第3話・平凡じゃない彼Ralph・Lopezの謎の行動
それから数日後の、なんら代わりのない悪役令嬢の日常の筈のある日の事だった…
『あら、あれは…』
そう、私が独り言を呟いたのは皆様の世界で言う中学校であるTrue学園の中等部の中庭だった。
私は丁度昼休みと言うことで、食堂での昼食もそこそこに、取り巻きを追っ払って、読書に徹しようとしていた。
すると、そこには何と、
有名な上流貴族である、Ralph・ Lopezが居たのだ。
読者の皆様、勘違いはなさらないで頂戴よ?
偶然同じスペルの名字のせいで、一時期間違われてうんざりだったのだから。
スペルは同じだけれど読み方が違うから全く無関係の他人よ。
血統書を見る限りは、私達は全くもって無関係な上流貴族の息子と平凡な悪役令嬢なのだから。
そして、彼はどうやら誰かを待っているようで、中庭を囲うように建つ校舎に取り付けられた、時計をチラチラと定期的に見ていた。
そんなに待ち遠しい相手なのだろうか。
まぁ、彼は一応その上流貴族という階級などの理由だけでなく、見目麗しいとか、そんな理由もあって有名なのだが、別に私は顔面なんて言う肉と骨の塊には興味がない。
正直人間は中身だと思っているタイプなのだ。
まぁ、別に彼に恨みもなければ、名字の関連で噂された時でさえ会話もしたことのない、無関係な相手であり、無関心な相手なのである。
私はそっと視線を本に戻そうと…
あれ?彼、なんかこっちに向かって無いかしら?
え?私…な訳無いのだけれど、他には誰も居なかった。
それもそのはず、私がさっさと食事を済ませただけであって、まだまだ今は食堂にばかり人がたまる時間帯なのである。
中庭なんて行くよりかは
屋上や図書室の方がまだ混んでいる程だ。
いや今そんな事を考えている場合ではない。
私が硬直して考えている内に、彼はどんどん私に近づいてくる。
(待って待って待って
いくらなんでも何で?
え?え?え???)
私の脳内はショート寸前の混乱の最中である。
『君がローペッツ家のレイ嬢か?』
(…)
あまりの驚きに私は言葉を失い、岩のごとく固まった。
『おい、聞いているのか?』
私はその言葉になんとか反応しようとし…
『え、えぇ、そうですわ
私がレイ・ローペッツですの
ごきげんよう』
なんとか本を閉じて椅子から立ち上がり、スカートの裾を持ち上げて挨拶をする。
『そうか…君は婚約者など居ないと聞いていたのだが、恋人が居るそうだな』
『はい???』
思わず私は聞き返してしまった。
無理もない。
私に恋人なんて面倒な存在は居るわけもなく、ワガママを聞いてくれる両親と取り巻きや、大好きな飼い猫しか居ないのだ。
『愛してるだの言っていただろう?』
『…もしかして…飼い猫の話でしょうか?』
私はやっとその答え?に辿り着き、なんとか声を出して聞き返した。
『あぁ、君には飼い猫が居たな
君は飼い猫に愛を囁くのか?』
彼の顔は分かりやすく『理解不能』と、書いてあった。
無理もない。
令嬢どころか平民でさえそんな事はしないだろう。
…多分。
何でレイラの事を知っているかは分からないが、取り敢えず答えることにしよう。
『私が世界で一番大切にしている飼い猫ですわ
愛ぐらいいくらでも囁きますの』
私はなんとか平成を保って本音を口にする。
『人間よりも大切なのか?』
また質問の意図が分からぬ質問をされる。
『私にとってはそうですわ
彼の右に出るのは両親ぐらいですの』
すると、彼は豆鉄砲を食らったなんたらの如く、驚いたような間抜けっ面を私に晒した。
『…君はあぁ言うのがタイプなのか?』
これまた意図が分からぬ質問だ。
『猫の好みはそうですわね』
あれでも血統書付きの、それなりにお高い猫なのである。
『じゃあ人間の好みはなんなんだ?』
『…はい??』
『だから、人間の好みはなんなんだ?』
『…はぁ!?』
まさかの路線変更に私は各駅停車の電車が突然、快速電車に成ったような気分になった。
脳内でもこんな変な例えしか出来なくなる程には気が動転していた。
『…』
彼は、早く答えろと言わんばかりに私をジっと無言で見詰めてくる。
『…特にはないですわ
まぁ、強いて言うならば顔面には興味がありませんの』
『…そうか…』
何故か彼が少ししゅんとしたというか、悲しそうな顔をした。
『あの…いや、何でもない
また今度会おう、レイ嬢』
『…………』
思わず私はよく分からぬ話に固まった。
というか待ってこの人今…
また今度会おうって言ったわよね!?!?
それは自覚したくはなかったが、平凡な悪役令嬢の日常をぶち壊されていく日々の、始まりだったのだった…
そして彼女がとあることを思い出すのは後もう少しである。
たまには長めにしてみようかと、1000文字を実は目安にしている(筈なのにやたら文字数の変動が酷い)私が、改行含めての方だけとはいえ、2000文字を越えさせてみました。