ムギとひが。
「暑い」
いやぁ、実に暑いですねホント。夏ってのは嫌になる。
おっと、申し遅れました。僕、百瀬 比嘉。え? 変な名前だって? ほっとけ。
「おお、ひが兄! いたのか!」
そしてこのやかましいのが義理の妹、穂麦。
何故義理かっていうと、実はコイツ、捨て子だったらしく、孤児院にいたのを親が連れて帰ったらしい。そんで何故か一人暮らししていた僕んとこに送ってきたってわけ。
何故僕のとこに送ってきたのか親に聞いたところ、
「一人暮らししてて寂しいでしょ?」
だそうです。ペットかよ。
そんでなんだかんだで一緒に暮らしてるのです。
「おお、ムギか……暑いな」
「うむ、暑いな!」
「しんどいな」
「うむ、しんどいな!」
「何もしたくないな……」
「うむ、何もしたくないな!」
コイツは本当に無邪気だ。そして天然だ。
「ところでな、ひが兄!」
「ん、何だ」
「うち、したいことがあるんだ!」
「何もしたくないなって言ったばっかなのに……」
「あのな! あのな!」
「僕の話は無視か。ま、いいや。何?」
「あのな、うちな、公園で遊びたい!」
「そうか、行ってらっしゃい」
「ダメ!」
「え、何が」
「ひが兄も!」
「僕も一緒にこいと言ってるのか?」
「そう!」
「僕に死ねと言ってるのか?」
「そう! ……? ……! 違うそうじゃない!」
何だ今の間。シンキングタイム?
まあいいや。とりあえずコイツは僕を連れて公園に行きたいようだ。さすが小1。外で遊ぶ率高し。
が、僕は大学1年生。外で遊ぶことなんてまずないだろ。
というわけで、却下でーす。
「ムギ、お前、学校の友達と遊んでこいよ」
「やだ」
「……何で?」
「ガキと遊んでるヒマはねぇんだ」
何の受け売りですか?
顔キメてるけど全然かっこよくないですよムギさん。
「お前もガキだろ。とにかく、僕は外に出たくないの」
「なんで?」
「暑いしだるいししんどいし」
「おっさんだから?」
「いや違うけど」
「やーいやーいおっさん」
「おっさん違うわぁぁぁ!」
「おっさんもっさん」
「もっさんて何だぁぁぁ!」
「悔しかったら外出てみろー」
「おっしゃあ、行ってやろうじゃないか!」
まぁ実はこれはいつものパターンで。
別におっさん発言に対してマジで怒ってるわけじゃないから。いや違うから。
なんでも思い通りにいくと考えてはいけないのでこういう方法をとっているのです。
……ホントだよ?
――さて、なんだかんだ言いながら公園にやってきました。
おお、いるいる。小学生。夏休みということもあって、子供がわんさかいるじゃないか。元気だね。
んで、肝心のコイツはというと。
「おおぉぉ」
妙な唸り声をあげていた。
「どうした、早く遊んでこいよ」
「こっ、こっ」
「こっ?」
「公園、すげぇー!」
え? あ、公園来るの初めてなのか。
「学校よりすげぇー!」
まあ確かに公園のが遊具が多いけど。
「ここ、世界一か!?」
「違うだろ」
「世界一はもっとスゴいか!?」
「そりゃなぁ」
「世界ってすげぇー!」
うんうん。どこで感動してんだよ。
「ところでムギ、お前、公園で何がしたかったんだ?」
そう言うとムギはハッとしてこっちを向いた。
「あのな、うちな」
「ん?」
「あの……あれ……」
その指の先を見ると……あ、あれか。
「ブランコな」
「そう! ブランク!」
「ブランコな」
「ブランチ!」
「ブランコな」
「ブランド!」
「ブランコな」
「ブラジル!」
「ブランコォォォ!」
「ブラジャ……」
「くぉらああぁぁ!」
「うああぁぁ!」
バタバタ走るムギをバタバタと追いかける。
するといつの間にか、周りの子供も集まってきていた。
「鬼ごっこ? 僕たちも混ぜて!」
「いや、鬼ごっこじゃ……」
「よし! 鬼ごっこやるぞー!」
「ええええ!?」
というわけで、鬼ごっこが始まってしまいました。
総括すると。
死にました。
小学生があんなに足が速いとは。
そして僕がこんなに体力がなくなっているとは。
そして何より。
ムギがあんなに運動音痴だったとは!
なんかものすごい活発だから運動神経良いんだと勝手に思っていたんだが……。
一緒に住み始めて4ヶ月。
この穂麦という少女には、まだ知らない所が多すぎる、かな。
――さてさて。なんとか帰宅してきたわけなんですが。
「なっははーい」
ムギはえらい元気です。僕とは正反対で。
「なぁなぁ、ひが兄!」
「なんだ?」
「夕飯、カレーがいい!」
やっぱしこれか。
ここのご飯はいつも僕が作っている。ムギに作らせるわけにもいかないし、もともと僕が料理好きってのも重なって。
まぁそんなレパートリーはないが、なかなか上手いと自分では思っている。
そしてレパートリーの少ない僕の得意料理の一つが、カレー。すごくありふれているが、だからこそ美味しくするのは難しいのだ、と自分では勝手に思っている。
でも残念ながら今日はその日ではないんですよね。
「今日はパスタだ」
「ぱす……太?」
なんか違う。何かはわからないが何かが違う気がする……!
「ホラ、あれだよ、麺」
「men?」
何が違う!? 何か違うだろう!
「今日はミートソースだから、トマトとか乗ってる感じの」
「『トマトトカ』って何……?」
ああ、伝わらない。
でもまあ料理を出せばわかるんだろう。
そんでまたニコニコしながら食べて、テレビ見たり暴れたりして大笑いするんだろう。
そんな毎日がずっと続いてほしい。
そう思った今日この頃でした。
読んで下さり、ありがとうございました。
この作品は、長編にしようかな、とも思っている作品です。一話完結で、ほのぼのとした物語を書いていきたいと思っています。
もしよろしければ、感想・評価など頂けると有難いです。




