彼は
「それで、洞窟はどうだった?」
ベッドで上体を起こしながらティシカが作ってくれたお粥を食べつつ、エバはあたしにそう聞いてきた。
ちなみに、フェルは何がなんでもエバのそばを離れようとしなかったが、ティシカに、「王様にエバ様が目覚めたことを報告しに行った方が良いんじゃない?」と言われてしぶしぶ登城しに行った。
そういえば、エバには洞窟に行くの伝えてあったんだっけ。
「行くには行ったんだけどね」
あたしは肩をすくめる。
「亡くなった人に会おうなんて、馬鹿な考えだった」
そのせいで、エバは死にかけるし···。
しかし、そう言うと、エバはスプーンを置いて、
「亡くなった人に会いたいのは、そんなに馬鹿なことか?」
「え」
あたしは呆ける。
「確かに過去にとらわれて今をないがしろにするのは良くないけど
過去のことだからって、消したくないよ」
エバは自分でも噛み締めるように言う。
「悲しんだり、惜しんだり、また会いたいと願われるのは、亡くなったその人が愛されて生きた証だろう?全然悪いことじゃないよ」
そこで、エバはふぅっと息をついた。
「俺も、クローに会えるなら、会いたいし」
そっか。エバも、そうなんだ。
亡くなった人への気持ちと、生きてる人への気持ち、どっちも持ってて良いんだ。
あたしは、なんとなく心が軽くなったような気がした。
それからあたしとエバは、たくさん話をした。まだエバはベッドから起き上がれなかったけど。
「アグネの両親は、どんな人たちだったんだ?」
「どんなって言われても
普通の親だったよ」
『やられたら倍返し以上。相手が後悔して這いつくばるまでやれ』が家訓だったが、まぁ、それも普通だしな。
「あ、でも、あたし、両親にそっくりだって言われてたよ」
それが見た目のことなのか性格なのかはわからないが。
「エバとクロービスは?似てた?」
エバの兄さんなら、相当なイケメンだろう。
しかし、エバは首を振って、
「クローと俺は全然似てないよ
クローは背が高くて俺よりずっとがっしりしてて、髪は俺と同じ黒だけど···
あ、そうそう」
エバは自分の前髪を一房摘まんで、
「クローの髪ってちょっと変わってて
一房だけ、灰色になってたんだ」