雪だるまは、オーパーツ……。
「雪だるま…作っていたのは…いつの日か…」
試験の手応えなく俯いて歩く交差点。
止まない雪が、公園の時計を見えなくする。
「よ!未来の助手!試験どうだった!?」
「痛ぇよ。鞄で殴るなよ…。お前は?」
「私? 3教科、0点のハットトリック!追試、間違い無いね!」
こいつは、幼馴染みの瞳。馬鹿なくせにお菓子作りと料理は、上手い。
「ふ~ん? 手応え無し? 落ち込むなよ少年! お味噌汁作ったげよっか? サイコロステーキ! とか!?」
「いらねーよ…」
最近、オーパーツの展示で話題の博物館。
重厚な出入り口の鏡のような扉に、俺と映画女優みたいな瞳が、映る。
「でも、笑えるよね? 英語のヒアリング? カセットテープだよ?
いつの時代? キュルキュルって! アハハ! 試験になんないし!
おまけに試験中密室で、誰か屁するし! アハハ!」
「お前…。全然、色気ねぇなぁ…」
「ふ~ん? 君は、女の子と手も握ったこと無いくせに? 握ったげよっか?」
「いらねーよ!」
同い年なのに意識する経験の差。
瞳には、サーファーみたいな彼氏が、いる。
試験なんかより俺の知らない世界を知っている。
「ねぇ?ここ…。入らない?」
初老の夫婦が、博物館の扉から腕を組んで出て来る。
二人とも吐く息を白くして談笑が、絶えない。
「なんだよ?急に?珍しいな…」
「良いから…。ね?入ろ?」
手早く入場券を二人分購入して中に入る瞳。
他の展示物には、目も暮れず特別展示室へと入っていく。
黙ったまま立ち尽くす瞳が、そこにある『オーパーツ』を見つめている。
「雪だるま…」
「え…?」
「子供の時、二人で作ったよね?覚えてる?」
さながら、目の前の『オーパーツ』は、雪だるまのようだ。
子供の時の記憶が、蘇る。
「彼氏は…?」
「あぁ…。アレ? ただの噂だよ? 信じた?」
確信の無い瞳の発言。
瞳の長い髪が、俺の頬に触れる。
沈黙の時が、流れる。
「未来ってさ? オーパーツ? みたいだよね?」
「は…?」
「どこから、やって来るか分からない…」
人気の無い展示室。
オレンジの照明のせいか瞳の頬が、紅く見える。
「オーパーツの前で告白すると願いが、叶うんだよ?」
そんなことは、展示物の説明には書いてない。
年代測定は、不特定とあるだけ。
指先に何かが、触れる。
「好き…」
聴き取れない瞳の言葉が、館内の沈黙する時間に流れてく。
「え…?」
「私が、決めたの…!」
走り去る瞳の足音が、静かな館内に場違いに響く。
『館内はお静かに』
目の前の文字が、揺れている……。




