第4話・思い出してしまった悪役令嬢
その日の次の日の昼休みの事。
私は彼に会うと私の思い描く平凡な日常が壊されかねない事を察知し、ひとまず裏庭へと向かった。
しかし、一応この学園はトゥルー学園。
そう、貴族の名門校。
平民なんて知能が高くなければ絶対に入れないような学校であり、貴族であれば馬鹿でもお金を積めば易々と入れる学校である。
まぁ、そんな学校なのだから、裏庭も平民からしたら自宅の敷地の何倍もある程には広い。
まぁ、私の家より少し手狭程度だが。
そんな裏庭には、洒落た木製のベンチやら、屋外のサロンにありそうなパラソルのような物やら…と、まぁ、休息にはうってつけの物がちらほらとある。
他はただただ天然の芝生が広がるのみである。
そんなパラソルの下に設置されているベンチの内、一番目立たなさそうな奥の隅の方のベンチに腰掛け、本を開く。
そうよそうよこれこれ!
こんな平凡な日常が良いのよ!
いつものように取り巻きを引き連れる様な真似はしなかったのは、こんな昼休みの自由な休息を邪魔されたくはなかったからである。
私はふと、腕に付けていた黒のシックかつクラシカルな腕時計を見る。
(まだ後20分は読めるわね)
なんて事を考え、本に視線を戻した。
すると…
『何処に居るかと思ったら
こんなところに居たのか』
その声にふと、顔をあげると…
昨日の彼が自分ではなく私から少し離れた席に座る少女へと話しかけていた。
『ご免なさい、ラルフ様』
彼女は彼に向かって礼儀正しく御辞儀をしながら謝罪を述べた。
ふと、その情景に頭痛がしてきた。
私は軽く頭を押さえて頭痛を耐える。
すると、ふと、彼ら二人に関する記憶が流れ込んでくる。
(何この記憶…!?
一体誰のだというの!?)
本を開く謎の少女、その本の挿し絵や表紙には彼等二人が写る。
私はその本の挿し絵の端の方で黒髪を靡かせ、不適に笑ったり、とどめを刺されて怒ったり…
そこで私は気付いてしまった。
私はレイ・ローペッツ。
脇役であり悪役令嬢のレイ・ローペッツ。
今、彼の前に立つ彼女…
そう、主人公のTinaと、彼…そう、ラルフ・ロペスの恋路やらなんやらを少しばかり邪魔して、呆気なく軽い断罪(しかも小説ではたったの一行で済まされた)で没落する阿保な悪役令嬢レイ・ローペッツ。
それこそが私であり、この世界は前世で私が読んでいた小説の世界である。
それに気付いてしまったのだ…