘘ダ!治セルハズガナイ!末期ダゾ?シカモ全身二ダ!】


治せるということが分かったから、近接戦闘…殴りに行ってみる。

ドゴ!

動きは緩慢(かんまん)だ…だったから張り付いて殴り続けることにした。

ドゴ!!ゴン!


【ギ!!ギ!イタイ!イタイ!ヤメロ!ヤメろ!ヤめろ!やめろ!がぁぁぁ!!】


ボコボコ!

化け物が叫ぶと大きかった頭がさらにボコボコと大きくなっていく。

驚きのあまり攻撃をやめて、少し後ろに下がり、観察する。

やがて元の大きさの二倍ほどになったと思いきや、頭が張り裂けそうになっている。

みちみちと音を立てながらこちらに視線を向けてくる。


ミチミチ!ブチ!

ボボボボ!


勢いよく張り裂けた頭部から大きな腫瘍(しゅよう)が複数個放たれる。

放たれた腫瘍は建物を容易に破壊出来る威力を見せた。


「なるほど…さっきからてめぇのとこで起きてる爆発が気がかりだったが、これか?」


【バクハツ…?そうダ…イたいカラあまリ使いたくナイ。】


会話がうまくなってきている…?

だったら、考えられるのは化け物に成長の可能性があるということか?

馬鹿な私にもわかる。つまりやることは一つ。

単純明快、成長しきる前に殺しきる。

だが、ここでふと思いつく。

感染させる力のことだ。

すべての生物に感染させるとは言ったものの、あれは生物のくくりにいれていいものなのかね?

何はともあれ、やってみるか。

病、感染させるにしても、わかりやすくて、致死性の高いものがいいが…

ペスト…そもそも化け物自体黒いからな…

エボラ…あいつ、血が通ってんのか?

天然痘…

いろいろ考えてはみたものの、全部試してみることにした。


ボコボコ!ミチチ!

ボンッ!ボボボ!


再びこちらに腫瘍を飛ばしてくる。


ドゴゴゴゴ!


「ッぶな!イメージ、イメージ。」


力を扱うには、イメージが大事だ。

神が私に見せた記憶。その中には、力の扱い方と考え方についても見せてきた。

それは、私に力を与えた神。¨病神¨シックランの記憶だ。


奴、シックランは病の神として生まれた。

シックランは病の神として発生し、人間からは死の象徴として恐れられた。

ある時シックランが世界を見たとき、人類は人類と戦争をしていた。

何故、人が人と争うのか理解できなかった彼は人類を観察し続けた。

いつの日かシックランは気が付いた。

人類…人にはそれぞれ正義があることを。

ならば、人類に対する絶対悪を作れば争いはなくなるのではないかと。

シックランは、新たに病を作り始めた。

それらの病は(おぞ)ましいほどの死者を出した。

それでも、人類は争いを辞めなかった。

だから今もなお病を作り続けている。

いずれ、争いがなくなることを夢見て。


今目の前の化け物に私ができそうなことを、全部ぶつけてやるんだ。

イメージ…化け物が血を吐いて(もだ)え苦しむ姿を。


「スゥ…ふぅ…¨強制複合感染¨…」


【…?】


とりあえず頭に浮かんだ致死性の高い病をまとめて化け物にぶち込んだ。

何が起きたかわからない化け物はこちらを眺めながら首をかしげる。


【何をしようとしタの?】


「…失敗か…?」


【??ん?なにが……!ゴフッ!】


吐血…!何が効いたのかわからんがダメージはある!

ぼたぼたと流れ落ちる化け物の黒い血…多分血。


【…複合感染と言ったカ?なるほど…頭がさえてきたゾ。つまりこれは毒ではなく、病気か…ということはお前は病に感染させる力と癒す力の二つを持っているんだな?お前の癌が治ったのもその力のおかげであると思えば合点がいく。…複合ということは、少なくとも二つ以上の病に感染させようとしたのか?】


「随分おしゃべりじゃないか、私は静かなほうがよかったんだがねぇ。」


【おしゃべり?あぁ…まぁそれはそうだ、何せ意識がこんなにはっきりしているんだ。こんな感覚久しぶりなんだよ。…そんなことより、ゴフッ!ゲフッ!あぁ血がいっぱいだぁ、あぁ!鬱陶しいなぁそろそろ。】


「そんなことよりなんだよ?」


化け物は此方を見ながら黒い液体が滴る細い指をこちらに向けて声を出す。


【僕のためにも、さっさと死んでくれ。】


「すまんがそれは出来ないな。」


【痛みも、苦しみもなく楽に殺してあげる。こんな幸せなことってないと思うけど?】


「お前…元人間だったんだよな?」


【…そうだね。】


「なんでそうなった?」


【ふむ…それは僕がこの体になった経緯の話かな?それとも、僕の考え方がこうなった経緯の話かな?】


「後者だ。」


【何故お前に話す必要がある?】


「…たしかに。それもそうだな。」


【話した所でお前は死ぬんだよ。】


「残念ながらそれは違う。」


【ほう?】


「何故なら、私は思いついてしまったからだ。」


【…?】


そう、私が思いついた…と言うより思い出したのは、シックランが病を作っていたということ。つまり、その力を引き継いだ私は、現実にはありもしない、私にとって、利しか無い都合の良い病を作ってしまえばいいということ。まぁこれも出来るか出来ないかはまだ分からないが、もし出来たなら化け物に勝てる可能性が極めて高くなるということだ。

例えば、私の身体に肉体強化の病に感染させる、デメリットを排除すればただの強化になるってわけだ。


「私に利しか無い病…。イメージしろ。」


イメージだ、目の前にいる化け物は、既に神との契約での副作用である身体強化を受けたはずなのにも関わらず、硬い。攻撃が効いている感じがしなかった。今のところ明確なダメージが入ったのは"強制複合感染"のみだ。ならばもっともっとイメージしろ、 あいつの硬さは高く見積もって1Mほどの厚さの鉄ぐらいだろう。ならば、それを貫くほどの力、それを得るための病…肉体の強化…筋肉に血管に血球に限界まで侵入して、脳も脊髄も細胞の1つに至るまで全部に影響を及ぼせ。


「仮称、病原体α。

 仮称、病原体β、

 仮称、病原体θ、」


【…?】


仮称、病原体αは肉体強化、βは、肉体の修復、θは、ホルモンの分泌を行う。つまり、θで、アドレナリンを大量に分泌して、痛みを消し、βで修復しながらαで強化した肉体で相手をボコボコにする。超脳筋戦闘を可能にした。しかも相手によっては弱体化の病や、即効性のある病で応戦出来る。

私は、戦える。


「お前、案外いいやつなのな。」


【…?】


「敵がこんなに怪しいことしてってのに…こういう時に攻撃しないでただ見てるだけなんて、いいやつかただの馬鹿だけだろ。」


【なるほど、ならば、私は、そのどちらでもないよ…なぜならば、単に僕は興味があったからだ。君が何かするたびに僕は僕について知れる。気づいているかい?君がさっき僕に感染させた病は既に、完治した。理由はまだわからないけれど、きっとこれから理解できるだろうと思っている。】


「また私が似たような攻撃をすると思ってるのか?」


【無論思っている、なぜならば君は明確に僕にダメージを入れることが出来なかったが、さっきの攻撃で初めてダメージが入ったと思うははずだ。ならばその攻撃を続ければかけると思うはずだ。まぁこれは君がまともな思考回路を持っていればの話だがね。】


「化け物がまともを唄うとは、世も末だね。」


【フフフ…確かにそうだね。……本当に…全くもってその通りだ…。】


「さて、さっさと終わらせようか?」


【僕もそれには賛成だよ。どうせ君みたいなやつが何人かいるんだろう?】


「私もまだ出会ってないからよくわからんが、多分そうだろうな。そっちもそうなんだろ?」


【らしいね、全く…肩を並べるのには、ハードルが高すぎる人と一緒になってしまったよ。】


「そうかい、私は光栄だけどね。あの超有名人の天下の織田信長様と戦えるなんてね。」


【君の話だと、僕を倒す事が前提になってないかい?】


「その通りだが?」


【まぁそのつもりで来てもらわなくてはお互い困るか…さて!仕切り直そう!】


そう言うと化け物は頭を再び膨らませる。


「またそれか、芸が無いね。」


【黙って食らいな。】


そう言うと、頭が裂け腫瘍が此方に飛んでくる。私は軽く避ける。しかし、今回の腫瘍はどれも小さく、それに数がかなり増えていた。数打ちゃ当たるの精神だろうか?それに弾切れが来ない。

私は警戒しつつ腫瘍を避けながら前進する。


腫瘍槍(しゅようそう)。】


その言葉と共に腫瘍から棘の様な物が勢いよく此方に伸びてくる。

ザクザクと身体に棘が刺さる。避けきれなかった。右肩、へその少し上、左足の太もものちょうど真ん中を刺された。だが痛くはない。θの影響でアドレナリンが出ているからだろう…私は迷わず前に向かって歩き始めた。問題なく感染している様子だ。


【え…なんでその状態で歩いてくるの?怖…。】


呼吸を整えて体に刺さった棘を抜いていく。棘を抜き終えたら、抜いた棘を持って化け物に向かって走り出す。


【え…マジ?】


ザクっと大きな頭に棘を刺し込む。日本目を刺し込むと大きく叫び始めた。


【ああああああああああああああああ!イタイイタイ!イタイタイタイタい!ふざけるなふざけんな殺す殺す!ぶっ殺す!!】


三本目を刺し込む直前に私の体をつかみ投げ飛ばす。


「ふぅ…惜しいあと一本だったのに…ん?」


悶え苦しむ化け物の頭がどんどん大きくなっていく。また腫瘍を飛ばされる前に最後の一本を指し組むために走り出す。


「三本目!」


ザクっと三本目の棘を刺し込んだ…しかしそれと同時に化け物の頭が張り裂け中から人の形をした新たな化け物が出てきた。


【ハッピーバースデートゥーミー!】


ゴンって鈍い音が聞こえた、それと同時に隣の家の壁に叩きつけられる。

血が流れる…けれど私の体は、肉体を自動で再構築してくれる病…仮称、病原体βのおかげで肉体がゆっくりと再生してゆく。


【わお!さっき刺した傷もうなくなってんじゃん!もしかして再生するの?もうどっちが化け物かわからなくなってきたね。】


さっきのデカ頭の化け物から這い出てきた化け物は此方に喋りかけながらゆっくりとこちらに歩いてくる。

何だあれ、マスクを立て向きにしたみたいな顔をして、真っ黒の体に肘からは点滴の袋?が生えている。全体的にみると先ほどのデカ頭よりずっと人間らしい。


【三度目の誕生かな?悪くない…それどころか最高な気分だ!君、どうせまだまだ死なないんだろう?

しばらく付き合ってもらおうかな。】


「お前…さっきのデカ頭か。」


【そうだよ?ごめんね?説明もなしに殴り飛ばしちゃって。】


「別に構わんさ、次は私がぶっ飛ばす。」


【楽しみだ。】


そういうと元デカ頭は手の先を大きく膨らませる。かと思えば瞬時に視界から消えて轟音が左の耳を通りすぎる。気が付くと左肩から指の先までの感覚が消滅していた。

それと同時に、私の視界に化け物の顔が現れる。


「は…!?」


【ちゃんと見てなきゃダメでしょ?はい。落とし物。】


そういうと私の左腕を差し出す。

驚いたが私は、焦らずに冷静でいた。

冷静に私は、瞬発力と、動体視力を増幅させる病を作り出した。

私はそのまま全力でパンチを繰り出す。

当然よけられる。


【フフフフ!危ない危ない!当たってたら結構危なかったかもね。】


化け物はくるくると回りながら喋りだす。


【ほらほらがんばってー】


奴は速いのか?それともワープ?それもこれも次の攻撃でわかる。動体視力を上げたのでこれで見えなければワープで決まりだ…仮にワープをしていたということが分かったとしても私に何が出来るのだろうか。


「来い。」


【言われなくても行くさ。】


肉体強化、肉体強化…イメージだ。私はめっちゃくちゃ硬いというイメージ。


ドゴ!

今回は踏みとどまる。しかし私の腹を化け物の拳が貫いている。ので思いっきりパンチしてやった。


【がッ!】


大きな物音と共に煙が立ち込める。意外だった…思ってた以上に吹き飛んだからだ。

装甲…というかでかい頭に守られていただけで、今の奴は速いだけなんじゃないだろうか。

ならば畳みかける。

私は立ち込める煙の方へ走り出した。


「!」


ボコボコと右足に腫瘍が出来る。

自然と視線が右足へ向いたその一瞬顔を殴られる。

だが耐える。意識が吹き飛んでもおかしくはない一撃だった。


【はぁ?硬ったぁ…本当に人間?】


「悪いね、私は元ヤンなんだわ、タフさには自信あんのよ。」


【フフ…喧嘩の相手に同情してしまうね。】


「いい加減手ぇどけな!」


【おっと…。】


勢いよく振った腕は空を舞いその拳をよけるために化け物は後ろに下がる。

既に右足は完治した。次はあいつの動きを止めたいところだが。


【僕も少し戦い方を変えようかな。】


戦い方を変える?

そう言うと化け物は両手を膨らませ始めた。

次の瞬間膨らんだ両手から先ほどの槍のような棘を生やす。


【いいね。こういうのやってみたかったんだよね…僕。】


刹那化け物が私の腹めがけて槍を突いてくる。それをかろうじて受け止め、懐に飛び込む。

パンチを繰り出す瞬間化け物の腹からも槍が飛び出してくる。

身をよじりながら後方に逃げる、しかし化け物は逃がさないように距離を詰めてくる。

再び槍を突きたてて来たので身をよじりながら回避して、複合強制感染を静かに発動する。


【ゴボッ!…くそ!鬱陶しい!】


わずかな隙、パンチを放つが顔を横にずらされたため化け物の頬をかする。

化け物は右手を膨張させ、今度は腫瘍を飛ばしてくる、ゼロ距離だったので回避しきれず右足のふくらはぎと左の下腹部を貫通して、右の頬をかする。化け物は槍を構えた。

私はとっさに左手で思いっきり地面を叩き、砂煙をたたせて化け物の視界を遮る。

すぐに化け物の後ろに回り込む、それに気が付いた化け物が槍を振ってきた。

身をかがめ槍を回避しながら、化け物の膝の裏を思いっきり蹴る。


【っく…!】


化け物の左足の膝から下が切断され地面に転がる。

片膝をついた化け物にパンチをした。

しかし左手に腫瘍を集中させて簡易的な盾を作り出されていたため盾ごと殴り飛ばすことになったため、致命傷にはならなかった。

化け物は2mほど吹き飛び、失った左足の部分に槍を生やし即座に義足を作り出し態勢を立て直した。

さらにこちらに向かって走り出す。

私は、その場にあった左足をつかみそれで迎えうった。

化け物の足で左手の槍をいなし、化け物の右手を私の左手で打ち払った。腹から槍を生やしてきたので身をよじりよける。

右手の槍で攻撃してきたので、義足部分を軽く蹴とばし態勢を崩す。

隙が出来たので化け物の足で顔を殴ろうとしたときにその切断された足から槍が生えてきた。両手と右肩を串刺しにされたが、あえてそのまま腕に突き刺さった槍で化け物の頭を刺す。

突然槍が生えたせいで動揺してワンテンポ遅れたせいか急所を外し、人間で言う顎らへんに刺さる。


【フン!!】


「はぁ…よけんなよ…はぁ…。」


【僕はまだ死ねないんだ。】


「誰だってそうだろうが…」


【皆死ねばいい。】


「あ?」


【僕が救えないのなら僕も、皆も全員死んでしまえばいい。】


「はぁ?」


【君のせいで思い出してしまったよ。僕がこうなった理由を。】


「…正直興味はあるが、あいにくそれを聞いてる余裕は私にはないんでね、そういうのは死んで神様にでも聞いてもらいな。」


【そうだね、だけど、神様もきっと忙しいだろうから、先に逝って神様に予約だけしておいてくれると助かるんだけど?】


「断る。」


【だよね、そういうと思った…¨腫瘍鎗¨。】


刹那化け物の全身から槍が飛び出す。

私はよける間もなく、串刺しにされる。


「グッ!やば…!」


化け物が槍を体から切り離し即座に右手に新たな槍を生やし私の頭を目指し突いてくる。

私は顔以外ほぼ全身に刺さった槍のせいで動けなかった。


【さようなら。】


「春…。」


死を覚悟した。だがその瞬間左の建物から新たな化け物が勢いよく現れる。

いや、現れるというより吹き飛ばされてきたというほうが正しい。

だが運のいいことに吹き飛ばされてきた化け物に目の前の化け物が激突し吹き飛ばされていく。

私は冷静だった。目の前に刀が落ちていた、先ほど吹き飛ばされてきた方の化け物が持っていた刀が目の前に落ちたのだ。私は体の槍を最低限引き抜き、刀を手に取り化け物たちの方へ走った。

私は、目の前の化け物共をしっかりと両目で捕えて両手で刀をしっかり握り力いっぱい振りぬいた。


【…!くそ!…まじ…か…最悪。こいつ…まじで何なんだよ…まじ…くそ。】


目の前の二体の化け物の体が崩壊して、塵と化していく。


「あんた…名前は?」


【……しゅう。……山添 周だ……覚えておかなくていい。】


「こんなの忘れる方が難しいっつうの。」


【……なるほど、確かにな……。】


周は消えた。塵となって。

もう一体の方は音もなく消えていた。

私の持っていた刀も塵となって消えてしまった。

最後に現れた化け物は一体何だったのだろうか、吹き飛ばされてきたように見えたが、誰かが戦闘を行っていたのだろうか。

まぁ何はともあれ、2体撃破出来たのは大きい。化け物と戦闘をしていたであろう別の契約者と合流したいところだ。

そう思い辺りを見渡した。

おもむろに空を見あげたところ見慣れない石柱が、四方にあった。

これが戦闘の跡なのだろうか。

そして、この痕跡は契約者か、はたまた化け物がやったのか。謎が深まるばかりだ。


「ねぇ。」


「!」


石柱の影から1人の影が姿を見せる。


「さっきここら辺に侍みたいな刀持った棒人間来なかった?」


「…あぁ悪いな私がぶった切っちまった。悪いな。」


「いやいや問題ないよ。手助け感謝!お姉さんは契約者で良いんだよね?」


「あぁそうだ。お前もだろう?」


「そうだよ。僕は大地の神と契約した

中園(なかぞの) 郁夫(いくお)です。」


「私は病の神と契約した東 雪子だ。さっきの化け物と私の化け物を同時に処理したから、後残るは2体か…。」


「ううん残念ながらあれは一体に含まれないと思うよ。」


「ほぉ?何故?」


「あの棒人間…刀持ってたでしょ?何となくわかると思うけど、あれ織田信長の家来?家臣?兵?なんだよね。いやー困ってたんだよ、あの人いきなり大量の兵を生み出してくるんだから。それに一体だけでも中々強くて結構苦戦してたんだよね。」


「成程、ならば私も手を貸そう。」


「ありがとう!めっちゃ助かる!」


「私、昔から信長と喧嘩してみたかったんだよな。」


「良いね!僕も思った事あるよ。さぁ早速、信長狩りと行こうか!」


そういうと中園は脊柱の影からから飛び降り私の目の前に立つ。

信長狩り…言葉にすると、なんとも不思議な感覚だ。

信長を含めて残り3体…

1体だけでこの有様だ気を引き締めよう。

私は歩き出す中園の後を追うように歩き始めた。

閲覧頂きありがとうございます。

今回とても長くなってしまったので中編になってしまいました。

次回で0話完結になります。

出来るだけ早くあげる予定ですので次回も是非楽しんで貰えると幸いです。

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