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35 土竜退治

 ……やべえ。……これめっちゃやべえ。

 土竜の突き攻撃をブーツの裏で受け止めた俺は内心で震えていた。そう――。


 今の俺ってば、横から見たら最高にカッコよくね!?


 あまりにも決まった自分の姿に!


 土竜がその巨体を震わし、渾身の力を込めて放った突き! それを片足で受け止め、不敵な笑みを浮かべる俺!


 いやー、我ながらこれすごい決まったわ。思わず涎出ちゃいそうなぐらいに決まった。キャメラが無いのが残念だぜ、ふふふ。


 土竜が俺を防御ごと貫かんと右腕に力を込めてきたので、こちらも右足に力を込めて押し返す。甘い甘い。その程度のパワーじゃ俺には勝てんよ。


 そのまましばらくの間、俺と土竜は力比べのようなことをしていたが、土竜は俺にパワーでは勝てないということを悟ったのだろう。ふと突いていた腕を引き、素早くバックステップをして俺から距離を取った。


 こちらを警戒した様子で見やり、唸り声を上げる土竜。それに対し、不敵っぽい感じに見えるよう意識した笑みを浮かべて軽く挑発する俺。


 ああ、今の俺、輝いてる。輝いてるなあ。この依頼についてきて本当によかった!


「さあて、反撃開始だ」


 笑みを浮かべたまま呟き、剣のギミックを稼動させる。剣の腹の部分に青いエネルギーラインが走り、刀身を赤い魔力光を纏う。


「そらっ!」


 距離を取ってこちらを警戒していた土竜の背後に素早く回り込み、その尻尾を斬り落とさんと剣を振り上げる。最初に斬りつけたときは鱗に弾かれてしまったので、そのリベンジだ。


 赤い魔力光を纏った刃は、今度は土竜の尻尾をあっさりと切断した。尻尾を中ほどから斬り落とされた土竜はその苦痛に悲鳴を上げ、前方へとすっ転ぶ。


 そう、これがこの剣の真骨頂。刀身に灼熱の魔力を纏う事で、刃が通らないような硬い相手でも焼き切ることができるのだ。

 しかも焼き切るという特性上、返り血を気にしなくていいという嬉しいオマケつきである。綺麗好きの僕にぴったりな素敵ソード!


 まあでも、それはメリットであると同時に、失血死を狙えないというデメリットでもあるわけだが。


「あっははは! ぶざまぶざま!」


「ずいぶんと楽しそうだね」


 苦痛の声を上げる土竜を見て、笑い声を上げる俺にアレスが苦笑する。

 むむむ、ちょっとテンション上げすぎたか。いかんいかん。


「まあね。いくら手を抜いてたとはいえ、アイツは生意気にも俺の剣を弾いたんだし。ちょーっとだけ、イラっとしてたんだ」


 歯ごたえのない相手はつまらないとか言いつつ、いざ抵抗されるとイラつくとか我ながら理不尽。ちょっと自分の性格がわからなくなるが……まあ、こういうのはわからない方が新しい発見とか楽しめるしいいよね。

 ふとした拍子に自分の新たな一面を見つけるのは楽しいし。


 尻尾を切られた土竜が立ち上がり、俺を睨んでくる。

 へえ、まだ歯向かう気なのか。いいじゃんいいじゃん。自分から進んで俺のオモチャになりにくるその姿勢、嫌いじゃないぞ。


「ほいっとぉ!」


 土竜が俺に向かって飛び掛ろうと体を沈めた瞬間、その顔の前に素早く踏み込んで、その勢いのまま土竜の顔面を蹴り飛ばす。攻撃に移る瞬間ってのは最高に無防備になる瞬間だとかどこかで聞いた覚えがあるが、その通りだな。隙だらけでお姉ちゃんびっくり!


「そらっ!」


 顔面にサッカーシュートを食らった土竜の首が跳ね上がるので、軽くジャンプしてそれを追いかけ、空中で回転して後ろ回し蹴りをその顔面に叩き込む!


「はっ」


 無様に吹き飛び、地面を転がる土竜を鼻で笑う。まあ、所詮は土竜。俺がちょいとその気になればこの程度よ。

 土竜よ、貴様の敗因はアーノルドというお邪魔キャラを見逃してしまったことだ!


 まあ、本気で蹴れば今ので頭を吹き飛ばせたんだけど……。そうすると死体の見た目が気持ち悪いし、靴や服が汚れちゃうからあまり取りたい手段ではないんだよね。


 殺すときはやっぱ突きで殺すに限る。これは個人的な意見だが、的確に急所のみを貫かれた死体ほど美しいものはないと思うんだよねえ。


 どう始末するかを考えながら土竜が起き上がるのを待つ。

 しかし、すぐに立ち上がると思っていた土竜はなかなか起き上がってこない。倒れたままだ。


「ん? 起き上がらないね? 気絶でもしちゃった系?」


 それとも首の骨でも折れたか。あっちゃー、もう少し遊びたかったんだけどな。


 そう思う俺の前で、土竜がゆっくりと立ち上がり咆哮を上げる。俺を睨むその目からは力は失われていなかった。闘志も衰えていないようだ。

 ああ、よかったよかった。手加減には成功してたみたいだ。


「ふふ、いい子いい子。そういえばアレス、アレスは攻撃しないの? 試したい技とか魔法とかあれば譲るよ?」


「いや、僕は遠慮しておくよ。これは元々ティアの獲物なんだし、別に苦戦してるってわけでもなさそうだし。それに……まだ何があるかわからないんだ、魔力は温存しておきたい」


 俺の台詞に顔の前で軽く手を振りながら答えるアレス。

 そっか。じゃあ遠慮なく頂いちゃいますか。さてさて、次はどういこっかなあ。

 俺がどうやってこの土竜を料理しようか考えていると、突然土竜がその右腕を振り上げた。


「おや?」


 つい疑問の声を漏らしてしまう。

 俺と土竜の間はそれなりに距離も開いてるので腕を振ったところで当然のごとく届かないし、足に力は込められていないので飛び掛ってくるわけでもなさそうだ。一体何をする気なんだ?


 少しワクワクしながら様子を窺っている俺を無視し、土竜が右腕を振り下ろして地面に叩きつけた。その衝撃に地面が少し揺れ、そして。


「ほう!」


「なっ!」


 俺の足元の地面が軽くひび割れ、そこから鋭く尖った大地の槍が飛び出してきた。間違いない、これは地属性の上級魔法、アースグレイブだ。


 土竜が魔法を使ってきたという予想外の状況に驚き、つい声を漏らしてしまう。これにはアレスも驚いたらしく、驚愕の声が聞こえた。


 ふふん。まあ、俺もちょっと驚いたけど所詮は魔法。土竜くんよ、残念ながら俺に魔法は効かないのだよ。ふはは、こんなの避けるまでもないわ!


 俺を股下から串刺しにせんと飛び出してきたその大地の槍は――俺に直撃する寸前、突如かき消えた。

 それを見て土竜の目が軽く見開かれ、驚愕に染まる。


 ふふふ、驚いてる驚いてる。きっと、魔法を避けようともしない俺の姿を見て勝利を確信していたんだろうが……残念でしたー! 俺様無傷、イェーイ! やっべ、今の俺超カッコいいわ!



 土竜の反応を見て、内心で調子に乗りまくる俺。

 しかし、調子に乗る俺はすっかり忘れていた。俺は魔法はかき消せても、その魔法によって引き起こされた自然現象まではかき消せないということを。


 いや、言い訳をさせてもらうなら俺は別に忘れてはいなかった。ただ、今の場合だと引き起こされる自然現象に危険性はないからと無視してしまっただけで。


 そう――。


「……」


 猛スピードで突き上がってきた大地の槍。それが急にかき消されたことによって発生した風が俺のスカートをふわりと捲り上げ、その中のパンツが完全に丸見えになった。


 ……やだ、カッコ悪い。今までカッコよく決めてたのが台無しだよ。


 内心でちょっと締まらない姿を晒してしまった自分へとため息を吐く。

 今まで上がっていたテンションが少し下がり、冷静さを取り戻した俺はあることに気づく。


 あれ? というか、ちょっと冷静に考えてみると今の俺って普通にカッコ悪くね?


 だって今の俺を横から見ると……。


 ①ドヤ顔で俺、仁王立ち。

 ②急に股の間の地面が鋭く盛り上がって突き上がる。その間俺はドヤ顔のまま。

 ③股間に直撃寸前で土の槍、消失。スカートが完全に真上にめくれ上がってパンツ丸出し。当然のごとく俺は最後までドヤ顔のままなのでお馬鹿丸出し。


 ってなるわけで……。


 あっ、これ普通にカッコ悪いわ。恥ずかしいわ。完全にやらかしちゃったな俺!


 カッコよく決めたつもりが、実はカッコ悪かったという衝撃の事態に動揺してしまう。

 い、いや俺は悪くないし。俺の真下から突き出てくるようにアースグレイブ唱えたあの土竜が悪いんだし!


 そうそう、なんで真下から飛び出てくるんだよ。こういうのは俺のちょっと手前から、四十五度くらいの角度で飛び出てくるのがお約束だろうが!


 自分が今、横から見るとどんな状況だったのかを想像してしまい、顔がちょっと熱くなる。


 慌てて今の一部始終を横から見ていたアレスの方へ振り返ると、アレスは無言で顔を逸らした。

 ああ、やっぱりカッコ悪かったんだネー。


「ふ、ふ、ふふふ!」


 よーし殺すか! 本来ならもうちょっといたぶってから始末する予定だったが、気が変わった!


「ぶっころす!」


 不意打ちで放った攻撃魔法がかき消されたことに驚き、俺を警戒しつつ観察していた土竜へと飛びかかる。


 すれ違いざまに右薙ぎを放ち、その右腕を切断する。土竜が苦痛に悲鳴を上げ、右側に倒れこみそうになる。


 土竜の後ろ、右足の前に回りこんだ俺は剣を左下から右上へ振り上げ、さらに土竜の右足を斬り飛ばす。支えを失った土竜が転げ落ち、その衝撃で大地が軽く震えた。


「しね!」


 剣を真上に振り上げ、そのまま一気に振り下ろして尻尾を根元から斬り落とす。もう一度同じ動作を行い、左足も斬り落とす。一気に両足と尻尾を奪われた痛みに土竜が物凄い大声で絶叫する。


「うるさい!」


 痛みにジタバタと暴れそうになる土竜を思い切り蹴り飛ばし、壁へと叩きつけてやる。


「ふふふ……。よくもこの俺に恥をかかせてくれたねえ……!」


 壁へと叩きつけられた衝撃で我に返ったのか、土竜が痛みに呻きながら俺へと目線を向けてきた。その目には明らかな怯えの色が含まれている。


 ああ、いい気味だ。ちょっとスカっとした。でも許さんがな!


 そのままゆっくりと、恐怖感を煽るようにわざとザッザッと大きな足音を立てながら倒れた土竜へと歩み寄る。


 ゆっくりと迫りくる俺に土竜が怯えの叫びを上げ、残された左腕を大きく振り上げた。どうやら、俺へと恥をかかせたあの魔法をまた使うらしい。


 そうだな、最後のチャンスを与えてやろうじゃないか。俺の手前から大地の槍を突き出すのであれば、首をはねて楽に殺してやる。だが、再び俺の真下から股間を突き上げるように槍を出したら……。


 俺がそう考えて足を止めた直後、土竜の左腕が地面へと叩きつけられ――。


 再び、俺の真下から鋭く尖った大地の槍が突き出してきた。


 …………よし、惨殺決定。お前は苦しんで死ぬがいい。

闇古戦場が始まった! ついでにストック切れた!

これは……やばいでおじゃるな。

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