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第6話・話し掛けないで頂戴
私は心の中で叫んでいた。
(話し掛けないで頂戴)
(話し掛けないで頂戴)
(話し掛けないで頂戴)
(話し掛け(以下略)と。
そう、誰にと言われればあの小説のヒーロー様であり…私の目の前に何故か居る相手である。
『レイ嬢?
どうして目を合わせてくれないんだ?』
と、首をかしげてくる。
(いや見目麗しすぎて腹立たしわ…!
地味に一瞬ま、いっかぁ…何て思いかけたわよ!?)
心の中で自分にため息を吐きながらも、
『何でもありませんわ
と言うか何かご用意ですこと?』
と、返せば
『用がなければ、婚約者も居ない俺が自由に令嬢に話し掛けてはいけないのか?』
(…確かに婚約者がいたら令嬢に話し掛けるのは地味に問題だけど…確かに互いに婚約者は居ないわけだし…
いやでも身分ってもんがぁ!!
と言うか私の脇役ライフふふふふふぅ!!)
と、令嬢らしからぬ心の声を叫ぶ。
結局、その昼休みはろくに本も読めず、ぎこちない会話(と悲惨な心の叫び)を続けるのだった…