第7話・本当に手に終えないわ…
結局、それからは毎日ラルフ(本当は呼び捨てなんてしたら本当に殺されかねないのだが、憎たらしいので心の中では呼び捨て)が毎日毎日昼休みに話し掛けてきた。
流石に令嬢達の噂話にも出てきて、最近は周りの令嬢の当たりも強く、取り巻きでさえも地味に戸惑った顔である。
そしてついに今日は…
『いつの間に良い人を仕留めたのかしら』
と、お母様に嬉しそうな顔で微笑まれてしまった…
お父様にいたっては…
『俺は…もう少しレイとの日々を満喫したかったが……』
と、悲しそうな顔をしてくる始末である。
正直、手に終えないどころの問題ではない。
御本人に至っては…
『そんなの言わせておけば良いだろう
…嫌なら手を打つが』
と、周りに圧をかけてしまうのだからもう頭を抱えた。
と言うか今だって抱えてる。
いや、猫も抱えてるし、なんならここは自室のベッドの中で、しかも今は夜で寝る時間なんだけど。
て言うかこっちはあのヒロインちゃんと幸福な日々を勝手に過ごしてほしいのだけれど…何故か話しかけられるし、やたら優しい。
そして私は今日も、今週何度目か分からないため息をはきつつも、愛する猫と一緒に眠りにつくのだった…
次の日の朝。
到底ため息すら出ないどころか、足から崩れ落ちる力もないような事が起きた。
『ほら、乗れ』
そう言うのは、馬車の中で足を組むのは…残念なことにラルフであった。
(いやこれがさ…!お父様なら良いのよ!?
ついでに私の隣にお母様が居れば完璧…!
楽しい家族だんらんタイム…なのに…!)
私は心の中で大声で泣き叫ぶも、悲しき事にラルフの地位と私の地位では比べる意味もない程差があるので…
結局、いくら悪女と言えど、脇役レベルの身分では勝てる訳もなく、そのまま彼の家の馬車に乗り込んだのだった…
いや、ひきつった笑顔だったのは許してほしいが。
『レイ嬢?聞いているのか?』
と、小説のヒーロー様らしく見目麗しすぎて憎たらしいったら無いお方が、ぼーっとしていた私に話し掛けてきてしまった。
『何でも御座いませんわ』
何気に言葉遣いから距離が遠くなりつつも、なんとか私は返事をする。
『レイ嬢は連れないな…』
と、ため息を漏らす姿でさえ絵になるのだから憎たらしいったらない。
その黒髪のサラサラさや赤い瞳はもう憎たらしい。
いっそやけになって、私が猫と結婚したいとでも言い出しかねないレベルに憎たらしい。
『そんなに顔をしかめたら、美人が台無しだ』
等と顔を覗き込んできた暁には、もう腹に一発食らわせてやりたい気分になったが、その回数だけ覚えるだけにとどめるとしよう。
(いやそれもそれで私ってば何をしているんだという話だけれどね)
私は心の底から吐きたいと思ったため息やら本音やらをぐっとこらえ、そのまま学校まで馬車に揺られるのだった…
実はやたらと私が作る作品には猫を登場させていますが、単純に好きなだけだったりします。