第2話・愛する猫と、違和感と。
まず、ここは貴族社会が当たり前の世界であり、私はCherieCherry村やAprilland村という普通…というか微妙かつ貴族社会としては平均的な村を所有しているローペッツ家の長女であり、溺愛されて分かりやすくワガママに育った一人っ子の悪役令嬢である。
そんな私は(自分で言うのも色んな意味で難だが)これといった短所と言えばワガママな所ぐらいで、長所も特別秀でては居ないが風景画が得意な程度。
婚約者も、これといって超有名ではない家の一人娘であり、更にはまだ15才という事で、そんな予定もなければ相手も居らず、まだまだ人生これからと言う所である。
そろそろ訪れる誕生日でも迎えたら婚約者という話は出てきそうだが、別に私が嫌よと言えば両親は喜んで頷くだろう。
何せ愛娘のおねだりである。
まぁ、それでも格上の方々の指示ともあらば流石に断れないだろうが、こんな地位が特別高くもない悪役令嬢には、そんな話は来ないだろうと、正直高を括っている。
そんな私の両親の領地や隣接した領地では有名な悪役令嬢ぶりなのが私なのだが、これと言って悪役ぶりの名を轟かせるわけでもなければ、無名というわけでもない。
つまりはとてつもなく平均的かつ微妙であり、平凡な悪役令嬢が私という事ある。
そんな私には、一応この平凡な地域において、ちょっと位は社交界でも地位の有る一家なため、取り巻きは片手位の人数は居るものの、友人と言える人は0である。
そう、絵に描いたような悪役令嬢でありながら、超絶微妙な感じなのである。
しかし、それをむしろ私は喜ばしく思っていた。
ある程度のワガママであれば両親や取り巻きが叶えてくれ、かといって私の悪役令嬢ぶりにより、うざったるく絡んでくる友人なんて面倒な者処か、取り巻き以外に私に話しかけてくる者は学園内に居ない。
『ねぇ、これって最高だとは思わないかしら?』
私がそう語りかけるのは、世界で一番愛しい飼い猫のLailaである。
あ、こう見えてこの子は男の子よ?
ま、そんな事はさておき、唯一無二の心を許す相手である猫に、私はそう呟いた。
『にゃー』
『あら、貴方もそう思うのかしら?
分かってるじゃない
流石ね』
私はそう言いながら彼に彼の好物の魚の刺身を与える。
『にゃー』
彼は喉を鳴らして喜びを表し、その後に丁寧にゆっくりと刺身を食べる。
(やけに行儀が良いのよねぇ…
そんな事教えた覚えもないのに)
たまにそんな突っ掛かりを覚えるのだが、それを特に気にも止めずに、私は愛する猫の食事を眺める。
密かに、この子との穏やかな悪役令嬢の日常を思い描きながら。
そんな平凡な悪役令嬢のレイに目を付けている上流貴族が居るとは、この時は誰も思いもしなかったのだった…
取り敢えず一気に3話程掲載して、そこから毎日午後8時更新をしていくので、宜しくお願い致します。
(その方が読者を掴めるかと思った十六夜)