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小麦と焼きたてパンの香り  作者:
おまけ
9/15

お休みトレーニング

 土日祝日休みに慣れない様子のお兄さんは、二回目の週末を迎えると朝からちょっとそわそわ。それでもお家のことをやったりわたしの世話をしたりしてすごしている。

 まるまる一日かからないから、先週は空いた時間をどうしようかと手持ち無沙汰だったのだけれど。ただでさえ、お仕事から早く帰ってくると時間がたっぷりあることに変な顔をしているお兄さんだ。休みの日なんてもっと時間を持て余してしまう。

 この日は料理したり掃除したりを終えてから、お兄さんは昨日届いたヨガマットを敷いた。


 なにするの~? ヨガ? お兄さんヨガやるの??

 てててててっと駆けて見上げると、スマホをいじってから床に置いてお兄さんはわたしを少し遠ざける。

 腹筋、背筋、腕立て。スマホから出る音に合わせて筋トレを始めた。なるほど、体を動かすのも大事ですもんね。お兄さん運動しない人だと勝手に思っていたけど、そうでした、初めの頃はお仕事が無茶すぎて気力もないような生活だったんでした。

 もしかしたら学生時代になにかスポーツをしていたかもしれない。なにしてたんだろうなあ。気になるなあ。

 今度は肘をついてプランク。

 これキツイやつですよね、お兄さんがんばれがんばれ。


「ムギ。こら、離れていろ」


 背中がふるふるしてる。お兄さんまだ30秒ですよ。背中押す? 背中押します??


「潰しそうで危ない。コムギ、おい」


 楽しくなってきて腕の横からお腹のところに潜ると、息を詰めたような声が降ってきた。しゅぽっとお兄さんの顔の前に出る。

 お兄さんがベシャッとくずれた。

 1分できました? もう一回する?? やるやる??

 わふわふ言うとお兄さんはズレた眼鏡を押し上げてから、わたしの頭をぐしゃぐしゃっと乱暴に混ぜてきた。むむむむむ。

 わたしも一緒に運動したいけど、ここでは犬のポーズくらいしかできなさそうだ。ぐぐっと背中を伸ばして犬のポーズ! それに合わせて大きな欠伸が出た。お兄さんがブハッと笑った。


 あと何回かプランクを続けたお兄さんの横で、わたしは今度は邪魔にならないようにお気に入りのタオルをガジガジして、飽きたらぶるぶるぶるっと振って遊んで、視界の端をびゅんびゅんしている尻尾が気になると今度こそ捕まえられないかとくるくるしていた。

 いつの間にかお兄さんのワークアウトは終わっていて、導くように指示を出していたスマホはお兄さんの手の中でこちらに向けられている。

 写真? ボタン押してないですね、わかった動画でしょお兄さん!

 舌が出たままお兄さんに飛びつくと、慌ててカメラの角度を変えてなんとかわたしを映そうと奮闘している。

 手振れがひどくなったそれを、お兄さんはお友達さんへ送りつけたみたいで、さっきからひっきりなしに通知音がポコポコ鳴っている。お兄さんが暇をしている時間はないようです。


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― 新着の感想 ―
[一言] ペットって写そうとするとカメラから外れるのよね(笑)
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