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少女は厄介ごとを持ってくる

客間にて話し合っているエムスとネティアルが話し合っているのを横で見ていた未華は不意に話しかけられる。


「ねぇねぇ、お姉ちゃんはどうしてここに来たの?」


未華は声がしたほうを向くとそこにはキュリィと同じくらいの背丈の執事服を着た男の子がいた。


「えぇ~とねぇ・・・」


「キュリィも気になってたの!!」


未華が言うより先にキュリィが口を開いた。


「何でここにいるの?!どうやってここまで来たの?!どこから来たの?!どこに住んでたの?!どこで?!どこに?!どうやって?!なんでなんでなんでなんでなんでなん・・・・・」


「いや、ちょ・・・」


絶え間ないキュリィの質問攻めにあっている未華はどう答えていいのかわからなかったが本当のことは言わないほうがいいと思い口を開いたときにクギャが後ろから近づきキュリィを止めた。


「そこまでですよキュリィ、未華様が困っているでしょう?」


「はぁ~い!あっ!マティだ~~~!!!!あ~そ~ぼ~~!!」


キュリィがクギャの後ろを横切るマティを見つけるとマティに向かって一目散に駆け寄る。


「マティ~~~~~!!!!」


「?」


キュリィが走りながらマティの名前を呼ぶとマティは振り向かずに全力で逃げた。


「・・・・あの、クギャさん・・・」


「・・・何ですか未華様?」


「何でマティさんはキュリィから逃げているんですか?」


未華はずっと疑問に思っていたことを聞いてみた


「あぁ、それはマティはよほどのことがない限り死なない種族でキュリィが唯一触れることができる種族だからなついているんですよ」


「・・・・意味が分からない・・・・・」


「あぁ、貴女は知らないのですね。マティは‘アンドアンデッド’という種族でキュリィは‘オーガーディアン’という種族です。」


「アンドアンデッドとオーガーディアン?」


未華は全く聞いたことのない種族に困惑した


(オーガとアンデットに近い種族なのか?)


「アンドアンデットは個体数が少ないですがどの種族とも子をなすことができます、しかしその子供の大半がアンドアンデッドに分類されます。再生能力に秀でていますが素質に左右されるものが大半で、酷いもので擦り傷を完治させるのに三日かかるものもいると聞きます。」


(何とも言えんが、再生能力か・・・それはそれでいいな・・・・)


「次にオーガーディアンですが、彼らは怪力という以外の特徴がありません。まぁしいて言うなら超ドSということでしょうか」


「ドS・・・・・」


(か、かかわりたくねぇ・・・)


マティとキュリィのちょっとした情報を得た未華だったが二人にかかわりたくないという思いしか出てこなかった。未華がそう思っていた時にマティの叫び声が聞こえたかと思うとマティの首を掴んだキュリィが現れた。


「クギャ~マティが寝てる~~」


引きずられているマティは白眼を向き口から泡を吹いていた。


「ふぅ、まぁ明日には目を覚ますでしょう。」


「・・・あれ?再生能力に秀でているんじゃぁ?」


「マティは母親の血のほうが濃いんですよ、ですから素質にかかわらず再生能力が低いんですよ。」


クギャはキュリィからマティを引きはがすとマティを肩に担ぐ


「私はマティを部屋に置いてくるので申し訳ないですが未華様は少しお待ちください」


「キュリィも行く~~!!」


クギャとキュリィが部屋から出ていくとエムスが近づいてくる


「よう、何話してたんだ?」


「あ、いや・・・なにも・・・・・」


未華はエムスから少し目をそらした。


「なんでもいいけどこっちの話は終わったぜ!」


「お主が未華じゃな!エムスから話は聞いた、なんでも‘魔力器まりょくき’がないそうじゃな。」


「・・・魔力器?」


「空気中の魔素を取り込んで貯め込む為の器官のことだよ大抵は生れた時から身体に備わっている機関だ。まぁ稀に無い奴もいるけどな」


「それがないと魔法などが使えんから無い者は自衛ができぬから、大抵ここに貰いに来るのじゃ」


「な、なるほど・・・・」


なんとなく納得した未華にネティアルが懐から水晶を取り出すとそれを未華に投げつける


「ほい!」


「おわっとと!!」


未華は不意に投げ渡された水晶を受け取ると水晶はエメラルドのように美しい緑色に輝きだした。


「うむ、綺麗な緑じゃの・・・・」


「うわ、また面倒な色だな・・・・」


ネティアルは輝く色をほめたがエムスはその色に顔を引きつらせた。


「どうしたエムス?もしかしてこれやばい奴か?!!」


エムスの表情に不安がぬぐえない未華は冷や汗を垂らした。


「魔力器はその体に合った属性のものでないときちんと機能せんからの、故にその色に合った魔力属性の持ち主の魔力器を分けてもらわねばならん。」


「・・・・拒否反応とかあるのか?」


「そんなものはないが魔素が取り込めず、ただ無意味に存在するだけになるだけじゃ」


「そうか・・・・それで、緑って何の属性だ?風か?」


「森だよ・・・‘ドリアード族’特有の魔力属性さ・・・・」


「・・・・エムスお主まだあ奴らが苦手なのか?」


「あたりまえだろ・・・・」


エムスは憂いに満ちた表情をしていたが未華は気にせずにネティアルに尋ねた


「ドリアードって言うと森の精霊的なものか?」


「そうじゃ、しかしあ奴らは見境がないからのぉ。ま、せいぜい気を付けることだの」


「がんばれよ、俺はいかないからな・・・・」


ネティアルとエムスが未華から不意に目をそらす、そのしぐさを見た未華が不安を感じるのは遅くなかった。


「くっ、ま、まぁいい。それで?そのドリアードってどこにいるんだ?」


未華は不安だったが異世界転移序盤で詰むのは何とか避けたかった、もうすでに詰みかけているが未華は考えないようにした。


「この近くじゃと‘バングス山脈’を越えた‘イートメリィ’の都に行けばおるんじゃないのか?」


「確かにあそこだったらいるかもな・・・・だが・・・」


「・・・・だが?」


エムスが言いにくそうにしているとミリシィアが代わりに話す


「ここからイートメリィまでは単純に遠いんですよ、空を飛ぶと三日、馬車だと一か月、歩きだと半年かかります。」


「そ、そんなかかんの?」


ミリシィアの説明にかなり遠いことがわかると未華は頭を抱えた。


「ただ・・・」


「ただ?・・・・」


「先ほどネティアル様が言ったバングス山脈をまっすぐ行くと距離がかなり短縮されます。」


「・・・・そうか・・・」


ミリシィア達にはおそらく連れて行ってくれるという考えがないのだろうかと思えるくらい他人事のように感じた未華だった。未華は頭を抱えると後ろから声をかけられた


「どうしたのですか未華さま?」


不意に声をかけたのはラキャだった。


「え、いやっ何でもないよ・・・」


未華はそう言ったがラキャが未華の目を見ていう


「あ、あの!私がお供したら迷惑でしょうか?!」


ラキャの突然の提案に未華は目を丸くした、ラキャは真剣に未華の目を見ていた。未華からしたらラキャがなぜこんな提案をしたのかがわからなかった。


「いいんじゃないですか?」


未華が考えているとミリシィアが口を開いた


「今屋敷に人が足りないことはないですし、一人いなくなったところで変わりませんよ」


「え、いやでも・・・・」


ミリシィアの言葉に未華は何も言えなかったが未華としては自分の旅?に女性一人を同行させるのは気が引けていた。


「でも俺弱いぜ?」


「ラキャは強いので大丈夫ですよ」


ミリシィアははっきり言い切るとラキャは満足そうな顔をしていた。


「未華様のお邪魔にはなりません!それにイートメリィは私の故郷です!案内ができます!」


ラキャの言葉に未華は少し考えた。


(故郷ってことは少なくとも道のりや近道はもちろん安全で簡単な道も知ってるだろう・・・・)


未華は結論を出すとラキャを連れていくことにした。


「よしわかった!ラキャ、これからよろしくな!」


「はい!!」


ラキャは心底嬉しそうに返事をするといつの間にか用意されていたカバンが未華たちの目の前に現れる。


「これはしばらくの食料などが入っています、気を付けていってくださいね」


「え?!今からかよ!!」


「善は急げといいますし大丈夫ですよ!!」


ラキャは自分の分のカバンを担ぐと未華をせかす


「さぁ!未華様!早くいきましょう!!」


「ミカ!ちゃんと帰って来いよ?まだフィフィルも生み出してねぇんだからよ!」


「あぁわかったよちゃんと帰ってくるさ」


未華はエムスにそういうと目の前のカバンを背負うとラキャのほうを向く


「んじゃ行くか!」


「はい!」


二人はエムス達に背を向けて歩き出した。

二人はエルフの街エルヴァイスを出るとさっそく地図を見た。


「とりあえず宿屋のある村や町に行きましょう!ここからだと‘コミリス’という町が近いですね」


「なら決まりだな」


ラキャの案内に従い未華はコミリスという町を目指した。

未華とラキャが歩き出して四時間、日も傾いてきたころで町の明かりが見えると近くの看板に目がいく、看板には‘ようこそコミリスへ!!’という文字と一緒に綺麗な花が飾られていた。


「どうやらついたみたいですね!」


「・・・だな」


コミリスについた二人はさっそく宿屋を見つけると宿をとることにする


「部屋はどうする?」


「一緒がいいです!!」


ラキャはそう言うと未華に顔を近づける


「近い近い近い近い!!!」


「そんなことないです!!!」


二人の顔は鼻が付きそうなほど近かった。未華はすぐにラキャから距離を置く


「どうしたお前!?昨日はそんなキャラじゃなかっただろ!」


ラキャに指をさしながら言う未華にラキャは笑顔で答えた。


「ふふふっ、それはですね~あなたがプラミーを持っているからです!!」


「プ、プラミーって確か・・・」


未華は懐にしまった試験管を取り出す。


「そう!奇怪麗蟲第78選の中で唯一生態が全くと言っていいほど知られていない希少中の希少!!!存在すらほぼ伝説とされている虫なのですよ!!」


「そ、そうか・・・」


熱く熱弁するラキャに引き気味で相手をする未華


「私が案内しようと思ったのはプラミーの生態を知りたいからなのです!ですからできるだけ‘無識怪物モンスター’が出てきそうなところを行きます!」


「やめろ!!!ってか無識怪物ってなんだよ!?」


「無識怪物とは名の通り食って寝て繁殖することしか考えない有害な生き物のことです!奇怪麗蟲も大体はこれに該当します」


つまりラキャはこの後の道は少なからず怪物が襲ってくる道を選ぶといっているのだ、未華は安全に過ごしたかったので異議を唱える。


「待て待て待て!!ふざけんな!もっと安全な道を行けよ!!」


未華はラキャの肩を掴み揺すりながら反発した。


「で、ですがそれだと文字通り半年、最悪一年はかかります!」


「な、なんだと?・・・・」


未華はラキャから手を放し膝をつく


「そ、そんな馬鹿な・・・・・詰みどころじゃないじゃないか!」


「道中運よく‘龍化人族(りゅうかじんぞく’に会うとも限りませんから、気長に行くしかないですよ未華様・・・」


落ち込んでいる未華の肩に手を置くラキャ、未華はこれからどうしたらいいのか考えることにした。

宿屋で出された夕食を食べて用意された部屋のベットでゆっくりとくつろぐ未華は目を瞑りこれからどうするか考えることにした


(とにかく、半年一年かかるならどうやっても出遅れるよな・・・・おそらく俺の他にも転移者や転生者がいるはずだしそれを探すか?・・・・いや現実的じゃないな、そもそも見分け方がわからんしどうすることもできん)


未華が一人で考えていると部屋に満面の笑みを浮かべたラキャが入ってきた。


「未華様~いい情報が手に入りました~~」


「・・・どうした?」


ラキャは手に持っていたチラシを未華に見せた、そこには‘武装大会開催!!!!’と書かれていたが未華には読めなかった


「・・・なんだそれ?」


「はい!この近くにある‘王都グルスカル’で武装大会をやるみたいです!グルスカルには馬車を借りれば三日で着きますし行きましょう!」


「行ってどうするよ・・・・・」


「ふふん!なんとこの優勝賞品が‘古龍種族こりゅうしゅぞくの卵’なんですよ!!」


「古龍種族?」


「古龍種族の卵は基本飛行能力を有した‘アーレストハイ’という種族が産まれるようにできています!これをゲットすればうまくいけば三週間でイートメリィに着きます!」


自信満々にいうラキャに少し納得しかける未華だったがある思いが浮かぶ


「それ勝てるのか?」


当然の疑問だった、ラキャの実力はわからないが少なくとも未華は自分自身が強いとは思わなかった。


「大丈夫です!!私が未華様を鍛えますから!それに私もそこそこ強いんですよ?任せてください!」


自信満々にいうラキャだったが未華はその自信が不安要素にしか見えなかった。

次の日、未華たちは町から馬車を買ってそれに乗って移動していた。目指すのは王都グルスカルだが未華はラキャにいつごろ着くのか聞いたところ約四日かかるらしい、大会は昨日の時点では一週間後ということだったので一応余裕があった。不意にラキャが未華に話しかける


「未華様?」


「?どうしたラキャ?」


「プラミーを出してみてください」


「?まぁわかった」


未華は言われるがままに懐にしまっていた瓶を取り出した。


「‘ファスト’」


未華が言うと瓶の中から虫たちが一斉に出ると球体になるように集まった。


「とりあえずどこまで自由に動かせるか、どんな特徴があるのかを調べていきましょう!」


ラキャに言われるがままに虫を出して動かす未華、数時間後辺りが薄暗くなりはじめるとラキャは馬車を止めるとテントの用意をしだしたので未華はプラミーを瓶に戻してラキャを手伝う。そんなことが三日続きようやく王都が見えてきた。


「あれが王都グルスカルか・・・」


「意外とすぐでしたね~」


未華とラキャは王都グルスカルの門をくぐると馬車を止められるところに馬車を止めるとラキャは宿屋を探してくると言い残してどこかに行ってしまうと未華は一人になった。未華は初めての街なので地形や街並みを覚えておこうとブラブラとあてもなく歩いていると突然路地裏から小さな子供とぶつかる。


「まてコラーー!!!」


子供の後から巨体の男が棍棒を振り回しながらやってきた。


「ようやく追い詰めたぞ~!!」


未華は子供の手足に足かせに鎖がついていることがわかると子供をかばうように巨体の男の前に立つ


「ああぁ!!?なんだてめぇは?!!」


未華は無言だったが未華の後ろにいた子供は未華の服を震えた手でつかんでいた、未華はそれを横目で見た後口を開く


「なんだてめぇ・・・・か・・・・・なんでもねぇよアホ・・」


未華がそういうと巨体の男はわかりやすく切れると棍棒を振り回してきた


「んだとてめぇーーー!!!女だと思って調子に乗りやがって!!ぶっ殺してやる!」


未華は一歩後ろに下がると振り回されている棍棒を次々と捌いていくと巨体の男の懐に入り込むと拳を振り上げた


「ぐぼぃ?!!」


未華の拳が男の急所を突くと男はあまりの痛さに悶絶した後そこを抑えて気絶した。未華は男が気絶したのを確認すると子供を連れて急いでその場を離れた。


(あぁ~~どうしよう)


未華は何かとんでもない厄介ごとができたかもしれない予感がした。

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