漆黒へ
「レアト〜起きろ〜。朝だぞ〜。」
「ふぁーい、、、」
眠い目を擦りながら体を起こす。
今から漆黒の町に行くというのに体は正直にまだ寝たがっている。
オスカル帝国から1番近い支部とは言えまだ距離はある。
早めに出発しないと行けないし、テクトさん達にも申し訳ない。
「さっさと準備しろ〜。」
2人はすぐに準備に取り掛かかった。
コンコン
2人がいる部屋に誰かがノックする。
「はい!」
ドアを開けるとテクトが立っていた。
「テクトだ。おはよう。」
昨日の本来の姿ではなく最初に見た中性的なテクトさんだった。
「あ、おはようございます。その姿なんですね。」
「基本的には俺はこの姿でいる。みんな弱いと勘違いしてくれるからな。」
昨日寝る前にテクトさんに聞いたが、他にも変身する時があるらしい。潜入活動する時に便利だから何個かストックがあるとかないとか。
他にどんな姿があるのか気になるところではある。
「フツロはどうした?」
「今シャワーしてます。」
2人に与えられた部屋は客人を泊まらせるようの部屋で全てが揃っており、元の世界のスイートルームのような部屋だった。
ここまで快適な部屋は初めてで昨日の夜レアトは、フツロに興奮しすぎと注意を受けるくらいに興奮していた。
実際旅行しに来たわけではなく、命の危険もある可能性がある任務なので気を引き締めていかないと行けない。
「あ、おはようございます。」
シャワー終わりのフツロが朝の挨拶をする。
「おう、おはよう。気合い入れてくために渾身の朝飯作ってあるから食ってから行けよ。」
「ありがとうございます。」
「あざっす。」
2人は入念に準備をし、渾身の朝飯を食らい出発する。
「帰ってくる時はここ寄れよ。」
「はい。」
「では行きましょう。」
(生きて帰ってこいよ。)
***
行きとは違い運転はスカルに任せて2人は作戦を立てていた。
「オスカルに着いたらまず目を慣れさせる。暗さに目が慣れてから中に入っていく。」
「了解。」
「ある程度は未来視で先読みできる。けどもし戦うことになった時に置いておきたい。自分の身は自分で守ると言うことを優先しろ。もし俺が危なくなったら逃げろ。中の情報を知っている奴が2人とも死ぬのは避けたい。」
「はい。」
「もしヤバそうだったら3人で逃げるからその判断は任せてくれ。」
「おそらくもう到着です。」
「分かった。」
「でも少しおかしいです。僕の知っている景色とは違う。」
出発してから1時間ほどで着くらしいがそれらしきモノがなく、スカルが知っている景色とも違うらしい。
「そうか。とりあえずゆっくり向かってくれ。」
「了解。」
ブゥン!
「え???」
キキィー!
ブレーキをかけ車を止める。
外の景色が明るい景色から急に漆黒の景色へと変わっている。
その変わりように3人は驚いてしまったが、フツロが先に正気に戻った。
「入ったな。おそらく雲が幻覚を見せていたのだろう。」
冷静にその状況を解析し言語化する。頭で考えてこその未来視の魔法だからできる芸当だ。
「少し戻って明るいところに車を停めよう。」
車を明るいところに戻し、3人はそこから歩いて漆黒の町に向かう。
ブゥン!
3人が漆黒に足を入れる。
相当は暗さだ。目を慣れさせないとやはり何も見えない。
「目が慣れるまでここで待とう。離れるなよ。」
「了解。」
3人は目が慣れるまでの約30分その場で待機した。
五感の中で1番の情報源である視覚がない状態での30分。いつ何が襲ってくるかも分からないこの状況で3人は冷静に時間が経つのも待った。
暗闇に慣れた目に魔力を込め3人は明るい時と同じ視覚を手に入れる。
その目で見る漆黒の町オスカル帝国の全貌。
大きい国なのか町のように小さい国なのか全く分からなかった2人はその視界を疑うしかなかった。
その視界には、昨日見た景色とほぼ同じのそれが広がっており明らかにサルバーニェ王宮と同じ建物が存在していた。
「スカル。これはどう言うことだ。なぜサルバーニェ王国と似ている。」
「オスカル帝国。まだその国に光があった時、サルバーニェ王国とオスカル帝国は姉妹国の関係だった。この関係を知る人は国民のみで他の国の人は知らない情報です。」
「だから似ていると?」
「はい。そしてサルバーニェ王国が純白の町、オスカル帝国が漆黒の町とそれぞれ名乗り陰と陽の関係でした。ですが、次第に関係は崩れていきプーリヤ様が国王になった時期に国同士連絡を取らなくなり、オスカル帝国は他国との関係を全て遮断しました。そして最近本当に漆黒の町になったと言うわけです。」
「謎が深いな。漆黒の町と勝手に名乗っていたのが本当にそうなってしまったと。」
「それは気味が悪いですね。」
「とりあえずあの王宮に向かうか。何かいるかもしれないから足音はできるだけ立てずに。」
***
レアトら3人は暗闇の中できるだけ静かに王宮を目指していた。暗闇に慣れたとはいえ見える距離は明るい場所とは断然に違う。
「暗闇にしては人が住んでいる形跡があります。もしかしたらこの環境でも人がいるかもしれないです。」
「この環境で住んでるってことはもうそれは人じゃないかもな、」
3人は人であってくれと願いながら何か住んでいると思われる場所を調べることにした。
「フツロさん、この建物多分さっきまで何かいました。」
暗闇の中の捜索というのもあって3人で一つの建物を調べることになった。その建物にはつい先ほどまで人か何かが生活した形跡が残っていた。
「レアト、スカル。おそらくここに住んでたのは人だ。だが、敵の可能性がある。気をつけろ。」
ドガーン!
外から建物が壊される音が聞こえてくる。
3人はこの漆黒の町に人のようなものしかいないと思った時に新たな何かが現れた。
3人は建物の中から外を確認する。その6つの目に映ったものは、この時代にいるはずのない巨大な恐竜だった。
「あれって、恐竜ですよね?」
「あれはアンフィコエリアス。巨大すぎる恐竜です。」
「まぁ今この時代にいるのはおかしいな。あれもどう倒すかだな。」
「倒すんですか?!」
「あんなのがいたら邪魔で本命に集中できないだろう。」
「いや、その必要は無さそうです。」
「え?」
3人がアンフィコエリアスに目を向けるとその巨大な恐竜は何かと戦っているような暴れ方をしていた。
「建物を壊したのは暴れていたからなんでしょうね。」
「一体何と戦ってるんだ。」
「俺が見る。」
フツロは自分の魔法未来視をアンフィコエリアスに使用した。
戦っていた相手の正体は原始人のような格好をしていた猿人だった。
「昔の人間。猿人だな。」
「猿人?原始人ってことですか?」
「おかしな町になりましたね。原始人と恐竜がいる町。謎しかないですね。猿人の特徴とか分かりますか?」
「暗闇でよくわからないが、肌の色が違う気がする。」
「肌の色が違う。心当たりがある種族です。おそらく恐竜は倒されるでしょう?」
「俺が見た未来ではな。」
フツロは自分の魔法に自信を無くしていた。今までのフツロだったら言わないような確定かどうかわからないという表現。
(果たして俺が見た未来と同じになるのか。)
フツロは自分が見た未来を信じれずにいる。
フツロはそれが原因で自分で何か妄想するような癖がついていた。
ドーン!
「倒されましたね。」
「ですね。」
レアトはフツロが無反応だったのが気になりフツロに目をやる。
レアトが見たフツロの目は何か覚醒したような暗闇の中では分かりづらいでも確かに興奮している様子だった。
「ガチかよ。」
フツロが右手で自分の顔を掴み言った。
「フツロ?どうしたの?」
「あ、悪い。」
その言葉の真意は分からないが、フツロの顔は笑っていた。
「とりあえずあの部族を確認したいです。レアト君の魔法でできますか???」
「了解。」
「視界を操るもの」
レアトが透明になる。
「さすがですね。全くもって透明です。」
「じゃあ行ってくるよ。」
***
透明と言っても歩く音やその足跡は残る。なのでレアトは慎重に恐竜が倒された場所に近づいていった。
レアトが目にした光景は今の時代からは想像できないもので、恐竜を倒したと思われる部族が恐竜の肉をそのまま貪り食っていた。
巨大な恐竜だったので喜んでいる姿が目に映る。おそらく部族全員分の食糧が余裕で足りるほどのデカさなので、そこには部族のほとんどがいただろう。
(この人数なら近づいてもバレなさそうだ。頑張って近づくか。)
レアトはさらに近づいていく。
〜スカルとフツロ〜
「で、フツロさん。どうしたんですか。彼がいなくなったから言えるでしょう?」
「まぁ言えんことはないが、、、」
ボソボソ
「そーゆーことですか。では今回なんとかなりそうですね。」
「あーおそらくな。」
〜レアト〜
(近づいたはいいけどちっか!)
レアトはあまりにもバレないという自信が湧き出て今1メートル前に部族たちがいる状態になってしまった。
「おー!!!」
部族たちは宴を始めている。
謎の踊りを踊る女性たちにそれを周りから見て叫ぶ男たち。まさしく部族の宴だ。その部族たちの肌の色が緑色であるという情報もだが、レアトはその一つ一つの情報を記憶した。
部族以外にも死んでいる恐竜から情報を集める。幸いお腹がいっぱいになったのか恐竜の周りには誰もいない。
(この恐竜あまりにも色がおかしくないか?)
その恐竜の色はまさしくブルーカラーミーの色と同じ青色だった。
レアトは嫌な予感がしたのでここで情報収集をやめてフツロたちの所に戻った。
***
スッーー
レアトの透明化が切れる。
「おう、戻ったか。」
「どうでした。」
「部族の肌の色は緑色でした。ただ恐竜の肌がブルーカラーミーと同じ青でした。」
「緑??黄色ではなく?」
「緑でした。」
「黄色だったら何かわかったのか?」
「えぇ。黄色の肌が特徴の部族が遥か昔存在してました。名はイェスト族。その部族の特徴は肌が黄色というほかに雑食という特徴があります。」
「雑食になんの特徴が?」
「雑食というよりかはこの部族にはカニバリズムの文化もあり、飢餓状態になると仲間も食べます。他にもどんな種類の肉も。おそらく恐竜も。ただ緑色の部族は知りません。」
「でも昔にいたんでしょ?」
「昔にいたのは恐竜も同じだ。まぁそのイェスト族ってことでいいんじゃないか?同じ人間だ、魔法の使える俺らの方が条件はいい。そのことより恐竜だ。」
「ブルーカラーミーと同じ青、ですね。」
「暗くて分からなかったけど、おそらく同じ青。そんでもってカラーミーと同じ気配を感じた。」
「それは恐竜だけか?」
「いや部族にも僅かながら。」
「決まりだな。カイードが最低でも関わっている。」
「ですね。」
「目指すはあの塔ってわけか。」
〜〜〜
「来たか。」
***
レアト達は塔に向かって進み出しているが違和感を感じていた。
「レアト、お前がみた部族は何人ぐらいだった。」
「結構な量はいた気がする。」
「そうか。今遭遇してもおかしくないくらい?」
「、、確かに遭遇しませんね。」
「罠ですか。」
「ただ、進むしか選択肢はないからな。」
ガサッ
物音が3人の近くで鳴った。3人以外の何者かが出したその音に3人は立ち止まる。
「なんですか。今の音。」
「まぁ落ち着け。」
フツロはレアトの未来を見ることで謎の音の正体を探す。
レアトが何かに飛ばされる未来が見える。
「レアト飛べ!!」
バッ!
レアトは即座に上に飛ぶ。
レアトが直前にいた場所にいたのは小さな恐竜だった。
「キキィ?」
レアトが落ちてくる勢いを利用して恐竜に渾身の踵落としを決める。
ドン!
恐竜が気絶する。
「ふっー、危なかった。」
「敵は部族だけではないってことか。」
「そうですね。」
レアトの蹴りの音に反応して周りには先ほど倒した恐竜の仲間がうじゃうじゃ集まっていた。
「面倒な量だな。レアトどうにかできるか?」
「どうにかはできそうですね。倒さなくていいなら。」
「動けなくなるならいい。」
「了解。じゃあ3人で固まってください。」
フツロとスカルはレアトのそばに集まる。
「俺が魔法を使っているときはこの場から動かないでください。」
「分かった。」
「了解です。」
「硬化を操るもの 」
レアトら3人のいる中心以外の地面が柔らかくなり底なし沼のようになる。
周りにいた恐竜はそこにどんどん沈んでいく。
「そろそろか。」
そういうと地面は元の硬さに戻った。
周りにいた恐竜は地面に埋もれている。
「もう大丈夫です。いきましょう。」
「チートだな。」
ドォン!
大きな音が響く。
3人は音のした方を見て驚愕する。
音の正体先ほど部族たちが倒し、食したはずの恐竜アンフィコエリアスだった。
喰われた部分の肉はもちろんなく、空洞になっている。生きられるはずがないその生物が動いているということに3人が出した結論は。
「ゾンビってことか。」
「ゾンビですね。」
「ゾンビなんているんですね。」
実際のところこの世界にはアンデット族という種族が存在する。老衰以外では死なずどんな傷も癒してしまうという力を持ち彼らはこの世界のどこにいるかは分からないとされている。
なのでゾンビがいてもなんら不思議はことではない。
「しかし恐竜のゾンビか。」
「手強いですね。」
「レアト、ゾンビの倒し方は習ったか?」
「いいえ、まだですね。」
「ゾンビが出た時今回は恐竜だが、基本的には人間のことが多い。あいつらを倒すためには脳を破壊することだ。しかし、ゾンビにも本能があるんだろう。頭への攻撃は基本全力で守ってくる。そうなると破壊することができないから、まず動けない状態まで追い込み脳を破壊するのが基本だ。1人では出来ないが、2人以上なら可能。俺とレアトで動きを止めて脳を破壊する。スカルは周りに部族が来ないか見ておいてくれ確実に奴らは敵だから来た時に三つ巴になるのは避けたい。」
「了解」
「分かった。」
「行くぞ。」
シュン
フツロとレアトは恐竜に攻撃を開始する。
フツロはその魔法の特性上体術を極める必要があった。魔法を使用したとしてもそれについてくる身体ができていないと、対応ができないことが多いからだ。体術だけで見た時フツロの右が出るものは、ある人物を除いて1人しかいない。
フツロはその人物に体術を鍛えられているため、カラーミーほどの大きさまでは対処できるが巨大すぎるこのアンフィコエリアスまでは、1人では対処できないと理解している。
フツロの強さは切り替えの速さ無理だと思う時はすぐに切り替え別の案を考える。
今回フツロはレアトの魔法の応用性を知っているため、2人でどうにかできると考えた。
さらに、フツロには試したいこともあった。
「レアト、奴の動きは俺に止めさせてくれないか。」
「分かった。」
「おそらくさっきお前が使ったリヴァイアテクトを使ったら数秒は止まれるが俺が脳を破壊できない。そんな気がする。俺が動きを止めてお前が破壊してくれ。」
「でも奴の動きを止めるのに時間が。」
「いいやおそらくそう時間はかからないはずだ。ここで待っててくれ。機会が来たら分かるはずだ。」
「了解。」
レアトは民家の屋根の上で見守ることにした。
フツロへの期待と不安を込めながらその景色を見守る。
***
ドゴォン!
何が起きたのか分からなかったレアトだったが、一つの事実だけ理解することができた。
恐竜がなんらかの理由で倒れ込みその倒れた身体は綺麗にレアトの方向に行き、頭の部分がレアトの目の前にある。あとはこの目の前にある頭の中の脳を破壊するだけだ。
しかし、レアトはその状況の整理に落ち着いていない。
「レアト早く!」
ハッ
正気に戻るレアト。しかし、遅かった。
アンフィコエリアスが身体を持ち上げる。
なぜフツロは倒すことができたのか分からないが今考えている余裕はレアトには無かった。
次のことを考えた時。
バチュ
恐竜の頭が綺麗に弾け飛び脳みそが破壊されたのだ。力が抜けたかのようにその巨大な個体な倒れていく。
「援護できるときはしないとね。」
その謎の攻撃の正体は、サルバーニェ王国国王兼ディーキェ組織リーダーのプーリヤ サルバーニェだった。




