夢落ちなんて最低?いやいや未来予知ですよ
プロローグ
「魔王様。勇者一行が現れました!!どうしましょう。」
猿のような体に蝙蝠のような翼、矢印のように生えた触覚がある全身紫色の魔物、通称マサルが俺のもとにやってくる。
「もう来やがったのか。おいトラップの設置状況は?」
「設置してきたのですが、勇者を倒しに行った同志たちが見事に引っかかってまるで機能していません。ああ、イワオが落となに・・・・」
そう報告するのはヴァンパイアのチュータロウ。魔王軍の幹部で数少ない人型の魔物。そしてイワオは全身岩でできた顔と足と腕しかない魔物で一発の攻撃力は大きいが、行動が全体的に遅い。
「くそ。どうすれば・・・」
ドゴォォオオン!!
音の方を見ると、勇者一行が壁を突き破り、ここまで来ていた。そして吹っ飛ばされた壁の近くにいたチュータロウが俺の足元に倒れていた。
「チュータロウぅぅぅぅぅううううううう!!!!!!!!!!」
完全に白目をむいている。
「魔王よ、貴様は滅びる運命だ。数々の散っていった人のため、お前のせいで苦しむ人々のため、俺たちはおまえを倒す!!!」
くっ。こうなれば仕方がない。できるかわからんが、最大魔法で勇者とその仲間たち(4人)を撃退するしかない。なーに命までは取らんさ。怖くて人なんぞ殺せるか!!!
「この私が本気を出す前に引き返すのだな。貴様らなど右手で一瞬にして消すこともできるのだぞ。」
できるだけ魔王っぽくしておく。頼むから怖気づいて引き返して!
「貴様などに屈するものか。俺たちは色々な人の思いを受けてここまで来たんだ。お前の一撃などで屈したりはしない。」
うわー。引かないってさ。もうこれはやるしかない。俺は右腕を勇者御一考の方へ向け、手のひらに意識を集中する。俺が作った最強魔法。
「カエレルウチガアルナラソレハイイコトダオレニハソレガナイダカラ、ウチニカエレ!!!!!!」
俺の手から紫色のビームが出る。予定だった。しかし実際には俺に手に魔力は集まってはいるが、なかなか放たれない。やばい、魔力の暴走だ。最近魔力を使ってなかったせいで、魔力がたまりすぎてうまく扱えない。自分でもわかる。やばい。
「フハハハハハ。逃げるなら今のうちだ。なぁ勇者よ。まだ死にたくないのなら引け!!」
「来い!魔王。ルシーラ、魔法防壁を!」
ルシーラは勇者パーティの魔法使いの女だ。
「はい。フルマフ!」
勇者たちの前に青色の魔法陣が現れる。魔法攻撃威力を80%カットする魔法防壁最大呪文。しかし、この俺の魔法を防いでも死ぬ可能性がある。それだけ俺の腕にはやばいほどの魔力がたまっている。もう俺の腕にとどめておくのも限界だ。
「これぐらいの攻撃で死んでくれるなよ!!」
「しつこいぞ魔王!!!早く撃ってきやがれ!!!」
「はああああああああああああ!!!!!!」
右腕からとんでもないほどの極太ビームが放たれる。俺からでは勇者たちが見えないが、フルマフの防壁にビームがはじかれているのがわかる。頼むから死なない程度に怪我してくれ。そしてあわよくば帰ってくれ。しかしフルマフの防壁が消え、ビームが勇者たちのいたところを貫く。その間約10秒。ビームを打ち終えた俺は絶望していた。ビームの飛んで行った方向の物はあらかた消し飛んでおり、魔王の部屋の一部が丸ごと消し飛んでいた。もちろん勇者御一考もいなかった。人を殺してしまった。やばい人を殺してしまった。どうしようどうしよう。
「それで終わりか!」
90度右を向く。そこには無傷の勇者御一考がいた。よかったぁ。生きてたんだぁ。
「ククク。よく避けたな。しかしあの攻撃を避けるとはさすが勇者といったところだな。」
「あの攻撃はまずかった。ポルテアがなければ死んでいた。」
ポルテア、マーキングした二つの地点を移動する勇者専用魔法。この部屋の中を瞬間移動したことのなる。
「しかしその魔法は精神力をかなり使うはずだ。今引き下がるのなら追撃はやめよう。どうする。」
だっせー、この魔王だせー。
「確かにお前の言う通りだ。だが俺たちには聖剣ミラーがある。」
勇者は聖剣を構える。
「俺を導け!!!!聖剣ミラーぁぁぁぁぁぁあああああ!!!!!!」
聖剣から白い斬撃がこちらに飛んでくる。俺に使える魔法はさっきの一個だけ。つまり防御手段がない。俺の体はさっきの攻撃でほとんど力を使い切っていた。本能的にわかる。俺死んだわ。
「死にたくない!!」
俺はベットから飛び起きた。
「夢?」
夢なのか。感覚はリアルだが、現実味のない夢だ。
「たかし!朝からうるさいよ。早降りてきて朝ごはん食べな!」
「はーい」
母親の声に反応し、俺は一階に降りる。
これからぼちぼち続けていきます。もしよろしければ他の作品ももどうぞ