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夜中の散歩にご注意を

宿屋の一室、その部屋は一般的な宿屋と同じように風呂とトイレ、それとベットが二つあり今現在風呂には未華とカヤが一緒に入っている中、布団の中でうずくまり悶えている人物がいた。


「うぅぅぅぅ~~」


ラキャだ、彼女は先刻まで未華のことを女性と勘違いしたまま接してはては一緒の部屋で泊っても良いだろうと思い部屋を一室しか借りなかったのである。


「あわわわ、こ・・・ここここれからどうすれば・・・・・」


顔を赤面させて布団の中でうずくまるラキャは思考がまとまらなかった、ラキャは‘寄生身虫きせいしんちゅう’と呼ばれる身体に虫を飼い、使役する一族であり寄生身虫の一族はそのほとんどが女性で男は中々生まれない一族であり閉鎖的な一族としても知られている。その為ほとんどの者が男性への耐性がないのである、ラキャは一応エルフの里エルヴァイスで生まれ育ったが昔から男性に対してのみ人見知りが激しかった為仲の良い男性も屋敷のクギャしかいなかったのである。


「お~いラキャ!上がったぞ~」


「お~~~~~!!」


ラキャが悶々と考えているときに風呂から上がったであろう未華とカヤが出てくる。カヤは出てくるなり布団にくるまっているラキャに飛びつく


「あ!おいカヤ!まだ髪乾いてないだろう?おいで」


「あ~~~~!」


カヤはすぐさまラキャから離れて未華のもとに行く、未華はソファに座ると自分の膝の上にカヤを座らせると持っていたタオルでカヤの頭をなでるように拭いていく


「う~~~~~!!」


カヤはとても満足そうな笑顔をしていた、ラキャはその光景を布団の中から覗き込むように見ていると不意に突然ラキャの布団がめくりあがる。


「え?きゃぁ!」


「ったく!いつまでもくるまってんじゃねぇ!」


「だっだって・・」


「だってじゃねぇ!ったく・・・」


未華はいつの間にか瓶からプラミーを出してラキャの布団を持ち上げるように指示していたのである。ラキャは手で自分の顔を隠していたが未華にはラキャは耳が赤くなるほど赤面しているのが容易に想像できた。


「それより!お前なんで俺を女だと思ったんだ?そういえば屋敷にいた連中や初対面によく嬢ちゃんとか言われるがあれもしかしてギャグじゃねぇのか?・・・・」


未華はラキャに聞くと同時に顎に手を当てて考え出す


「えぇっと・・・未華様は自信の見た目を見たことがおありですか?」


「はぁ?あるに決まってんじゃん!」


「でしたらわかる通り未華様の外見は一般の人より一線を引きます、おそらくこの世で最も美しいと言われている‘ハーリュビリアスの民’と同等かそれ以上だと考えたほうがいいでしょう」


(・・・・美的感覚はほとんど一緒なのか?・・・・)


ラキャの言葉に絶句する未華だった


「そもそもその見た目で男だと理解するほうが難しいでしょう、声もかなり高めのほうですし」


「うぐっ!・・・・それを言うなよ・・・・」


ラキャに痛いところを突かれる未華だった。


「とりあえず風呂空いたから入ってきたら?」


「わかりました、すみませんが少し席を外します」


「おう!ゆっくり使ってこい・・・・」


未華はそう言って風呂場に行くラキャを見送った後カヤと一緒に遊ぶことにした。

ラキャが風呂に入って二時間ほどたった、未華は風呂から一向に出てこないラキャを少し心配した


(・・・・・でてこないな・・・・まぁ女性は長風呂が当たり前だしこんなもんなのか?・・・)


未華はそう思いながらカヤと遊んでいた。それから数時間たったがラキャはまだ風呂に入っていた。未華はあまりにも長すぎると思いカヤに見に行ってもらった。


「カヤ、悪いが風呂場を見てきてくれ」


「あい!」


カヤは未華に言われた通りに風呂場に入っていった、少ししてカヤが風呂場から出てきた。


「どうだった?」


未華はカヤに聞くとカヤは口をもごもごと動かしていた、未華はカヤに食べ物など上げてはないため不審に思った。


「カヤ?何食べてるんだ?」


「・・・・えう!」


カヤは未華に口の中を開けて見せるとそこには飴玉くらいの白い塊があった。未華は不思議に思いその塊をカヤの口から取り出すと白い塊は光輝いた。


「うわっ!」


光は直視できないくらいにとても強く未華たちは目をつぶった。光が弱くなると不意に声が聞こえた。


「未華さん、もう目を開けて大丈夫ですよ・・・・」


未華は声の言うとおりに目を開けるとそこには白く美しい蛇のような生き物がいた、その生き物はとても大きく未華の身長の二倍はあるであろう体躯をしていた。


「お、お前は?!」


未華は突然の出来事に困惑する


「わたしは【クランケス】と申します」


クランケスと名乗った蛇のような生き物はまっすぐと未華を見る


「お前・・・奇怪麗蟲なのか?・・・」


「たしかにわたしは奇怪麗蟲第78選の中に存在する一種ですが正確に言うと正式区分は‘奇怪麗蟲精鋭第十選きかいれいちゅうせいえいだいじゅっせん’の一種、‘エルゼシオン’という種族です。」


クランケスは未華に自身の種族を明かす。


「えぇっと・・・・クランケス?ラキャは・・・・」


未華はクランケスにラキャのことを聞くとクランケスは苦そうな顔をした。


「あぁ~それなのですが・・・・少々お手をお借りしてもよろしいですか?」


「?どういうことだ?」


「大変いいにくいのですがマスターはどうやらのぼせてしまったみたいで今動けないのですよ・・・」


「・・・・あぁ、うん?」


「さっ!いきますよ!」


「え!?ちょっ?!!!」


クランケスは未華の返事を聞かずに未華を尻尾を巻き付けて持ち上げると風呂場に入る、未華は慌てていたが風呂場でぐったりしているラキャを見て少し冷静になると急いでラキャにタオルを巻きベットまで運ぶ、未華はベットまで行くと掛け布団と枕をどかしてそこにラキャを寝かせると掛け布団を丸めてラキャの足の下に敷いた。


「ふぅこれで少しはましになるんじゃないか?」


「手際がいいですね・・・・」


「あぁ~まあな・・・」


クランケスに褒められて悪い気はしない未華だった


「ってか運ぶだけならお前だってできるだろう?」


「わたしの場合服みたいに何か引っかかったりできるところがないと滑って運べないんですよほらこれ」


クランケスは自分の尻尾を未華の前に出す、未華はそれを触るとぬるぬるしているのが分かった。


「たしかに水みたいにしっとりしていてつるつるだな・・・」


未華はそう言った後にラキャを見ると熱で真っ赤に染まった顔は熱が引いて血色の良い顔に戻っていた。


「さてと、着替えどこ置いたっけ・・・・」


未華はラキャの着替えを取り出そうとカバンを開けて着替えを探す。


「うっ、う~ん?」


「気が付かれましたか?マスター・・・」


ラキャが目を覚ますと初めにクランケスが目に入る。


「クラン、貴女が運んだの?」


「わたしが運べないことは知っているでしょう?」


「じゃぁ・・・」


ラキャはクランケスの後ろでカバンから着替えを出している未華を見つける。未華は着替えが見つかったのか手に服を数着持ってラキャのほうを向いた


「あぁ目が覚めた・・・の・・・・か・・・・・・」


「未華様、すみませんお手数をおかけして」


未華は目が覚めて体を起こしているラキャに背を向けた。


「未華様?どうした・・・の・・です・・・・・か・・・・・?」


ラキャは言いながら自分の体を見るとタオルを一枚まいてあるだけということに気が付いた。


「うっうわあああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


ラキャは叫びながら足元に丸めてあった布団をかぶる


「・・・・ラキャ・・・」


「・・・・・はい・・・・・・」


「着替えここに置いとくな・・・・・」


「・・・・・ありがとうございます・・・・」


「カヤ、おいで散歩でもしてこよう・・・」


未華は着替えをベットの上に置いた後カヤを抱っこすると部屋から出た


「大丈夫ですか?マスター」


「大丈夫じゃない・・・・」


気まずい空気が部屋の中で蔓延していた。

外に出た未華とカヤはその辺をブラブラとあてもなく歩いていた、辺りは暗く街の明かりや酒場の明かりが目立っていた。未華とカヤは泊っている宿屋のすぐ近くの公園に行く、その公園には街灯がいくつもあり昼と変わらないくらい明るかった。公園に入るとカヤはさっそく公園の遊具で遊び始めるが未華は空いていたベンチに座り遊んでいるカヤを遠くから見守った。


「しっかしなんでこの公園はこんなに明るいんだ?」


「それはですね・・・」


「うぉっ!?」


未華の疑問に突然横から話しかけられて驚く未華だが女性は気にせず話す。


「あぁ!大丈夫ですよ!ワタシアヤシクナイネ~」


(う、うわ~見るからに怪しい・・・・)


女性に不信感を覚えた未華は女性から少しづつ距離をとっているとカヤが小さな男の子を連れてやってきた。


「あうあ~!」


「うわっカヤ!その子どうしたんだ?!」


未華はカヤが連れてきた男の子を見る、その少年は身なりが綺麗に整っており服を見ただけで育ちが良いことと裕福な家庭で育ったと思ってしまった。


(いかんいかん、人を見かけで判断してはいけない)


未華は頭の中で頭を振ると少年の前に行こうとすると先ほどの女性に腕を掴まれる。


「あら、私のことは無視ですか~?うふっ妬いちゃいますねぇ~」


「は?」


女性はそう言って未華を抱きしめようとするが未華は瞬時に女性の手を振り払いカヤを抱いて二人から距離を置く


「お前らはなんだ!?」


「あらあら~私を知りませんの~うふふっ傷ついてしまいそうねぇ~~」


女性はそう言って少年の頭を掴むと少年の首筋に噛みつくと少年の顔は生気を吸われているかのように顔が白くなり始めると少年は身体中を青白くさせて干からびたミイラのようになると女性は少年を地面に叩きつける。


「あああぁぁぁぁぁぁ!!!!!さいっっこっおぉぉぉぉぉぉぉぉl!!」


女性は頭をかきながら叫ぶと同時に背中から翼、尾骶骨から尻尾が生える。


「うふふふふふふふふふっ、初めまして私は【ネティアル・Nノワーツ・ルーミリシアン】‘サキュバス族’の長にして最長を生きるもの・・・」


「・・・・ルーミリシアン?」


聞き覚えのある名前に未華は少し反応する。


「うふふっ貴女は知らないのかしら~?」


「な、なにをだ・・・?」


Nノワーツのミドルネームを持つ者を前に人はどうなってしまうかを・・・ね!!」


ネティアルと名乗った女性は自信の腕を紅い液体を纏わせるとその液体は爪のように鋭く宝石のようにきれいに輝いていたかと思うと瞬時に未華との間合いを詰めて未華を切りつける。未華は間一髪のところでその攻撃を避けるが女性のほうが早さが上でいつの間にか後ろにも回られていた。


(くそっ・・・このっ・・・速いな!!)


未華はカヤを抱いたままなのもあって女性の攻撃を避けるために必死に動き回るが女性の速さがさらに上がってもはや未華の目ではその姿を捉えることができなかった。


「ほら!ほらほらほらほら!!!!あはははっ!どうしたの?そんなものなの?もっと私を楽しませて?」


女性が言うが未華にはその言葉は聞こえない、未華は懐に入っていた一つの瓶を取り出すと瓶の口を前に向ける。


「ファスト!!!」


未華が叫ぶと瓶の蓋を無理矢理押し開けて一匹の虫が現れた。その虫は禍々しくて眼を背けたくなるように不気味な見た目をしていた。


「あっえっ?」


「喰い捕えろ・・・・・‘レゼリオン’!!!」


未華が命令するとその虫は瞬時に消えたかと思うと女性を捕えていた。


「・・・は・・・?」


女性は自分が捕らえられていることに気づかなかった。


「キュルルルルルルルル!!!」


虫は叫びながら女性の頭にかぶりつくとそのまま頭をかみ砕いて食べ始める。未華はその光景をカヤに見せないようにカヤの目と耳を抑えて自身も見ないように目を瞑る。頭から齧られて喰われたため悲鳴はなくただ虫の咀嚼音だけが聞こえた、少しして咀嚼音が聞こえなくなったのがわかると未華は目を開けるとそこには血だまりの上に立っているレゼリオンと呼んだ虫がいるだけだった。


「・・・・レゼリオン・・・・戻れ・・・メーティ・・・」


未華は瓶をレゼリオンの前に出して呪文を言うとレゼリオンはゆっくりと瓶の中に吸い込まれていくと未華はもう一つの黒い瓶を取り出した。


「ファスト・・・」


そう言われて出てきたのはプラミーだった。


「プラミー、証拠隠滅だ・・・・たのむぞ」


そう言われてプラミーは先ほどまでレゼリオンがいた血だまりに集まると血を一滴残らず吸いこんで血だまりをなくした。


「ありがとう、プラミー戻れ・・・・メーティ」


プラミーは出てきた瓶の中に吸い込まれるようにして姿を消した。未華は一息つきカヤを見るとカヤは疲れたのか眠ってしまっていた。未華はカヤをひとまずベンチに寝かせると先ほど女性によってミイラのようになってしまった少年を探すが少年はどこにもいなかった。


「あれ?いない?」


未華は辺りを探すが一向に見つからなかった。


(おかしいな)


未華が顎に手を当てて考えていると公園の入り口から誰かが呼んでいた。


「お~い!未華様~~」


「ラキャ・・・」


ラキャが手を振りながら未華達に近づいてくる。


「ふうっ、まったく探しましたよ?」


息を切らしながら走ってくるラキャ、未華はことの事情をラキャに話した。ラキャなら何か知っているだろうと判断してのことだったがラキャから帰ってきた答えは未華が思っていた返答ではなかった。


「ノワーツですか?」


「あぁその女はネティアル・N・ルーミリシアンと名乗っていた。」


「う~ん、ルーミリシアンということはネティアル様の家系であることは間違いありませんが・・・」


ラキャは歯切れが悪く言葉に詰まってしまう


「まぁ未華様が心配なされることはないですよ!それにレゼリオンに食べさせたのなら‘後で聞けば良い’ですしね」


「・・・というかあれほんとに‘捕縛用’奇怪麗蟲なのか?」


未華はラキャに恐る恐る聞くとラキャは目を輝かせていた


「もっっっちろんです!!!!レゼリオンは何といっても奇怪麗蟲第78選の内の一種で食べるものすべてを別次元に飛ばす虫です!取り出し自由自在で物入れに使用する人もいますが本来の用途は捕虜の運搬や敵兵の捕縛などが主な活動とされているんです!!!」


ラキャの相変わらずの熱弁に未華は少し引いていた。未華はカヤを担ぐとラキャと一緒に元居た宿屋に戻るための帰路についていた、その時のラキャの顔は少し赤くなっていたが未華はそれを知らない。

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