覚醒②
「コ、コレがドウしたんだ?」
スカルの髪の毛を鷲掴みにし、レアトを煽る。
「その人は仲間です。」
静かに怒りを抑え込む。怒りを爆発させるのはこの状況において不要なことというのは分かっている。
(スカルは元は本のはず。なんで本に戻らないんだ。)
「おい、このゴミやろう。そいつをボコったからっていい気になってんじゃねーぞ。」
「コ、こいつヨワい。イジメがいがない。イジメがいある?」
ニヤッ
口角をこれほどかと上げ、気味の悪い笑みを作るベル。
(戻らなかったのじゃなくて戻れなかったのか?)
「虐めてみろよ。このペットやろう。」
***
「モうこいツいらない。」
手に持っていたスカルを投げ捨てる。
それと同時にスカルが本に戻る。その光景を見てレアトはベルの魔法に1つの予想を立てる。
スカルが本に戻ったと同時に二人の戦闘が始まった。
まずはレアト。
予想が合っているかどうか確認するために距離を取りながらの戦闘。
「武器を操るもの」
ミハエルアルマで弓矢を取り出し遠い距離からベルに攻撃する。
ベルはその攻撃を避ける気配はなく距離をとっているレアトに近づく。
(当たらない。やっぱりこいつ近距離しかないな。)
近距離しかないと分かったレアトだが、今のレアトには近距離以外の決め手となる技がない。
「おまえハにげてバッカ。」
そう言ってベルは歩みを止める。それと同時に影から太鼓が現れ、その太鼓を鳴らし出す。
ドンドン
その音と同時にレアトの視界がぐらつき膝をつく。
「!!!」
ニヤ
膝をついたレアトを見て、一気に距離を詰めるベル。
「こんにちハ。」
バキン!
レアトの顔を蹴るベルの土俵に入る。幸いなことに蹴りの威力はそこまで強くない。頭を回転させこの状況を打開したいレアト。
「硬化を操るもの」
レアトは時間を稼ぐためにリヴァイアテクトを展開し、自身のからだを硬くする。
ガンッ!
「ッ!!なんでカタイ?カタイのいや。」
ドンドン
再び太鼓を鳴らす。その音でレアトの視界が元に戻る。しかし、同時にリヴァイアテクトの効果が切れる。
「!!!硬化が切れた?!」
この瞬間の時間をベルは見逃さない。再び攻撃を始めるが視界が元に戻ったレアトはその攻撃を防ぎ距離を取る。レアトはここでベルの使う魔法が分かる。
「お前の魔法性質変化だろ?」
「せいかいだ。せいかいだ!せいかいだ!せいかいだ!」
レアトがこれに気づいたのはスカルがベルに倒されたということ。
レアトがスカルに渡した天刀。
この刀は周りの性質を変える能力を持つ。頭のいいスカルはこの能力を駆使して戦っていたはず、負けるということは性質変化を超える魔法の使い手。もしくは同じ魔法の使い手。
前者の場合おそらく一撃でやられるはずと考えたレアト。しかしスカルは顔面は膨れ上がるほど殴られていた。スカルがベルと同じ土俵に入ったときおそらく二人の間には大きな実力があった。
「少し頭を使えばわかることだった。けどもうお前は終わりだ。」
「自然を操るものモード風翔」
レアトはりあの魔法を自身の目で見たことにより、りあのレベルまでとはいかないが魔法の模倣に成功していた。
レアトとベルの周りに風が発生する。
「こんナモノ。ッ!!!」
ベルが風に飛ばされる。しかし、その攻撃は一切のダメージはない。レアトはわざとダメージの入らない突風を起こした。
飛ばされたベルはなんのダメージがないのに困惑する。
「視界を操るもの」
今度はベルの視界から消える。ベルはさらに困惑し、どこからかくる攻撃に身を構える。だが攻撃は来ない。それでも攻撃に備える。
「お前は頭が悪いからな。狙われるのが自分だけと思ってやがる。」
声と同時にレアトが透明化を解きベルの視界に出現する。
レアトが姿を見せたのはベルが飛ばされる前に立っていたところ。そこにはベルの太鼓がある場所。
異変に気づいたベルだが、すでに遅かった。
「やめロ!!」
ボン!
レアトが太鼓を破壊する。
「これで終わり。」
ベルは性質変化のとき必ず太鼓を叩く必要があった。それに気づいたレアトはまず太鼓を破壊する方向に変えた。太鼓が無くなった今この戦場においてレアトは自分の土俵に追い込んだ。
「お前自身には魔法は使わない。スカルにしたことをそのまま返してやる。」
「それはこわれタ。け、ケどおれはマダこわれてない!」
ドンドンドンドン!
ドラミングのようにベルが自身の胸を叩く。そしてベルの体型が豹変していく。
「???」
その体はレアトの何倍にも膨れ上がり、それはもうカラーミーに近いものだった。
「じぶんのせいしつは、いつでもかえれる。」
「だからどうした?こいよ。」
第2ラウンドが開始される。
***
ベルは自身の性質を変えたことで自我を失いつつあった。
「シネッー!!」
レアトに突撃するベルだが、単調な攻撃。レアトはするとその攻撃を避ける。しかし反撃はしない。
「どうした?攻撃してくれないのか?」
「ウガッーー!!」
大きく腕を振りかぶりレアト目掛けて振り下ろす。これも華麗にレアトは避ける。
避けられてもなお攻撃を続けるベル。自我がほぼ無くなっており、もうそれはカラーミーだった。
「まだ会話は可能か?」
「オ、オレはズットシャべレル!」
「。」
ベルの攻撃は全て単調。レアトはもうやる気を無くしかけていた。
「ヨケルナッー!」
避け続けるレアトを追いかけ続けるベル。レアトは一切攻撃しない。この状態になったベルをボコボコにしても何もスッキリしないからだ。もう始末してしまおうと思った時ベルの攻撃が止んだ。
「ウッ!ガァー!!!」
ベルが頭を抱えて苦しんでいる。体から魔力が吹き出し体が縮んで行く。
そして吹き出した魔力が再びベルの体に戻っていく。
レアトは構える。何かが生まれるその時を待って。
「フッー!これには時間がかかるんだよ。自我がないときに攻撃されなくてよかった。」
ベルの姿が見えるようになり、その姿を確認するレアトはそれに見覚えがあった。
カイード。
ゾージーニ王国で倒したカイードのオーガンと同じ姿をしたベルが立っていた。
「お前、カイードだったのか?」
「カイード?いや俺はイェスト族のベル。ベル ランケージ。」
「そうか。安心したよ。本気でやれそうだ。」
ただ、カイードに似ているだけと安心したレアトは花火化する。
ドン!
レアトの体豹変し、魔力が溢れ出す。
「殺りあおうか。」
レアトが攻撃を仕掛ける。その速さはフェルテフェリスレベル。基本このスピードに追いつけるものはフェルテフェリスとフツロを除いていない。しかしそれは身内でのこと。ベルはこのスピードでの攻撃を安易とガードする。
「速いけど、、まだやれる。お返し。」
「!!!」
レアトを蹴り返す。その攻撃は今のレアトとほぼ同等。蹴り飛ばされたが受け身を取ることでダメージを最小限に抑える。しかし異変を感じ取るレアト。
「!!!ブエッ!」
いきなりの吐血。そこまでのダメージが入ってないはず、レアトは困惑するが1つの結論に至る。
「フッー」
深呼吸を行い冷静になって結論を確認する。
確認したのは蹴りを受けたときにガードした腕。その腕は痙攣しており、ベルの蹴りの威力から考えられないほど長い。
麻痺毒。
ベルが蹴りと同時にレアトに仕掛けた攻撃、その毒が腕を通して体に侵入し吐血。ベルは姿を変えたことで自分の周りの性質を簡易的にだが、変えれるようになっていた。
「体力を操るもの」
スッー
レアトが花火化を解く。
「あれ?もう終わりか?」
「は?お前如きに使う代物じゃねーって判断しただけ。」
レアトはこの戦いは時間がかかると予想。魔法を駆使しないと勝てないと理解する。花火化で魔法を使うことは理論上可能だが、体の負荷が大きく使用可能時間が大幅に減少する。使用可能時間が5分のレアトは花火化を解いての戦闘に臨む。
しかし、魔力をある程度使ってしまっているレアト。時間がかかるとはいえ時間を掛けたくない。
幸いなことにベルは追撃してこない。ただレアトが復活するのを待っていた。
レアトはこの傲慢さを利用する。
レアトは再びベルに攻撃を仕掛けるが、今回は花火化していないただの攻撃。もちろん反撃され、先ほどと同じ状況になる。
「ブウぅ!」
今回は体力を操るものを使用せずに再び突撃する。もちろん起こるのは同じこと。蹴り飛ばされ吐血。
これを何回も続けるレアト。途中である仮説を立て、再び突撃。今度は先ほどまでとは違う行動を起こす。
ドン!
一瞬の花火化。レアトはこの一瞬でベルの背後を取る。しかし、取ったと同時に花火化を解く。
「何がしたい!」
ドガン!!
繰り返される同じ状況。吐血するレアトだが、その顔には笑みがあった。
「勝ちだ。」
「なんだ?負けを認めるのか?」
「お前の勝ちって言ったんじゃねー。俺の勝ちだ。」
「体力を操るもの」
ここで体力を回復させる。
「構えた方がいいんじゃないか?」
身構えるベル。レアトの空気が変わったことに気づく。
ドン!
再び花火化するレアト。この戦いを終わらせるつもりだ。
「硬化を操るもの」
構えるレアト。それはもう突撃するしか考えられない構え。その構えは全くベルの方を見ずに構えた拳を見つめる。
溢れ出た花火のような魔力たちがレアトの硬化した右手の拳に集まる。
ベルはもう時間がないと気づき、この隙に攻撃を仕掛ける。
「しね!」
「お前がな。」
ベルの攻撃を避けた瞬間、その視界からレアトが消える。
「弱点を操るもの」
弱点を操るもの
〜それは相手の任意の場所に弱点を作るというもの。
もともと弱点がある場合そこに攻撃したさい巨大なダメージが入る。〜
「!!!」
その声はベルの背後から聞こえた。
気づいた時にはもう遅かった。
レアトは先ほどベルに何回も突撃したことで、ベルには弱点があるのではという仮説を立てた。そして、この状態になってからベルの背後を見ていないことに気づき背後に回った。するとそこには一部分だけ最初の状態のベルの肌色の部分が確かにそこにあった。
レアトはそこに渾身の一撃を放つことにした。
背後を取られたベルは反応が遅れる。
ブシュ!
レアトの渾身の一撃がベルの体を貫通する。
花火化した時の余る魔力をため、一気に開放するこの技。
その時溜めた魔力が爆発する光景が美しすぎることからこの技は
「撃拳花火」
と、呼ばれる。
「じゃあな。」
***
腹を貫かれたベルは、撃拳花火の影響で塵となって消えた。
「ふー疲れた。でもまだ終わりじゃない。フツロを探さないと。」
レアトはフツロを探すために歩き出す。
「おーい」
どこからか声が聞こえる。今のこの場にはレアト以外の人の気配はない。警戒を強める。
「ここですー!ここ!」
レアトは声のする方に近づく。そこには本化したスカルが声を出していた。
「スカル!無事だったの?!」
「はい。戦いが終わるまで黙っていました。ですがもう人化できないので連れて行ってくれません?」
「戦えないとはいえ味方がいてくれるのは心強いです。」
「では、フツロさんを探しましょう。一つ心当たりがあります。」
スカルの心当たりはスカルがベルに引きずられている時に、「もどらなけらば、」
という言葉を耳にしていたということらしい。
おそらくフツロは最初にイェスト族を相手していた大広間にいるとスカルは言う。
急いでレアトはそこに向かった。
***
大広間に戻ったレアトとスカル。
そこにはムッジーナとフツロが戦闘を繰り広げていた。
「はっはっは!面白い!あなたの魔法!未来が見られると言うのは!」
「何が面白いんだ!俺の攻撃の一つを当てれないくせ。」
戦況はムッジーナが攻撃をし、フツロがそれを避け続けるの繰り返し。
ただただ、フツロの体力が消耗していく。
「フツロ!!」
レアトがフツロの元へ駆けつける。
「おや?4人はやられましたか。まぁ別に期待していませんがねぇ。」
「黙れ。こっからは2対1だ。」
2対1になったとはいえこちらの二人は満身創痍。ほとんど限界である。
二人はムッジーナを倒すための作戦を立てなければいけない。だが、その時間をくれるほど相手は優しくない。
「今はムッジーナの情報が欲しい。簡潔にあいつの情報をくれないか?」
「あげたいのは山々だが、あいつの魔法を何一つわからない。俺はただ耐えていただけだ。恥ずかしいことに。」
「やられてないだけ、マシってことか。」
「頑張って倒すしかないですね」
「生きてたのか。了解。」
「了解。」
覚悟を決める二人。
「いいですか?」
「いいぜ。」
3人の戦いが始まる。
***
「今は自分一人で戦っていいですか?」
フツロに提案する。
「何かあるんだな。わかった。」
レアトが蹴りにかかる。華麗にそれを避け、反撃するムッジーナ。
「能力を操るもの」
レアトは能力を操るもので自分の能力をあげ、ムッジーナの能力を下げる。
「???」
違和感を感じるムッジーナだが、これは今の彼に影響はなかった。
レアトの魔力が少なく効果が薄くなっていたからだ。
レアトは自分がもうすぐ使い物にならなくなるのを理解していた。自分が倒れるその時まで。
自分の後フツロがムッジーナを倒せるように。
今は情報が足りない。少しでもムッジーナの情報を集めるためにレアトは限界まで戦う。
「オラ!」
ムッジーナがレアトの攻撃を防ぐ。避けるではなく防いだ。
これは二人が同じ土俵に入ったことを意味する。
「さっきの影響でしょうか。今のは避けれませんでしたね〜。」
「それはよかった。」
ここから二人は殴り合いに入った。ムッジーナは能力を操るものの効果で避けると言う選択肢を放棄。
レアトはそのことを理解し、殴り合いに持ち込んだ。
この状況が続けばやられるのはレアト。それは彼自身理解していた。
距離をとりフツロのところまで下がる。
「おや?もう終わりですか?」
「いーや。ここからが本番だ。」
「フツロさん後は頼みます。」
「わかった。」
レアトの覚悟をフツロは理解する。
ドン!
レアトの花火化。
レアトの花火化の残り時間2分。
「なんですかそれ。」
「さぁな。」
シュン!
レアトがムッジーナの背後をとる。
それに対応が遅れたムッジーナ。完璧なタイミング。
しかし、その攻撃がムッジーナに当たることはなかった。
二人の間にイェスト族の残兵が割り込みレアトの拳はそのイェスト族にあたる。
「危なかったですね〜」
「チッ。」
レアトは再びそのスピードでムッジーナを翻弄する。
その二人の戦いを見ていたフツロは気づく。
「ついに使ったな。魔法を。」
完璧に理解したムッジーナの魔法。だが、今レアトを止め説明する時間はない。フツロは自分の番がくるその時までレアトがムッジーナの体力を削ってくれることを願う。
「死ねや!」
「あなたが死んでくださいよ!」
レアトの猛攻にムッジーナの顔がキツくなっていく。完全に押しているのはレアト。この攻撃にムッジーナは魔法が使えないでいた。魔法を使わないのを見て、フツロはムッジーナの魔法を完全に理解した。
「もう俺の番は終わりかな。」
再び距離を取り構える。
外に漏れ出している魔力がレアトの拳に集まる。
「撃拳花火」
「レアト!止まれ!」
その声はレアトには届かない。
バン!
レアトが床を蹴りムッジーナに襲う。しかしムッジーナは避ける素振りを見せない。この時レアトは避けられても当てる自信があった。この行動に困惑するが、それでも止まらない。
「私に時間を与えましたね。」
バッ!
ムッジーナの前にレアトが倒したはずのジーコ兄弟が現れる。
(生きていた?そんなことはないはず)
ジーコ兄弟の一人には穴が空いている。これで生きているはずがない。ここでレアトもムッジーナの魔法を理解するが、もう遅い。ムッジーナにこの撃拳花火が当たらないと分かったレアトは標的を変える。
このあと戦うフツロのために最善の手を打つ。
「またやられに来たのか!」
レアトはムッジーナの前に立ち塞がるジーコ兄弟に渾身の撃拳花火をお見舞いした。
3人をまとめて吹っ飛ばし消し炭にしたレアトの前にムッジーナがたたずむ。
「私には当ててくれないんですね。」
ボゴン!
ムッジーナがレアトを蹴り飛ばす。その先にいたのはフツロ。
「死にはしませんでした、、、」
「すぐにケリをつけてくる。」
「お願いします、、」
「体力を操るもの」
レアトは残りのわずかは魔力で自身の体力を回復させ、フツロの戦いを見届ける。
「別れの言葉はすみましたか?バレてるようなので魔法を使わしてもらいますよ?」
そういうと大広間に転がっていたイェスト族の遺体が動き出した。
「改めて説明しよう。私の魔法は死体操作。死んだ私の部下を操作できるものです。」
「気づいてるっつーの。そういえば一つ聞いてなかった。お前らの目的はなんだ?なんでこんな暗い国に住んでる?」
「ここには気づいたらいたんです。肌の色には驚きましたが、まぁ生きていることに感謝と言いますか!でも生きてるからには何か目的が欲しい。そこで見つけたんです!そうだ!美味しいものが食べたいと。知っているでしょう?私たちはなんでも食べると。あなたたち見るからに美味しそうじゃあないですか!あなたたちを食べたい。特に!未来を見ることができる目を持ったあなたを!私自身の手で狩って!食べたいんですぅ。」
(完全に目がイってやがる。)
「私を倒そうとしても無駄です!この大量の死体を捌いて私のところに辿り着き私を倒さないといけないのですからねぇ。」
(くそッ。俺も花火化するしか。)
「落ち着けってフツロ。まだ使ってないものがあるだろう?あいつ相手に。」
フツロは謎の声を聞き思い出す。自分に残っているあの目を。
「幸福の目開眼。」
「そう!その目です!早く貪りたい!」
スー
フツロが右手を動かす。
それと同時に一体のイェスト族の死体が隣の仲間に噛み付く。
この時一切ムッジーナは操作していない。
「何をしたんです?」
一切焦りを見せないムッジーナだが、その謎の力を気になって仕方がなかった。
「いいだろう。教えてやるよ。幸福の目は未来を見る力はもちろんある。本当の力は・・・・・」
「未来を改変すること。」




