こうして始まった
歳をとってからの挫折はきつい。
仕事を辞めた後の事を考え、踏みとどまろうと、あがいてみたけれど、心が言うことを効かなくなった。
最初に、次の日が仕事だと思うだけで、眠れなくなった。
そして、次の日が休みなら安心出来るはずなのに、休みの日を迎えると、明日は仕事だ。と、サザエさんが始まってもいないのに、目が醒めた途端に、不安になり、休みを楽しむ事が出来ない。
サザエさんには申し訳ないが、恐るべし、サザエさん症候群。
トドメは、食事が喉を通らない。
ここまでくると、自分ではどうする事も出来ない。
助けてもらいたくて、友達へ相談してみた。
「何処にでも、一人や二人は嫌な上司がいるものだ。もう少し、頑張ってみろ。」
何処にでも、一人や二人は嫌な上司はいる。
そう、一人や二人所ではない、嫌な上司とは、山のように出会ってきた。
もう少し…。
どれくらい…一ヶ月か、半年、それとも一年。
頑張ってみろ。
私の頑張りが足りないのか。
そしてまた、分からなくなった。
誰もが励ましの言葉として使う〝頑張れ〟
私も何度も使ってきた。
この言葉が呪いの言葉となって、自分へ返ってくる。
この日、もう一人の「私」が現れた。
(もっと頑張れよ。辞めてどうする。今の歳を考えてみろ、次のアテはあるのか。)
友達の言う事も、「私」の言う事も、全て正しい。
正しいから、不安になる。
(自分の好きにしたらいい。後悔先に立たず。って言葉、忘れるな。)
後悔は、何故、先に出来ないのだろう。
後悔とは、後からするものだから、先に出来るはずがない。
でも、先に出来れば、何か違っていたかもしれない。
馬鹿みたいに、そんな事を考えていた。
そして、出口のない迷路へと、自ら突き進んで行った。
退職するまでの一ヶ月間、自分とも闘いながら、何とか耐え忍ぶ事が出来た。
やっと、今の苦しみから解放される。と、信じていたのに…。
(仕事辞めたはいいけど、明日からどうするつもりだ。)
パワハラがトラウマになり、直ぐには、就職活動をする気になれない。
そして、また不安が襲ってきた。
今度は、先の見えない人生への不安。
このままではダメになる。
分かっていても、出口が見えなくて動けない。
(自信がなければ死を選べ)
あー、全てを終わりにしたい。