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32 洞窟探索

 洞窟の中は意外と大きかった。ぱっと見だが横幅は両手を広げた大の大人が十人以上は入りそうなほど広いし、高さも横幅と同じぐらいはありそうだ。


 これなら土竜との戦闘も問題なさそうかな。いや、土竜と戦う場所もこんだけ広いとは限らないか。ここが広くても、奥の方では狭くなってるかもしれない。


 でもまあ、狭くて戦いづらい場所だったのなら、広い場所まで誘い込めばいいだけの話だし。


「それにしても、やっぱ魔法は便利だねー」


 俺は俺たちの頭上、少し離れた位置にある光球を見上げながら言う。


 ポーラの唱えた、この照明の役目を果たす魔法のおかげで洞窟の中はかなり明るい。まるで昼のようだ……というにはちょっと弱いか。


 まあ、なんにせよ視界良好なおかげで探索がなんだか楽しい。ちょっとした観光みたいだ。

 周囲の敵を感知する魔法も使ってるから、不意打ちや待ち伏せにも容易に対処できるし、尚更そう感じてしまう。


 ポーラがいなければランタンやらカンテラで明かりを確保することになっていたのだろうが、それを考えるとぞっとするね。


「でしょでしょ? アタシ連れてきてよかったでしょ? これはもう、帰ったらご褒美としてティアの体を好きにできる権利を貰ってもかまわないわよね?」


「もう好き放題やってるくせに何言うんだか……」


 ポーラが俺の後ろからひょこっと現われ、俺の肩に手を置きながらそんなことを言う。いやいやお前、隙あらば襲い掛かってきておきながらそれ言うか?

 思わずポーラの台詞に苦笑してしまう。


「てへ。だってぇ、ティアが可愛いのが悪いのよ?」


 舌をチョロっと出し、ウインクしながらポーラがそんなことをのたまう。

 わかっててやってるんだろうが、無駄に可愛いのが腹立たしい。


「可愛く言ってもダメ。まったくもう……」


「えへへ……。んー、それにしても」


 俺の台詞にポーラが軽く頭を掻きながら照れた表情をしたかと思うと、俺の顔をジーっと見つめながら真面目な顔で考え事を始めた。

 急にどうしたんだろう。


「ポーラ、どうかした? 私の顔に何かついてるの?」


 言いながら自分の顔をぺたぺた触って確認するが、特におかしなところはなさそうだ。そんなにジーっと見つめるなよ、照れるじゃないか。


「いやさ、ティアって自分の事を兵器だ兵器だ言う割にはどう見てもただに可愛い女の子にしか見えないよねーって。おっぱい揉まれてひんひん喘ぐとか兵器としてどうなのよ。もしかして、兵士の性欲処理もお仕事の内容だったり? ぐへへへへ」


 周囲をチラッと確認した後、小声で人差し指と中指の間に親指を挟む卑猥なジェスチャーを取りながらとんでもない事を言い出すポーラ。


 ちょっ、おま、性欲処理って……! いきなりなんて破廉恥な事を言い出すんだ! この変態!

 ていうか、それよりも小声とはいえなに人前で俺が兵器だと発言しちゃってるんですかこの娘は!


「ちょっとポーラ、いくら小声だからってそれは不味いって。周りに聞かれたらどうすんのさ!? ていうかその、せ、性欲処理とか……!」


 こちらも小声でポーラへ文句を言いながら、サブカメラを駆使して頭部を動かさないよう気をつけながら周囲の人たちの反応を確認する。


 ふむ、特に反応は無し、か。


 なんかみんな普通に歩いてて、俺とポーラの会話には別に注意を向けてないようだ。

 内心でほっと胸を撫でおろす。まったく。聞かれなかったからよかったものの、なんて危険な事を言い出すんだ。


 ジロリと抗議の目線をポーラへと送る。


「ふふふふふ。心配しなさんな! 風魔法のちょっとした応用よ。防音はちゃーんとやってまーす!」


 俺の抗議の目線を受け、してやったりという笑みを浮かべながら俺に向かって小さくピースサインを突き出すポーラ。


 お前、そういう心臓に悪いイタズラはマジやめろっての。驚きのあまり心臓止まるかと思ったじゃんかよ。

 まあ俺には止まる心臓ないけど、それぐらい驚いたってことだ。


「ポーラぁ……!」


「あははー、びっくりした? びっくりした? んもー、ティアってば慌てちゃってかーわイデェ!」


 満面の笑みを浮かべながら俺を煽ってくるポーラの脇腹をこっそりと拳で小突く。

 このやろ、このやろ! 笑ってないで少しは反省しろ!


「あだだだだ。ティア、手加減。もーちょっと手加減お願い!」


「は?」


 なおもふざけた態度を崩さないポーラに対し、笑顔で出来る限り不機嫌っぽく聞こえる声を出して威圧してやる。

 真面目にこういうイタズラはやめてほしい。胸ならいくらでも揉ませてやるから、こういう方面のイタズラはやめろ。マジで。


「う゛……。その、ごめんなさい。ちょっと調子乗りすぎたわ。だから脇腹をボコボコ叩くのはやめて欲しいなぁーって。痛い痛い、ごめんなさいティアってばぁ」


「うむ、わかればよろしい。次からはやめてよね」


 しゅんと落ち込みつつ謝るポーラを、腕組みしつつ軽くふんぞりかえって見下しながら許す俺。


 まあ今回は素直に謝ってくれたので大人しく許す事にしてやろう。俺様は寛大なのだ、一回目のミスは大目に見てやろうぞフハハ。


「……で、実際のところどうなのよ? 兵器とかいう割にはめっちゃ女の子してるじゃないティアってば」


 軽くため息を吐いた後、脇腹を軽く抑えながらポーラが再び同じ質問をぶつけてきた。


 むー。別に隠すような事じゃないし、まあ教えてもいいか。個人的にあまり愉快な話じゃないんだけど、ポーラが相手だし特別に、だ。


「まあ、あれだよ。私、終戦後は兵器としての機能を封印されてさ……普通の、人間のパートナーとしてのアンドロイドになる予定だったんだよね。まあ、わかりやすく言うなら……家事とかの手伝いをするメイド型のゴーレムとかそんな感じかな」


 目を閉じ、所長の顔を思い出しながらポーラへと本来なら自分が辿るはずだった未来を語る。

 そう、本当なら俺と妹たちの三人は所長に引き取られる予定だったんだ。それで、あの研究所の雑用係としてみんなで楽しく過ごすハズだったんだよねぇ……。


「終戦間近になるとさ、もう寝てても勝てるぐらい余裕だし、お前らがいると戦果をごっそり持っていくからーって理由で私と妹たちの出番がほとんどなくなっちゃってね。それでまあ、人間らしい機能がちょこちょこと追加されていって……」


 基本のボディはそのままで人間らしい機能を追加していくか、それとも一から新しくボディを作り直すかの案があって、前者が選択されたんだよな。


 もし、ボディを作り直す方を選んでたら俺たちは封印されなかったのかなあ。

 ……いや、なんだかんだ理由をつけられて結局封印されてた気がする。俺たちは一般市民からの人気がすごかったし。


 軽くため息を吐いて目を開く。あーあ、思い出したらなんかムカついてきちゃった。


「……気軽に聞いていい事じゃなさそうね。ごめん、ティア。嫌なこと思い出させちゃってさ。もういいから」


 あまり話したいことではないので、ポーラの言葉に甘えて語るのをやめる。

 ちらりとポーラの方に目を向けると、ポーラは聞いたことを少し後悔したような表情をしていた。


 軽い気持ちで聞いたんだろうに、ちょっと悪いことしちゃったかな。こっちももっと軽く伝えるべきだったか。ちょっとフォロー入れとこっかね。


「別にいいよ、もう終わったことだし。……それに今は、アレスとポーラがいるしね!」


 ニッコリと笑顔を作り、できるだけ明るい声でポーラへと話しかける。

 自分でそんな雰囲気作っといてなんだが、俺は暗いのとか重苦しいのは苦手なんだ。ポーラもホラホラ笑顔笑顔!


「ええ、そうね。ずっと一緒よティア。嫌だといっても離してあげないんだから!」


「ははっ。じゃあ私もポーラが嫌だと言っても離してあげない。私たちは永遠に一緒だよ!」


 俺の意図が通じたか、笑顔になったポーラが俺の手を取る。

 掌からポーラの体温を感じるのが嬉しくて、楽しくて、つい笑い声をもらしてしまった。


「ふふっ。ティアの手、あったかくて柔らかい。ティアは怒るかもしれないけど……アタシ、兵器としてのティアよりも今のティアのほうが好きよ?」


 ポーラが微笑みながら俺の手を何度も優しく握ってくる。なんだか兵器としての自分を否定されてるみたいでアレだけど……まあ、この笑顔見てりゃ悪気ゼロってことはわかるし、いっか。ポーラも楽しそうだし。

 でもさ、ポーラ。


「私の感触が人間そっくりなのは最初からなんだけどねー」


「え?」


 笑顔のまま固まるポーラ。まあ、あの話聞いてりゃ俺の感触についても“後から追加された人間らしい機能”だと思うよな。でも実は最初からなんですよ。

 まあ、人間への擬態用の機能って名目は一応あるんだけどね。


「えーと。それってじゃあつまり、ティアって……」


「私がどうかした?」


 急に真剣な表情をしてポーラが詰め寄ってくる。なんだろう、すっごく真剣で真面目な表情してるんだけど嫌な予感しかしない。

 とりあえず殴る準備だけしとくか。変なこと言ったら即座にぶっとばしてやる。


「やってたのね。兵士達の性欲処理」


「なんでそうなるっ!」


「おげぶぅ!」


 俺の右拳がポーラの腹部へと深々と突き刺さった。

 誰がやるか、そんなもん! この下ネタ大好き娘が!

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