貧乏王子
ある大きな国に、リウスという王子がいました。リウスは、その王国のちょうど中心のところにある、王族学校に通っていました。
しかし、リウスには、悩みがありました。
自分は王を継がねばなりません。しかし、リウスはどうしても王を継ぎたくはありませんでした。
リウスは、その事を、王族学校の友達に相談しました。
その友達の名は、カペラといいました。
カペラは、リウスと瓜二つの顔つきでした。
リオスは、カペラに、
’僕は、他人に自分の人生を決められたくは無い
と、いうと、カペラは、
“人生で迷う事が無いなんて、幸せな話なんだよ。ましてや君は王になれるというのに
と、諭しましたが、リオスは、
’僕の人生は僕が決めるんだ!
と、がんとして通しません。
そこで、カペラは、リオスに、こう持ちかけました。
“それでは、こういうのはどうだい?僕が君の代わりに君の家のリオスという王子として生きよう。その代わり、君は僕の家のカペラという低級王族として生きれば良い。
顔立ちがそもそも似ている2人ですからこそ可能な交渉です。
リオスは、これに乗らない手はないと、即断しました。
それからというもの、前の自分の生活からは考えられない程のそれはもうたいへんな生活が始まりました。
朝早くから、弟たちの昼食を作り、王族学校から帰ってからは、庭園の農作業に汗を流しました。
しかし、リオスはカペラとして過ごす今の生活に満足していました。
剣のお稽古はありませんし、何よりも、誰にも縛られない時間ができた事は、彼にとって大きな利益でした。
毎日、弟たちとクリケットを嗜み、終末には街の端の劇場に連れて行ってもらって、音楽やお芝居を楽しみました。
その中でも、彼が関心を持ったのは、文学でした。屋敷の書庫には、読ませて貰った事も無い面白い本が沢山あって、毎日読み耽りました。
カペラの父は、
“カペラが、文学に興味があるとは知らなかった。大人になったら、こんな家は出て、作家になればいい
と、言ってくれました。
ですので、リオスは、売れっ子の小説家になってやろう。そして、この家に孝行しようと、心に決め、より一層熱心に本を読み、研究しました。
*
リオスは、いつしか大人になり、家を出ました。
家を出る時にカペラの父から頂いたお金で、小さな詩集を出版したところ、これがたちまち売れ、リオスは、作家カペラとして、国中に広まりました。
彼の詩には、数々の音楽家が曲を付け、これもたちまち人気になりましたので、リオスには、名だたる劇場から仕事が舞い込みました。
しかし、そんなリオスを地獄の底に突き落とす、事件が起こりました。
王国が、風紀が乱れるとして、歌劇を禁止したのです。
それにより、リオスには仕事が無くなり、みるみるうちに食うにも困るような身分になりました。
*
冬のある日。路地路の端っこでただ一人しゃがみ込み、寒さを凌ぐリオスの横に、王国の馬車が通りました。その馬車の窓には、どこか懐かしい、カペラの顔がありました。
リオスは、助けを求めるかのように、カペラに手を振りました。
“野郎、なんたる無礼!
側近がリオスを抑え込みました。
それを見たカペラは、どこか軽蔑したような眼差しで、窓を閉めました。
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