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34 デカいは強い

「なんだあれ! デカすぎるだろぉ!」


「うわあぁー!」


「キャー!」


 騎士たちが悲鳴を上げながらドタドタと洞窟の奥へ向かって走り出す。ポーラも騎士たちと一緒に逃げていた。


 あ、ポーラがいなくなると光源が……! さすがに真っ暗になったら俺でも動きにくいぞ。やべえ、とりあえず俺も一緒に逃げるべきか!?


 どうしようと慌ててアレスの方へ振り返ると、今度はアレスが光球を出す魔法を唱えていた。アレスってばナイス! というかお前も使えたのかよ!

 いや、でもポーラほど明るくはないな。まあ、これだけ明るければ十分だけど。


 再び明るくなる洞窟に胸を撫で下ろしつつ、逃げる騎士たちに目を向ける。

 まあ少々情けない姿だが、無理もないか。相手は仮にもドラゴンの一種。人間が相手をするには少々きついだろうし。

 ああいや、ポーラは情けなくないよ? 逃げる姿も可愛いからセーフだよ?


 ポーラに対し脳内で言い訳しつつ、逃げる騎士たちを尻目に地中から現れたその土竜を観察する。


 いかにも硬そうな黒い鱗で覆われた長い胴体。翼は無く、代わりに発達した太い四肢。手足の先には鋭いかぎ爪を備えており、地中を掘り進む関係上か手のほうが大きい。


 ぶっちゃけるとドラゴンから翼を取ってモグラの手足をくっつけた感じか。

 飛べないドラゴンってそれトカゲじゃね? って気もするが、偉い学者さんとかがドラゴンって言うからにはドラゴンなのだろう。きっと。

 でも首も短いし、どう見てもトカゲの一種なんだけどなあ。


 まあ、とりあえず土竜がドラゴンなのかトカゲなのかは一度置いといて、こいつは見た目だけならただの土竜なのだが……。


「ねえアレス。アレ、でかくない?」


 デカかった。通常の土竜より二回りは大きい。前世で見た大型のダンプカーぐらいの大きさはあるんじゃないだろうか。

 普通の土竜は大きくても中型トラック程度なんだけどなあ。


 とりあえず戦闘モードを起動して、剣を抜きながら大きさについてアレスへと聞いてみる。


「いや、違う。ここの土竜はこんなに大きくなかった。依頼の時期がずれていたことといい、怪しいグリフォンが飛んでいたことといい、やっぱり何かがおかしい……!」


「ふーん」


 深刻そうな表情をして悩んでいるアレスには悪いと思うが、多分俺のせいじゃないかな。アレスが辿った歴史では、この時期の俺はまだ封印中だったわけだし。


 本来ならいなかった奴が一人追加されればちょっとぐらい歴史も変わるでしょ。当然の出来事なんだし、そこまで深刻な表情することはないんじゃないかなあ。


「何をしている! 逃げろ!」


 俺とアレスが逃げずにその場に留まっているのを見てアーノルドが叫ぶ。

 さすがは隊長ということか、どうやらアーノルドは部下を先に逃がして自分が殿を勤める気だったらしい。なかなかカッコいいじゃないか。


 『グルオォォォォ!!』


 アーノルドの叫び声に反応したのか、それまでジーっと俺とアレスを見たまま動かなかった土竜が大きな咆哮を上げる。

 そして、その咆哮を受けてアレスも剣を抜き、強化魔法を発動した。さあ、楽しい楽しいハンティングのお時間だ!


「隊長は逃げてていいよー! 巻き込んじゃうとアレだしさー!」


 戦闘を始める前に、アーノルドへさっさと逃げるよう伝える。

 言っちゃ悪いけど、正直なところいても邪魔だしね。巻き込んじゃ悪いし、さっさと逃げて欲しい。


「何をしている! 前を見ろォー!」


 土竜が戦闘体勢に入ったのにもかかわらず、のんびりと話しかける俺に対してアーノルドが悲鳴染みた叫び声を上げる。


 やべえ、めっちゃ楽しい。いや、真面目に心配してくれてるアーノルドには悪いけどさ、土竜とか敵じゃないんだよね。不意打ち食らっても問題ないし、そもそも俺に不意打ちとか効かないし。


 土竜が自分に背中を向け、遠くの人間と話している俺を隙だらけとでも捉えたか、唸り声を上げながら俺目掛けてその太い尻尾を鞭のように振るってくる。


「よっとぉ!」


 背後から迫る土竜の尻尾を、振り返ることなくジャンプして回避する。

 最初は片手で受け止めてアーノルドをもっと驚かせてやろうかと思ったが、服が破れたり土で汚れたら嫌なのでやっぱやめた。


 だってあいつ、地面から現れたんだしさ。つまりあいつはさっきまで潜ってたってことだろ? ばっちいじゃん。流石にちょっと触りたくないよね。


 ……あ、なら足で受け止めればいいのか。しまったな、せっかくの凄さアピールチャンスを無駄にしてしまったかも。まあいいか。


「また来るぞ!」


 尻尾の一撃をかわされた土竜が、先ほどとは反対に尻尾を振るって俺を攻撃する。

 それを見てアーノルドが再び叫ぶが……。


「見えてるんだよねぇ!」


 今度は宙返りしながら振るわれる尻尾を回避し、回避しながら尻尾を斬り落とさんと剣を振るう。俺は尻尾を斬り落とされて苦痛にもがく土竜を想像し笑みを浮かべたが、しかし――。


「なっ!」


 ガキンという音を立て、俺の振るった剣が弾かれる。どうやらあの鱗、相当に硬いらしい。しかし、いくら本気ではなかったとはいえ、まさか俺の剣を弾くとは……!


「ちっ」


 着地した俺は刀身に目を近づけ、刃こぼれしたりしてないかを確認する。両目でしっかりと確認した結果、剣へのダメージはゼロ。一安心だ。


 いきなり動きを止めて刀身を眺めだした俺に土竜が突進してくる。そして俺を切り裂かんと、鋭いかぎ爪のついた手を横薙ぎに振るう。

 刀身を確認しながらも、サブカメラで土竜の動きを確認していた俺は前方へ素早くダッシュ。土竜の横を駆け抜ける。


 土竜の豪腕が洞窟の壁に激突し、轟音が響く。土竜の一撃を受けた壁は大きく抉れており、人間があれを食らえばひとたまりもないだろう。


 とりあえず剣は無事だったけど……しかしどうするか。あの土竜、予想以上に硬い。やはりデカいやつは強いということか。


「あいつ相手じゃ硬鞭も効果は薄いだろうし……」


 別に斬れないこともないんだが……あの硬さは間違いなく剣に悪い。絶対に悪い。そして、硬い相手用にと買った硬鞭もあの巨体相手では効果が薄いだろう。


「さあて、どうしましょうかね……」


 壁を大きく抉る攻撃を繰り出した土竜がこちらを振り返り、再び咆哮を上げた。俺がなかなか仕留めれなくてイライラしてるのかな?


「ティア、大丈夫!?」


「アレス、あいつ硬いよ。私の剣が通じなかった」


 心配して駆け寄ってくるアレスに現状を報告する。

 やろうと思えば斬れないことも無い相手を斬れないと報告したが、まあ嘘ではない。

 剣に悪いから、アレスが怪我しそうになるとかのよほどのことがない限り斬るつもりはないし。


「うん、見てたからね。ティアの剣が通らないとか……っと!」


 俺とアレスはそれぞれ後方に跳躍。左右に分かれる形となった。

 そして、一瞬前まで俺とアレスがいた場所に土竜の爪が突き刺さる。


「どうする? 私は手がないわけじゃないけど……アレスはなんかある? 魔法剣とかさ」


「やってみる!」


 アレスの剣が光り出す。属性付与ではなく、刀身に魔力を纏わせることで純粋に強化したのだろう。

 剣を魔力で強化したアレスは腕を振り下ろした体勢でこちらを睨んでいた土竜へと飛びかかり、その太い腕を斬り落とさんと剣を振るう。しかし……。


「ッ!」


 やはり通らないか。……いや、よく見ると鱗に傷跡ができているから、一応効いてはいるのか。

 だけど、これで倒すのは現実的じゃあないな。土竜を倒すより先にアレスの体力や魔力が尽きてしまうだろうし。


 ふむ……アレスの魔法剣も通じない、か。

 んー、困ったな。アーノルドがいなければ手はあるんだけど、思いっきりこっち見てるしな。

 あいつがいるせいで俺は人間の領域を大きく超えるような真似はできないし、アレスも本気出せないしマジ迷惑だわー。


 目線を洞窟の奥側、少し離れた場所にいるアーノルドへと向ける。アーノルドは声を上げるのも忘れて俺たちの戦いに熱中しているようだ。


 まったく、悪気はないんだろうが本気で邪魔だ。他の騎士たちは逃げたみたいだし、こっそり始末してもバレないかな?


 アレスめがけて突進を繰り出そうとしていた土竜の横っ腹に足裏を使った前蹴り……いわゆるヤクザキックを叩き込む。

 おらっ! アレスに歯向かうなんて生意気だぞ!


 俺の蹴りを食らった土竜が悲鳴のような鳴き声を上げながら洞窟入り口側に吹き飛ぶ。ちょっとスッキリ。


「おお……!」


 俺が土竜を蹴り飛ばしたのを見てアーノルドが感嘆の声を上げる。

 おお……! じゃねえよ。邪魔だからさっさとどこか行け。割とマジで。


「アレス」


 アレスに目線でアーノルドをどうにかしてくれと訴える。俺の目線にアレスが頷き、アーノルドへ向かって呼びかける。


「アーノルドさん、ここは僕たちに任せてあなたも避難を! このままでは巻き込みかねないので!」


 アレスの言葉にアーノルドは迷っているようだったが、起き上がった土竜が怒りの咆哮を上げているのを見て決心したようだ。


「わかりました……! 悔しいですが、私ではお役に立てない様子……! どうか、ご武運を!」


 そういうと同時にアーノルドが俺たちに背を向け、洞窟の奥へと避難する。

 やれやれ、ようやく邪魔者が消えたか。


「それじゃ、サクっと始末しちゃいますかね!」


 土竜が俺目掛けて、その右腕を後方に大きく振りかぶりながら飛び掛ってくる。


 モーション的にこれは突きかな? 狙いはおそらく俺の胸部だろう。狙いはまあ悪くない。だけど……。


「ふふっ」


 その俺を貫かんと振るわれた鋭い鉤爪による一撃を、胴体の高さまで持ち上げた右足の足裏で受け止める。


「相手が悪かったね。虫ケラ」


 おそらくは渾身の一撃だったろうそれをあっさりと受け止めた俺に対し、土竜が驚愕した様子で目を見開く。


 そんな土竜を見ながら、俺は笑顔を浮かべるのだった。

アーノルド(どうしよう、援護すべきか?)オロオロ

アレス(邪魔だなあ)

ティア(邪魔だなあ)

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