2、忘却バッテリー
現在、緊急事態である。
電動自転車のバッテリーが、残すところ後一つのメモリなのに、それも点滅している状態なのだ。
行きの時にONにしたら残り一つで真っ青になった。しかし、残念ながら充電している時間はない。行きは下り坂のため、慌ててOFFにして乗り切った。
さて、今は帰りの登り坂なのである。
ヤバイ――
まだ行きは始まったばかりだというのに、もう点滅している。
相手は普通の自転車ではなく、電動自転車だ。バッテリーがあれば楽だが、切れたらただのお荷物の何物でもない。
なぜ充電を忘れていたのか。バッテリーの充電っていつも忘れる。マジで自分自身に腹が立つ。
こんな時、『ミッション:インポッシブル』のイーサン・ハントはどうするだろうか? 自分を追い抜く車があれば、車に飛び移るなり、車と電動自転車をスパイ道具で繋ぐなりして、なんとか乗り切りそうだ。
そいつはいいアイデアだ。それでいこう。
しかし、ダメだ。ここは川沿いの遊歩道だ。歩行者と自転車専用になっている。追い抜く車などない。
そんなことを考えていたら、遂に点滅が消えた。
こいつは重い――
宇宙ステーションに長期滞在していたが、久々に地球に帰還した時くらいの重力が襲ってきた。(もちろん、宇宙飛行士になった経験はございません。)
下りて押していると、なんとか平坦な道になった。後は二百メートルほど走るだけだ。
漕いでみたが、平坦とは思えないほど漕ぎ辛かった。どしゃ降りのぬかるんだ砂浜を無理やり漕いでいる感覚とでも言おうか。周囲にこの苦痛が一ミリたりとも伝わらないのがなんとも悔しい。
息切れをして、なんとか家路にたどり着いた。
そして、思った。
(次からは絶対に充電を忘れない……! ジッチャンの名にかけて……!)
そして数日後、また冒頭の文章に戻るのであった。
読んでくださって、ありがとうございました。
バッテリーの充電って忘れます。