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5 対面

「君がアレスの言っていた少女か。話には聞いていたが予想以上に可愛らしい! 素晴らしい! おおっと自己紹介しようか。私がアレスの父、ハインツだ。息子から話は聞いている、どうか自分の家だと思ってくつろいでくれたまえ」


 屋敷に通された俺を玄関で待ち構えていたのは、金髪のウルフカットにチョビ髭を生やしたナイスミドル。背後には白髪をオールバックにした老執事を控えさせている。


 キザっぽいポーズをとりながら額に手を当て、HAHAHAと陽気に笑う彼がアレスの父親らしい。

 よかった、変な奴じゃなくて本当によかった。


「私はティア。よろしくお願いするよ」

 貴族相手にタメ口は不味いかなーとは思ったが、やっぱりガルム最強の兵器ともあろうものがへこへこするのはおかしいと思ったのでやめた。


 俺を造ってくれた所長たちや、俺に尊敬の目を向けてくれたガルムの民たちに失礼な気もするし。

 ハインツさんはともかく、控えている執事さんから文句の一つでも飛んでくるかなと思っていたが、特に反応はなし。

 予想が外れて安心したような残念なような複雑な気分だ。


「うむ、とりあえず話は部屋でしようか」


「かしこまりました。お客様、こちらでございます。それと、武器の方もお預かりさせていただいてもよろしいでしょうか?」


 ハインツさんがそう言うと控えていた老執事が一礼し、先導するのでそれに従う。ついでに背負っていた剣も預けとく。


 流石は貴族というべきか、廊下は広いし部屋も多い。にしても、こんなに部屋があって何に使うのかね。

 硬い木の床を歩きながら、そんなことを考えていると客間に着いた。執事さんは部屋に入らず、部屋の前で待機するみたいだ。


 薦められるまま茶色いソファーに座り、長方形の高級そうな木の机をはさんでハインツさんと向かい合う。

 アレスは何故か俺の横に座った。お前向こうじゃねえのかよ。


 全員が座ったことを確認したハインツさんが、服のポケットから掌に収まるサイズの小さなベルのようなものを取り出し、チリンと鳴らした。


「防音のマジックアイテムさ。簡単な結界を張ってくれるんだ」


 俺の目線を受けてハインツさんがウインクしつつ説明してくれる。


「さて、それでは何から話そうか。ティア君は何か聞きたいことはあるかな?」


「私の情報について、アレスからどこまで聞いたかが知りたいかな」


 俺の質問にハインツさんは少し考えた後に答える。


「そうだね……。かつて栄えたガルム帝国最強の兵器。我々人類とは桁違いの身体能力、疲労を知らない上にあらゆる魔法を受け付けない特殊な体。戦闘能力は極めて高く、未来の世界では人類を滅ぼした危険人物でもある。しかしその実態は妹との平穏な生活を望む少女であり、下手にちょっかいを出さなければ危険はない。私が聞いたのはこんなところか」


 俺が男の人格だって事は言ってないのかな? とりあえず男言葉は使わないでよかった。


 沈黙する俺を見てハインツさんはさらに続ける。


「君の封印を解いたのは私の息子だ。息子の責任は親の責任。君の衣食住の面倒は私がみよう。……その代わり、こちらも一つだけお願いがある」


 ハインツさんは一度深呼吸し、真剣な雰囲気を漂わせてその台詞を言った。


「君の目的、すなわち妹君たちを封印から解き放つことだが……少し待って貰えないかね?」


 何故? と目線でハインツさんに問いかける。ハインツさんは俺の目線を受けて頷き、その理由を語る。


「うむ。アレスの記憶通りに未来が進めばこれから先、ちょっとした事件が起こるのだよ。その事件が地味に厄介でね、君の力を借りたいのさ」


「どんな事件?」


「アレスの通っている騎士学校の近くに、古の悪魔が封印されていてね。もうしばらくすると、それがどこかの怪しい奴によって目覚めさせられてしまうのさ。文献とかは残ってなくて、悪魔が封印されているなんて誰も知らないから何の対策も出来てない。哀れ、学校は悪魔の奇襲を受けて多大な犠牲が出てしまう、という訳だ。……まあ、事前に防備を固めればいいじゃないかって思うかもしれないが、そうすると今度はどこからその情報を手に入れたってなるからね。下手すればこちらが犯人の関係者として疑われかねない」


 ため息をつきながらそう語るハインツさん。悪魔狩りの手伝いか……ちゃんとした理由みたいだし、それならまあいいかな。


 なにを隠そう、俺は悪魔との相性が滅茶苦茶いいのだ。

 もう負けるとかそれ以前に、苦戦などありえないというかそんなレベルで相性がいい。


 早く妹と会いたいという気持ちはあるが、闇雲に探すよりここでハインツさんたちに恩を売って協力を得る方が近道になるだろう。


 でも、ここで即了承して安く見られると困るのでちょっと渋る演技でもしておこうか。


「まあ、協力してあげてもいいけど……」


 俺が渋るのは予想済みだったらしく、ハインツさんは即座に切り返してくる。


「そうだね、この依頼を受けてくれれば我らヴランヴィル家が妹君の捜索に全面協力しよう。人探しは頭数が多い方がいいからね」


 む、いきなり一番欲しい報酬を出されてしまった。

 まだ交渉は始まったばかり、頷くにはまだ早いかもしれないけど……それが目当てだし、まあいいか。


「よし、受けた」


「よーし交渉成立!」


 立ち上がって机越しにガッシリと握手する俺とハインツさん。それを見て複雑な表情をするアレス。


「こんなあっさり……いいのかなあ」


 同感だ、なんか俺にとって有利すぎる条件で悪い気がする。

 悪魔をちょちょいと滅ぼすだけで貴族様の協力が得られるとか美味しすぎて怖いくらいだ。


 だがまあ、アレスの父親というだけあってかハインツさんもいい人オーラを漂わせてるし、たぶん俺の境遇に同情してくれた結果だろう。



「さて、では悪魔退治の件だが……とりあえず、君には生徒として潜り込んでもらおうかな。後はまあ、適当に。そうそう、件の悪魔だけど愚息の話では結構な強さらしくてね、倒すと英雄だの何だので目立つらしいよ? 自分が目立ちたいのなら君が倒してもらってもかまわないし、目立ちたくないならアレスのサポートに回ってもらってもかまわない」


 ハインツさんの大雑把な指示に頷いて返事をする。一々細かい指示されるよりはいいけど、ずいぶんと適当だなオイ。まあアレスから俺と悪魔の相性の良さでも聞いていたんだろうな。


 功績を挙げて目立てば、俺に取り入ろうと情報を持って来る奴も来るだろう。

 しかし、目立ちすぎて行動が制限されたら本末転倒だし……そこらへんは適度に調整しないとな。


「あと最後に、これは個人的なお願いなんだがね……。私と手合わせして貰いたいのだが、いいかな? これでも周りからは蒼の剣聖、なんて呼ばれていてね。剣にはそれなりに自信がある。君をがっかりさせることはないと思うよ」


「ああ、確かにまだ実力の証明とかしてないしね。構わないよ。ガルムの力、お見せしよう」


 実力を示すと同時にこの時代の人間の強さを知ることができる、美味しい依頼だ。二つ返事で引き受ける。


 それにしても格好いい二つ名だな、俺もなんか名乗ろうか。俺は黒い服着てるし……漆黒の狩猟者とかどうだ?

 うーん我ながら素晴らしいセンス。でもよく考えれば二つ名って名付けられるものであって自分で名乗るものじゃないよな。

 せっかく考えたのに残念だ。


 ハインツさんがベル型のマジックアイテムを再度使用し、防音の結界を解く。そして声を上げて執事さんを呼び、模擬戦の件を伝える。


 俺はそれを見つつ、アレスに小声で話しかける。


「ハインツさんってどのくらい強いの?」


「かなり。一応、この国では最強クラスだよ」


「へえ、それは期待できそうだ」


 それにしても、戦いと聞いてワクワクするだなんてまるで戦闘狂だな、と自分の考えに内心で苦笑する。

 これでも昔は一般人だったんだけどなあ。魂が体に引っ張られるって奴かねえ。

次でようやく戦闘回

自分の話をスマホで読んでみたら読みづらくて驚きました。web小説は適度に改行しなくちゃ駄目なんですね。

というわけで投稿分を修正してみました。逆に読みづらくなったとかそういうのがあれば指摘お願いします。

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