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31 洞窟探索開始

 俺とアレスとポーラの三人を含む護衛メンバーはアルシードの洞窟の入り口の前に立っていた。

 昨夜も今朝も、魔物の襲撃などは一切なかったので全員が気力に満ち溢れたいい顔をしている。


「へー、ここがアルシードの洞窟か。結構大きいね」


「うん。でも、大きいだけあって中は魔物の巣窟になっているから気をつけてね」


「ふふ、私にそれ言うかな?」


 アレスが俺の心配をしてくれるが、その心配は無用だろう。

 アレスの情報通りならならこの洞窟の中で一番強いのは土竜だけど、その土竜でも俺の相手にはならないしな。


「むしろアレスこそ気をつけてよ? 洞窟の中は視界が悪いんだしさ、油断して不意打ちとかされないようにね?」


 俺は戦闘用アンドロイドということもあって、暗闇にも強い。まあさすがに何の光源もない真っ暗な場所ではキツいが、ほんの少しでも光源があれば問題はない。さらに常時全方位を監視できるので、不意打ちも受けにくい。


 しかし、俺と違ってアレスは人間だからな。洞窟みたいな暗くて隠れるところがいっぱいあるところは苦手なはずだ。

 まあ、俺がついてるから万が一なんて絶対に起こさせないんだけど。


「ふっふっふ……その心配は無用よティア。なにせ今回の探索にはアタシがついているんですから!」


 俺がアレスの心配をしていると、横からドヤ顔のポーラが割り込んできた。その手にはいつもの弓ではなく、身の丈と同じぐらいの黒い金属性の杖を握っている。

 杖の頭の部分にはなにやら魔力を感じる宝石が埋め込まれているので、恐らく魔法の杖だろう。


「今日は弓じゃないんだね、ポーラ」


「まあ、洞窟の中で弓は使いづらそうだしねー。アタシは魔法も使えるから、今日はこっち。明かりの確保から補助魔法に回復魔法と何でもござれよ? サポートなら任せなさいな」


「へー、意外と万能系なんだポーラって。回復魔法まで使えるなんて凄いね」


 優秀なのは知ってたけど、まさかここまでとはね。特に、使い手の少ない回復魔法を覚えているあたり本当に優秀だ。

 回復魔法の適正を持つ者はこの時代でも珍しいらしく、覚えていると就職の際にかなり有利らしい。騎士団みたいな荒事の多い職場では仕事が多くて大変らしいが。


 まあそれにしてもやれることが多いのは羨ましい。俺は直接戦闘以外はあまり役に立てないからなー。

 ガルム時代は仲間が大勢いたので役割分担すればそれでよかったのだが、今みたいな状況だと万能系の方が活躍できそうだし。


 俺がポーラの優秀さに感心していると、苦笑しながらアレスがポーラの適正について教えてくれた。


「ポーラは普段は弓を使っているけど、本当は魔法使いの適正の方が高いんだよ。ただ、その適正が補助よりでね?」


「なるほどね」


 ポーラはお転婆だからなあ。仲間の後ろで補助魔法唱えてるだけってのは性に合わないんだろう。せっかくの才能が勿体無いね。


 うんうんと一人頷き、温かい目でポーラを見やる。


「ん? 何かなその目は? アタシに何か言いたい事あるのかなー!?」


「ふぁりふうおあー!」


 俺がポーラに生暖かい目を向けていると、怒ったらしきポーラが素早く俺の背後に回りこんで頬を引っ張ってきた。

 ああ、周りの人間の顔がなんだか微笑ましいものに……!


 やめろォ! せっかく築き上げた俺の頼れるカッコいい素敵で無敵なカリスマ傭兵ティア様としての地位を崩すのはやめろォ!


「ほらほら、そのへんで勘弁してあげなよ」


「まったく、仕方ないわねー」


 アレスが苦笑しながらどうどうとポーラを宥め、それを受けてポーラが俺を解放する。

 やれやれ、口に出してないのにバレるとか勘が鋭いね、ポーラは。


「むう……。ポーラのせいで私のクールでカッコいいってキャラが台無しだよ」


「元からそんな目で見られてないってのに、何言うんだかこの娘は」


 ジトーっとした目線を向けながらポーラに抗議するも、あっさりと流されてしまう。

 ぐぬぬ。ポーラめ、言ってはならんことを言ったな。そのうち復讐してやるから覚えてろよ!


「あ。ちょっと僕、あの二人と話してくるから」


 俺たちとは少し離れた場所で話しているアーノルドとヘンリーを見て、俺たちに断りを入れてからアレスがそこへ歩いていく。何か話すことでもあるんだろう。


 アーノルドとヘンリーの傍に近づいたアレスが会話に参加したのを見て、俺はポーラに向き直った。


「ポーラって補助よりの適正なんだよね? 攻撃魔法とかどのくらい使えるの?」


 何故だかは知らないが、回復魔法の適正を持つ者は攻撃魔法の適正が低いことが多い。

 多いってだけで、回復魔法が得意です。攻撃魔法はもっと得意です! って人もいることはいるが、そういうのは全体の数でみると少数派だ。


「んー、そうねぇ……。まあ一応、簡単なのは一通り習得してるけど……威力がちょっと低いのよね。弱い魔物を蹴散らすくらいならできるけど、ちょっと強い魔物が相手だと厳しいわね」


 人差し指を口元に当て、少し考えながら俺の質問に答えるポーラ。


「へー、一通り使えるんだ、凄いじゃん」


 一通り習得済みときたか。やるねえポーラ。

 だいたいの回復魔法の使い手はそもそも攻撃魔法が習得できなかったり、習得できても自分と相性のいい属性の魔法が一つか二つ、といったところなのに。


「あ、ありがと……。ええと、その……お礼におっぱい揉み揉みしてあげる!」


「ちょっ、それどんなお礼っ! あははっ!」


 俺の賞賛を受け、ポーラが照れ臭そうに頬を染めた。珍しいポーラの照れ顔にちょっとだけ見惚れてしまう。ああもう、可愛いじゃないか!


 そうして頬を染めたポーラは照れ臭そうに目線を下に向けていたが、突然俺へとセクハラを開始してきた。しかし、今回のそれは手つきにいやらしさを感じない。きっと、ただ純粋に照れ隠しが目的だったのだろう。俺がそういう気分になる前にさっさと開放してくれた。

 まあ、今回は人目が多いからというのもあるだろうけどさ。


 ああ、こういうただのスキンシップで終わるレベルのなんちゃってセクハラなら大歓迎なんだけどなあ。ポーラに触られること自体は好きだから。

 親しい人間と触れ合っているときは胸がポカポカするというか、心がとても落ち着いて幸せな気分になれるんだよね。


 ……そういえば、積極的にセクハラ仕掛けてくるポーラと違ってアレスはそういうことやってくれないな。ちょっとぐらいならしてくれてもいいのに。

 もしかしてアレスってばロリコン? それで俺の体に魅力を感じないのかな? むう、それはちょっと悔し……いやいや、ちょっと待て。何ナチュラルに女の子やってるんだ俺は。


 ああもう、ポーラがセクハラばかり仕掛けてくるから、思考回路がかなりおかしなことになってきてるじゃないか。いや、それが狙いか? ポーラは俺に女の子として生きて欲しいみたいだし。


「……ふーむ」


「ん? ティアってば急に考え込んでどうしたの?」


「いや、アレスともポーラみたいに触れ合いたいなって。アレス、私にぜんぜん触ってくれないし。こっちから触るのはなんか負けた気がするし」


 まあ、セクハラどうこうは一度置いておいて、アレスともっと触れ合いたいってのは事実だ。

 何度か勘違いされながらもそれをポーラに説明すると、ポーラはニマニマと笑みを浮かべながら俺の頭を抱きかかえて、わしゃわしゃと撫で回してきた。


「わわっ」


「ああもう、本当に可愛いわねティアは! よーしよしよし!」


「う……ポーラ、こっちは真面目に悩んでるんだからさ。……で、どうすればいいの?」


 まあ、撫でられるのは嫌いではないのでもっと撫でてくれてもかまわないが。でも、もったいぶらないで答えは早く教えて欲しい。

 上目遣いでポーラへと質問の答えを催促すると、ポーラが頬を染めて俺から目を逸らした。


「う……ごめん、それ反則。……でもそうねえ。アレスはやっぱ男の子だし、自分から触りにいく性格でもないから、スキンシップが取りたいのならティアから行かなきゃ駄目だと思うわよ? 恥ずかしがってないで自分から触れあいに行きなさい」


「むー」


 やっぱそれしかないかあ。

 お、アレスたちの会話が終わったみたいだ。アーノルドとヘンリーも一緒にこちらへ歩いてくる。


「すまない、待たせてしまったな。それでは……」


 アルシードの洞窟の入り口前に集合した探索メンバーの前にアーノルドが立ち、声を張り上げる。


「我々はこれからアルシードの洞窟、その奥に新たに発見された遺跡へと向かう。今回の任務は護衛任務であり……極端な話、ヘンリー氏が怪我を負えば失敗。無傷で返せれば成功だ」


 アーノルドの台詞にメンバー全員が頷くので、俺もとりあえず頷いておく。

 俺的にはアレスとポーラが無傷なら成功で、仮に他のメンバーが全員死のうが関係ないんだけどね。まあ、できる範囲では守ってあげるけどさ。


「さらに! 今回はそれだけではなく、アレス様とその護衛であるティア氏。さらにお隣の領主の一人娘であるポーラ様も同行する。アレス様方は我々よりもはるかに強いので心配は無用だろうが……もしかしたら、という可能性がないわけではない。有事の際には我等が肉の盾となってでも無事に帰すのだ。いいな!」


「了解!」


 騎士たちが口々に了解と叫ぶ。アレスは眉をひそめているが、いい覚悟だ。


 そうそう、アレスとポーラの命は俺の妹たちと並んで、この世界で一番重いんだから。だから怪我させたりなんかしたら駄目だぞ? 万が一死なせたりなんかしたら、罰として人類皆殺しにしてやるんだからな。


「ようし、ではこれより、アルシードの洞窟の探索を開始する! 先頭は私、クリフ、シリルの三名で、末尾はビリーとモーリスだ。アントンとベンジャミン、バイロンの三名はここに残って馬車の護衛を頼む。ヘンリー氏とアレス様がたは中央にお願いします」


「了解!」


 アーノルドの指示通り配置につき、全員が配置についたのを見て、先頭のアーノルドたちが動き出す。さあ、任務開始だ!

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