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恋する騎士  作者: 桜ありま
第三章 二度ある事は、三度目の
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20-Ⅰ ヨネス視点

 



 リーヴィが、サルキオスの件はもう終わったも同然と、すっきり晴れ晴れとした気分で過ごしていた分。反比例したように、約束を取り付けたヨネスは微妙な空気に浸りながら鍛錬場に向かう廊下を歩いていた。



 ――うん。

 なんつーか、俺が悪かったよ、サルキオス。


 何か、そんな感じ。としか言いようがなかった。

 普段のこの時期ならサルキオスの休暇なんて、ヨネスにかかってはお手の物だ。


 ――安請け合いしちまったが、そう言えば、紅の方の兼ね合いがあったような。


 こうの騎士団主導の三騎士合同計画が、チラリとヨネスの頭によぎる。


 まぁ、それに重なったとしても。

 ああすればアイツを動かせるなーと、本人が聞いたのなら噴飯ものの策略をめぐらせる。

 そう、二人を引き合わせる事は何て事はない。

 会いたい……だから探していたんだろう、と言いたいぐらい。

 サルキオスだって「花冠の君」に呼ばれたと知ったら、確実に会いに行くだろう。


 でも、リーヴィがサルキオスに会いたい最大の理由が……問題だ。


 ――気持ちは分るけどさぁ。


 例の贈り物。

 あれほどのイイ笑顔で、突っ返したいと意気込まれると、なんだかお使いしてるだけの俺が心苦しくなるのは何故なんだろうなと、たそがれてしまう。


 ――っていうか、なんであんなものチョイスしたんだ、若者よ。


 サルキオスの贈り物は、まぁ趣味は悪くなかった。

 むしろ、かなり満点な部類だ。

 花冠を貰ったお礼に掛けているのか、それを思い起こさせ、さらにはリーヴィの髪色……というか、祭りの時の姿に似合うデザインのレースの髪飾り。

 朴念仁に見えるが、姉と妹がいる分、女性への贈り物を選ぶのは習慣的に慣れているのだろう。サルキオス的には、特に他意もなく自分が手に入れられるものでお詫びのつもりだったんだろうし、本人に聞いてもそう答えるに間違いない。

 しかし、心の奥底がダダ漏れてくるように感じるのは、ヨネスの勘違いだろうか。


 ただ――惜しむらくは、金額が悪かった。


 箱に入っている物を見た瞬間。

 あ、本気(ガチ)だ、本気すぎる、とヨネスは思った。


 どう考えても、一般人相手では「結婚真直の恋人からでもなきゃ、受け取れねーよそれ」レベルの値段に気合の入った代物だ。


 そういう事には気が回ってないのは、まぁアイツらしいと言えば言えるが。

 惜しい――実に惜しい。


 だから、つい自分が呟いてしまった言葉を、聞かれてしまったのが悔やまれる。

 高価そうなお詫びの品に、戸惑っていた彼女が品物の正体ねだんを知ることは、受け取れないとはっきり断るのには決定打だった。

 まだ、ダメになってしまった組み紐と同等の物、あるいはそれ以下の品を送れば、あっさりと受け取っただろうに。拾ってもらった組み紐を、こちらがこそばゆくなりそうなほど、嬉しそうに見つめるリーヴィを見ていたらそう思う。

 まぁ生まれながらにして、高級な物だけに囲まれているサルキオスにとっては、逆にその組み紐程度の物を手に入れる方が難しいんだろうが。


 彼女は、その高価すぎる詫びの品にとっても困っていた。

 貴族女性ならともかく普通の――というか、サルキオスの感性に合う真面目な女性なら特に、高価すぎる贈り物には腰が引けてしまうだろう。ここで「きゃ、らっきー」と言って素直に受け取ってしまう感性の持ち主なら、サルキオスとは合いそうにない。ヨネス的にはそういう女性も嫌いではないが。


 おじさん……これサルキオスに突っ返す役目するの嫌だなー。


 リーヴィが贈り物を受け取れないという空気を出し始めた時に、ヨネスは覚悟していた。

 普段、サルキオスの怒りをあれだけ買って、冷たい目で見られることに慣れているヨネスでも、贈り物を突っ返すという役目は耐えられそうにない空気だ。


 剣でざっくりと負傷するよりも、机の角で小指を思い切りぶつける心地つーか。


 そう内心思っていたら、力いっぱい自分でお返ししますと返事がやって来た。やっぱり礼儀正しいらしく、ヨネスに返してもらいたいなどと言わない所に好感が持てるのだが。

 直接返そうとする、その姿勢が妙に晴れやかなのは。



 やっぱり、脈ないのか……脈ないのか!?




 しかし、その悶々とした微妙な気持ちも、修練場に到着するとすぐに霧散する。待ちに待ったおまちかね。ヨネス的には本日の大本命メインイベントである緑の騎士達との手合わせが待っていた。

 初めヨネスが相手だと思うとぎこちなかった連中も、剣を重ねるごとに、自然体になってくるのが嬉しいところだ。手加減されては面白くない。

 剣を合わせると各団の特色……緑は主に団長の採用基準が顕著なのか、技巧的で扱い辛い相手が多い。少し手を合わせるだけで、これからの伸び代に確かな期待感と血が滾る。でもまだまだだと団長として、負けるはずがなく、ただの手ほどきレベルだが。

 ヨネスの本気の相手を出来るのは、各団長、最低でも隊長クラスレベルの人間だろう。

 特にヨネスの剣のスタイルからすると、緑の団長が一番相性が悪い。


 鍛えるのは、相手の為か……それとも、もっと強者と戦いたいという自分の為なのか。


 剣の手ほどきという楽しい時間を過ごした後は、話しづらい気持ちもどこへやら。

 聖の騎士団にうきうきで帰団すると、ヨネス不在の為に溜まりに溜まった書類に黙々と取り組んで、疲労困憊のサルキオスに、苦情を言われる前に話を持ちかけたのだった。



 ――花冠の君が、お前に会いたがっている。



 この魔法の一言で。

 ヨネスは、サルキオスの思考をそらすのに成功、お説教を回避した。





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