5、大崎真はメガネを作りたい
数十年振りに眼科に行った。
理由は映画館の字幕が読み辛いような気がすることと、スマホの文字が読み辛いような気がするからだ。
待合室で待っていると名前を呼ばれた。促されて機械の前に座らされ、早速、検査が始まった。
白衣を着た先生が言った。
「穴の空いた向きを教えて下さいね。ちなみに今は裸眼ですか?」
「はい。裸眼です」
「では始めます」
画面に出てくる度に、私はすらすらと答えていった。
「終わりました」
「先生、どうですか?」
「右が1.5、左が1.5弱ですね」
私は驚愕した。
「そんなにいいんですかっ?」
「凄くいいですね。何の問題もありません」
「メガネが欲しいんですけど……」
「必要ないですね」
一蹴された。
「そんなこと言わないでください。私には必要なんです。映画館の字幕がくっきりと見えていない気がするんです」
「見えてるんですよね?」
「見えてます。でも、くっきりと見えてない気がするんです」
「でも、1.5もあるならいらないですよ」
「くっきりっハッキリッと見たいんです。そのためにもメガネが必要なんです」
「いらないですよ。だって1.5もあるんだもん」
堂々巡りとはこのことだ。こっちはどうしてもメガネが欲しいと言うのに。
そもそも処方箋を作ったほうがそっちは儲かるのに、なんて良心的な眼科医なんだ。
私は頭にきた。
「あ、そうだ。近くの文字も見えなくなってきたんです。どうか診てください」
「分かりました。検査してみましょう」
数ページが付いた見開きの本を手渡され、大きな文字はもちろんなこと、一番小さな文字まで私はすらすらと読んでみせた。
「……見えてますよね?」
「見えてますね」
「失礼ですが、本当に見えなくてメガネが必要なんですか?」
「実は見えてます。ただ、昔に比べて集中して読めないような気がするんです」
「それも気がするだけですよね?」
「そうですね。気がするだけです」
「やっぱりメガネはいらないですね」
「ちょっと待ってくださいっ。昔に比べて読み辛い気がするので、老眼が入ってませんかっ?」
「確かに、ほんの僅か〜に老眼が入ってますが、ほとんど入ってないです。処方箋を作ってメガネをかけるほどではないです。残念ですが」
「そんな……困ります」
こっちはどうしてもメガネが欲しいと言うのに。
「そんなにメガネが欲しいなら、百均に売ってる老眼メガネをかけてください。あ、一番、ゆるいやつにしてくださいね。あなた、見えてますから」
「分かりました。ご親切にありがとうございました」
私は2330円を払って眼科を出た。正直なところ、入った時と出た時の私はなんにも変わっていないので、ちょっとお高くないですか?と思った。
そして、少年漫画の主人公のように、もともと凄い力を持っているような気持ちになったのであった。
読んでくださって、ありがとうございました。
久し振りに日記を書きました。楽しいもんですね。




