覚醒
倒れていくその巨大な身体。その音が王国に響き渡る。
ドォーン!
「おい!レアト大丈夫か!」
「は、はい。なんとか。」
「とりあえずこいつを倒せてよかった。」
「いや、でも倒したの僕じゃないです。」
「え、じゃあだれが。」
「私だ!聞こえるか!?」
「え??」
周りを見渡すがプーリヤの姿はない。
「頭に直接話してるのさ!私が援護したって言っとかないと不安だろ??」
「そうだったんですか!ありがとうございます!」
「援護って、、どうやって、」
「私の魔法に関わること、とだけ言っておこう!じゃあ頑張ってくれよ。」
「了解です!」
プーリヤの援護のおかげで事態は大きくならずに済んだ。
しかし、本来の目的はイェスト族だと言うことを忘れてはいけない。
なぜ昔に滅んだとされるイェスト族がいるのか。
***
「とりあえずここはもう大丈夫だろうから行こう。」
「イェスト族ですよね。行きましょう。」
レアトは今回の任務が始まる時からフツロに違和感を抱いていた。初めて会った時とは違う何かにレアトは気づいていた。
「フツロさん、最近影薄いなってことありますか?」
「ん?言われてみると確かにないな。」
フツロは今成長している途中。才能が開花している最中。その過程でフツロの影が薄いという特徴は無くなっていたのに自身は気づいていなかった。
「変わったことといえばまぁこの俺の持ってる剣かな。前より大きくなっている気がする。」
フツロの魔法が未来視ということもあり体術を極めたフツロは剣も常備している。
この世界では剣などの武器の中に才器と呼ばれる何か能力を持った武器が存在する。
レアトがミハエルアルマで出す武器の中にも才器が紛れていることがある。才器にはレベルがあり最高クラスのペカードクラスは世界に5つしかなく、その所在を知るものは少ないとされている。
「この才器は父にもらったものだからこれがどのクラスに当たるか俺自身も知らないし、あんまり使う機会がない。あまり任務に行かないからな。」
「クラスって最高クラスは世界に5つだけしかないんですよね。」
「5つしかなく、それぞれに名前がある。普通の才器にも名前はあるがな。その5つの中で1つだけ、噂だがフェリシダットが所有しているらしい。」
2人が才器について話している所にスカルが現れた。
「2人ともお疲れ様です。」
「なんでここに?」
「1人で待っている時にイェスト族と思われる部族が近くに来たのが分かったので逃げてきました。」
「で、見たんだろ?どうだった。」
「あれはくイェスト族昔滅んだ部族です。」
「確定か。やっぱりこの国はどうかしてるってことか。幸いもう目的地にはついた。」
3人は向かっていた王宮にいつの間にかついていた。
「行くか。」
「ですね。」
サルバーニェの王宮とほぼ同じの扉を開けて3人は中に侵入していく。
ガタン!
ブチッ
扉が閉まる音と同時に何か糸が切れるような音がしたが、3人はそれに気が付かない。
***
身代わりと情報伝達の役割があるスカルを先頭に3人は進んでいく。
「思ったんですけど、なんで扉の音とか恐竜が暴れてたのに何も騒いでないんですかね。」
「罠だろうな。」
「罠??」
「こんなにもわざとらしく誘っているのは罠です。しかし私たちはこれに乗るしかありません。」
「そういうことだ。罠にかかったフリをする。昔の部族だから頭は馬鹿だろうしな。」
3人は王宮の1番広い部屋に着いた。
「この部屋何か嫌な予感がする。」
「嫌な気しかしない。」
フツロは保険のためにレアトを未来視で見ることにした。
見た未来はレアトの頭が吹き飛ぶ未来。
「‼︎‼︎しゃがめ!!‼︎」
バッ!
即座に反応するレアトとスカル。
レアトの頭上を斧のようなものが通過する。
カランッ
バン
斧が地面につくと同時に灯りが3人を照らす。
数時間ぶりの光に3人は目を開けられずに見た。
「うわっ光!眩しっ!」
「気をつけろ!」
3人は身を寄せあいお互いにお互いを守る体制を取る。しかし、一切攻撃は来ない。徐々に3人の目が光に慣れていく。
ゆっくりと目を開けるレアト。
先に目を開けていたフツロ。
2人に遅れて目を開けたスカル。
3人は今現在置かれている状況を理解する。
広い部屋の上には下を見下ろすことができるデッキのようなものがありそこから大量のイェスト族が3人を見下ろしていた。
「ウォー!!!」
ドンドンドンドンドドンドドン
雄叫びと同時にどこからか太鼓のような音がする。
部族たちは3人を敵と認識しており、最初にレアトを襲ったのは相手の力量も見るためにしたイェスト族の本能だった。
「わざと罠にかかったのは良いですが、相手が多すぎますね。」
「部族全員集結ってか?調子に乗りやがって。スカル!お前戦う術は?!」
「簡単な体術と剣を少々。しかし剣がありません。」
「レアト!」
「はいっ!」
バッ!
掌を下に向ける。
(レアト)
「武器を操るもの」
魔法を使用する時、個人で差があるがルーティンをして魔法を発動する者がいる。必ずやる者もいれば、時々やる者もおりやらない者もいる。
ルーティンをやるメリットとしては基本的は魔法の上昇。ステータスのアップが期待され、魔法が使えるものは癖でルーティンがついているものがいる。デメリットとしてあげられるのが数秒の時間が必要ということ。一瞬が命取りの戦場では、この数秒が必要なのでルーティンをしない者も出てくる。
1番多いのが間のやる時とやらない時がある者。今回のレアトがその例。
毎回やる者とやらない者のメリットデメリットを考え、臨機応変にするということ。
今回レアトは数秒を犠牲にし魔法の性能を上げた。
性能が上がると、出てくる武器の中に才器がある可能性が上昇するからだ。
ボウ
下から出てくる武器たちレアトは咄嗟に一つの刀を手に取りスカルに投げ渡す。
「剣ではなく刀ですが、才器です!」
バシッ
「ありがとうございます!」
「ヴォー!!」
刀を渡すと同時に上から大量のイェスト族が飛び降りてくる。
「生き残れよ!お前ら!」
「了解!」
***
飛びかかってくるイェスト族はそれぞれ異なる武器を持っており、3人はそれぞれの武器に対応しなければならないので苦戦していた。
(なんて量だ。圧倒的に数で負けてる。この才器を出せてなかったら終わった。)
レアトが出した才器。
才器アルピナファーストクラス。炎龍。
炎龍は切り刻むと同時に、周りに伝達する炎を相手に付与することができる刀。これを使用し、1人切り刻むとそこから炎が広がるのでレアトは体力を制御できていた。
そして、スカルに渡した才器。
才器アルピナセカンドクラス。天刀
才器アルピナクラスは、さらにその中でファースト、セカンド、サードのレベルがある。
レベルが上がるごとに周りへの影響力が強くなる。
才器アルピナセカンドクラス。天刀は、周りの性質を変える能力を持つ。スカルはこの能力を駆使し、スカルの周りの空気をイェスト族には毒、自分自身には無毒化にすることでイェスト族を近づけさせないという戦法をとっていた。
そして、スカルに攻撃できないと見るや否やいレアトに標準を変え、炎龍の炎に燃やされるという連鎖が起きている。
しかし、問題はフツロだ。
彼自身何度も言うが、戦闘向きの魔法ではないためかなり体力を消耗している。
(俺が1番きつい感じか。くそっ。)
フツロは何かしら自分の魔法の成長の種を掴んだが、この戦況の中使えずにいた。倒しても倒しても敵が襲ってくる。幸いなのは、イェスト族の死体のおかげでイェスト族たちも戦いづらそうにしていることだ。そして、未来を見ることで対策を打てる。フツロはギリギリのところで耐えていた。
「おいおいイェスト族さんよー。こんなものか?」
(耐えてはいるが、スカルとレアトに攻撃できないと見たイェスト族がどんどんこっちに流れてきやがる。きついにもほどがあるぞこれ。くそっどうしたら。)
「自分の力を信じろ。」
どこからともなく聞こえてくる声。フツロは声の主を探すが、ここにはイェスト族と3人しか姿はない。そしてこの声に気づいたのはフツロのみである。
「は?誰だよ。力を信じろ?そんなのやってる。」
「落ち着けフツロ。お前はまだ自分の真の力を使ってないだろう?」
「!!」
フツロは自分で見つけた新たなる力を使用せずにいる。それはまだ確証がないから。このギリギリの戦況で使えるのか。どれくらいの時間使えるのか。
謎の声に唆されフツロは決意した。
「誰か分からねーがやってやるよ!」
キィーン
フツロの目の色が変わる。
パキン!!
戦場に謎の音が響き渡る。
今まで戦っていたイェスト族、レアト、スカルは攻撃の手を止める。
その音の正体はフツロフェリシダットから鳴るものだった。
「掴んだ。俺の魔法の真髄。見せてやるよ。」
「幸福の目開眼。」
フツロは自分の魔法を巨大恐竜アンフィコエリアスを倒すときに掴みかけていた。
それを使用するのを躊躇っていたのはまだ掴みかけていただけであること。
この大量の敵の中使いこなせるかが不安だということ。
そして、この真の魔法に恐怖していたということ。
フツロは気づいていた。
この魔法、この目を使うということは運命を操るということに。
今ここに幸福の目が開眼した。それは神を起こすきっかけにすぎないが。
フツロの眼球が白く染まる。それがこの目の特徴。白く染まったその目は未来を見通す力を増大させ、さらなる力をフツロに与えることになる。
レアトとスカルの周りにいたイェスト族、フツロの開眼を目の当たりにしたイェスト族が一斉にフツロに襲う。
「見えてんだよ。カスが。」
スッ
フツロが手を動かす。
すると一体のイェスト族が盛大に躓き、そのイェスト族が持っていた剣が近くのイェスト族を刺し、さらにそのイェスト族が持っていた武器が別のイェスト族を攻撃する。まるでドミノ倒しのようにイェスト族が倒れていく。
フツロはイェスト族に触れず手を動かしただけ。それに応えるかのようにイェスト族は倒れただけ。
レアトとスカルから見るとただイェスト族が倒れたその状況だが、イェスト族は分かっていた。フツロがやったということを。
「なんだ?もう来ないのか?雑魚が。」
フツロの煽りにイェスト族は怒り狂う。
「キェー!!!」
「きっしょ。死ね。」
ブシャ!
フツロの視界にいたイェスト族の首が飛ぶ。
イェスト族は理解した。触れてはいけないものに自分たちは触れてしまったのを。
ドンドンドンドン!!
どこからか太鼓の音が鳴る。
バッ!
その音と同時にイェスト族はその場を離れた。
「なんだぁ?お前ら。」
「いや〜強いね。君たち。」
その声の主に気づいたのは未来を見ていたフツロともう1人だけだった。しかし、今はその1人は現れることはない。
その声の主はいつからか分からないが上からレアトたちを見ていた。その横には巨大な太鼓。
「長のオナーリー!」
「やぁ諸君。私の名はムッジーナイェスト。聞いてのとおりイェスト族の長だ。」
「イェスト族が喋った?」
「驚きましたね。」
「バカの中にも賢いのがいたもんだな。」
「えぇ、そこの馬鹿どもはただの雑魚です。
ここにいる私含め私の周りにいるイェスト族は賢いのでご安心を。」
ムッジーナの周りには本人を含め5人のイェスト族が立っていた。その身なりは人間と同じで、違うのは肌の色。
「今からあれを相手に?」
「なに言ってんだ!レアト!あいつら俺らにビビって降りてこない。あいつらも雑魚なんだよ!」
(正直この目はそう長く使えない。やるしかないか。)
「レアト!スカル!来い!」
「‼︎‼︎」
バッ
レアトとスカルはフツロの異変に気づきすぐにフツロの元に向かう。
「フツロ大丈夫??」
「なんとかな。だが、正直もうこの目は長く使えねぇ。詳細を話す時間も無いし手短に言う。俺がこの目であいつらを下に落とす。この雑魚らはもう手を出せねぇからあの5人を3人で倒す。」
「了解。」
幸いこちらにはレアトが魔法で出したアルピナクラスの才器がある。人数的には負けているがこの才器の差で勝てると踏んだフツロは行動に移す。
スッ
先ほどと同じように手を動かす。それと同時に上にいた5人のイェスト族の床が崩れ下に落ちてきた。
ドガン!
「よぉ、遅いからお迎えきてやったぜ。」
「ありがとうございます。」
それと同時にフツロの目が元に戻る。
「おや?目の色が変わりましたね。てことは先ほどまでの謎の力は使えないということでしょうか!」
これと同時にムッジーナは手に持っていた瓦礫をフツロに飛ばす。
この不意打ちにフツロは反応できなかった。
「‼︎!」
ボゥ!
レアトがその瓦礫を炎龍で燃やし消す。
「ギリギリセーフですね。」
「助かった。」
「体力を操るもの」
「気休め程度でしょうが。やっておきます。」
「魔法はかなり使えるようですね。」
ズキン!
謎の頭痛がムッジーナを襲う。
(ッ!今のは?)
「まぁいいでしょう!なかなか楽しめそうな3人ですね。」
「相手の内3人は任せてくれませんか?」
「いけるのか?」
「いけるかはわかりませんが、やります。やりたいんです。」
「スカル!」
「はい!」
「お前にも1人任せていいか?」
「了解です。」
「案外余裕そうですね。お前たち!相手してこい!」
バッ!
ムッジーナの部下がそれぞれレアトの前に3人、スカルの前に1人。そしてフツロの前にムッジーナが立ち尽くす。
「やり合おうか。」
「楽しみましょう!」
***
「おい雑魚1.2.3.。死ぬ覚悟はできてるか?」
「雑魚じゃなくてジーコ兄弟。」
「ほぼ一緒じゃねぇか。」
***
「また戦うことになるとは。」
(確か太鼓を叩いていた方でしょうか。)
「オ、オレのナマエはベル。ムッジーナさまにたすけられた。オレのからだはムッジーナさまのもの。
ムッジーナさまのてき。オレのてき。」
「ベル?いかにもペットにつけそうな名前だ。あなた、ただのペットなのでは?」
「オマエはころす。」
***
三者それぞれ敵と相対する。イェスト族の猛攻を耐え凌ぎ体力と魔力が減らされた彼らだが、
大丈夫という自覚があった。
なぜかというと、相手がカイードではないから。特にレアトはフェリシダットの中でカイードと敵対した数少ないフェリス。カイードではない安心感は大きい。
そのため今回レアトは3人を相手取ることに決めた。
「おい。ほぼ雑魚兄弟。3人でやっと一人前ってことでよかったか?」
「あなた煽りに煽りますね。」
「自分より弱いやつに煽る必要あるか?魔法なしで戦ってやるよ。」
この時レアトはミハエルアルマの使用時、魔法の底上げを行ってしまったこと。フツロに使用したラファエラで思ったよりも魔力が減ったこと。炎龍では倒せないと考えてこの3人を魔法なしで戦うことを決めていた。
魔力を込めた体術に使う魔力の量は魔法を使う時に比べると大幅に少ない。
ブォン
レアトが体に魔力を流し込む。
魔力を体に流すというのは即ち血液と魔力を混ぜ合わせることを意味する。
だが、レアトの師匠はヌエボ。体術の達人である。
レアトはさらに一段階上のレベルに達していた。
「おい雑魚ども。魔法なしでお前らは殺す。」
ドン!
レアトの体が少し膨張する。
フェリシダット流の体術の中で習得できる最高到達点。
花火化。
血液と魔力を混ぜ合わせるだけでなく。魔力で心臓の鼓動のスピードを上げる。そうすることで魔力と血液の循環スピードが上がり、全てのパラメータが上昇する。
しかし、心臓に負荷がかかるためレアトの場合は5分間だけ使用可能となっている。
この時魔力と血液の循環スピードが早すぎるため魔力が少し外に漏れるようになっている。その時の魔力がまるで花火のように弾けることから、ヌエボは花火化と命名した。
「時間がないんだ。死ね。」
ボグン!
「ナッ!」
兄弟の1人を遠くに蹴り飛ばす。
「次。」
バキバキ!
「ブハァ!」
次男の心臓部分をブン殴る。
この時全ての肋骨が折れた。
「ラスト。」
ブシャッ!
「ガハッ!」
腹に穴が空く。
「終わり。」
瞬殺。まさしく瞬殺。この間実に8秒。レアトはほとんど魔力を消費せずに3人を倒すことに成功した。
レアトはスカルの助けに向かう。
レアトとスカルはフツロの邪魔をしないよう離れた場所で戦闘を行っていた。なのでレアトはスカルがどこにいるか分からない状態なので、早く合流しないといけない。
「スカルさーん。」
(さすがにスカルさんでも勝てると思うけどな。まぁでもあの人元々は本だから死にはしないけど。)
「オ、オイ、スカルってこれか?」
「‼︎‼︎」
振り向くとそこにはスカルの髪の毛をもって引きずってきたベルが立っていた。




