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恋する騎士  作者: 桜ありま
第三章 二度ある事は、三度目の
32/44

18-Ⅱ

 



「ヨ、ヨネス団長?」


 騎士団の廊下の柱に背もたれながら、視線は修練場に合わせていた人物は、紛れもなくヨネス団長だった。

 その姿は今にも混じりたくてたまらないと言いたげな程、楽しそうだ。その瞳がリーヴィを見ると軽く手を上げて、口元に指をやり喋るなと指示する。そしてこっちへおいでおいでと言っているように手招きされて、導かれたのは来客室だった。


「よ、お疲れさん」

「団長! お会いしたかったですっ……!!」

「へ?」


 願ってもない人物の登場に、泣き出しそうなほどのリーヴィの今の切実な気持ちが出てしまった。その必死さにちょっとヨネス団長が引き気味になった様子に我に返って、慌てて礼を取る。


「や、楽にしてくれて構わないよ」

 手で軽く制されても、変わらず気を張ったリーヴィにヨネス団長は呆れたように笑って命令した。

「命令だ。なーんか俺が若い女の子いびりしてるようで気分が悪い」

「そうですか?」

「ま、公式な場ではやってもらわにゃ困るが……今はいい。それにしてもそんな大歓迎、いやーそんなに喜んでもらえると、おじさん会いに来た甲斐があったよ」


 ヨネスは場の雰囲気を柔らかくするためなのか、茶化す。

 中々会えない人に、毎日会ってる人間に会えるなんて凄く幸運だった。

 しかも、ヨネスはリーヴィとサルキオスの事情もよく知っている数少ない一人だ。


「こんな所に呼び出してスマンが、あんまり人に聞かれたくないしな。ちょっくら副団長に借りることにしたんだ」


 レット副団長にさっさと追い払われたのは、今の状態のせいだけじゃなかったらしい。呆れたように見えたのは、「私は何も追求しませんよー」っと空気を読んだために、浮かんだ表情だと言う事まではリーヴィが知る由もない。


「その様子じゃお前さんも、サルキオスの噂聞いたんだろう?」

「その節は、お騒がせしました……もしかして、その件、ですか?」

「ああ、半分は。実はメインの半分は、緑騎士に剣術の手ほどきという名目のサボりだ」

「私が謝っていないせいで……大変なご迷惑を」

「いや、あれは。本人の仁徳のなせる業だろう?」


 笑いながらそう言うヨネス団長の口調で、「仁徳」が皮肉だと言う事が分る。でも嫌味な感じがしないのは、ヨネスがサルキオスを部下として可愛がっている証拠だった。


「やっぱり、怒ってますか?」

「あ、アイツの噂? あんな噂、知らぬは本人ばかりで教える奴がいる訳もない。だから知らなかったみたいだが……」


 ヨネス団長のその言葉に、リーヴィは納得しほっと胸をなでおろす。

 確かに。

 あんな噂を本人、しかもサルキオス様に直接、面と向かって言える人間はそうはいないだろう。リーヴィも言えるのかと聞かれれば、あの話しやすい雰囲気の中だとしても、冗談でも恐ろしくて言えない気がする。

 が、リーヴィは目の前の人物が「そうはいない人物」だということをすっかり忘れていた。


「ま、俺は言えるから、言っちまったけどね」

「団長っ!?」

「いや、まー自分のとった行動がどう影響するか、上司として少しは考えてもらいたいもん」

「……そ、そうですよね」

「俺も噂がどの程度真実なのか、確かめないといけない立場だからな」


 自分の軽く取った行動が、騎士団内でも大事になるとは思っても見なかったリーヴィはひきつった。


「特に子持ちの人妻と付き合ってる説とか」

「!!」


 他人の恋人に横恋慕を飛び越えて、子持ちの人妻説まで!

 進化しすぎた噂に、リーヴィの衝撃は計り知れない。

 それが思いきり顔に出てしまったのだろう。


「あ、それは知らなかったのか」

「子供と言えば、迷子を一緒に探した覚えはありますけど……」


 もしかしたら、その噂の出所は、パナス君を肩車している所を見た紅の騎士かもしれない。

 子供を肩車して、隣には――私という女性。

 サルキオス様ではなく、普通の人で想像すれば、まさに「父親の休日」といった様子だ。

 サルキオス様は未婚な事は周知の事実。

 それが、子持ちの人妻と付き合ってる説――になったのかもしれない。

 直接見たら、恋人同士になんて見れられるわけがないのに。


「あーやっぱりそんな面白くないオチか?」


 サルキオス様の反応が恐い……。

 聴きたいような、聞きたくないような。


 リーヴィは後者を選択した。


「……その件で。噂を抑えるために。一刻も早くサルキオス副団長にお会いしたいのですが、どうやったらお会いできるのかわからなくて」

「で、俺が今日来た理由が、それだったりするんだなーこれが」


 ほい、とヨネス団長からリーヴィは手紙と小さな箱を渡される。

 封筒は紋章のような模様が入った封蝋で封をされていた。

 ――紋章、という事は。


「こ、これは?」

「アイツがお前さんを探していた理由だ」


 やっぱり紋章は、サルキオス様のものだったらしい。


「どうやらこれを渡したかったようだぞ」

「?」

「お前さんと約束したから、勿論お前さんの正体は喋っていない。俺が心当たりがあるから会えたら渡してくるって言って預かったんで、とりあえずお前さんを探すのは止めたから、噂もいつかはやむんじゃないか? 多分」

 ヨネス団長はかなり楽観的にそう言うと。

 これ、と言った時に、リーヴィが持っている、小さな箱を指さす。

「これって……?」

「落とし物だってさ、開けてみればわかるんだろ」



 落とし物?



 

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