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40 vs自動兵器 そのさん

「わっ!」


 アレスがグリーズの右腕を手首から切り落としたことにより、俺はグリーズに左腕一本で吊られる形になった。

 ぶらぶらと左右に揺れながら、手首を切り落とした勢いのまま遠くへすっ飛んでいったアレスへ目を向ける。


 アレスの全身は今までよりも激しく、そして輝くような赤いオーラに包まれており……。その瞳は金色に染まり、瞳孔はまるで爬虫類のように縦に裂けていた。

 そういえば、アレスは前世がドラゴンだとか言ってたな。きっとアレはアレスの切り札的な魔法で、前世パワーを呼び覚ますとかそういう系の魔法に違いない!


 それにしてもやるねえアレス。一瞬だけだけど、本気の俺に迫るぐらいの強さはあった気がするぞ。

 ハインツさんとか目じゃない強さだ。やっぱり俺の目に狂いはなかったな! 


「がふっ……!」


「アレス!?」


「ああもう、まだ治療中だってのに無茶するから……!」


 俺がアレスの真の力とそれを見抜いた自身の超スーパーでグレートなパーフェクト眼力を内心で褒め称えていると、突然アレスが苦しそうな声を上げるとともにその場に蹲った。それを見て俺とポーラが悲鳴を上げる。


 ちょ、アレス、いきなりどうし……魔法の反動か! そりゃ人間の体であんなパワー出せば反動くるよね! 当然だよね!


 ポーラが慌ててアレスのそばへ駆けていき、自分とグリーズの間に青い障壁を張ってから治療を開始する。

 アレスにはポーラがついてるから大丈夫だろう! 俺もぼさっとしてないでさっさと脱出しなきゃ!


「ほいさ!」


 体を持ち上げ、そのままグリーズの左腕を自分の両脚で挟み込む。なんだかこうやって逆さ吊りになってるとコアラみたいだな。いや、横向きだからナマケモノか? 


「ふんっ!」


 自分の体勢にくだらない感想を抱きつつ、そうしてグリーズの左腕に絡みついた俺は、その体勢のままグリーズの左腕を両方の太ももで締め上げる!


 ベキバキと音を立て、グリーズの左腕が潰れていく。

 ちょっとやりすぎな気もしなくはないが……アレスだって手首を切り落としたんだし、これも火事場の馬鹿力ってことでなんとかなるでしょ!

 ていうかこれぐらいやらなきゃグリーズの注意を引けないだろうしね!


 それにしてもやけに硬いぞコイツ。この俺が本気で力を込めて締め上げてるってのになかなか潰せない。

 装甲の強度が俺の知ってるやつよりもかなり上がってる! こりゃ硬鞭が折れるわけだ!


 蹲ったままのアレスとその治療をするポーラよりも、現在進行形で左腕を破壊しつつある俺の方を優先的に対処しなければいけないと判断したのだろう。グリーズが慌てて俺を振り払おうと腕を振り回す。


 ふはは、その程度で俺を振り払えるわけがなかろう。おとなしく腕を破壊されるがいい!


 腕を振り回すだけではびくともしない俺を見て、グリーズは一番近くにあった壁へと駆けより、俺を何度も壁へと叩きつけてきた。


「ひょわぁ!」


「ティア!」


 別に痛くはないのだが、つい悲鳴を上げてしまった。そして、俺の悲鳴に驚いたのかポーラも俺の名を叫ぶ。

 いや、別にそこまでピンチじゃないから大丈夫だよポーラ。


 ていうかこら、壁に叩きつけるのはやめろ! ええい、だから叩きつけるなっと言っているだろうに!

 あああ、擦り付けるのはもっとやめろぉ!?


 そして、俺がそれでも離れる様子を見せずに腕を締め付け続けると、今度は俺を壁に叩きつけた状態のまま駆け出すグリーズ。

 俺の背中と洞窟の壁面が激しくこすれ合い、ガリガリと音を立てて壁が削れる。そして俺の服もズタボロになる。


 服が! 服が死んじゃう! ただでさえボロボロだったのに貴様ぁ!


「ひええ! ちょ、こっちこないでくだ……ぐぇー!」


 壁面に沿って走り続けるグリーズの巨体が、壁際に避難していたヘンリーを撥ねた。きりもみ回転しながら地面へと叩きつけられるヘンリー。


「ヘンリーさーん!」


「へ、ヘンリーさん……!」


 それを見てポーラとアレスが悲鳴を上げるが、どうせならヘンリーさんより俺の心配をして欲しいかなぁって。

 派手に吹き飛んだけど、それは逆に言えばカス当たりだったってことだしね。ぶっちゃけグリーズも戦闘力皆無のヘンリーさんは眼中になかったのか、攻撃の意思はなくてたまたま進路上にいたから撥ねられただけっぽいし。


 ポーラが杖をヘンリーへ向けるとヘンリーの体がふわりと浮く。魔法でヘンリーを持ち上げ、自分の傍に運んでからアレスと同時に治療するつもりなのだろう。


 ちなみにいつの間にかアーノルドもポーラの傍に回収されていた。


「にょふ!」


 ある程度の距離を走り抜けたグリーズは、その勢いのまま俺を壁へと叩きつけた。

 衝撃にびっくりしてつい変な声を出してしまい、少し恥ずかしい気分になる。


 グリーズに引きずり回された俺の服は悲惨なことになっており、背中は丸出しだわブラジャーの紐が千切れたせいで胸が無駄に揺れるだわで大変だ。

 気を付けて動かないと服の前部分がずり落ち、とても恥ずかしい目に合うこと間違いなしである。


「お、の、れぇ……!」


 これには温厚でなこと知られるこの俺もちょっーとだけ、ピキっときちゃったかなぁ……!

 それに、今の動きでアレスから少し離れた上にヘンリーが気を失ったっぽい今がチャンス! この、さっさと千切れろぉ!


 俺は出力を最大にし、再び全力でグリーズの腕を締め上げる。ベキベキというグリーズの腕が砕ける音が再度鳴り響き、グリーズの腕に俺の脚がどんどん食い込んでいく。そして……。


「むんっ!」


 俺の脚がグリーズの左腕を完全に破壊した。自重に耐え切れず、ズシンと地面に落ちるグリーズの左腕……と俺。


「あふ!」


 左手を掴まれていたせいで、無様に背中から落ちてグリーズの左腕に潰される俺。

 やだ、俺ってばカッコわるい……! ていうか普通の人間だったら余裕で死ねるだろうな、これ。


「ぐっ!」


 これが生物なら腕を千切られた痛みにのた打ち回っているのだろうが、今回の相手であるグリーズは俺と同様に兵器であり、痛みなんてものは感じない。

 腕を千切られたグリーズは、その腕に潰されている俺へと素早く蹴りを叩き込んできた。

 勢いよく吹き飛ばされて壁へと激突し、そのまま軽く壁へとめり込む俺。


「このぉ! アースグレイブ! アースグレイブ! プロテクションスクリーン!」


 両腕を失ったことで俺の相手をするのは諦めたのか、吹き飛んだ俺を無視してポーラたちへとグリーズが突進しだした。


 ポーラがアースグレイブや魔法障壁を唱えて迎撃するが、対魔法・体物理性能がともに高いグリーズの装甲には通じない。グリーズもそれを理解しているのだろう。ポーラの放つ魔法を気にすることなく突進を続ける。

 大地の槍をその巨体で受け止め、魔法障壁をその質量と勢いで叩き割り、ポーラたちへと一気に近寄るグリーズ。


 しかし、グリーズの装甲はあくまで魔法が効きにくいだけであり、俺のようにかき消すことはできない。よって――。


「ポーラに手を出すな!」


 ほんの僅かではあるが、足止めの効果はあるわけだ。そして、そのわずかがあれば俺には十分!

 アーノルドとヘンリーが気絶した今、手加減だとかに気を使う必要はない。俺は一気にグリーズへと接近し、その勢いを利用してジャンプしながら右足で前蹴りを放つ。


 俺の蹴りがポーラたち目掛け突進するグリーズの胸部へと真正面から激突する!


「ふんっ」


 勝ったのは当然ながら俺! グリーズは突進してきた方向とは反対側の方向へと物凄い勢いで吹き飛び、洞窟の壁面へと叩きつけられた。

 無様を晒すグリーズを軽く鼻を鳴らしてあざ笑う。油断さえしなきゃざっとこんなもんよ。

リアル多忙につき、これよりしばらくの間は不定期更新になりそうです。ごめんなさい(もうすでになっている気もしますが)

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