完全体と最強になるもの
もう一つの人格アートを自分のものしたレアト。今までの彼ではこの人格を操ることができずにいたのだが、精神的に成長したことで彼を操ることが可能になった。そして、今新たなレアトが誕生する。
「これが本当の俺の力、、、、」
「あぁこれが本当のお前だ。」
「なんだ!その魔法は!」
レアトが新たに繰り出した魔法。空間を操るものは亜空間を新たに作りその空間を自在に操るというもの。これは鷹見護よりも上級の技術。これができるのは元々の魔法が空間系のものとレアトのみである。
「さぁ本番といこうか。」
空間を操るもので作った亜空間で自分とボーダー、ベレーラにつなげる。レアトがそこに物理攻撃をすると離れているはずの二人に攻撃が飛んだ。
周りの木はもうレアトにとってなんの邪魔にもならない。レアトは新たに遠距離攻撃を覚えた。
そしてさらに追撃を加える。
ドンッ!
レアトの花火化。
「これも届くよな。」
ボーダーとベレーラはレアトの魔力が上がるのを感知し、ボーダーは防御をベレーラは発生させた木々を解除しレアトに突撃する。すでにレアトは撃拳花火の体制に入っていた。もう攻撃をしても間に合わない。
「撃拳花火」
レアトの拳が亜空間目掛けて繰り出される。もちろんその攻撃の先はボーダーとベレーラ。反撃の体制に入り防御が遅れたベレーラが見事にそれをくらう。眩い美しい光が空間を包んだ。光が収まった後ベレーラはもう動かずにいた。
そしてなんとか防御したボーダーは生き残っていた。
「ベレーラ???」
無惨に転がっているベレーラの死体。ボーダーはその姿を目に焼き付ける。
「さすがだな!レアト!」
「オーガンも、ベレーラも、、、、お前は殺す。」
「!!!」
そういうとボーダーがベレーラの死体を吸収し始める。レアトはあまりにも予想外の行動だったため動けなかった。ベレーラを吸収したボーダーに異変が起こる。
「ウガァー!!!」
煙で姿が見えずにいたが、レアトは漆黒の町でのベルを思い出す。まさしく今、目の前のカイードは進化をしている。魔力が上がっていくのをレアトは静かに待っていた。叫び声が止みその姿があらわになる。少年の見た目だったボーダーは青年の姿になっていた。
「死んでくれ。」
バンッ!
ボーダーが床を蹴る音がしたと同時にレアトの目の前に現れた。
「おいおいこいつは楽しめそうだ!カイードとしての成長が今終わりやがった!レアト!さっきと同じと思うなよ!」
レアトはこれに全く反応しない。彼自身先ほどよりもレベルが上がっていることに気づいていた。今二人は鼻と鼻が触れそうな距離で睨み合っている。目を逸らすだけでやられるかも知れないというプレッシャー。レアトの額には数滴の汗。覚醒したレアトでなければすでにやられていただろう。二人は静かに開始のゴングを待つ。レアトの額の汗が頬を伝って地面に今落ちようとしていた。
ポチャン
汗が落ちると同時に二人の戦いが開始された。
***
ボーダーが覚醒する少し前りあは完全に劣勢だった。
「攻撃は当たらないんだからもう諦めなよ。君のこと殺す気ないからさ。」
「ここを通すわけにはいかないんです。」
時間はそこまで経っていない状況の中りあは終奥を使用するか迷っていた。りあの予想では終奥は通用する。しかし、それが防がれた時りあは時間を開けなければもう一度使うことができない。さらに実践で実際にできる保証もない。
りあが使わない理由は時間を稼ぐため。レアトが来る時間を。二人ならどうにかなるという自信がりあにはあった。そんなレアトも苦戦を強いられることになるがりあはまだ知らなかった。だがその事を知る出来事が起こる。
ズワッ!
どこからかでかい魔力を感じた。それはボーダーが覚醒した時の魔力。その魔力をりあは感知しており、それは目の前にいるクルートもそうだった。
「あいつ。覚醒したのか。これはちょっと用事が増えちゃったな。殺してでも通るか。」
ボーダーの覚醒によりクルートの魔力が上昇する。感知した魔力は今感じた魔力と同等かそれ以上。りあはこれが決めてとなった。
「終奥解放!」
りあの魔力が上昇する。
「お!すごい魔力だね。」
「雷降奥義激永雷切」
りあが終奥を発動させる。今りあは彼女自身が雷となり神と化した。
「やばそうだね〜。」
りあが手を動かすと同時に大量の雷がクルートを襲う。逃げ場を塞ぐほどの雷にクルートは初めて防御の構えをした。
「防御しましたね。」
防御した腕にはしっかりとダメージが入っていた。それを確認するとまた手を動かし雷を発射する。雷降奥義劇永雷切は雷降の1の型瞬光雷撃、2の型反雷激光、3の型永雷雨雷を合わせた技。同時に全ての型を最大出力で出せる技である。
りあは先ほど2の型反雷激光の最大出力の雷を繰り出していた。今はオートで自身から攻撃するように設定し、1の型瞬光雷撃のスピードでオートで発動した雷と同時にクルートに攻撃。そして3の型永雷雨雷で逃げ場を無くしていた。
3の型はその名前の通り永遠に雨のように雷を落とす魔法。これは魔力の消費は激しいため一人の時には使わない技。終奥もそうなのだが、今は全力で戦わないといけない理由があった。
「やっと戦いらしくなってきたね!」
クルートは左手で雷を弾き、右手でりあの攻撃を防御する。光に反応できるほどの反射神経を持ち合わせているクルートだが、りあはそれでも攻撃を続けていく。クルートはダメージを最小限で抑え、りあは常に最大出力の攻撃を続ける。
全力で動き続けているりあ。クルートに反撃の隙さえ与えないが、限界はもちろん来る。魔力は尽きていないが先に体力が底をついた。動けなくなったりあだが、攻撃されないように雷を放ち続ける。
(体力が?!もう、、)
普段からは考えられない体力の減りにりあは困惑していた。クルートが雷を防ぎながら説明する。
「いや〜。攻撃してないと思ったでしょ?感知できないほどの毒を撒いていたから。いつもより体力使ったのかもね。」
クルートが防御しながら毒を撒き散らしていた。魔力に影響はないものの体力が減ってしまえば体は動かなくなる。クルートは魔力切れでなく体力切れを狙ったのだ。
「君は今動けないらしいからね。反撃といこう。」
クルートは雷のわずかな隙間を発見し、そこを煙化した状態でりあの目の前に現れた。
ドガン!
それと同時にりあを蹴り飛ばす。飛ばされたりあは魔法を解除する。少しでも体力を回復させ反撃の時全力を出せるように。
しかし、クルートが時間を与えるはずがない。りあの体が宙に浮く。クルートとりあには距離があるため持ち上げることができないはずだ。りあは謎の力で首を締め上げられる。
「カッ」
息ができないりあがそのままクルートの元へ宙を移動する。
「俺の魔法は、煙。煙化することをできるし動かすこともできるんだよ。お前の首を絞めてるのは空気。俺が動かしてるんだよ。」
バンッ!
息ができないりあはこのままではやられると感じ激永雷切を再発動する。
「魔力切れじゃなかったのか。でももう限界か。さっきより弱いよ?」
再発動したのは良かったが魔力も切れかけていたため威力が弱まっていた。
クルートにとってはもう電気マッサージレベルだろう。それでもりあの目はまだ諦めていない。その目を見てクルートも攻撃の手を止めていた。
(何かまだあるのか?)
完全に魔力が切れるのを待つ。再発動して数十秒後。りあの魔力が底をついた。
「やっとか。これで終わり。」
クルートが構える。りあも覚悟をしていた。
(時間は稼いだでしょう。)
しかし、まだ希望は消えていなかった。クルートが魔法を繰り出そうとしたとき。クルートの動きが固まったのだ。
「なっ!動けない!」
「りあさん!今です!」
「!!!」
りあが力を込める。諦めてはいたもののりあの体はハセリと訓練した時と同じ状態。りあが体の底からないはずの魔力を絞り出す。一発逆転のチャンス。
「終奥解放風翔奥義自獄風殺!」
刃と化した風が動けないクルートの周りを囲む。唯一空いているその先にはりあ。その手には全魔力を込めて作られた風の大剣がある。その名も風殺剣。一撃で何もかもが消滅する絶対無敵の大剣である。クルートの周りを囲む刃の風は逃げ道を無くすためのものだがクルートにそれは効かない。しかし、動けないクルートにとっては不要のもの。この刃の風は自獄風殺のとき他の役割も担う。
それは風殺剣の威力を外に逃さないことである。
「終わりだ!」
「チっ!」
りあの一撃必殺がクルートに直撃した。りあの前方の地面は全てが吹き飛び無惨な光景となっていた。クルートはおそらく跡形もなく消し飛んだのだろう。
「レアトく、、ん」
りあは全てを出し切って気を失った。
「りあ?!りあ?!」
目が覚めたりあの目の前にはアートと一体化して目の色が両眼で違うレアトがいた。
***
りあがクルートと戦っている時、部室には鷹見護とレセアが亜空間の中の様子を確認していた。鷹見は自身で作った亜空間の中の様子を魔力を感知することである程度理解できる。しかし、完全に理解できるわけではないのでボーダーの覚醒時とクルートの魔力が上がった時の中の様子は全く分からずにいた。
「カイードの魔力が上昇しやがった。」
「二人は大丈夫なの?」
「レアトは大丈夫だろう。しかしりあの方が心配だ。」
鷹見は覚醒したレアトと今覚醒したカイードの魔力はほとんど同じという事と終奥を解放していたりあがやっと戦えるほどの魔力を使っておりすぐにこれが尽きると予想しりあのサポートに回ることにした。
「レセアさん。僕の魔力を使ってあなたの魔法を使ってください。」
鷹見の魔力を使用した亜空間の中では基本的に外部からの魔法は効かない。だが鷹見に触れ経由することで魔法を発動することができる。
「でも私の魔法は、、、」
「えぇ。だから僕が出すタイミングでお願いします。」
レセアが鷹見に触れ魔法の発動のために精神を研ぎ澄ませる。鷹見はりあが亜空間全体に終奥を放ったことで敵の位置を掴めずにいる。敵の場所が分からない状況でレセアの魔法は使用できない。りあの魔力が減る中、好機を待つ。りあがクルートの攻撃で体力切れになった時まだ全体の魔力は尽きていない。鷹見はここかと感じてもりあがこのチャンスを生かしきれるかが分からない。まだかと待っていた時りあの魔力が切れる。クルートの魔力のみが亜空間にあるのを感知している。しかしクルートの魔力は減っておらず、これはまだりあが生きていることを意味する。鷹見はりあが最強になる人間と信じている。クルートの魔力がさらに上昇する。鷹見はりあが死ぬかもしれないという絶望と生きているならどうにかしてくれるはずという希望を持つことしかできない。クルートの魔力が上がり切ったタイミングを見てここしかないとレセアに合図を送った。
「いまっ!!!」
これに全神経を集中していたレセアが魔法を発動する。
「メデック」
レセアの魔法がクルートの動きを封じた。
「りあさん!今です!」
鷹見はりあを信じた。これに応えるかのようにりあの魔力が上昇する。そしてクルートを吹き飛ばす。鷹見が作った亜空間を突き破り遠くの彼方に飛んで行ったのを鷹見とレセアは目視で確認するがりあはこのことを知らない。りあの安否が分からないが鷹見は吹き飛んだクルートが本当に死んだかどうかを確認しにいくことにした。
「レセアさんあれを探しに行きます。亜空間が解除されたら僕が戦っていると思ってください。りあの方は解除しときますのでりあをお願いします。」
「気をつけて。」
そうして鷹見はクルートが飛んだところへと向かう。
***
ボーダーが覚醒し、ついにレアトとボーダーの第二ラウンドが開始された。
アートと合体し花火化したレアト、ベレーラを吸収しカイードとして完全に覚醒したボーダー。覚醒したもの同士。拳と拳がぶつかり合い、火花が飛び散る。レアトの花火化は覚醒した今長時間の使用が可能になっていた。ボーダーにダメージを蓄積していく。魔力ではレアトが優位だが体の耐久力は完全にボーダーが優位である。このままではレアトは倒しきれない。二人の削り合いはさらにヒートアップしていく。
魔力で優位だと感じたレアトは距離を取ろうと試みる。魔法を使用すれば勝てると踏んでいた。だが距離を取ったとしてもすぐに詰めてくるボーダー。ボーダーはレアトがしたいことを全て読めておりそうさせまいと動いていたのだ。
「ちっ。鬱陶しいな。」
近距離で殴り合った状態で魔法を発動しようとすれば必ずその隙をついてくるだろう。レアトの花火化も長時間の使用が可能になったとはいえ今のレアトはどれくらい使えるかが分かっていない。それまでに倒せなかった時のために余計に距離を取りたい。そのために頭を回転させる。この時のレアトは無意識に空間を操るモノを解いてしまっていた。
(どうすれば、、、)
「おいレアトお前楽しんでないだろ?」
苦戦しているレアトの中にいるアートが話しかける。アートはレアトと一体化したとはいえ感覚は共有されない。しかしアートはレアトの戦いの違いに気づいていたのだ。
「お前の戦いはこんなモノではない。相手に先手を取られてどうする。そんな戦いをするんだったら俺と代われ!俺にやらせろ!」
レアトの作戦の中にアートと変わるという選択肢は合った。実際アートの人格になっている時レアトは記憶をなくしているとはいえアートの実力は知っている。
しかし、レアトは記憶がなくなるということが怖かったのだ
「安心しろ。どうせ記憶が無くなるのが怖いとでも思っているところだろう?
もうお前の記憶がなくなることはない。」
「そうかよ。じゃあ好きにやってくれ。」
そう言ってレアトの体の主導権がアートに変わった。レアトにはもう怖いものは無かった。ついにレアトはアートの戦いを目にすることになる。アートに主導権が渡った時その体には凄まじいオーラが漂っていた。それを感じ取ったボーダーは危険を察知し距離をとった。
「おいおい。距離は取らねーんじゃなかったのか?」
「おまえ誰だ?」
「俺はレアトだぜ?正真正銘の。」
「レアト??」
「あぁレアトだぜ?」
アートがニヤつきながら名前を答えている。その真意を知るものはアートしかいない。
「フルネームなのかそれは?」
「フルネーム??聞きたきゃ勝手に聞けよ。」
「じゃあ体に聞いてやるよ!」
ボーダーとアートの戦いが始まる。ボーダーがアートに突撃する。しかし突撃したかと思った矢先ボーダーはアートの反対側にいた。アートを通りすぎていたのだ。
「あれ?逃げるのか?雑魚だな。」
再び突撃するがまた通り過ぎている。いや通りすぎているのではなく移動しているのだ。
「空間を操るもの」
アートはレアトが消していたのを再利用したのだ。アートの魔法はレアトのそれを超える。アートは亜空間を操作しているのではなく、自分自身を亜空間に移動させることで現実から孤立させたのだ。そしてそれが外から見えるように調整し、亜空間の縁に触れたものが反対側から出てくるようにした。アートの戦いの楽しみ方は相手を罵り痛ぶり絶望まで追い詰めるというもの。非道極まりないこの戦い方だが、これができるほどの実力が彼にはあった。そしてレアトはこの戦い方が非道だと認めたくはなかった。自分が戦う時と似ていたから。彼はレアトでレアトは彼なのだ。元は同じの二人。そこにレベルの差があるとはいえ必然と戦い方は似るだろう。レアトは自分の戦いが正義か悪かとか関係なくアートの戦いに惹かれてしまっていた。
「お前は俺に一つも触れられずに死ぬ。」
「武器を操るもの」
亜空間の中でアートが武器を取り出す。取り出した才器は短剣だが、それは才器と呼ぶには相応しくないただの短剣だった。今のアートには使う理由がないモノだが、、、、、
「痛みを操るものノーイ」
持っていた短剣に魔法を付与する。
ビュン!
そしてこれをボーダーに向かって投げた。短剣をアートは投擲武器として使ったのだ。亜空間からの攻略に気を取られていたボーダーはこれに反応が遅れ攻撃を受けた。しかしこの攻撃に一切のダメージはなく少し傷がついただけ。ボーダーはこれを気に留めることはなかった。
亜空間の中のアートが笑っているのも、、、、、
「痛みを操るものアロスト」
アートが魔法を唱える。
それと同時にボーダーについた傷の痛みが上昇する。
「ウガッ!!!」
時すでに遅し。痛みは最高潮に達し身動きが取れないでいた。それを見てアートは亜空間の中から出てボーダーの前に立つ。
「痛そうだな。だがまだだ。」
そう言い手のひらをボーダーに向ける。そのまま空をゆっくり握り潰すアート。それに伴いボーダーの痛みも上昇していく。そして全て握り潰した時。ボーダーは気絶した。
ニヤリ。
そしてアートは笑う。
ボーダーが目を覚ますとさっきと同じ空間にいた。少し違うのは、空間の中にアートが作った亜空間にいたこと。
そばにはアートが立っている。しかし普通に立っているのではない。
その姿勢は撃拳花火を溜め込む姿勢。アートはボーダーが起きる寸前まで魔力を拳に溜め込んでいた。今にも爆発しそうなその右手。
「起きたか。最後は気持ちよく消し飛んでくれ。」
「なっ!」
「撃拳花火」
「あっ、触れちまった。」




