第12話・二度目の無自覚な必殺技の発動
『あ、レイ嬢に…ティナじゃないか』
そう言うのは勿論の事、小説の主人公であるヒーロー、ラルフだった。
『ごきげんよう、ラルフ様』
私はスカートの端を礼儀正しく持ち上げ、御辞儀をして挨拶をする。
しかし、内心焦っていた。
(この阿保野郎はどう出てくるの!?
怖いわっ!
下手したら死ぬわよ!
没落どころか不敬罪にもされかねないし!
ラルフ、貴方は次、どうでてくるの!?!?!?)
そりゃそうだ。
こっちは人生がかかっている。
講習の面前で“私のラルフ様を取らないで”等と叫べる阿保なヒロイン様なんかとは、かけてる思いが大違いである。
そんな私の焦りも露知らずと言う顔のヒロイン様ときたら、私の真似をするように挨拶をしていた。
(そう言えば彼女…ティナは、平民だったけど、人並外れた頭脳で入学したんだったわね
そりゃ、お嬢様らしい礼儀作法もよく分からないわけだわ)
ここ、トゥルー学園は、頭脳か金さえ有れば入れる。
つまりは平民でも頭が良ければ学費も0にされる。
理由は簡単、他の金持ち達からの学費で平民数人ぐらいは余裕で通わせられるのである。
つまりはティナは、頭脳と引き換えに、他の貴族達の学費で通っている様な物なのである。
まぁ、そう言えばそれを逆手にとって苛めてたな…本編の脇役な私は。
『レイ嬢?レイ嬢??
聞いてるのか?』
おっと、ヒーローこと私の平凡な人生を脅かしかねないヤベェ奴に話し掛けられた様ね。
適当に答えなきゃ。
『い、いえ、なんでもありませんわ
なんだか今日は少しぼーっとしていて…
申し訳ありませんわ』
『いや、気にしなくて良いんだ、レイ嬢
また明日会おう
俺の家の馬車で送らせるから
お大事にな』
そう微笑んできた瞬間に、私は固まった。
(いや…でも…このパターンなら…)
『キャー!!』』』
『ラルフ様ってばなんてお優しいの!』
『昨日に引き続き今日も助けるだなんて!』
『流石ラルフ様!』
(うん、この末期的ファン達の反応的に、昨日みたいな惨事にはならなそうね
これなら平凡な脇役悪役・レイ嬢として生きられそうね
たったの一行で済まされた没落も、それ以上のバットエンドも起こらなさそうで安心したわ)
と、少し安心しながらも私は感謝の言葉をのべ、そのまま馬車へと向かうのだった…
明日が学校のない筈の日なのに、“また明日”と言われた理由に気付かずに。
お久し振りです。
あくレイの作者こと、十六夜零です。
最近は更新が途絶えてしまい、誠に申し訳ありませんでした。
これからもまだまだ忙しい日々が続きそうですが、なんとか出来るだけ早く更新していける様に頑張りますので、良ければ、今後ともあくレイを宜しくお願い致します。
そして、更新が途絶えていたにも関わらず、
『10ptとブックマーク5件』
有り難う御座いました。
この喜びを糧にして、少しでも早い更新を心がけたいと思います。




