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ようやく一日が終わりそうです。

少女を連れてしばらく走り人通りのない公園に着いた未華は少女をいったんベンチに座らせる。


(くそっ、なんだか知らんがよくないものを持ってきちまったかも・・・・どうすれば・・・・)


未華は少女を見ながらどうするか考えているとお腹が空いたような音が鳴る未華は音のなるほうを向くと少女がお腹を抑えていた。どうやら少女はお腹を空かせていたらしい、未華は少女の手を取ろうとすると少女はその手を拒み酷く怯えた表情で未華を見ていた。未華は改めて少女の姿を見る、服は安物なのか所々ボロボロで手足には手枷に鎖が巻き付けられており身体中にはいくつもの擦り傷や腫れ、青あざ等がいくつも見えた。


(奴隷・・・・か?)


未華は外見的特徴から奴隷と判断した。未華は顎に手を当て考えた。


(さて、どうするか・・・このまま連れ歩くのもなんか嫌だしだからといってほおっておくこともできないラキャがいれば何とかなったのに・・・)


未華は考えるが答えが出なかった。未華は懐から瓶を取り出して蓋を開け少女のほうに向けた


「ファスト、‘取り付き喰らえ’!」


そういうと瓶から大量の蟲が少女に纏わりつく


「!!?・・!???!?・・・・!!!!??」


少女は何が起きたかわからず両手を振り回して寄ってくる蟲を叩くが蟲はお構いなしに少女の体や服にくっつくすると少女の服装が見る見るうちに変わっていった、服は綺麗に直り身体中にあった傷は痣は消え手枷や鎖も消えた。


「メーティ!」


未華は虫を瓶に戻すと少女から少し離れて座ると少女に話しかける


「お前の名前は?」


少女に聞くが少女は一向に話さない


「・・・・ふぅ、声や難儀になるな・・・・」


未華は少女を見たまま数分経過すると空から声が響く


「未華様~!」


「ラキャ!?」


空からラキャが何かに乗って降りてきた。ラキャが乗っているものは不気味な容姿をした虫だった、ラキャが未華の近くまで降りるともう一人いることに気づいた。


「あれ?その少女は誰ですか?」


「ちょうどよかったラキャ!実はな・・・」


未華はラキャにこの少女がいる理由を話した。


「それは奴隷商人ですね、っということはこの子は奴隷ということになりますね・・・」


「やっぱりそうなのか・・・・」


ラキャの説明を聞き未華は少女が奴隷であることが確定した。


「それでどうするんです未華様?」


「そうだな、どうしようか」


「いっそ連れて行けばよいのではないのですか?」


ラキャの提案に未華は苦い顔をした


「そうできれば楽だが、面倒なことになりかねない」


「みつけたぞぉーーー!!!」


未華は少女のほうを向くと突然後ろから大声で叫ばれる、振り向くとそこには先ほどの棍棒を持った巨体の男を先頭に何人もの男がいた。


「ラキャ?あれ知り合いか?」


「いえ、知りませんがどうしますか?」


未華が少し下がると少女が未華に抱き着く


「・・・・・はぁ・・・・」


未華はため息をつくと男に話しかけた


「おい!先頭の男!!話をしよう!」


「あぁん!!?話だぁ!!?」


「そうだ」


「・・・いいだろう!」


少しの間があったが男は話し合いに応じてくれそうだった。


「まず、この子はお前たちにとって何なんだ?」


「そいつは商品さ!先月滅ぼされた国の王族なんだよ!」


「え?王族なの?」


「教えてやるが王族ってのはとてつもなく価値があるんだ!そこらにいる‘アマル’を捕まえるよりはるかにな!」


「・・・・おいラキャ、アマルってなんだ?」


未華は小声でアマルについてラキャに軽く説明を求める


「未華様、アマルとはこの世界にどこにでもいる‘発光魔獣はっこうまじゅう’のことです。どこにでも生息していて数は膨大ですが刺激しなければ何もしてこない無害な生き物です。特徴としてはアマルの体には‘発電結晶はつでんけっしょう’といわれる物質があり、それによりアマルは年中光っている生物です。その結晶を使っている街や王都もあると聞きます。」


(つまり電力を使うための素材ってことか?)


「おい嬢ちゃん!悪いがおとなしくそいつを渡せないなら少し痛い目にあってもらうことになるぜ!」


男は棍棒を空に掲げると大声を上げる


「‘アバリリム・グス’!!!」


男の棍棒が弾けたと思うとその中から巨大な大剣が現れた。


「・・・・おい!ラキャ!なんだあれ!?」


「変換魔法ですよ未華様」


「変換魔法?!」


「あの棍棒・・・・おそらく恐ろしく重くしてあったのでしょう、彼がしたのはその重さを刀身に変換する魔法です。ま、とりあえず迎撃します。‘ファスト’」


ラキャはそう言って自分の口に手を当てて唱えるとラキャの口から巨大な昆虫が顔を出した


「うぇ、お、おぇぇ。うぐっ・・・ぶぇぇぇぇ」


虫を出しているラキャは見ていてとても苦しそうだった、ラキャの口から出てきた昆虫は赤黒く三メートルはありそうなほど大きな体をしていた。


「・・・・うぶっ、ふぅぅぅ。さぁ・・・・行きなさい!‘リティ’!!」


ラキャがそういうと虫は男に飛び掛かる、男は自分の大剣を構えるが虫に大剣もろとも両腕を吹き飛ばされるとその場にうずくまってしまう。


「ぐっうぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」


「う、うわぁぁぁぁ!!」


「にげろ!にげっ・・・・」


男たちは逃げようとするが虫のほうが素早く男たちを逃がさなかった、虫は次々と男たちを捕まえると自分の口から粘着性のある液体を男達にかけて地面に固定する。


「さて、どうしますか未華様?」


ラキャは捕らえた男たちを未華の前に持ってこさせると虫を自分の体内に戻した


「・・・・お前のそれどうなってんの?」


「内緒です・・・」


未華はラキャに問いかけるがラキャは指を口に当ててウィンクをすると身動きのできない男たちの前に移動する、未華と少女はその後に続く形で男たちの前に行く


「・・・あ~~~~悪いんだけどこの子貰っていいかな?・・・」


未華は頬をかきながら男に聞く


「う、うるせぇ!もういい!もってけ!!だから見逃してくれ!」


男は涙を流しながら未華に言う、未華はため息を吐く


「ラキャこの人たちを放してやってくれ」


「わかりました、三十分もすれば動けると思います」


「だ、そうだ・・・・それじゃ俺た・・・・」


「さ、三十分だと!!!!??ふざけんな今すぐ・・・・」


男が言いかけると突然上空から男が持っていた大剣の倍はありそうな剣が降ってくると男の頭を二つに割る、未華たちは後ろに下がると剣の上に人が乗っていることに気づいた


「ったく、やっぱり使えねぇゴミだな」


そういって男は未華たちに歩きながら寄ってくる


「お、お前だれ・・・おぼぼぼっ!!!」


未華は言いかけて吐き出す、生れてはじめて人間の死体と頭蓋骨を見たのだ平気なわけがない


「おいおい来たねぇな、女ならもうちょっと静かなほうがいいぜ?」


「う、うるさい!うぷっ、おぇぇ」


「未華様大丈夫ですか?」


吐いている未華の背中をやさしくさすってあげるラキャと少女に未華は何とも言えない表情をしていた。何とか胸の中の気持ち悪さが収まると未華は男に指をさした


「お前は何者だ!?」


男は未華を見ながら笑い出した


「ハハハっ!!俺を知らねぇのか!!!」


未華たちは豪快に笑っている男を警戒していると男は名乗りだした。


「俺様は!【アルバル・ラスティア】だ!よく覚えとけ!!」


アルバルはそう言って大剣を引き抜き自分の肩に担ぐと手を差し出してきた


「さぁ!おとなしくその娘をこっちによこしな!」


そういってアルバルは持っていた大剣を振り下ろすと大剣は未華の頬をかすめて地面に当たると一瞬でクレーターができる。それを見た未華は顔を青白くさせていたがラキャは平然とした顔でアルバルに尋ねる。


「それでは、この子を売るとしたらいくらなのですか?」


冷静にいうラキャに未華は戸惑っていた


「おい!ラキャ!なんでそんなこと言ってんだよ!?」


「心配はいりませんよ、お金はありますから・・・」


「いやそういうことじゃ・・・」


アルバルに聞こえない程の声でこそこそと話す未華とラキャ、アルバルは二人を見て不気味にほほ笑むと未華たちに言った


「そんなに欲しけりゃぁな!‘300万レドス’でどうだ!」


「おいラキャ!レドスってなんだレドスって!」


「レドスは世界共通通貨のことです」


「おい!何こそこそ話してんだ!それでどうなんだ!」


短気なのかしびれを切らしたのかアルバルは大剣を振り回してせかしてくる


「わかりました」


「へっ!物分かりがいいじゃねぇか!」


「お金はありませんがこれではどうでしょう?」


ラキャはそう言って自分の口から一つの卵を取り出すとアルバルに投げ渡す。


「おっととっ!なんだこれは?」


「‘王貴蟲おうきちゅう’の卵です。売ればおつりがきますよ」


「お、王貴蟲だと!!!?」


「な、なんだ?おいラキャ!王貴蟲ってなんだ!?」


アルバルのあまりの驚きぶりに少し引いていた未華はラキャに聞く


「王貴蟲は奇怪麗蟲第78選の中の一つです。その姿は金色に輝き見るものすべてを引き付けたといわれる‘宝玉蟲ほうぎょくちゅう’の中の一種で、個体数も少なく収集家マニアの中で一位二位を争うほど貴重な虫です。」


「売ればいくらってのは?」


「卵から生まれた瞬間に大量の金塊をばらまくのでそれを目当てに買う人もいますから、金塊には細胞再生作用がありケガや万病、果ては寿命も伸ばす効果があると言われています。表のオークションにはめったに出ず裏のオークション、それもめったに出てこない代物です。」


「ちょっ?!そんな貴重なもの渡していいのかよ!?」


「最近になってなぜか急激に卵を産みだして困っていましたから、一つや二つ渡したところで私には関係ないですよ」


王貴蟲について詳しく説明を受けているとアルバルが叫びだした。


「ヒャッハーーーーー!!!!!こいつは本物だぁぁぁぁぁ!!!!鑑定眼にも異常なし!」


「なんか一人で騒いでるなあいつ・・・」


「よほどうれしいのでしょうね・・・」


「これならそいつはいらねぇ!すきにしな!!」


アルバルは少女に指をさした後卵にキスをして未華たちの前から去った。


「な、何とかなったのか?」


「そうですね、さて」


ラキャはそう言って少女のほうを向く、少女はラキャが恐ろしいのか恐怖の顔を浮かべていた。


「ラキャ、まぁまて」


未華がラキャの肩に手をやり少女の前に座る


「今から質問するから顔を縦か横に振れ、いいな?」


未華がそう聞くと少女は顔を縦に振る


「まずお前に名前はあるのか?」


少女は首を横に振った。


「名前なしか・・・・」


「未華様が名付けてみたらどうですか?」


「えぇ~名前苦手なんだよな~」


「まぁ物は試しですよ!自分の子供に着けるようにつけてみましょう!」


未華は嫌そうにラキャを見た後に少女を見ると少女は目を輝かせながら未華を見ていた。未華はその目がとても痛かった、未華はこれまで名づけで文句しか言われたことがなく小学校では教室の水槽の亀に【マッドネス吉原よしはら】とつけようとしたり中学では皆で飼っていたウサギに【ポセイドン村岡むらおか】と変な名前を付けかけてそのほかにも様々な生き物に数々に変な名前を着けようとしたためにみんなから‘もう名前を付けようとするな!’と文句を言われたほど未華にはネーミングセンスがなかった。


「さぁさぁ!未華様!さぁ!」


そのことを知らないラキャがせかし少女が輝く目で見つめる中、未華はしばらく悩んだようだが少しして意を決して少女に指をさして声高らかに自分の考えた名前を少女に言う


「もうわかった!お前の名前は!・・・【プリセルラ萩岡はぎおか】だ!」


「・・・・・・・・」


「・・・・・・・・」


ラキャと少女は一瞬にして冷ややかな目になる、二人は期待していただけに未華が命名した名前はちょっとショックだった。


「・・・・・それはない」


しばらくたったのちにラキャがそういうと未華は明らかに肩を落としてショックを受けていた。


「・・・・・・それはない」


ラキャがもう一度いうと未華は涙を流しながらその場に倒れる、よほどショックなのか未華は中々起き上がろうとしなかった。そんな未華を放置してラキャは少女のほうを向くと


「今日からあなたの名前は【カヤ・二階堂にかいどう・エムリシィア】ですよ!」


ラキャが満面の笑みを少女に向けながら少女の手を握りながら命名すると少女の引きつっていた顔は途端に笑顔になりラキャを抱きしめるとラキャは少女が喜んでいるとわかった。


「さて、宿屋に行きましょう!もうすぐ夕食ですから急がないとくいっぱぐれますよ!」


「お~~~!」


「ほら!未華様も行きますよ!!」


「くそっ、なんでダメなんだ・・・かわいいじゃないか・・・・・プリセルラ・・・萩岡・・・・」


悔しがっている未華をよそにラキャとカヤは公園の入り口まで行くと倒れている未華を手を振りながら呼ぶが未華は先ほどのことがショックなのか下を向いたままラキャたちのもとに行く、その足取りはとても重そうだったがラキャたちはそんな未華の手を取り宿屋まで走り出した。


「さぁ!着きましたよ未華様!大会までの仮部屋です!」


「おーーーーーー!」


未華たちの前には少し豪華な宿屋があった。


「ちょっと大きくないか?」


未華はショックから立ち直ったのかいつもの調子に戻っていた。


「も・ち・ろ・ん!一緒の部屋ですよ!!」


「おまえ・・・・・・」


未華はもうあきれ返っていたがカヤは両手を上げて喜んでいた、ラキャが相部屋にした理由は至極当然な理由で未華の持っているプラミーの生態や行動等を調べるためである。


「未華様はいつもいやそうな顔をしますね?女性同士なんだからいいじゃないですか?!」


ラキャは満面の笑みを浮かべて両手を上げ未華を見ると未華は複雑な顔をしていた。


「・・・あ。あの未華様?・・・・ど、どうされたのですか?」


「ラキャ、一つ・・・たった一つ言っておくことがある・・・・・」


「な、なんでしょう・・・・」


「俺は・・・・男だ・・・・」


未華が悟ったような目でラキャに言うとラキャはあまりのショックに声も出ず口をパクパクと動かして固まっていた、カヤはあまり気にしていなかった。

そんなこんなで王都グルスカルでの一日ももう終わりを迎えようとしていた。

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