表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/23

プロローグ

 近年、インターネットの進歩は目覚ましいものがある。

 ネットサーフィンだけでも十分な時間を通信費だけで潰すことができるのだから便利な時代になったものだ。

 また、SNSや掲示板等を介して間接的に他者とのコミュニケーションを楽しむ空間も充実しており、仮に現実世界に友達がいなくともネット上で誰かと交流を深めることもできる。

 交流を深めることでオフ会に発展したり、更にそこから現実世界――リアルでも交友を深めたり、恋仲になったりするケースも昨今では珍しくない。

 俺、寒川俊哉さむかわしゅんやも【学生広場】という中学生から大学生までをターゲットとした学生用SNSをふんだんに活用して充実したネット生活を送っている。


タク  :『新学期おつー』


宮下  :『おつー』


COLD:『帰宅なう』


タク  :『COLD、おかえりー』


宮下  :『COLDおつー』


COLD:『あざーす。てか二人とも帰宅早いね!』


タク  :『始業式は部活がないからね』


COLD:『なるほど』


宮下  :『今日もマターリ語り合おうや~』


 気心の知れたフレンドたちとチャットで雑談に花を咲かせる。

 軽快に打鍵されるキーボードの音が一軒家の二階室内に響く。

 一時間ほどやりとりをして話題が尽きたため、一旦解散した。

 ――では、ここらでユーザーチェンジと参りましょう。

 俺は『COLD』のアカウントをログアウトして、別のアカウントでログインし直す。


ヨシ :『いつも思うんだけどさぁ、狭い道を広がって歩く集団マジ邪魔だよな』


リバー:『それな。罪に問われないんならケツを蹴り飛ばしたいわ』


②  :『やっちゃえばいいじゃん。そんなグズな連中、どうせ何の役にも立たねー負債なんだから

     よ』


リバー:『妄想の中で勘弁するけど、本当邪魔だよな。もっと周り見ろってんだ』


ヨシ :『な。ちまたにバカが溢れすぎだよな』


リバー:『しかも歩くのが遅いから追い抜けないわトロいわで最悪だよ。「すみませーん」って言う

     と怪訝けげんな顔されるしさぁ』


②  :『クズ多すぎな件について。そんなアホどもは車にかれて死ね!』


 そう。

 俺は二つのアカウントでそれぞれ別のユーザーとして振舞っている。

 表向きアカウントが『COLD』、裏アカウントが『リバー』。アカウント名は俺の苗字の寒川からそれぞれもじっただけなんだけど。

 別のWEBブラウザを使えば同時に二ユーザーログインもできるんだけど、そこは落とし穴。不意のミスで裏アカ『リバー』として書き込むつもりだったレスが表アカ『COLD』でレスしたまま気がつかなかった――ってことになったら俺のSNS生活は終わってしまう。

 だからユーザー切り替えには細心の注意を払う。

 表アカでは好青年キャラなもんだから愚痴すら吐けないんだよね。だから裏アカを作ってこうしてストレスの捌け口にしている。


ヨシ :『つーか学校マジダリぃわ』


リバー:『一月八日から登校とか馬鹿げてるよな』


②  :『世のリーマンは四日から出勤してるぞ』


リバー:『更に馬鹿げてるよな。政治家と経営者はちゃんと仕事しろやクソが』


 裏アカ『リバー』として一時間ほど日常の愚痴や世の中への怨嗟えんさをまき散らした。

 さてと。

 タイピングで手も疲れたことだし勉強――は、するわけない。

「テレビ観て寝るか」

 明日から本格的に授業がはじまる。よって英気を養う必要がある!

 俺は適当に時間を潰して明日に備えて寝た。


 けれど、この時の俺は考えもしなかった。

 二つのアカウントを操るなど、俺の手に余る所業だったとは全く思いもしなかった。

 俺の驕り高ぶった行為が、俺や周囲に一波乱を巻き起こす事態になろうとは――――

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ