初任務
今日の戦いで成長したとレアトは自分で高く評価していた。
ただ、彼自身の謎の部分。フェリシダットの謎。色々な謎が彼を悩ませていた。
***
「くわっ〜、もう疲れたよ。今日は帰って寝よう。」
(今悩んでも仕方ないだろうし)
「何故か私も疲れたからもう帰りますね。」
「2人ともお疲れ様!ちょっとレアトだけ残って!」
「りょ、了解です。」
(早く帰りたいのに、、)
2人でりあを送った後エボさんが僕を残した理由を説明してくれた。
「あー単刀直入に聞くけどあれなに??」
おそらくあれとは自分が暴れていた時のことだろう。
「自分でもさっぱり記憶も曖昧で、」
「やっぱりそうか、心配だがとりあえず訓練してあれが出ないようにしないとな。とりあえず来れる日は基本来い。俺は基本残ってるから。」
「いない時もあるんですか?」
「基本的にはみんな任務に行ってるからな。どこからか知らんが任務が届くらしい。フェルテフェリスはほとんどが指名制だから今の俺には来ないだろうね。レアトの教育係だし!まぁいつかレアトも行くことなるだろうしその時は僕も一緒に行くんじゃない?」
「そーなんですね!じゃあそれまでにもっと慣れておかないとですね。」
「そー!だから来れる日は来てね!」
「了解です。」
そう言ってヌエボはレアトを帰らした。
(個人的にレアトのこと調べるか、、)
***
そのまま家に帰宅したレアトはすぐ眠りについた。明日は普通の登校日。正直めんどくさいが行くしかない。
ピリリリリリ!!!
目覚まし時計が甲高い音を耳に届けてくる。
今日は珍しく母の声より早く起きた。
「レアト〜!もう朝よ、、あら珍しく早いやん。」
「たまたま起きれた。」
寝癖を掻きむしりながら洗面所で顔を洗う。
余裕を持っての登校も悪くはない。
今日は晴天なので気持ちが良く、昨日の悩みが嘘かのようにレアト心は穏やかだった。
「おはよう〜レアト!なんか今日機嫌いいやん!」
珍しくこの声も悪くはないように覚えてきた。
聞き覚えのあるこの声少し安心する。
「あ、そういえば、昨日の課題見せてくれない??」
「え、俺も言おう思ってた。レアトも昨日休んでたん??俺普通に寝坊してだるいから休んでんけど、」
「俺は〜そう俺もだるくて、、とりあえず課題はどうにかするよ。」
***
フェリシダットのことで頭がいっぱいすぎて、授業内容が全くわからない。どうしたものか、、、
唯一英語だけはなんとか追いつけるのだが、、
レアトは高校の授業に苦戦していた。最近色々なことがあったレアト。学校のことなど二の次にして訓練をしていたので授業についていけなくなっていたのである。
(こんな全くわからない授業するなら訓練して〜)
ちらっ
りあの方に視線を向ける。
彼女はしっかりとした姿勢で授業を受けていると思いきや綺麗な姿勢で目を閉じて寝ていた。
(りあも授業中寝る人なんだ、、じゃあ俺も寝よ。)
そう言ってレアトは眠りについた。
「結城くーん。寝てないで授業聞いてください。ただでさえ小テストの点数悪いのに、」
「へっ?」
先生に起こされてレアトは変な返事をした。
クラスのみんなはクスクスと笑っている。
(めっちゃ恥ずい。やらかした、、でも、りあも寝てたのに、)
そう思いながらりあも見てみると普通に起きていた。
「学業もちゃんとしないと強くなれないよ。」
煽ってきた。
レアトは何故か悔しい気持ちで胸がいっぱいになっていた。
「とりあえずここの問題当たってるから早く解いてくださいね。」
レアトはその悔しさを糧に問題を自力で解いてみせた。
***
〜昼休み〜
「レアト君は勉強できない人なんですか?」
普通に昼ごはんを2人で食べる仲になっているのにも驚きだが、りあがこう煽ってくる人だったのにも驚いてる。
「嫌、平均ぐらいならはずなんだけど、ほら色々ありすぎて今はそっちに集中してるから。」
「まぁ確かに命に関わることだしそっちの方が大事かもね。」
意外と共感してくれているのは嬉しかった。
「じゃありあもあんまり勉強できない人ってことで良かった?」
「いや私は賢い。ここの高校のレベルは私からしたら低い。フェリシダットのこともあるから低い高校を選んだの。」
嫌味にも程があるが、フェリシダットのことを考えるとこれが正解なのだなと感心していた。
今日も学校が終わったら訓練しにフェリシダットに行くつもりでいる。部活というものはこんな感じなのだろうと思うと部活をしている人はすごいと思った。
「今日この後フェリシダットで魔法の訓練しに行くけどりあは来る。」
「わたしはレアト君とは違って強いので大丈夫です。今日は任務もないので帰ります。」
「じゃあ何するの?」
「ハセリ様に見せるアニメの予習でもします。結構アニメ好きなので、」
少し恥ずかしがって自分の趣味を話すりあは少し可愛らしかった。
「僕も少しはアニメ好きだよ。しおんがうるさくてさ。」
「レアト君は何見てるんですか?私は結構最近のだと、あ、まずどういう系が好きですか------
」
結構なお喋りで今日1番の驚きだ。オタクなんだなと思いつつもお喋りなりあが面白いので話に乗ってそのままずっとりあの独壇場だった。
***
いつもの帰り道をいつも隣にいるしおんと一緒に帰る。
「りあさんが結構なオタクでびっくりしたんだよね。」
「え、ガチ?めっちゃ嬉しいことやん。俺も今度お話ししたいわ。そんときはレアトも一緒やけど!」
「まぁそん時になったらどうせ話すことになるからいいよ。」
ニコっと笑うレアトの笑顔はしおんも驚きだった。
「りあさんのこと相当気に入ってるやな!そんな笑顔久しぶりに見た気がする!」
「そんなに笑顔やった?」
自分でも信じられないがそうとう笑顔だったらしい。最近大変な日常だが、そのおかげでこの笑顔があるのだろう。レアトの中で一つの決断が出た。
(とりあえず頑張って強くなろう!)
「今日この後俺の家でアニメ鑑賞会でも開くか!?」
「ごめん!今日はちょっと無理なんだ!」
そう言ってしおんとお別れしたレアトは家ですぐに着替え家を出た。
***
フェリシダットに行くための手段として鳥居を潜るともう一つフェリスに渡される特別な機械を使ってまぁようするに某どこでもドアがある。エボさんが考えたらしい。それを使ってフェリシダットに向かう。
「エボさーんきたけどー。」
フェリシダットについたレアトはヌエボを探し回っていた。食堂にもいないし、どこだろうか。
とりあえず訓練室に向かってみると普通にヌエボがいた。
「あっエボさん!訓練室にいたんですね!」
「お〜レアト!そろそろ来ると思ったから先に待ってたんだ。出迎えしなくてごめんな。」
「今日は何するんですか??」
「今日はレアトの技を増やしていこうと思う。汎用性が高い魔法だから色々できると思って結構考えてみたから習得できると思うからやってみよう!の日だ。」
「エボさんが考えてくれたんですか?」
「まぁ俺は魔法の特性上賢くないといけないからな!勉強がてらって感じだ。とりあえず俺が
作る簡単な人形に攻撃する形でやっていこう!」
そう言って始まった技作りの訓練。
技名は決まってないらしいので自分で考えながら習得していく。
「今使える魔法がガキツカイ。ラファエラ。ウランスパエンテ。ミハエルアルマ。の四つで良かったよな?」
「とりあえず自分で意識的に使えるとはその辺ですね。名前のセンスあるでしょ?!」
「まぁ名前のセンスはどうでもいいんだが、多分すぐに使えるやつが何個かあるからそれの習得だな。」
「エボさんの技の名前なにかあるんですか。」
「自分の1番の技には基本あるが結構多いやつもいる。りあさんとかは多いタイプだな。今度聞いてみるといい。俺は終奥だけだな。」
「終奥って???」
「あれっ言ってなかったか?まぁようするにフェルテフェリスだけが使える最強の技。それが終奥だ。」
「終奥、、僕もできるようになるんですか?」
「いーやまだだね。基本的には俺らフェルテフェリスしか使えない。なるための条件の一つだからな。かと言ってみんなの終奥を教えるつもりもないし俺のも教えない。それぐらい大事な技ってことだ。例外もあるが基本的には最後の技だからな。」
「でも、使う時あるんですか、みんな使わなくても強いのに、」
「そーだな。使う機会なんてそうそうないだろう。そんなことよりお前の特訓の再開だ。」
そう言って終奥という言葉を知るだけ知って訓練を再開したレアト。レアトが終奥を習得する時はくるのだろうか。
***
学校に行き、帰ってすぐに訓練すると言う生活が二ヶ月ほど続いた。
レアトの体付きは変わり身長も伸び筋肉もついた。体術もヌエボに教えてもらった為そうとうなレベルまで達している。
その間にあったテストでレアトは赤点をとり痛い目を見るのだが、、
そんなことは置いて、ついにレアトの初任務が開始される。
「ついに初任務だけど、任務について詳しく聞きたいんだけど。」
「ちゃんと聞いてないの??今回は私の任務にレアト君が同行する形だけどこれからの任務は前渡された携帯みたいなやつに乗ってるから適当に探したらいいと思うよ。」
現代的な部分が多いんだなと感心しながらエボさんに渡された携帯を見てみると任務と言う部分が表示されていた。そこを押してみるとズラッと任務が出てくる。星でその任務のレベルを表しており今回行くレベルは星9フェルテフェリスで余裕レベルらしい。
レアトのレベルがどこか分からないためこの任務をりあと同行するということらしい。
任務には行き先しか書いておらず何をしたらいいか分からないが基本的には調査と時々出るカラーミを倒すだけらしい。なぜ星が高いのかは向かう先の環境が悪いからだとりあは言う。
「環境が悪いだけだと良いんだけど、前のフェリシダットにカラーミ達が襲ってきたのも不可解だし新種のカラーミも出て来たから今回の任務はそう簡単に行くか分からないから気を引き締めていきましょう。」
「わ、分かった。」
「レアト君はブルーカラーミーは倒せるの??倒せるのならばもし出て来た時よろしくね。」
「一応レアト君のレベルを見るためだから。」
半ば強引に戦えと言われているが正直倒せる自信はある。この二ヶ月での自分の成長は凄いと自負してるし技のバリエーションも多い方だと思う。やれるだけの事はして来た。あとは実践だけだ。
「行きましょう。場所はゾージーニ王国。燃え尽きた王国。火が燃え続けて被害が広がっているのでその火の始末と調査です。」
そう言って俺とりあはフェリシダットを後にした。
***
移動は車で行くらしい。やはり現代的だ。
道がしっかりとした道ではないのでどこでも走れるように改造はしてあるらしいがそれをりあが普通に運転しているのには驚愕した。
〜移動中〜
「運転できるんだね。」
「こっちの世界には免許なんてないからレアト君も練習したら乗れるよ。結構楽しいから今度練習できる時したら??」
「そうさせて貰おうかな。」
側から見ればただのドライブデートだ。
星9の任務に行く2人だとは思えない。
「1人の時は飛んでいくんだけどね。そっちの方が早いし。」
「空飛べるの???」
「魔法が魔法だからね。1人でしか使えないから今回は車だけど。とりあえず気を引き締めましょう。」
それから約2時間お互い一言も発さずただただ緊張が漂っていた。
「そろそろ着く頃よ。」
急に言われて肌に緊張が走った。言われてみれば暑くなってきた気がする。りあも上着を脱いで半袖状態だ。
「今思ったけどりあはその格好で戦うの?前見た時はガッチリしてたけど、、」
「前のあれはなんというか、、調子に乗ってただけよ、、いつもは体一つで戦うから。なんか嫌で、」
そんなところに気を使っていてやはり女の子なんだなと一瞬思ったが、そんな考えはすぐに消えた。
目の前に崖が現れたのである。
急ブレーキをかけなんとか落ちなかったが、これにはりあも驚いていた。急に目の前に現れた崖。2人は車を降りて下を確認する。
下を見てさらに驚いた2人。下にはなんと燃え盛る火がうようよと立ち上っていた。今まで崖が見えなかったのは火が放つ蒸気で隠れていたからである。
「こんなにも温度が高いなんてわからなかった。」
「でもなんで崖の下で火が燃えて上まで消えないんだろう。」
「それはゾージーニ王国が地下にあったからよ。けどやっぱり火のせいで地上まで燃えてるみたいね。おそらくどこかに降りる場所があるから準備して探しましょう。」
そしてレアトの初任務は本格的に始動していく。
***
かなりの高温で汗がダラダラと流れ落ちていく。現実の砂漠よりも高温な気がする。目の前には大きく広がった炎達。
王国が燃えているという嘘のような状況にいざ立つと命の危険がすぐそこまで来ているがした。
「端でこの温度だと中心はかなりやばいかもね。」
2人で降りる場所を探しながらりあが言う。
トレスフェリスのりあがこう言うのだからかなりやばいらしい。
緊張が走る中2人は降りれそうな場所を見つけた。
「かなりの坂道だけどなんとか行けそうな道になってるからここから降りましょう。」
「分かった。でも火はどうする?かなりの温度だから体が、、」
「その点に関しては大丈夫。私の魔法でなんとかなると思うから。」
「風翔」
2人の周りに風が舞う。風というより暴風のその風はみるみるうちに僕たち2人を囲って火から守ってくれる。
風翔は風を出す技らしい。
「私じゃなかったらやばかったかもね。今台風の目の中にいると思っといて。出たら危ないから。」
「う、うん。」
りあの魔法に驚愕を受けながら崖を降りていく。
10分ほど降りただろうかついに地面が見えた。
何メートル降りたか分からないがとりあえず一安心だ。
「風翔でなんとか火は大丈夫だけど温度が高すぎるから危なくなるうちに調査して無理しないうちに上に戻りましょう。多分今日だけじゃ無理だから。」
「とりあえず辺り一体の火の処理をします。レアト君は自分の体守っててください。」
一体どうやって火を消すのかと思ったが、怖かったので自分の体を守ることを優先した。
「風翔」
さっきまで僕たち2人を守っていた風がどんどん強くなっていく。そしてみるみるうちに周りの火が強風で消えていった。
「ふぅ。一旦消せる範囲まで消せたと思うけどどうでしょうか。」
フッ
周りを囲っていた風が消えて視界が晴れる。
視界の先には火が消された後が見事に広がっていた。炭だらけの景色に前までここに国があった名残があった。
「周りにも無惨じゃないか。なんでこんなことに、、」
「それを調べるために私達がいるんです。行きましょう。」
視線の先にはまだ立ち登る火が残っていた。2人は火が消えている範囲を調査することにした。
***
「とりあえず一緒に調査しましょう。別々で調査したらまた火が出て来た時にレアト君を守れません。」
確かに僕は今この火をどうにかできる手段はない。時間は掛かるが2人で調べることになった。
家屋が燃えた炭の上を歩いていく2人。周りに気をつけながら中心に向かって進んでいく。調査すると言ってもやはり調べるべきはこの火の出所だ。
ズサッズサッズサッグシャッ
ゆっくり歩いているとレアトが何かを踏んだ音がした。炭には変わりないのだが、明らかに音が違うので2人はそれを確認する。
「炭だけどこんなさっきまで違う音するなんておかしい気がする。」
レアトが自分の足跡の部分を調べようと手を近づけてた時、りあが叫んだ。
「待って!!」
ビクッ!
体がその声に反応した。
「それ、、死体です。」
レアトが踏んだのは死体だったのだ。レアトはあまりにも近づきすきで気が付かなかった。りあは少し前を歩いていたのでそれが死体だと気づいたらしい。
「ヒッ!!」
レアトがあまりにも驚きすぎて腰が引ける。
訓練して体は強くなったとはいえ、精神はまだ未熟。人の死体を見るのなんてもちろん初めてのことだ。
腰が引けて動けないレアトにりあが駆け寄る。
「落ち着いてレアト君。大丈夫です。私がいるから。」
「ふー。」
深呼吸をしてすぐに落ち着くことに成功したレアト。りあもそれを見て一つ息をこぼした。
「やっぱりそうよね。亡くなった人だっているよね。」
改めてその燃えた死体を確認した2人。
そしてもう一度周りを見渡す。死体を確認した後だから分かる。
そこら中に死体があった。
りあはそれを見てなにかを確信した顔をした。
「死体がこんだけあると言う事はやはりそうね。」
「どーゆー事?」
「この王国は一気に火の海になったと言うことよ。」
「なっ!でも、確かに、そうじゃないと説明がつかないよな。」
「何かが故意にしたに違いない。この任務ただでは行かなさそうね。」
***
ニヤリ
何者かはどこかで笑う。