第9話・必殺技を放たれた脇役の自問自答
結論を言えば、結局
『ティナ、辞めろ
俺とレイ嬢の時間の邪魔をするな』
と言うラルフの真顔で放たれた一言で、泣き叫びながらヒロイン様は逃げ、その一言は周りの黄色い歓声を上げていた女子達…もう良いわ、長いから黄色女集団で良いわ。
ゲフンゲフン…
取り敢えず、黄色女集団達にもクリティカルヒットしたわけで、そのまま黄色女集団から、悲鳴女集団に変化しながら、泣き叫びたいのを堪えたような表情をして逃げたわけで。
つまりは平凡な脇役ライフをぶち壊されたわけ。
は?許さないわよラルフ。
とまぁ、そんな怒りをグッとこらえて、『まぁ、有難う御座います。助かりますわ』なんて白々しさが底知れぬ言葉を口にして馬車を降りた後に、愛する猫の顔をイメージした、小さな刺繍が施されたお気に入りのハンカチを握り締めつつ、考え込んでいたわけで。
ちなみに現在、場所は学校の屋上。
時間は“必殺技で平凡ごとぶち壊し事件”から数時間後…つまりは昼休みである。
そして、目の前にはラルフ…は、居ないが人生がかかった大きな難関が何個か有った。
まぁ、大半が疑問なのだが…
脳内で簡単に箇条書きをしてみる。
1、ラルフの行動が謎過ぎる
2、ラルフは何を企んでいるのか?
3、ティナの勘違いを正す
4、悲鳴女集団を黄色女集団に戻す
5、私が平凡な脇役になるには?
(あらやだ、これ無限に思い付くわ…)
と、わざとらしく頭を抱えておどけてみるも、屋上にはツッコミを入れてくれる人なんて誰も居ないし(いやそんな人何処を探しても居ないだろうけど)、問題は1つも解決しないので、渋々一つ一つについて考えてみることにする。
1、ラルフの行動が謎過ぎる
これに関してはもう謎しかない。
何故私に声をかけてくる?
何故私に馬車で迎えに来る?
何故私と馬車に乗る?
何故私に手を差し伸べる?
何故私との時間を邪魔するなと言う?
何故ティナより私を優先した?
(…これまた止まらないから辞めにしようかしら)
と、次の項目へと現実逃避をした。
2、ラルフは何を企んでいるのか?
これに関してはもう未知数。
私に愛想振り撒いて、黄色女集団を悲鳴女集団に変えたり、二人っきりで会うぐらいには好感度が高い筈のティナを泣き叫ばせる意味が分からない。
絶対に何か企んでいる筈なのに、全く検討もつかない。
(もう良いわ、次行きましょう)
と、またもや私は現実逃避を行う。
3、ティナの勘違いを正す
これは絶対にしなくてはならない。
あのままだと、(時期的に恐らく)告白とかなんとかになる前に、愛する片想いの相手である友人、ラルフを私に奪われたとでも思い込まれてしまう。
下手したら色仕掛けやらなんやらで、私がラルフを騙したとさえ勘違いされかねない。
いやむしろ今されていてもおかしくない。
しかし、今朝の事件のせいで、ティナには到底話しかけられる雰囲気ではない。
そもそも面識がないわけだし。
平凡を目指すために障害をぶち壊す時には、脇役とはなんと不便なんだ。
と、少し悔しくなりつつも、私は次の項目へと進む。
4、悲鳴女集団を黄色女集団に戻す
これも欠かせない。
これまた絶対にしなくてはならない。
彼女達は本気でラルフに恋をしている。
だからこそ変な噂を流されたら、たまったものじゃない。
主役を目指すなら話は別だが、私は平凡な脇役を目指しているのだ。
無駄に有名になんかなりたくない。
しかし、ティナよりも厄介なのは、底知れぬ人数と、話しかける理由の無さ、そして何よりも困るのが、多岐に渡る家柄である。
私の家、ローペッツ家は、この地域において、中の上の上ぐらいのレベルであり、正直、話すのも烏滸がましいと突き放される可能性さえあるのだ。
そもそもあの台詞の意味を、どうやって覆すかなんて思い付きもしないのだが。
今朝の彼の爆弾発言を思い出して、少し頭痛を感じつつも、私は次の項目へと進むのだった…
投稿遅れまして、申し訳ありません。
十六夜零です、こんばんは。
さて、学校が再開され、更新頻度が落ちたりと、申し訳ない気分にやられていたのですが…
なんと、今日(執筆時はギリギリ6月6日です)執筆するためにあくレイの画面を開くと…
総合評価
6pt
ブックマーク登録
3件
という文字が目に入りました。
なんと、増えていたのです。
とてもとても有り難いことです。
学校の再開で更新頻度がまた遅れる可能性もありますが…
読者様の評価やブックマークの喜びや有り難さを胸に、執筆していきたいと思います。
これからも、あくレイと十六夜零を宜しくお願い致します。