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1st ep.それは、まるでコインの表裏のように ③

    ▲▲▲


 さぁーってと、今日も【学生広場】と洒落込むとしますかね。

「………………」

 帰宅して自室のPCを起動する度に思う。

 本当に毎日こんなことばかりしてていいのか? 勉強も真面目にやらず、部活をするわけでもなく。将来のことも考えず、ただ刹那的に【学生広場】で時間を潰してる場合なのだろうか。

「――でも、誰も俺に期待なんかしちゃいない」

 そうだ。同年代の連中だって、家族だって。

 俺が全盛期を迎えた時はあんなにチヤホヤしてたくせに、ひとたび堕ちればあっさり掌を返す連中だ。

 ……やべぇ、なんかムカムカしてきた。

 そんな時は――こっちモードだ。

 裏アカ『リバー』で【学生広場】にログインした。


名無し:『四月の新入部員が楽しみだ』


名無し:『同じく。宣伝してたくさん人材を確保したいね』


リバー:『は? 学生の本分は勉強だろ? 部活部活って、お前ら推薦進学しかできなくなるぞ? もっと

     勉強しろ、バカどもが』


名無し:『うっわ。出たよ、リバー』


名無し:『コイツやたらあちこちのスレを荒らすよな』


リバー:『何か間違えたこと言ったか? 勉強についての反論がないのはなぜ?』


名無し:『もちろん勉強だってしてるよ』


リバー:『反論になってないな。ま、俺に反論できない程度の頭じゃ一般入試で大学受かるのは

     無理だな。精々部活動(笑)に溢れんばかりの情熱でも注いでろや』


名無し:『管理人さーん。コイツどうにかしてくださーい』


リバー:『管理人も忙しい身なんだ。こんなちっぽけなやりとりにいちいち対応してたらキリ

     がないだろ。情のない奴だな』


名無し:『情がないのはお前だろ』


リバー:『へっ。お前ら運動部なら全員怪我して再起不能になればいいんだよ。脳筋バカが』


リバー:『運動ばっかしてても将来なんにも役に立たねーんだからよ』


 俺のレスを最後に、スレッドにはレスがつかなくなった。

 けっ、たかが部活なんぞに心酔しんすいしてる薄らバカどもが。腰抜けばっかかよ。

【学生広場】には掲示板機能があり、アカウントを持たない者もスレッドの設定によっては自由に閲覧や書き込みができる。

 今俺が書き込んだのはまさにそれだ。

 大抵の奴は掲示板で荒らしや暴言を吐く時は初期ハンドルネーム『名無し』で行っているが、俺は『リバー』のまま荒らしている。まぁ『リバー』自体が裏アカってのもあるけど、完全匿名の安全地帯から暴れるのはズルいと考えている。だから『リバー』の名を借りて日々自己主張を繰り返している。

 こんなことをしてもますます心がすさむのは理解している。けど、こうすることで少しは溜飲りゅういんが下がるのもまた事実。もう立派なSNS中毒だな。

「俺だって散々嫌な目に遭ってるんだ。これくらい許されないとなぁ」


ヨシ :『帰宅なう』


 と、ここでチャットグループから通知が届いた。

 今通知がきた『ヨシ』は『リバー』のフレンドだ。実はリアルでも会ったことがある。学校は違えど俺と同じ高校一年生だ。


リバー:『おう』


リバー:『さっきさ、掲示板で部活中毒の連中に勉強しろって言ってやったよ』


ヨシ :『また暴れたのか。お前もワルだな』


リバー:『調子こいてるからブチかましちまったわ』


ヨシ :『おいおい、まさか俺にまで食ってかかる気じゃねーだろうな?w』


リバー:『さすがにフレンド相手に牙は剥かんよ。誰彼構わず襲うわけじゃない』


ヨシ :『ま、意見が相違した時はフレンドだろうが主張のぶつけ合いは必要だけどな』


リバー:『俺もそう思うよ』


リバー:『思ったこと、感じたことを躊躇ためらいなく発信する。それこそがSNSの正しい活用法だ』


ヨシ :『だな』


『ヨシ』は陸上部に所属している。専攻は短距離だ。

 そういえば岳志も陸上部で短距離専攻だったな。

『ヨシ』と岳志は面識がないけど、境遇や趣味などに共通点がある。リアルで会えば気が合う予感はするんだけども……。

 俺には実現できない。俺がアカウントを二つ持ってることがバレてしまうからな。

【学生広場】にも他のSNSと同様いくつか規約があるが、そのうちの一つに『同一ユーザーが複数アカウントを持つ行為を固く禁止する』とある。

 俺は余裕で破っているので、運営にバレれば即垢BANされる。

 垢BANとは、運営からアカウントを強制的に停止させられることだ。

 ここらで『リバー』は一旦寝かせて『COLD』でログインし直すとしよう。


COLD:『ういーっす』


宮下  :『あっ、COLD』


COLD:『うっす』


宮下  :『なんか部活動雑談スレがリバーに荒らされてたよ』


COLD:『マジか。リバーは暇人だね』


宮下  :『お前らは部活しか能がないバカだ的なレスを延々としてた』


COLD:『部活動に所属してる奴らへの敵意ヤバいな』


タク  :『参上』


COLD:『乙』


宮下  :『おつー』


タク  :『リバーの話か』


宮下  :『困っちゃうよね。この前僕に暴言DMを送ってきた奴もリバーのフレンドだったし』


タク  :『勘だけど、リバーの正体は関東中央高校の生徒だと考えてる』


宮下  :『マジで?』


COLD:『同じ高校じゃん』


宮下  :『リバーも、僕たち三人全員も関東中央。因果かね』


タク  :『ヨシや②もそうだけど、あの一団が周囲に与える有害さは目に余るな』


COLD:『けどさ、そのリバーって奴にも何か背景があって部活に憎しみを抱いてるのかもよ』


タク  :『だからといって、じゃあ掲示板で暴言吐いていいとはならないだろ』


宮下  :『そうだね。どんなに上手くいかないことがあったとしても、匿名のSNSで他人に

      当たるのは人としてダメだ』


COLD:『だな』


タク  :『まぁリバーの話はその辺にしておいて、話題を変えよう。これから再び本格的には

      じまる高校生活について』


宮下  :『日常が戻ってくるね』


COLD:『頼むから現実に引き戻さないでくれぇ~』


タク  :『COLDよ。ちゃんと勉強してるか?』


COLD:『授業にはちゃんと出てるぞ』


宮下  :『寝てるけどってオチはないよね?』


COLD:『さぁ、ナンノコトヤラ』


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